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伊勢谷友介が語る、未来を変えるためにアーティストができること

伊勢谷友介が語る、未来を変えるためにアーティストができること

インタビュー・テキスト
島貫泰介
撮影:豊島望

上映中の映画『ザ・テノール 真実の物語』は、実在の韓国人オペラ歌手と日本人音楽プロデューサーの国を超えた友情を描いた物語だ。「100年に1人の声を持つテノール」とヨーロッパで絶賛され、キャリアの絶頂を迎えつつあった天才オペラ歌手ベー・チェチョルは、甲状腺ガンに倒れその美声を失ってしまう。劇場との契約を失い、絶望の淵に立たされた彼を支えたのが音楽プロデューサーである沢田幸二。二人は不屈の精神を共有しながら、やがて最新の医療技術の力を借りて、失った声と芸術家としての魂を取り戻していく。これは、芸術の力を信じた人々の信念と奇跡を描く映画なのだ。

公開に先立ち、音楽プロデューサーを演じた伊勢谷友介にインタビューする機会を得た。俳優、映画監督として活動するかたわら、「人類が地球に生き残るためにはどうするべきか?」を理念に掲げ、多数の地域プロジェクトを実践する株式会社REBIRTH PROJECTを経営する彼にとって、『ザ・テノール』は共感することの多い作品だったという。近年、さまざまな軋轢が起こっている日韓関係について。現代のアーティストが目指すべきクリエイションの理想。REBIRTH PROJECTが志す理想の政治システムのかたち。多彩な話題が飛び交ったインタビューをお届けする。

外交というと、「官僚や政治家がするもの」って考えがちですけど、本当は誰もができることなんですよ。

―オペラが題材の映画『ザ・テノール』では、伊勢谷さんは韓国人の天才オペラ歌手ベー・チェチョルを公私ともに支えた実在の音楽プロデューサー輪嶋東太郎(劇中での役名は沢田幸二)を演じています。これまでの伊勢谷さんの出演作品でも珍しい配役ではないでしょうか?

伊勢谷:そうですね。でも、どの役も大概珍しいですよ。ヒーロー役の『CASSHERN』もそうだし、『るろうに剣心』では元御庭番の忍者ですから(笑)。

―とはいえ事実に基づいた映画でもあり、かつ芸術家を支える役柄です。それはREBIRTH PROJECTなどを立ち上げている伊勢谷さんの活動とも重なる部分があったのではないでしょうか?

伊勢谷:この映画に内包されている社会的意義は、僕にとっても重要だと思っています。プロデューサーという役柄もそうですが、1人の俳優ができる外交という意味でも。

―外交ですか?

伊勢谷:外交というと、「官僚や政治家がするもの」って考えがちですけど、本当は誰もができることなんですよ。僕の世代特有のことかもしれないですけど、日本人って欧米に憧れがある反面、彼らと出会うと自分から一歩引いてしまうところがあるじゃないですか。でも、僕のアメリカ留学や海外活動での経験上、じつはどの国の人も同じようなプレッシャーを感じているわけですよ。だから本当は、「先に優しさを出せるのはどっち?」というだけの話なんです。ビビってないで喋りかけるとか、何か行動してみる。そうすると、向こうも気持ちを返してくれる。こちらから与えると返ってくるものって大きいです。

『ザ・テノール 真実の物語』©2014 BY MORE IN GROUP & SOCIAL CAPITAL PRODUCTION & VOICE FACTORY. ALL RIGHTS RESERVED.
『ザ・テノール 真実の物語』©2014 BY MORE IN GROUP & SOCIAL CAPITAL PRODUCTION & VOICE FACTORY. ALL RIGHTS RESERVED.

―『ザ・テノール』は日韓合作の映画ですから、伊勢谷さんの言う外交が生きる場所だったわけですね。

伊勢谷:楽しかったですね。みんな明るいですし、韓国のスタッフって、日本よりもなんとなくテキトーなんですよ(笑)。日本人が100%準備して始めるところを、彼らは80~90%で始めてしまうところがある。それで日本人のスタッフが戸惑っているところもあったんですけどね。「え、この状態で帰っちゃうんですか?」って。

伊勢谷友介
伊勢谷友介

―両方のお国柄が出てたわけですね(笑)。

伊勢谷:でも、日本人が考えている準備万端な状態でなかったとしても、撮り進めていくことで生まれる何かがたしかにある。それが韓国映画のワイルド感、魅力なんじゃないかなと思いました。僕は日本の映画を観ていて、たまにつまらなく感じるときがあるんですよ。意図したフレームの連続の中でしか撮っていないように感じることがあって。つまり、それだけ僕にとって、韓国の演出が新鮮だったわけです。カメラマンも常にいいカメラ位置に入っているのではなくて、映像もちょっとブレていたりするんですけど、それが独特な心情の表現につながっていたと思います。

―先ほど廊下で主演のユ・ジテさんとすれ違いましたが、伊勢谷さんとすごく親しげに声をかけあっているのが印象的でした。劇中でもお互いが信頼し合っているのがよく伝わってきます。

伊勢谷:お互いをリスペクトしあった、大人な距離感で仲良くなりましたね。彼とは同い年ですし、お互いに会社の経営者でもあり、境遇もとても似ています。このあいだ感動したことがあったんですけど、いま韓国と日本は少し険悪なムードになっていますよね。そんな中、「もしも万が一、互いの国が銃を向け合うようなことになったとしたらどうする?」っていう話をしたんです。

『ザ・テノール 真実の物語』©2014 BY MORE IN GROUP & SOCIAL CAPITAL PRODUCTION & VOICE FACTORY. ALL RIGHTS RESERVED.
『ザ・テノール 真実の物語』©2014 BY MORE IN GROUP & SOCIAL CAPITAL PRODUCTION & VOICE FACTORY. ALL RIGHTS RESERVED.

―在日外国人へのヘイトスピーチも頻発していますね。

伊勢谷:もし最悪の事態になったら、「僕は日本の銃口の前に立ちます」って言ったんですよ。そうしたら彼も「僕は韓国の銃の前に立ちます」と言ってくれて。嬉しかったです。彼は、世界のために自分は何ができるかを意識しながら生きている人で、感情的に自分を拒絶する相手に向かって刀を振り回すタイプではないですし。そういう意味でも、お互いに似ている部分はありますね。まあ、僕の方がちょっと落ち着きがないですけど(笑)。

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作品情報

『ザ・テノール 真実の物語』

2014年10月11日(土)から新宿ピカデリー、東劇ほか全国ロードショー
監督:キム・サンマン
出演:
ユ・ジテ
伊勢谷友介
チャ・イェリョン
北乃きい
ナターシャ・タプスコビッチ
ティツィアーナ・ドゥカーティ
配給:『ザ・テノール 真実の物語』プロジェクト

プロフィール

伊勢谷友介(いせや ゆうすけ)

1976年、東京都生まれ。東京藝術大学美術学部修士課程修了。大学在学中、ニューヨーク大学映画コースに短期留学し、映画制作を学ぶ。『ワンダフルライフ』(是枝裕和監督、1998年)で俳優デビュー。その他代表作品としては、『CASSHERN』(紀里谷和明監督、2004年)、『龍馬伝』(NHK大河ドラマ、2010年)、『るろうに剣心』(大友啓史監督、2014年)など。2002年、初監督作品『カクト』が公開。2008年、「人類が地球に生き残るためのプロジェクト」として「REBIRTH PROJECT」をスタートさせ、株式会社リバースプロジェクトの代表を務める。2012年、「誰かに任せる民主主義から、自分で決める民主主義(参加型民主主義)へ」の理念を掲げ、 クラウドガバメントラボを設立。2014年10月11日に、映画『ザ・テノール 真実の物語』が公開。

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