特集 PR

急所のないダンサーと舞台美術家がひたむきに遊んだ『動物紳士』

急所のないダンサーと舞台美術家がひたむきに遊んだ『動物紳士』

インタビュー
佐々木鋼平
構成・テキスト:萩原雄太, 撮影:高見知香
2014/11/11

日本最大の舞台芸術の祭典『フェスティバル/トーキョー14』(以下『F/T14』)では、今年のリニューアルの柱として「コラボレーション」から生み出された作品を数多く上演している。

振付家・白神ももこ×美術家・毛利悠子×音楽家・宮内康乃が上演する『春の祭典』や、パレスチナ人演出家のジョージ・イブラヒム×演出家・坂田ゆかり×現代美術チーム・目×ドラマトゥルク・長島確による『羅生門|藪の中』、演出家の矢内原美邦が、『GANTZ』などで知られる映画監督・佐藤信介による映像、建築設計事務所みかんぐみの曽我部昌史による美術、デザイナー・スズキタカユキによる衣裳と共に創作する、ミクニヤナイハラプロジェクト『桜の園』、そして、音楽家・遠藤ミチロウ、大友良英、詩人・和合亮一らが中心となって結成された「プロジェクトFUKUSHIMA!」による『フェスティバルFUKUSHIMA!@池袋西口公園』など、アーティストたちがフラットにぶつかり合うことによって、これまでにない創作方法の可能性を提示しているのだ。

そんな『F/T14』で、フリーランスのダンサー・振付家として活躍してきた森川弘和と、舞台美術家として青年団、地点、サンプルなど、数々の舞台空間を彩ってきた杉山至の二人は、『動物紳士』という作品を上演する。杉山が提案した「物=遊具」を使って、森川が、その「遊ぶ方法」を見つけるために、ひたむきに取り組んでいくというこの作品。このコラボレーションから、いったいどんな化学変化が生み出されているのだろうか? あえて完成形を見ようとしない、彼らの創作現場で話を聞いた。

森川さんのダンスを見ていて一番おもしろいのは、身体のパーツがどんどんバラバラになっていく感覚があること。身体の境界が溶解していく、消えていく感覚というのがあった。(杉山)

―今回のコラボレーションは、どのようなきっかけで実現したのでしょうか。

森川:初めに僕が『F/T14』からオファーを受け、せっかくなら誰かと一緒にガッツリやってみたいと思って、(杉山)至さんにコラボレーションの打診をしました。僕の作品を手伝ってほしいということではなく、二人で1つの作品を作りたいと提案したんです。

左から:森川弘和、杉山至
左から:森川弘和、杉山至

―舞台美術家である、杉山さんを相手に選んだ理由は?

森川:まず、俳優やダンサーなど、パフォーマンス関係ではない人というのが念頭にありました。ダンサー同士でもそれぞれ視点や価値観、アイデアの出し方は異なりますが、まったく違うジャンルの人のほうが、根本的に異なるアイデアを出してくれるだろうという期待があったんです。そこで、一緒に舞台に上がる人ではなく、舞台を客観的に見られる人がいいと思って。

―これまで、お互いに交流はあったんですか?

杉山:何度か森川さんが出演している作品の舞台美術を担当したことはありましたね。

―では、杉山さんの作品のイメージがあった上でのオファーだった?

森川:いえ、特に何もイメージせずに、アイデアもまったくない状態でした。プロジェクトが決まってから、至さんと話し合っていくなかで、何か仕掛けとなる「美術」を出してもらって、それと僕の身体を絡めていくことで、作品を構成できないかと考えたんです。

稽古風景
稽古風景

―先ほど稽古を見せていただきましたが、杉山さんの作った不思議なかたちのオブジェと、森川さんの身体が遊ぶように絡みついていったり、またそれに対して杉山さんからフィードバックがあったりと、「舞台美術」を介して二人の真剣なコラボレーションが生まれている感じでした。

森川:そうですね。まず杉山さんがいろんな美術を作ってくれて、それに対して僕がどれだけ身体を使って遊べるか? 至さんが想像すらもしていない使い方や可能性を引っ張り出せないか? と考えながらやっています。

―あと少し気になったのは、森川さんの衣裳がたくさん用意されてあって、デザインも独特なのですが、あの衣裳もひょっとして杉山さんの担当?

杉山:そう! 僕は衣裳デザイナーじゃないので、本当に困ってて(笑)。

森川:(笑)。

―一見、ただのタキシードだったりするんですが、よくよく見たら素材が独特の質感だったり、シルエットがだいぶ風変わりな感じのデザインになっています。

杉山:実際に作るのは専門の方にお願いしているのですが、アイデアは僕から出しているので、一番ドキドキハラハラで、珍しくストレスを抱えています(笑)。ただ、こういうものを着せたいというコンセプトはあって、『F/T14』のテーマは「境界線上で、あそぶ」。森川さんのダンスを見ていて一番おもしろいのは、身体のパーツがどんどんバラバラになっていく感覚があること。制御されていた部分が制御できなくなって、身体の境界が溶解していく、消えていく感覚というのがあった。それを衣裳でやりたかった。

稽古風景

―たしかに、森川さんのダンスを見ていると、それぞれの部位の筋肉の動きが印象的ですよね。

杉山:森川さんって、身体と脳のつながり方がおかしいような気がするっていうか……、身体がまるで殺してすぐのイカやタコのように、パーツだけ動いているように見えるんですよ(笑)。身体の感覚としか言い表せないような漠然とした不安や、頭で理解できないことが起こったときに体が震えるといったことは誰でもあると思いますが、森川さんの身体を見ていると、その感覚が思い出されます。

―「殺してすぐのイカやタコ」っていうのは、腑に落ちるたとえですね(笑)。たしかに衣裳も、カッコイイなというのと同時に、見たことのないものを見てしまったような、何とも言えない感覚があったんです。

杉山:劇団・地点の衣裳を作っている堂本教子さんが好きで、じつはちょっと意識しているんです。だいぶ前に地点で、アメリカの劇作家アーサー・ミラーの『るつぼ』を上演されたとき、200年ぐらい前のアメリカであった魔女裁判の話なので、本来ならその時代風の布地で衣裳を作るんですが、ジーパンの生地を使っていたんですよ。そうすると、見ているシルエットは古いんだけど、素材はジーパンなので、頭が混乱する。まさに境界が融合していて、そういうのをやってみたいと思ったんです。一見タキシードなんだけど、伸びる変な素材とか、ボヨボヨしてるとか、シルエットもちょっと変にしたいなとか。

―なるほど。すごく納得です。

杉山:まあ、でも森川さんの場合、基本は裸が見たい(笑)。森川さんの魅力はあの背中の筋肉だと思っていて、それをクローズアップしたいですね。今回の創作にあたっては、森川さんの変わった身体を表現するための美術装置を提案したいと考えているんです。

Page 1
次へ

イベント情報

『動物紳士』

2014年11月15日(土)~11月24日(月・祝)全9公演
会場:東京都 池袋 シアターグリーン
振付・出演:森川弘和
美術・衣裳デザイン:杉山至
料金:前売3,000円 当日3,500円

イベント情報

『フェスティバル/トーキョー14』

2014年11月1日(土)~11月30日(日)
会場:
東京都 池袋 東京芸術劇場
東京都 東池袋 あうるすぽっと
東京都 東池袋 シアターグリーン
東京都 西巣鴨 にしすがも創造舎
東京都 吾妻橋 アサヒ・アートスクエア
ほか

『春の祭典』
2014年11月12日(水)~11月16日(日)
振付・演出:白神ももこ
美術:毛利悠子
音楽:宮内康乃

『透明な隣人 ~8 –エイトによせて~』
2014年11月13日(木)~11月16日(日)
作・演出:西尾佳織

ミクニヤナイハラプロジェクト
『桜の園』

2014年11月13日(木)~11月17日(月)
作・演出:矢内原美邦

『彼は言った/彼女は言った』
2014年11月19日(水)~11月24日(月・祝)
構成・出演:モ・サ

薪伝実験劇団
『ゴースト 2.0 ~イプセン「幽霊」より』

2014年11月22日(土)~11月24日(月・祝)
演出:ワン・チョン

『さいたまゴールド・シアター 鴉(からす)よ、おれたちは弾丸(たま)をこめる』
2014年11月23日(日)~11月26日(水)
作:清水邦夫
演出:蜷川幸雄

渡辺源四郎商店
『さらば!原子力ロボむつ ~愛・戦士編~』

2014年11月28日(金)~11月30日(日)
作・演出:畑澤聖悟

『もしイタ~もし高校野球の女子マネージャーが青森の「イタコ」を呼んだら』
2014年11月28日(金)~11月29日(土)
作・演出:畑澤聖悟

『アジアシリーズ vol.1 韓国特集 多元(ダウォン)芸術』
『From the Sea』

2014年11月3日(月・祝)~11月7日(金)
コンセプト・演出:ソ・ヒョンソク

『1分の中の10年』
2014年11月13日(木)~11月16日(日)
構成・振付:イム・ジエ

クリエイティブ・ヴァキ
『いくつかの方式の会話』

2014年11月14日(金)~11月16日(日)
構成・演出:イ・キョンソン

映像特集
『痛いところを突くークリストフ・シュリンゲンジーフの社会的総合芸術』
オープニングレクチャー:『クリストフ・シュリンゲンジーフの芸術と非芸術』

上映作品:
『時のひび割れ』
『友よ!友よ!友よ!』
『失敗をチャンスに』
『外国人よ、出て行け!』

シンポジウム
『アートにおける多様性をめぐって』

テーマ1:「韓国多元(ダウォン)芸術、その現状と可能性」
テーマ2:「日本におけるドラマトゥルクの10年」
テーマ3:「中国・北京――同時代の小劇場演劇シーン」
テーマ4:「都市が育むアート」

3夜連続トーク『舞台芸術のアートマネジメントを考える』
第1夜:「舞台芸術のアートマネジメントを現場から振り返る」
第2夜:「これからのアートマネジメントと、その担い手とは」
第3夜:「アートマネージャーのセカンドキャリア」

プロフィール

森川弘和(もりかわ ひろかず)

ダンサー。22歳で渡仏しマイムとサーカスを学ぶ。帰国後、京都を拠点に活動するMonochrome Circusのダンサーとして5年間活躍。2007年よりフリーランスとなる。自身の作品を発表するほか、カンパニーデラシネラ、Dance Theatre LUDENS、Ted Stoffer、じゅんじゅんSCIENCE、ダムタイプらさまざまなプロジェクトに参加。好奇心と探究心をもってからだに向き合い、その可能性を楽しみ、突き詰める。瞬発力と抜群のボディバランスを生かした動き、ドライかつ動物的な感覚をもつパフォーマンスは、高い評価を得ている。

プロフィール

杉山至(すぎやま いたる)

舞台美術家、二級建築士。国際基督教大学卒。在学中より劇団「青年団」に参加。2001年度文化庁芸術家在外研修員としてイタリア・ナポリの舞台美術工房にて研修。2006年、地点『るつぼ』にてカイロ国際実験演劇祭ベスト・セノグラフィー賞受賞。近年は青年団、双数姉妹、ポかリン記憶舎、地点、サンプル、山田せつ子、Dance Theatre LUDENSなどの舞台美術を担当。また舞台美術ワークショップを多数実施している。2014年『第21回読売演劇大賞最優秀スタッフ賞』を受賞。

SPECIAL PR 特集

もっと見る

BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

もっと見る

PICKUP VIDEO 動画これだけは

Mime“Driftin”MV

5人組バンドMimeによる“Driftin”MVが公開。シャムキャッツやJJJのMVも手掛けた芳賀陽平がディレクションを務めており、逆光やボケをあえて取り入れる演奏シーンが新鮮。突き動かされるようなサウンドと伸びやかな声の相性が抜群で、閉じ込めた気持ちと解放感のせめぎ合いを感じる歌詞もエロい。(井戸沼)

  1. 星野源『おげんさんといっしょ』に三浦大知が出演 新ファミリーの一員に 1

    星野源『おげんさんといっしょ』に三浦大知が出演 新ファミリーの一員に

  2. KICK THE CAN CREW“住所 feat. 岡村靖幸”PV公開 監督は関和亮 2

    KICK THE CAN CREW“住所 feat. 岡村靖幸”PV公開 監督は関和亮

  3. 『オーシャンズ8』のアジア系キャスト・オークワフィナ。NY生まれの表現者 3

    『オーシャンズ8』のアジア系キャスト・オークワフィナ。NY生まれの表現者

  4. 菅田将暉×趣里 本谷有希子原作の映画『生きてるだけで、愛。』場面写真 4

    菅田将暉×趣里 本谷有希子原作の映画『生きてるだけで、愛。』場面写真

  5. 『サマソニ』大阪の新ステージに崎山蒼志、踊Foot Worksら18組追加 5

    『サマソニ』大阪の新ステージに崎山蒼志、踊Foot Worksら18組追加

  6. レキシの新AL『ムキシ』9月発売 三浦大知、上原ひろみ、手嶌葵が参加 6

    レキシの新AL『ムキシ』9月発売 三浦大知、上原ひろみ、手嶌葵が参加

  7. けやき出演の舞台『マギレコ』、いろは柿崎芽実&まどか丹生明里の写真公開 7

    けやき出演の舞台『マギレコ』、いろは柿崎芽実&まどか丹生明里の写真公開

  8. 中田ヤスタカ×Perfumeが雑誌で初対談 『サンレコ』表紙&16P掲載 8

    中田ヤスタカ×Perfumeが雑誌で初対談 『サンレコ』表紙&16P掲載

  9. フジロック初のYouTubeライブ配信の手ごたえは? 3日間で計1200万回超再生 9

    フジロック初のYouTubeライブ配信の手ごたえは? 3日間で計1200万回超再生

  10. 『少年ジャンプ』50周年公式YouTubeで『スラダン』など歴代アニメ無料公開 10

    『少年ジャンプ』50周年公式YouTubeで『スラダン』など歴代アニメ無料公開