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東京に対する、緩やかでシリアスな危機感 羊屋白玉インタビュー

東京に対する、緩やかでシリアスな危機感 羊屋白玉インタビュー

インタビュー・テキスト
前田愛実
撮影:佐々木鋼平
2014/11/04

ネイティブアメリカンに、「ポトラッチ」っていう風習があるんです。部族間で贈与と返礼を繰り返す。これって一見無駄なんですが、結局、誰も死なないの。「死人を出さない経済戦争」だなって。

―今日お話を伺って、最終的な「プロジェクト=作品」としての出力形態がますます楽しみになりました。

羊屋:どうしたらいいと思いますか?(笑) みんなに相談すると、あれはどう? これはどう? って演劇っぽいことばかり言われるんですよ。結論を決めないで、かたちのないところから始めたばかりですけど、こういった機会でなければやれないことなので本当に嬉しいです。大変だけど。

―「江古田スープ」ってネーミングが美味しそうなんで、いっそ最終的に商品化するとか?

羊屋:小さな経済はやってみたいと思っています。何か商品を取引することを実際にやってみなければ、経済ってモノの本質をわかることができないと思う。私はフリーで仕事しているし、貨幣経済は苦手だし……(笑)、でも経済自体は必要なものだと思うんです。ジョルジュ・バタイユ(20世紀初頭のフランスの思想家)は、「宗教改革を境に、蕩尽(浪費)中心の経済から、生産中心の経済へ変化した」というようなことを書いていて。蕩尽経済の例としては、ネイティブアメリカンの「ポトラッチ」という風習があります。自分の村のほうが相手より上だと誇示するために、お互いに贈り物をし合い、その贈り物をこれ見よがしに破壊したりもする。たとえば、隣の村の前に牛4頭くらい置いてくる。受け取った村はお返しに牛5頭を置きにくる(笑)。これを繰り返していって、どちらかの酋長さんが、「こんなに渡したら村が破綻してしまう」って降参したら終わるんです。だから誰も死なないの。吸収されたり合併されたりはするけど。これって「死人を出さない経済戦争」だなって思いません? いいですよね。

羊屋白玉

―なるほど(笑)、プロジェクトを通して、新しい経済のかたちが見えてくるかもしれないですね。今後のご予定は?

羊屋:対談イベントの第2弾をやりたいと思っています。プロジェクトのメンバーで毎月集まって街歩きをしているのですが、この間、江古田市場をテーマに演劇を上演していた日大芸術学部出身の「演劇活性化団体uni」の方々に出会いまして、一緒に町歩きをしました。この街はアート活動をしている人が結構いて、江古田ユニバースという「まちづくり団体」も有名。歩いているとそういう人たちと出会ったりして、Twitterでフォローし合いながら、緩やかに繋がっています。江古田って、街から出なくても生活できる快適な場所なんですよ。家電量販店とかはないけど、町の電気屋があって商店がある。ラビリンスだし浮島みたい。そういう意味では青ヶ島と一緒ですね。

―どちらもコンパクトな場所だけに、いろんな問題がくっきりと浮かびあがりやすいような気がします。

羊屋:再開発が進んでいる江古田の市場も、これから少しずつお店が立ち退いていくと聞いています。じゃあ、あそこは何に生まれ変わるのかな、今の状態では何が十分じゃなかったのかな、と思う。その問題の根本にあるのは何なのかを知りたかったから、青ヶ島に行ったのもありました。青ヶ島には東京というより、むしろ日本の問題が凝縮されている。局部的な問題じゃない。すべてが切り離せない。青ヶ島も東京も江古田も日本も、どれもこれもがパラレルワールドだなと思います。

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東京スープとブランケット紀行
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東京文化発信プロジェクトとは
東京文化発信プロジェクトは、「世界的な文化創造都市・東京」の実現に向けて、東京都と東京都歴史文化財団が、芸術文化団体やアートNPO等と協力して実施している事業です。多くの人々が文化に主体的に関わる環境を整えるとともに、フェスティバルをはじめ多彩なプログラムを通じて、新たな東京文化を創造し、世界に発信していきます。
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プロフィール

羊屋白玉(ひつじや しろたま)

1967年北海道生まれ。「指輪ホテル」芸術監督。劇作家、演出家、俳優。主な作品は、2001年同時多発テロの最中、ニューヨークと東京をブロードバンドで繋ぎ同時上演した『Long Distance Love』。2006年『Candies』北米ヨーロッパツアー。2012年『洪水』ブラジル4都市ツアー。2013年『瀬戸内国際芸術祭』では海で、2014年『中房総国際芸術祭』では鐵道で上演した『あんなに愛しあったのに』。2006年『ニューズウイーク日本誌』において「世界が認めた日本人女性100人」の1人に選ばれ表紙を飾った。現在、カフカの『断食芸人』国内ツアー中。2015年夏、『越後妻有トリエンナーレ』に新作を発表。「アジア女性舞台芸術会議」設立準備中。

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