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ボーカロイドとフォークを繋ぐボカロP、ピノキオピーの正体とは

ボーカロイドとフォークを繋ぐボカロP、ピノキオピーの正体とは

インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:豊島望

「光があったら影がある」と思っているので、光のみの表現っていうのはあまり自分の中に入ってこないし、そういう曲は作れないですね。

―最初におっしゃっていた、曖昧であることや、「何でこういうことになるんだろう?」っていうテーマ性は、ピノさんのどんなバックグラウンドから生まれたものなのでしょう?

ピノキオピー:漫画で言うと『月刊漫画ガロ』とかが好きで、特に影響が大きかったのは、藤子・F・不二雄の『異色短編集』ですね。親がそういうのが好きで、小学校の頃から読んでました。最初は「暗い!」って思ったんですけど(笑)、世の中の構造みたいなことに興味を持ったのは、その影響が大きいと思います。あとは、少年漫画も好きで、冨樫先生(義博 / 代表作『幽☆遊☆白書』『HUNTER×HUNTER』)が好きですね。すごくバランスが取れてるというか、本当は少年誌的じゃないものも大好きな方だと思うんですけど、バトルものの中にそういう要素を上手く落とし込まれているのがすごいなと。

ピノキオピー

―音楽で言うとどうですか?

ピノキオピー:「ナゴムレコード」(ケラリーノ・サンドロヴィッチ主宰のインディーズレーベル)が好きで、筋肉少女帯とかが好きでした。心の中のことを深く考えて、「ホントはこうなんじゃない?」って言ってるようなものが面白いなって思ったんです。あとはお笑いも好きなんですけど、自分がやってることを美徳化しないようなスタンスの人が好きですね。芸人なのに「芸人は素晴らしい」って、心の中で思ってるのはいいと思うんですけど、それをやたらと口にしちゃう人って「芸人じゃねえ」って思ったりして(笑)。意識の高さを表に出さない人の方が好きですね。

―そういったさまざまな表現に共通してたのが、ある種の「曖昧さ」だった?

ピノキオピー:「光があったら影がある」と思っているので、光のみの表現っていうのはあまり自分の心に入ってこないし、そういう曲は作れないですね。断定できないことを、いろんな側面から、いろんな視点で書くっていうのが共通点なのかなと思います。自分は中高生のときからそんなことばっかり考えていたので、その頃の自分に向けて作ってるようなところもあるんですけど、でも中高生の自分が100%喜ぶのも癪に障るから(笑)、もうちょっと広く伝わるように、当時の僕の心境はわからないであろう人にも、違うところで楽しんでもらえるようにしたいとは考えてます。

ピノキオピー

―『ガロ』とか「ナゴムレコード」っていうのは、かつてのサブカルチャーだったわけじゃないですか? それが今ニコ動をよく見てるような若い子たちに受けているっていうのは、さっきの冨樫さんの話じゃないですけど、ピノさんの曲の中への落とし込み方が上手いからこそだと思うんですよね。

ピノキオピー:歌詞は結構わかりやすく書いてるつもりです。ただ、結論をつけてるわけじゃないので、見る人によってはぼんやりして見えちゃうのは半ば仕方ないというか、全部が伝わってもそれはそれで気持ち悪いですしね。構造として、敵にも、その人の中の正義があるっていうのがよくありますよね? そこで「この人が嫌い」って言っちゃうと、「嫌い」の方向が決まっちゃうから、「相手のことを嫌っている」っていう大枠の部分だけを書いて、「どっちのことを言ってるの?」って言われても、「両方のことを言ってます」みたいな書き方が多いですね。

―結論を提示するのではなくて、その構造そのものを提示するというか。

ピノキオピー:そういうのって、子ども同士の喧嘩もそうだし、国と国の争いでもそうで、大きいものも小さいものも変わらないから、それを別のことで表現してるって感じですかね。

やってるうちに思ったのは、「歌ってる人間がいないって、すごく面白いな」ってことです。歌ってる人が実在しないから書ける歌詞ってあるんですよ。

―では、アルバムについて訊かせてください。タイトルが『しぼう』で、ジャケットには「志望」や「脂肪」など、いろんな「しぼう」が並んでいますが、やっぱり根幹にあるのは「死亡」だと思うんですね。言ってみれば、人生と向き合った作品だと思いました。

ピノキオピー『しぼう』通常盤ジャケット
ピノキオピー『しぼう』通常盤ジャケット

ピノキオピー:ここ最近作ってた曲が、大体「人生」がテーマになってたんですよね。アルバムを作る上で考えてたのは、「フォーク的な感覚の歌詞だけど、音楽ジャンル的にはフォークじゃないもの」を作ろうってことで、歌詞には「死生観」が表れているので、『しぼう』っていうタイトルにしたんです。歌詞って、そのジャンルっぽい歌詞になりがちだと思うんですけど、そうじゃなくてもいいのかなって思ったんですよね。僕自身、音楽的にはピコピコした電子音ものも好きで、そこにフォーク的な歌詞を乗せてる人って他にあんまりいないと思ったので、じゃあ自分がやろうと。

―言葉数が多くてメロディーがちゃんと立ってるのは、フォーク譲りなんですね。フォークはいつ頃からお好きだったんですか?

ピノキオピー:高校生のときくらいから聴いてますね。初期の真心ブラザーズとか、友部正人さん、友川カズキさんとか、「ナゴム」も精神性はフォークだなって思いますし。筋肉少女帯のオーケン(大槻ケンヂ)さんも、ジャンルは違うけど、歌詞は完全にそっちだと思うんです。オーケンさんは、実際にフォークとか、あと映画から影響を受けてるんだと思うんですけど、僕はオーケンさんからの影響を受け取ってますね。

―なおかつ、それをボーカロイドでやることの意味というのは、どのようにお考えですか?

ピノキオピー:最初から考えていたわけではないんですけど、やってるうちに思ったのは、「歌ってる人間がいないって、すごく面白いな」ってことです。歌ってる人が実在しないから書ける歌詞ってあるんですよ。今回のアルバムに入ってる曲だと、“絵の上手かった友達”とかは、歌ってる人が不在だから書けるというか。振った側の視点で書かれたラブソングってあんまりないですよね。それって、要はその人が歌っちゃうと、ちょっと感じ悪いじゃないですか?(笑)

―確かに(笑)。

ピノキオピー:でも、ボーカロイドだと、そういう感じもしないと思うんです。そこは漫画と同じというか、漫画もキャラクターを動かして、しゃべらせるわけじゃないですか? それと同じことができるというか、「架空のキャラが歌ってる歌詞」っていう視点で書けるのは非常に面白いなと思って、今、物語音楽が増えたっていうのも、そういうことが関係してると思うんです。「こういう視点とこういう視点がある」っていう、俯瞰した状態を描くのに、ボカロはぴったりだったっていう。あとは単純に、人間じゃないやつが人間臭いことを歌うのって、面白いなと思ったんですよね(笑)。

―個人的には“すろぉもぉしょん”は名曲だと思いました。時間は誰にでも平等に流れていくということを、ユーモアとちょっとの毒っ気も交えた、いろんな視点から描いていて、<大丈夫だよ たぶん>っていう温度感もちょうどいいなって。


ピノキオピー:今年の頭にインフルエンザにかかって、「これ死ぬな」って思ったんですけど、治って「意外と大丈夫だな」と思って(笑)。そこからできた曲です(笑)。

―めっちゃ個人的な経験が元になってるんですね(笑)。ただ、“すろぉもぉしょん”にしてもそうだし、“よいこのくすり”とか“こどものしくみ”とか、ニコ動の若いリスナーを想定して書かれてる部分も大きいのかなと思いました。昔はギャグ漫画を描いていたというお話もありましたし。

ピノキオピー:どうですかねえ……たぶん僕が成熟し切ってないっていうのが大きくて、くだらないことの方が好きなんで、大人な歌詞が書けないだけかもしれないです(笑)。まあ、子どもの頃の発想って、やっぱり面白いと思うことが多いので、そういうことをテーマにすると、書いてて楽しいんですよね。あとはやっぱり藤子・F・不二雄が好きなのは、幼そうなキャラクターなのに、やってることはシリアスっていう、そのギャップに惹かれるんだと思います。その上で、ニコ動を見てる若い人にも伝わったらいいなって。

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リリース情報

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ピノキオピー
『しぼう』初回限定盤(CD+DVD)

2014年12月3日(水)発売
価格:3,500円(税込)
UMA-9047/8

[CD]
1. しぼう
2. はじめまして地球人さん
3. よいこのくすり
4. 絵の上手かった友達
5. すろぉもぉしょん
6. Last Continue
7. たりないかぼちゃ
8. ヒーローが来ない
9. ニナ
10. ラブ イズ オノマトペ
11. 100年前の僕、100年後の君
12. こどものしくみ
13. こあ
[DVD]
・“すろぉもぉしょん”PV
・“絵の上手かった友達”PV
・“ニナ”PV
・“たりないかぼちゃ”PV
・“スケベニンゲン”PV
・“ゴージャスビッグ対談”PV
・オーディオコメンタリー(ピノキオピー、ARuFa、鬱Pほか)
※「どうしてちゃん 視暴めがね」「どうしてちゃん いきなてぬぐい」付属

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ピノキオピー
『しぼう』通常盤(CD)

2014年12月3日(水)発売
価格:2,000円(税込)
UMA-1047

1.しぼう
2. はじめまして地球人さん
3. よいこのくすり
4. 絵の上手かった友達
5. すろぉもぉしょん
6. Last Continue
7. たりないかぼちゃ
8. ヒーローが来ない
9. ニナ
10. ラブ イズ オノマトペ
11. 100年前の僕、100年後の君
12. こどものしくみ
13. こあ

イベント情報

U/M/A/A×2.5D『ピノキオピー&sasakure.UK Wリリースパーティー』

2014年12月16日(火)OPEN 18:30 / START 19:00
会場:東京都 渋谷 2.5D(渋谷 PARCO PART1 6F)
出演:
ピノキオピー
sasakure.UK
鬱P
料金:前売1,500円 当日1,800円(共にドリンク別)

プロフィール

ピノキオピー

2009年より動画共有サイトにボーカロイドを用いた楽曲の発表をはじめ、ピノキオピーとして活動開始。以降も精力的にオリジナル曲をコンスタントに発表しつつ、コラボレーションや自身で行う生放送など積極的に活動している。また、作曲活動のみならず 動画内のイラストや漫画の執筆、様々な商品プロデュースワーク等のクリエイティブワークも行う。2013年には携帯電話「Xperia feat. HATSUNE MIKU」連動コンセプトCD『ミクスペリエンス e.p.』に楽曲提供を行い、2014年には、ぺんてる『i+ × 初音ミク』コラボレーションにおいて、テーマソングを担当するなど活動の場を広げている。作風は、お祭りどんちゃん盆踊り型ダンスミュージックから、しっぽりノスタルジックフォークソング、屈折したセンセーショナル青色ロックまでと、幅広いサウンドを聴かせるとともに、作詞に於いては、シニカルに物事を捉えつつ、独特な言葉選びと思わずニヤリとさせられる仕掛けを盛り込み、リスナーを夢の国(ピノキオワールド)へと迷い込ませる。