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ついに一人になった志磨遼平の嘘を、気鋭作家・松居大悟が暴く

ついに一人になった志磨遼平の嘘を、気鋭作家・松居大悟が暴く

インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:永峰拓也

不思議なもので、「僕はお花畑に行きます、サヨナラ現世」みたいな宣言を僕はこのアルバムでしてるんですけど、それが逆に外部へのSOSとなって、いろんな人が手を差し伸べてくれて。(志磨)

―松居さんはキャリアを重ねる中で、いかにして「自分」と向き合ってきたのでしょうか?

松居:受け入れて、あがいて、っていうのをずっと繰り返していますけど、今はわりと受け入れられているというか、ものを作ることに対してはあがくけど、自分の人生に関してはもうそんなにあがいていないかもしれないです。人と出会って、そこから生まれるものがいいなって思えるようになったというか。

―松居さんが表現手段を規定していないのは、つまりは「出会いありき」ということなのでしょうか?

松居:演劇、映画、MV……といろいろ作ってるから、「何がやりたいの?」って言われることもあるんですけど、表現や芸術、人と一緒にものを作ることがしたい。「好きな人と好きなことをやろう」と思うようになってからは、焦らなくなったし、好きな人ともより出会えるようになったんですよ。まさに今回もそうですし。

左から:松居大悟、志磨遼平

―志磨さんも今、そうなりつつあるんでしょうか? “アニメみたいな”のMVでは中村明日美子(青春ものやボーイズラブの分野で主に活躍する漫画家)さんともコラボレーションをされているように、志磨さんが内包している音楽以外の部分もこれまで以上に解放して、いろんな人ともの作りをしていくっていう。

志磨:大悟くんの話を聞きながらすごくこんがらがってて……。たぶん、僕は今、星の周期で言うと大悟くんとは逆のところにいるんだと思うんですよね。今回のいろんな取材って、僕にとってはほぼ全部セラピーで(笑)、僕は誰かと作りたかったのか、一人で作りたかったのか、今はまだよくわからないんです。でもきっと誰かとやってることにしたかったんですよ。大悟くんが脚本を書くときも、自分が言わせてるのか、メンバーとの関係によって自分がその台詞を書かされてるのか、どっちもあるでしょ?

松居:ああ、たしかにそうですね。

志磨:僕も今までバンドを2つ組んで、僕がメンバーを振り回した気もするし、あの子たちに振り回す男を演じさせてもらった気もする。で、たぶん今回は、「もういいや、好きな人とやろう」っていう大悟くんとは逆で、「もういいや、一人でやろう」っていう、あきらめをしたんだと思うんです。「好きな人との関係をこじらせるのをやめよう」って。さっき“ゴッホ”のMVの話が出ましたけど、あれは僕一人でやってるから、今回のMVと比べて、相当お花畑な感じで、ヤバいんですよ。どメルヘン(笑)。ホントの僕は、ああいう男なんです。

松居:中身が女の子ですよね(笑)。

志磨:そう、ハートが女の子なんです(笑)。だから、僕が一人になったら、ホントに現実が見えなくなって、マジでああいう世界に行く危険がある。僕はそれで幸せなんですけど、それはたぶん危ない。だから、僕はあきらめて一人でやってるはずなのに、バンドをやってるつもりで作ってるんですよね。だって、さっき「今までのアルバムと変わってないと思う」って言いましたけど、こんなに状況が変わってるのに、その発言自体がヤバいじゃないですか?

志磨遼平

―実際、今回の作品は基本的に演奏も志磨さんお一人でやられてるんですもんね。

志磨:そう、だからいろいろ自覚できてないヤバい状態なのを、今いろんな人につなぎとめてほしいんだと思うんです。僕はこのアルバムで「僕はお花畑に行きます、サヨナラ現世」という宣言をしてるんですけど、不思議なもので、それが逆に外部へのSOSとなっていろんな人が手を差し伸べてくれてる。だから、バンドでやってるときよりも、外に向かってるように見えるんでしょうね。

松居:僕は3年間演劇を休止して、その間に映像の仕事をして、劇団を再開することになったときに、みんなが僕の言うことを聞くスタンスになってて、「これはまずいな」と思ったんです。自分が一番やっちゃいけないと思っている、自分のやりたいことを押し付けてしまう危険があった。だから、最初の数週間はひたすら何も考えず、書かず、作らず、ゼロの状態にして、「俺は何もしない」っていうスタンスで過ごしたんです。そうしたら、「こいつマジで何もしねえな」って空気になって周りが能動的に動き出したので、そのまま一員としてやろうと思って。

―今の話はすごく象徴的ですね。志磨さんが「1」なのに対して、松居さんが「0」だっていう。

志磨:その「自分を消す」っていうのが、僕のやりたかったことなんですよ。でも僕はそこで勇気が出なかったんでしょうね。「マジでこいつ何もしねえな」って思われたときに、がっかりされるんじゃないかって思っちゃったのかな。

松居:でも、それって志磨さんの中に作りたいものがあったからだと思うんですよ。僕はその作るエネルギーをゴジゲンじゃなくてドレスコーズのほうに注ぎ込めたから、わりとフラットな状態を保てた。MVが編集段階に入った頃に、「そろそろ(ゴジゲンの)台本書かなきゃまずいかな?」って思ったけど、それをギリギリ堪えたらみんなが動き出してくれたんです。だから、志磨さんがバンド以外で絵を描いたりしてたら、もしかしたら大丈夫なのかもしれない。

志磨:なるほどね……大悟くんがまたよからぬことを。別なこと始めたろかなって思った(笑)。

左から:松居大悟、志磨遼平

―ドレスコーズがどうなっていくか、この先もまだ予断を許さなそうですね。

志磨:ね。僕らの人生、どうなっていくんでしょう?

松居:だから、志磨さんには結局ワクワクさせられるんですよね。8歩先って言ったように、アルバムも毎回違うテイストだし、一人になったのも「マジかよ?」って思ったけど、「やっぱり、この人読めないな」って。だからこそ追いかけたくなるし、目が離せないし、僕にとっては常に憧れの人なんです。

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作品情報

『ワンダフルワールドエンド』

2015年1月17日(土)から新宿武蔵野館ほかで公開
監督・脚本:松居大悟
主題歌:大森靖子“呪いは水色”
音楽:大森靖子、直枝政広
出演:
橋本愛
蒼波純
稲葉友
利重剛
町田マリー
大森靖子
配給:SPOTTED PRODUCTIONS

『私たちのハァハァ』

2015年夏公開予定
監督:松居大悟
出演:
井上苑子
大関れいか
真山朔
三浦透子
池松壮亮
中村映里子
クリープハイプ
製作:SPACE SHOWER NETWORKS INC.
配給:SPOTTED PRODUCTIONS

リリース情報

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ドレスコーズ
『1』初回限定盤(CD+DVD)

2014年12月10日(水)発売
価格:3,780円(税込)
KICS-93146

[CD]
1. 復活の日
2. スーパー、スーパーサッド
3. Lily
4. この悪魔め
5. ルソー論
6. アニメみたいな
7. みずいろ
8. 才能なんかいらない
9. もうがまんはやだ
10. 妄想でバンドをやる(Band in my own head)
11. あん・はっぴいえんど
12. Reprise
13. 愛に気をつけてね
[DVD]
・“スーパー、スーパーサッド”PV
・ 『「ワン・マイナス・ワン」DOCUMENTARY VIDEO』
コメントゲスト:薔薇園アヴ(女王蜂)、大山卓也(「音楽ナタリー」編集長)、川上洋平([Alexandros])、THE BAWDIES、青木 優(音楽ライター)、越川和磨(THE STARBEMS ex.毛皮のマリーズ)、オカモトレイジ(OKAMOTO'S)、松居大悟(映画監督)、奥野望(作家)、山田玲司(漫画家)、鈴木拓郎(所属事務所社長)

プロフィール

ドレスコーズ

2012年1月1日結成。2012年7月に1stシングル『Trash』をリリースし、タイトル曲は映画『苦役列車』主題歌となり話題を集めた。12月に1stフルアルバム『the dresscodes』をリリース。2013年8月、フジテレビ系アニメ『トリコ』エンディング主題歌となる2ndシングル『トートロジー』リリース。11月、2ndフルアルバム『バンド・デシネ』をリリース。同日をもって、志磨遼平のソロプロジェクトとなることが発表され、12月10日には現体制で初となるニューアルバム『1(読み方:ワン)』がリリースされる。

松居大悟(まつい だいご)

1985年生まれ。脚本家、演出家、映画監督、俳優。慶應義塾大学在学中に劇団ゴジゲンを旗揚げ、全作品の作・演出・出演を手掛ける。2009年にはNHK『ふたつのスピカ』で同局最年少のドラマ脚本家デビュー。2012年映画の初監督作『アフロ田中』が公開。その他、監督作品に映画『スイートプールサイド』(2014年) 『自分の事ばかりで情けなくなるよ』『男子高校生の日常』(2013年)。 2015年1月に橋本愛&蒼波純主演の『ワンダフルワールドエンド』、夏にクリープハイプと組んだ映画『私たちのハァハァ』を公開予定。

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