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ついに一人になった志磨遼平の嘘を、気鋭作家・松居大悟が暴く

ついに一人になった志磨遼平の嘘を、気鋭作家・松居大悟が暴く

インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:永峰拓也

やっぱり、違う感性の人同士がぶつかり合って生まれる作品のエネルギーって素晴らしいし、それがMVの存在意義なんじゃないかと思って。(松居)

―前作『Hippies E.P.』の取材のときに、志磨さんは「自分を否定し続けて、最果てまで来た」ということをおっしゃっていましたよね? 僕は今回の作品を聴いて、初めて自分を肯定したというか、少なくとも自分を受け入れ始めたような、そういう印象を受けたのですが、志磨さんご自身としてはどうお考えですか?

志磨:何かが変わり始めてるのかもしれないけど、自覚はまだあんまりないんです。むしろ周りから言われることが多くて、この前、地元を巡る取材を受けたんですけど、帰って来てから「顔つきが違う」って言われて。“スーパー、スーパーサッド”をレコーディングしたときも、いつものエンジニアさんに、いつものマイクで録ってもらったんですけど、「マイクがどうも合ってない気がする。歌い方変えた?」って言われたりしたんです。自分としては、これまでと同じように作ったつもりだから、「へー、違うんだ」っていう、アホみたいな感想しかまだないんですけど……。

―そうなんですね。結構意識の変化があったのかと思いました。

志磨:あ、そういえば今回大悟くんに「一人になる」って話をして、最初に曲を聴かせたときに、「『やっぱり他人とものを作るのはいいな』って、俺が志磨さんに思わせてあげます」って言ってくれて、「なんていい男に頼んだんだろう」と思って、すごく嬉しかった。

松居:ちょうどそのときの自分がそういうメンタルだったんですよね。志磨さんが“ゴッホ”のMVを自分で撮ったのを見て、いいMVだと思いつつも、僕だったらどう撮るかとか考えていました。やっぱり、違う感性の人同士がぶつかり合って生まれる作品のエネルギーって素晴らしいし、それがMVの存在意義なんじゃないかと思ったりしていた時期だったんです。だから、僕が今まで志磨さんに救われてきた恩を返さなきゃと思って。

―それって、3年間休止していたゴジゲンの活動を再開したことも関係ありましたか?

松居:そうですね。活動を休止したときは、僕が一人で頭でっかちになって、みんながついてくるだけになっちゃったのが辛かったんです。僕の頭の中にあるものを強要して作るのって、貧しいなと思っちゃって。そうじゃなくて、自然と生まれたものを、整理して作品にするっていうのが美しいなって。

志磨:今回のゴジゲンの公演を観て、すごく泣いたんですよ。最後のほうで、畳み掛けるようにギャグを打ち込まれるんですけど、そこでサッチモ(ルイ・アームストロング)の“ワンダフルワールド”がかかる場面があって、爆笑しながら号泣するっていう複雑なことになりました。ギャグ自体はホントにくだらないんだけど……(笑)。

志磨遼平

松居:中2みたいな感じですもんね(笑)。

志磨:でも、本人たちにとっては大きな問題なのに、それを自らギャグにして騒いでる瞬間って、俯瞰して見ると「めちゃくちゃ美しいな、今」って、自分でわかるときがあるんですよ。例えば、中学生のときに廊下で友達と遊んでて、ふと「このシーンを、あとで青春だったって思うんやろうな」っていう、神目線から見ることがあって。舞台でサッチモが流れたときにもそういう感覚になったというか、これが生きるってことだなと思って、泣けたんです。僕らはいろんな人たちと出会うけど、それぞれの人生があって、一瞬交錯して、でもまた別れるかもしれなくてっていうのを、そのまま舞台の上でやっていて、あれが演劇と言えるのかはわからないけど、僕は十分演劇的だと思ったし、「十分すぎるほどドラマチックやん、僕ら」と思った。

松居:稽古の途中で今回のMVの撮影もやってたから、メンタルが地続きだったのかもしれません。ゴジゲンでも「演劇を作ろう」と思ってなかったし、“スーパー、スーパーサッド”も「MVを作ろう」じゃなくて、「志磨遼平の心意気をどう見るか」っていうドキュメンタリー的な気持ちで撮ってたんです。でも、編集してみて思ったのは、このMVには感情が全部入ってるなってこと。呆然としてたり、曲ができてテンションが上がったり、でも誰もいなくて切なかったり、開き直って明るくなったり、これはこの瞬間でしかないと思うとやっぱり切なかったり。ただ、ここまで切ないMVになるとは、自分でも思ってなかったですけど(笑)。

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作品情報

『ワンダフルワールドエンド』

2015年1月17日(土)から新宿武蔵野館ほかで公開
監督・脚本:松居大悟
主題歌:大森靖子“呪いは水色”
音楽:大森靖子、直枝政広
出演:
橋本愛
蒼波純
稲葉友
利重剛
町田マリー
大森靖子
配給:SPOTTED PRODUCTIONS

『私たちのハァハァ』

2015年夏公開予定
監督:松居大悟
出演:
井上苑子
大関れいか
真山朔
三浦透子
池松壮亮
中村映里子
クリープハイプ
製作:SPACE SHOWER NETWORKS INC.
配給:SPOTTED PRODUCTIONS

リリース情報

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ドレスコーズ
『1』初回限定盤(CD+DVD)

2014年12月10日(水)発売
価格:3,780円(税込)
KICS-93146

[CD]
1. 復活の日
2. スーパー、スーパーサッド
3. Lily
4. この悪魔め
5. ルソー論
6. アニメみたいな
7. みずいろ
8. 才能なんかいらない
9. もうがまんはやだ
10. 妄想でバンドをやる(Band in my own head)
11. あん・はっぴいえんど
12. Reprise
13. 愛に気をつけてね
[DVD]
・“スーパー、スーパーサッド”PV
・ 『「ワン・マイナス・ワン」DOCUMENTARY VIDEO』
コメントゲスト:薔薇園アヴ(女王蜂)、大山卓也(「音楽ナタリー」編集長)、川上洋平([Alexandros])、THE BAWDIES、青木 優(音楽ライター)、越川和磨(THE STARBEMS ex.毛皮のマリーズ)、オカモトレイジ(OKAMOTO'S)、松居大悟(映画監督)、奥野望(作家)、山田玲司(漫画家)、鈴木拓郎(所属事務所社長)

プロフィール

ドレスコーズ

2012年1月1日結成。2012年7月に1stシングル『Trash』をリリースし、タイトル曲は映画『苦役列車』主題歌となり話題を集めた。12月に1stフルアルバム『the dresscodes』をリリース。2013年8月、フジテレビ系アニメ『トリコ』エンディング主題歌となる2ndシングル『トートロジー』リリース。11月、2ndフルアルバム『バンド・デシネ』をリリース。同日をもって、志磨遼平のソロプロジェクトとなることが発表され、12月10日には現体制で初となるニューアルバム『1(読み方:ワン)』がリリースされる。

松居大悟(まつい だいご)

1985年生まれ。脚本家、演出家、映画監督、俳優。慶應義塾大学在学中に劇団ゴジゲンを旗揚げ、全作品の作・演出・出演を手掛ける。2009年にはNHK『ふたつのスピカ』で同局最年少のドラマ脚本家デビュー。2012年映画の初監督作『アフロ田中』が公開。その他、監督作品に映画『スイートプールサイド』(2014年) 『自分の事ばかりで情けなくなるよ』『男子高校生の日常』(2013年)。 2015年1月に橋本愛&蒼波純主演の『ワンダフルワールドエンド』、夏にクリープハイプと組んだ映画『私たちのハァハァ』を公開予定。

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