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『メディア芸術祭』受賞、あらためて観る『クレヨンしんちゃん』

『メディア芸術祭』受賞、あらためて観る『クレヨンしんちゃん』

インタビュー・テキスト
島貫泰介
撮影:永峰拓也
2015/01/19

1990年に青年マンガ誌で連載が開始した『クレヨンしんちゃん』は、1992年開始のテレビ放送、その翌年にスタートした映画シリーズを経て、今年で誕生25年目に突入する。子どもらしいバイタリティーと、おやじのようなセンスをあわせ持つ幼稚園児、野原しんのすけを主役に、彼の家族と周囲の人々を描く物語は、優しい笑いを基調にしつつ、人生の悲喜こもごも、厳しい世相を反映させたピリリと辛い多面性が魅力だ。

今回、2014年4月に公開された『映画クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん』を監督した高橋渉にインタビューする機会を得た。ある日突然ロボットになってしまった野原ひろし(しんのすけの父親)を軸にした同作は、公開直後から大きな話題を集め、今年の『第18回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門優秀賞』を受賞することになった。しんちゃんシリーズが同賞を受賞するのは、2002年の『嵐を呼ぶ アッパレ!戦国大合戦』以来12年ぶりのこと。長年『クレヨンしんちゃん』に制作・演出として関わってきた高橋に、『ロボとーちゃん』としんちゃんの人気の秘密を聞いた。

(メイン画像:『映画クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん』場面写真 © 臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2014)

※本記事は『映画クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん』のネタバレを含む内容となっております。あらかじめご了承下さい。

森本晃司さんが、キャラクターの魅力と作り手の熱量やポジティブさを選考理由に挙げてくださっていて、素直に嬉しかったです。

―『映画クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん』(2014年公開)が、『第18回文化庁メディア芸術祭アニメーション部門優秀賞』を受賞しました。高橋さんにとって、監督2作目にしての受賞となりましたが、いかがでしたか?

高橋:審査委員の森本晃司さんが、キャラクターの魅力と作り手の熱量やポジティブさを選考理由に挙げてくださっていて、素直に嬉しかったです。

―「魅力あるキャラクターが完成すれば、後は箱庭(作品としてのフォーマット)に放てばよい」というコメントでしたね。

高橋:まさにしんちゃん映画はその通りだと思います。たとえば西部劇の世界を舞台にして、そこにしんちゃんたちを放り込んでみる。するとキャラクターたちがわちゃわちゃと動き出す。物語ありきでしんちゃんの映画は作れないなという感じがします。そしてもちろん、臼井儀人先生の懐の広い原作ありき。あとはやはりプロデューサー陣ですね。僕の見えないところで、きっと頭を下げてくださったことも多かったと思います。

―そういう意味でもアニメーション映画というのは共同制作の結晶ですね。

高橋:その部分を積極的に評価してもらえたのは嬉しいです。

―今日はそんな『クレヨンしんちゃん』の監督として、高橋さんにいろいろお話をお伺いしたいと思っているのですが、遡っていくと、もともとは制作や演出として『クレヨンしんちゃん』シリーズに関わっていたそうですね。

高橋:卒業した日本映画学校が実写系の学校だったので、CMの編集マンになりたいと思っていたんですよ。でも就職口がなくて、講師の方の紹介でシンエイ動画に制作として入ることができたんです。当時『新世紀エヴァンゲリオン』は観てましたけど、アニメファンではなかったので、現場に入って「『ドラえもん』って、透明なフィルムに描いてるんだ!」って驚いたくらいで(笑)。

高橋渉
高橋渉

―シンエイ動画はアニメ『ドラえもん』の制作スタジオとしても有名です。制作は、作品全体の制作スケジュールを管理したり、あらゆるスタッフの調整をする、責任の多い仕事ですよね。

高橋:はい。7年くらい制作を続けて、プロデューサーの道に進むことも考えたのですが、喋りが得意ではないし、社交性もない(笑)。それで監督を視野に入れつつ、演出に転向しました。監督としては2010年の『劇場版3D あたしンち 情熱のちょ~超能力♪母大暴走!』が最初です。

―裏方からクリエイターに変わるわけですから、とても大きな転向ですよね。

高橋:でも監督は自分でがっつり絵を描くわけじゃないですからね。たくさんのスタッフにお願いして作ってもらうという意味では、制作と監督の仕事はそれほど離れたものではないと思います。それと個人的に大きかったのは、尊敬する原恵一監督と一緒に仕事できたことですね。

―2001年の『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』で知られるアニメーション監督ですね。同作は、『クレヨンしんちゃん』に限らず、日本アニメ史上の傑作として人気が高い作品ですが、高橋さんは同作の制作デスクを担当されています。

高橋:そうですね。いつか原監督のような仕事をしたいという憧れは正直ありました。

『映画クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん』 ©臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2014
『映画クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん』 ©臼井儀人/双葉社・シンエイ・テレビ朝日・ADK 2014

―そして今回の『ロボとーちゃん』で監督を任されたわけですが、しんちゃんらしいスピーディーな展開はさらにパワーアップして、また「父と子」という骨太なテーマもしっかりと見せてくれる、大人も子どもも楽しめるエンターテイメント映画でした。

高橋:ありがとうございます。しんちゃんは家族で観る映画なので、各世代ごとのツボに照準を向けた機関銃がたくさんある作品なんです。大人には受けるけど、子どもには全然わからない、子どもは笑うけど大人には通じないとか、そんな要素がたくさんあるんですよ。

―後ほどお聞きしたかったのですが、クライマックスの衝撃的な「五木ひろし」ネタとか、今の子どもには……。

高橋:伝わらないですよね(笑)。でも、それでいいんです。わからないなりに面白いはずで、テーマやストーリーも半分くらい伝わればいいと思うんです。全部を伝えようとすると、どうしてもクドくなってしまいますから。勢いの良い流れにお客さんが気持ち良く乗ってもらえることが大事かなと思っています。

―それが、しんちゃん映画の基本的なフォーマットでもある?

高橋:監督ごとの趣向にもよりますが、やっぱり「しんちゃんと言えばこうだよね!」っていう認識を、プロデューサーもシナリオライターも全員が共有しているんです。だから、どんどん色んなネタを盛っていっちゃうんですよ。

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イベント情報

『第18回 文化庁メディア芸術祭 受賞作品展』

2015年2月4日(水)~2月15日(日)
会場: 東京都 六本木 国立新美術館
東京都 六本木 シネマート六本木
東京都 六本木 スーパー・デラックス
料金:無料
主催:文化庁メディア芸術祭実行委員会
※開館時間、休館日は会場によって異なります。

イベント情報

『第18回 文化庁メディア芸術祭 受賞作品』

アート部門
優秀賞
五島一浩『これは映画ではないらしい』
坂本龍一、真鍋大度『センシング・ストリームズ―不可視、不可聴』
Ruben PATER『Drone Survival Guide』
Cod.Act(Michel DÉCOSTERD / André DÉCOSTERD)『Nyloïd』
福島諭『《patrinia yellow》for Clarinet and Computer』
新人賞
Anahita RAZMI『A Tale of Tehrangeles』
Ivan HENRIQUES『Symbiotic Machine』
Alex VERHAEST『Temps mort / Idle times - dinner scene』

エンターテインメント部門
大賞
Googleʼs Niantic Labs(創業者:John HANKE)『Ingress』
優秀賞
下浜臨太郎、西村斉輝、若岡伸也『のらもじ発見プロジェクト』
近藤玄大、山浦博志、小西哲哉『handiii』
APOTROPIA(Antonella MIGNONE / Cristiano PANEPUCCIA)『Kintsugi』
Hedwig HEINSMAN / Niki SMITS / Simon van der LINDEN『3RD』
新人賞
Florian BORN『Auto-Complain』
ドリタ、エアガレージラボ(川内尚文、佐々木有美)『Slime Synthesizer』
香月浩一『5D ARCHIVE DEPT.』

アニメーション部門
大賞
Anna BUDANOVA『The Wound』
優秀賞
高橋渉『映画クレヨンしんちゃん ガチンコ!逆襲のロボとーちゃん』
西久保瑞穂『ジョバンニの島』
Santiago ʻBouʼ GRASSO『PADRE』
Jean-Charles MBOTTI MALOLO『The Sense of touch』
新人賞
朱彦潼『コップの中の子牛』
山田尚子『たまこラブストーリー』
JEONG Dahee『Man on the chair』

マンガ部門
大賞
近藤ようこ、原作:津原泰水『五色の舟』
優秀賞
島本和彦『アオイホノオ』
李昆武、フィリップ・オティエ、訳:野嶋剛『チャイニーズ・ライフ』
沙村広明『春風のスネグラチカ』
いがらしみきお、原作:山上たつひこ『羊の木』
新人賞
ルネッサンス吉田『愛を喰らえ!!』
阿部共実『ちーちゃんはちょっと足りない』
池辺葵『どぶがわ』

プロフィール

高橋渉(たかはし わたる)

1997年、シンエイ動画に入社。『映画クレヨンしんちゃん 栄光のヤキニクロード』(2003年)で演出助手デビュー。初監督作品は『劇場版3D あたしンち 情熱のちょ~超能力♪母大暴走!』(10年)。その他、テレビシリーズ『ドラえもん』、テレビシリーズ『クレヨンしんちゃん』など。

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