特集 PR

シンガポールの至宝、テセウス・チャンに学ぶルールの破り方

シンガポールの至宝、テセウス・チャンに学ぶルールの破り方

インタビュー・テキスト
大島さや
撮影:Darren Leow, 撮影協力:ドミニー・プレス

シンガポールで最も権威のあるデザイン賞『プレジデンツ・デザイン・アワード』の受賞歴を持つ「シンガポールの至宝」ことテセウス・チャンは、リズミカルな機械音が鳴り響く印刷工場で、作業着姿のスタッフに囲まれ色校正の真っ只中だった。彼が2000年から出版し続けているインディペンデント誌『WERK』(ヴェルク)は、毎号様々なブランドやアーティストを起用し、アイデアに富んだ印刷方法や実験的な製本技術を用いて、世界中のファンを驚かせ続けている。昨年12月に始まったパルコのクラウドファンディング「BOOSTER」のプロジェクトの1つとして、その『WERK』の姉妹誌となる『W__K W__K』(愛称・わくわく)を今年2月に発行予定。この日、そのサンプルページがちょうど印刷機から飛び出してきたばかりだった。

『W__K W__K』第1号では、昨年9月にパリコレ進出を果たした日本のファッションブランドの新星「ANREALAGE(アンリアレイジ)」が特集される。同ブランドは、様々なテクノロジーを起用し、色や形が変化するなどの機能を持ちながらも実用性のある美しいデザインで毎シーズン人々を驚かせている。1980年代からグラフィックデザインと紙媒体の可能性を探求し続けるテセウス・チャンが、テクノロジーを駆使してファッション界に新たな風を巻き起こすANREALAGEをどのような形で本に落とし込もうと企んでいるのだろう? 特殊加工を得意とするシンガポールの印刷会社ドミニー・プレスにて、『W__K W__K』製作中のテセウスにインタビューを試みた。

「これまでにないものを作れ」と言われるのは挑戦的ではありますが、同時に心が安らぎますね。

―コム デ ギャルソンとのコラボレーションやggg(ギンザ・グラフィック・ギャラリー)での展示など、日本でもテセウス・チャンさんの活躍を知る人は多くいるかと思いますが、まず1989年にシンガポールでアートディレクターとして仕事を始めた頃のことを教えてください。

テセウス:当時は、絶対にグラフィックデザイン関連の仕事がしたいと心に決めていたので、アートディレクターという職に就けたこと自体を、すごく幸運に感じていました。ただ、新しいことに挑戦したくても、安定を求めて守りの体制に入るのが人間ですから、対立を多く経験しましたね。僕はとにかく雑誌が作りたいと考えていました。なぜルールを破ってはいけないのか? というように、問いかけたいことがたくさんあったからです。何事も経験なくして学べないですし、月日を経て表現できるようになるものですが、反逆者でいたいという欲望は若い頃からずっと変わりません。

テセウス・チャン
テセウス・チャン

―『WERK』のようなインディペンデント雑誌を2000年から毎回全く異なるスタイルで限定的に生産し続けるということも、決してリスクの低いことではないですよね?

テセウス:広告の仕事の場合、クライアントに「このようなことができます」とサンプルを見せますが、参考にできるサンプルがあるということは、既に誰かがやり遂げているわけですよね。デザイナーとして僕は、新しい何かを作る義務を感じているので、僕に対して、何かを複製してくれという依頼は全く意味のないことです。なぜなら、機械を使えば誰でも複製できる時代ですから。「これまでにないものを作れ」と言われるのは挑戦的ではありますが、同時に心が安らぎますね。アーティストと異なり、客観的に新しく面白いものを作り出すのがデザイナーの仕事だと感じています。

『WERK No.18: Keiichi Tanaami PSYCHEDELIC VISUAL MASTER』
『WERK No.18: Keiichi Tanaami PSYCHEDELIC VISUAL MASTER』

『WERK No.20: GINZA - The Extremities of the Printed Matter』
『WERK No.20: GINZA - The Extremities of the Printed Matter』

―キャリアの初期から今に至るまで、常に新しいことに挑戦するモチベーションはどこから湧いてくるのでしょう?

テセウス:なぜ全てが何かに従って行われなければいけないのか? ということに対して問い続けているだけです。みんなが良いと言っているものや、流行っているという考え方や文化が昔から好きになれない。デザイナーとして、それなりに好かれる何かを作ることはできたとしても、たとえば嫌悪感を抱くようなものを作るってどういうことだろう? と考えることがあります。そのような反逆的な考えが常にあるので、これまでにない方向性を開拓したいと考えるのだと思います。裕福であることや、有名であることより、僕にとっての成功は、自由な表現や判断をさせてもらえること。「自由を与えられて好きな表現をする」というのが最大の名誉ですね。

Page 1
次へ

サービス情報

クラウドファンディングサービス「BOOSTER」

2014年12月18日(木)からスタート

プロフィール

テセウス・チャン

1961年生まれ。2006年、シンガポールで最も栄誉あるデザイン賞『プレジデンツ・デザイン・アワード』にてデザイナー・オブ・ザ・イヤー受賞。2008年には『Area_2』(PHAIDON社刊)で世界のデザイナートップ100に選ばれる。『D&AD賞』(イギリス)をはじめ、『ニューヨークADC賞』『東京TDC賞』『Singapore Creative Circle』等で数々の賞を受賞。2012年、シンガポール人デザイナーとして初めて、ギンザ・グラフィック・ギャラリー(ggg / 東京)での個展を開催する。2013年春夏期には、東京(Trading Museum Comme des Garçons)、香港、北京のコム デ ギャルソン各店で『WERK』が展示された。2014年11月代官山 蔦屋書店での個展『WERK: WE WORK TOGETHER』では、ネオシルクによる初のアート作品を発表した。

SPECIAL PR 特集

もっと見る

BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

もっと見る

PICKUP VIDEO 動画これだけは

LUMINE ART FAIR - My First collection / Art of New York City

10月12日、13日にルミネ新宿で開催する『LUMINE ART FAIR -My First Collection』のために制作された動画。現地アーティスト2名の言葉と、リアルな空気感とともにNYのアートシーンを紹介している。「NY、かっこいい!」という気持ちがムクムク膨れ上がってくるはずだし、アートに触れるきっかけはそれくらいがちょうどいいと思う。(石澤)

  1. ドラマ『まだ結婚できない男』。新キャスト迎えて13年後を描く 1

    ドラマ『まだ結婚できない男』。新キャスト迎えて13年後を描く

  2. 中山美穂がダンサーに恋 松尾スズキ監督・脚本・主演『108』本編映像公開 2

    中山美穂がダンサーに恋 松尾スズキ監督・脚本・主演『108』本編映像公開

  3. セクゾ中島健人&菊池風磨が「ガルボ」のキニナル食感を70種の表情で表現 3

    セクゾ中島健人&菊池風磨が「ガルボ」のキニナル食感を70種の表情で表現

  4. 『全感覚祭』が10月13日に渋谷複数会場で急遽開催、千葉会場中止を受け 4

    『全感覚祭』が10月13日に渋谷複数会場で急遽開催、千葉会場中止を受け

  5. 宮藤官九郎の新作舞台『もうがまんできない』に阿部サダヲ、松尾スズキら 5

    宮藤官九郎の新作舞台『もうがまんできない』に阿部サダヲ、松尾スズキら

  6. フレデリックの表現がユニークな理由 双子の関係と想像力に秘密が 6

    フレデリックの表現がユニークな理由 双子の関係と想像力に秘密が

  7. 『水曜どうでしょう』漫画化、『週刊少年チャンピオン』で連載 7

    『水曜どうでしょう』漫画化、『週刊少年チャンピオン』で連載

  8. 宮沢氷魚と藤原季節が額をくっつける、今泉力哉『his』ポスター&場面写真 8

    宮沢氷魚と藤原季節が額をくっつける、今泉力哉『his』ポスター&場面写真

  9. 細野晴臣『NO SMOKING』特別映像公開 坂本龍一、高橋幸宏、星野源ら登場 9

    細野晴臣『NO SMOKING』特別映像公開 坂本龍一、高橋幸宏、星野源ら登場

  10. 小沢健二の新アルバム『So kakkoii 宇宙』11月発表、新曲配信&ライブも 10

    小沢健二の新アルバム『So kakkoii 宇宙』11月発表、新曲配信&ライブも