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「風営法」と「義務教育」にはさまれた、ストリートダンスの今

「風営法」と「義務教育」にはさまれた、ストリートダンスの今

インタビュー・テキスト
萩原雄太
撮影:相良博昭

ダンスを間近で観られる場所はクラブしかなかったし、自分もダンスをやろうと思い始めたきっかけではありました。(牧)

―そういったストリートダンスシーンの変化に対して、フラストレーションもあったりするんですか?

Shoji:うーん……どうだろう?

:私は全然ない(笑)。というのも、自分をストリートダンサーだとも認識してないんですよ。shojiくんと同じように、クラブシーンには出入りしてたけど、最初は怖くてクラブに入れなかったし、いわゆる男と女の盛り場っていうのも興味がない。ただ、ダンスを間近で観られる場所はクラブしかなかったし、自分もダンスをやろうと思い始めたきっかけではありました。

左から:shoji、牧宗孝

―なるほど。今ならそれはクラブじゃなくて、ニコニコ動画の「踊ってみた」だったかもしれないですよね。最近のダンサーはYouTubeから人気が出る人も多いですし。もともとダンスに興味はあったんですか?

:ヒップホップは好きだったし、家でマイケル・ジャクソン、ジャネット・ジャクソンを真似して踊っていたので、それを発散、表現する場としてのクラブには魅力がありました。でも、私が最初に踊ったのは日本舞踊。3歳から高校生までだから長いですよ。近所に教えているおばさんがいて、自分からやりたいと習い始めて。太鼓と笛と鐘と大太鼓、踊りもおかめ、ひょっとこ、獅子舞、全部覚えなきゃいけない。コンクールにも出ていたし、お正月はいろんなお家をまわって、玄関で踊っておひねりをもらって。そういう意味では元祖ストリートダンサーですけどね(笑)。

ステージママが怒鳴って子どもを指導しているのを見ていると、この子どもたちは本当にダンサーになるのかな……と疑問になります。(牧)

―ストリートダンスは、バレエやコンテンポラリーダンスと違って、激しい動きやテクニックを競い合うなど、「ショー」や「エンタメ」のイメージもあります。しかし、牧さんが総合演出・振付を手掛けた新作『*ASTERISK~女神の光~』は、非常に物語性の強い舞台作品になるとうかがいました。

:もともと、ミュージカルのように、全然関係ないストーリーでパフォーマーが突如踊りだすことに違和感があったので、踊る必然がある作品にしようと考えたんです。その結果、今の時代に特徴的なキッズダンサーとステージママという物語をやってみようかと。

『*ASTERISK~女神の光~』チラシビジュアル
『*ASTERISK~女神の光~』チラシビジュアル

―かつて伝説のダンサーであった母と、そのスパルタ教育を受けるキッズダンサー・光との確執や愛情が描かれています。ここには、牧さん自身の体験も含まれているのでしょうか?

:私の母親はとてものびのび育ててくれたので、そういった葛藤はないのですが、ダンススタジオのキッズクラスで教えていた体験が生きています。そういったクラスでは、子どもたちよりもお母さんのほうが必死な光景をよく見かけるんです。お母さんが怒鳴って子どもを指導しているのを見ていると、こうやって教育された子どもたちは本当にダンサーになるのかな……と疑問になります。そんな現状に対しての問題提起も含んだつもりです。

shoji:子どもたちの目が死んじゃうんですよね。レッスンをしていても、チラチラとお母さんの顔色を伺っている子どもも少なくない。子どもたちを抑圧することで「楽しい」という気持ちを殺してしまう。自分の子どもに対して頑張ってほしいという気持ちが強いからこそだと思いますが、中には「うちの娘は芸能人になれますか?」と聞いてくる人もいる。今回の作品を観て、子どもたちの才能をどうやって伸ばしていったらいいのか、考えるきっかけの1つにしてもらえたらいいなと思います。

人間が目の前で踊っているということのエネルギーを感じたいからダンスをやっているのかもしれません。「ぶわーっ!」ってその人のエネルギーが発散していく。そういうものを感じたい。(牧)

―かなり深いテーマの作品になりそうですが、あえてストリートダンスによって「語る」部分に踏み込むことで、その可能性を広げたいという意図もあるのでしょうか? ダンスだからこそ表現できるものもある?

:私は音楽もやっていて、ダンスだけにこだわるつもりはないのですが、人間が目の前で踊っているということのエネルギーを感じたいからダンスをやっているのかもしれません。「ぶわーっ!」ってその人のエネルギー、粒子が発散していく。そういうものを感じたい。そのエネルギーによって、作品の内容も観客席まで伝わるんです。だから、ストーリーの解釈は観る人それぞれのものでいいと思っています。


Shoji:MIKEY(牧)が言ったように、ダンスの面白さって、肉体が動いて、エネルギーが発散しているからこそのものだと思います。歌や演技でも話は伝わりますが、それをあえてダンスという曖昧なものにすることによって、お客さんが自分の経験や価値観とリンクさせることができる。ダンスには「面白い曖昧さ」があるんですよ。

抱え込んでいたフラストレーションをステージにぶつけたら、「すごく良かった」って褒められたんです。ステージでは怒っても悲しんでも誰も傷つかない。(shoji)

―『ASTERISK』は、「踊る理由」が大きなテーマとなっていますが、お二人が踊る理由とは何でしょうか?

:作品にも込めていますが、承認欲求や、自己顕示欲といったものですね。それはおそらく永遠に満たされるものではないんですが、どうしても突き動かされてしまいます。表現しなくても生きていける人はたくさんいると思いますが、誰に求められるでもなく、私は歌でもダンスでも表現しないと生きていけないんです(笑)。これはもう自意識の病ですね。

―shojiさんはいかがでしょうか?

shoji:踊っているときに「生きている」と感じるからですね。もともと、人の影に隠れているタイプの子どもで、反抗期もなかったし、誰も傷付けないように、嫌われないようにして生きてきた。だけど、どこかでそんな自分を嫌だなとも思っていたんです。ダンスを始めてからあるとき、ステージでは怒っても悲しんでも誰も傷つかないということに気づきました。抱え込んでいたフラストレーションをステージにぶつけたら、「すごく良かった」って褒められたんです。ダンスにのめり込んだのはそこからです。だから、ダンスは自分自身をさらけ出す場であり、精神安定剤みたいなものかもしれません。

―「自意識の病」と「精神安定剤」ですか……。

:ここだけ読むと、読者から「ダンサーってこんなに病んでるのか?」って思われそうですね(笑)。

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イベント情報

『*ASTERISK~女神の光~』

2015年5月8日(金)~5月10日(日)全5公演
会場:東京都 有楽町 東京国際フォーラム ホールC
総合演出振付・脚本:牧宗孝(東京ゲゲゲイ)
テーマソング:加藤ミリヤ“女神の光(feat. 牧宗孝)”
音楽:
牧宗孝
安宅秀紀
出演:
Koharu Sugawara
原田薫
s**t kingz
YOSHIE
KITE
AyaBambi
東京ゲゲゲイ
BLUE TOKYO
LUCIFER
50
McGee
RANDY
TACCHI
$eishiro
Pole Dancer KUMI
HATABOY
LIL'GRAND-BITCH
Vanilla Grotesque
仲宗根梨乃(特別出演)
料金:プレミアムシート7,500円 S席5,800円 高校生以下チケット4,500円
※プレミアムシートは日替わりの非売品ブックレット付、5月9日18:00公演のみお子様割引あり

プロフィール

shoji(しょうじ)

1984年生まれ。小学生のときに約2年をニュージーランドで過ごす。大学入学を機にダンスを始め、千葉を拠点に深夜の公園やビルのガラス前で練習する日々を送る。2007年にs**t kingzを結成。アメリカで開催されたダンスコンテスト『BODY ROCK』において、2010年、2011年と2年連続優勝を果たす。国内外を問わず、数多くのアーティストの振付やバックダンス、競演するとともに、10か国を廻るヨーロッパツアーをはじめ、アメリカ、アジア、オセアニア等、世界各地でワークショップやパフォーマンスを行っている。ソロとしては、平井堅、AAAなどの振付、バックダンスを担当。

牧宗孝(まき むねたか)

演出家。ダンスカンパニー「東京ゲゲゲイ」「Vanilla Grotesque」主宰、ダンスチーム「東京★キッズ」リーダーのMIKEYとして活動。加藤ミリヤのPV・ツアー振付、MISIAツアー振付・演出・バックダンサーとしても活躍。『ASTERISK』での共演をきっかけに仲宗根梨乃と共にBoAの振付を手がけるなど、アーティストからクリエイターとして厚い信頼を受ける。

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