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ロマンチックな結婚って?菊池亜希子×臼田あさ美×岨手監督

ロマンチックな結婚って?菊池亜希子×臼田あさ美×岨手監督

インタビュー・テキスト
藤田ひとみ
撮影:永峰拓也

今が楽しいのは、きっとあの頃の葛藤が間違っていなかったってことだし、数々の黒歴史がなければ今の私はないとも思うんです。(臼田)

―さきほど監督もおっしゃっていたように、主人公の緑が「田舎からなにかを目指して上京してきた」人物であるということも、この作品の重要なエピソードだと思います。劇中、次々に露わになる緑の恥ずかしい思春期の残骸には、赤面するほど共感を覚えました(笑)。

臼田:私も黒歴史はたくさんあるけど、絶対に話したくないよね……(笑)。

岨手:(笑)。映画の中で、緑が自分のラジオ番組を吹き込んだテープを作っていた、というエピソードですが、実はアレ、私自身がやっていたことなんです。しかもそれを他人に聞かれてしまって……。だけど、プロデューサーにもまったく同じ経験があるという話を聞いて、結構ある話なんだなって。思春期の自意識が詰め込まれていた象徴なのかな。

『グッド・ストライプス』 ©2015「グッド・ストライプス」製作委員会
『グッド・ストライプス』 ©2015「グッド・ストライプス」製作委員会

―大人になってから、好きなことを自分の中に持ちながら生活している人って、思春期の頃になにかしらの黒歴史や葛藤があるんじゃないかと思うんです。監督も、パンフレットのインタビューの中で「私や緑の世代って、十代のときにインターネットがそこまで普及していなかったから、田舎にいたら本当になにもできないっていう最後の世代だったと思う」とおっしゃっていましたよね。

臼田:私の出身の千葉って、こんなに東京に近いのに、東京で生まれ育った人とは明確な温度差があるんです。欲しいものがあっても、絶対に買えなかったし、行きたいところがあっても行けなかった。雑誌が大好きだったので、流行りの服や可愛いアイテムを知ることはできるんですけど、売っているお店は近くになくて。だから近所の量販店で、似たようなTシャツを買って、裁縫道具屋さんでレースを買って、とにかく似せて(笑)。いざ、張り切って着て渋谷に行ってみたら……こんな手作りのもの着ている人なんて誰もいなくて、なんて恥ずかしいんだろうって。

―臼田さんにもそんな時代が……。

臼田:モデルを始めた頃も、私物公開の企画で、他のモデルの子はブランドものを紹介しているのに、私だけ近所のショッピングモールで買ったオシャレ着みたいなものしか持っていなくて。なんか、ぽろぽろ黒歴史が出てきちゃったけど……(笑)。でも、今が楽しいのは、きっとあの頃の葛藤が間違っていなかったってことだし、数々の黒歴史がなければ今の私はないとも思うんです。

臼田あさ美
臼田あさ美

左:菊池亜希子、右手前:臼田あさ美

菊池:うちの地元の中学は、1つの学年に5つぐらいバンドがいるちょっとイケてる中学だったんです。友達は、みんなギター背負って、いろんな洋楽を知っていて、吹奏楽部だった私も、バンドに駆り出されて。でも、進学したのが完全な工業系の高校で、「ザ・理系」の男子ばっかり集まっていて中学の友達とはかけ離れたタイプだったから、初めは全然その文化を受け入れられなくって……。劇中で緑が感じている真生の友達に対する違和感みたいな、ただただ「合わない」っていう思いでいました。だから、緑の葛藤は「最後の思春期」のように思えて。

―「合わない」感覚って、ある意味でアイデンティティーの証明というか、承認欲求なのかもしれないですね。緑もはじめの頃は未熟だし、迷走気味だけど、自分の居場所を見つけるにつれて、落ち着きを獲得していく。

菊池:そうなんです! だから私も今は、高校の友達とすごく仲がいいんですよ。好きなファッションも、興味のあることも全然違うから、不思議なんですけど。でも、人が仲良く付き合っていくときには、好きなものが同じかどうかという基準がどうでもよくなる次元っていうのがあるんですよね。

『グッド・ストライプス』 ©2015「グッド・ストライプス」製作委員会
『グッド・ストライプス』 ©2015「グッド・ストライプス」製作委員会

自分のわからないものに対して、レッテルを貼って安心したい気持ちは理解できます。でも本当に知ろうとしたら、そんなざっくりと1つにまとめたりしないと思いますね。(岨手)

―それで言うと、ここ数年、「こじらせ女子」や「文化系女子」など、さまざまなカテゴリーが生まれていますよね。一方で、『グッド・ストライプス』は、異なる文化圏に所属する夫婦がお互いの小さな歴史を知る過程で、その垣根がどうでも良いものに感じられる瞬間があるように思いました。

岨手:菊池さんは特に「文化系」とざっくり括られがちじゃないですか? 文化系のミューズのような存在として。まあ、どこまでみんながそういうカテゴリーを本気で言っているのかわからないですけど、この映画でも真生の友達側から見たら、緑も裕子も同じジャンルだと思ってしまうけど、本当は全然違うキャラクターですよね。映画を見ている人にもそれは伝わると思いますし。

岨手由貴子
岨手由貴子

―対岸から見ているから、同じに見えるってことですよね。

岨手:自分のわからないものに対して、レッテルを貼って安心したい気持ちは理解できます。でも、別に無理して相手をわからなくても、わからないままでも別に問題ないし、本当に知ろうとしたら、そんなざっくりと1つにまとめたりしないと思いますね。

菊池:カテゴリーというのは、その時代の流れを読み解くための道具として、誰かが語るためにある言葉だと思っています。この映画の主人公の二人は、文化的には違うサークルの中にいる者同士だけど、二人にとって何系に属しているっていうのは、あんまり関係のないことで。その点では、この二人は理想的な恋愛をしているなって思うんですよね。「ナントカ系の女の子が好き」と言ったところで、実際にはなにも参考にならないですし。私自身、世間的に「文化系」と括られることも、年々気にならなくなってきました。ホントは私、学部で言ったら理系なんですけどね(笑)。

「結婚ってこうじゃなくちゃ!」という提案が世の中に溢れてて、ロマンチックに不感症になっているんじゃないかな。(岨手)

―タイトルの『グッド・ストライプス』は、「自分を変えて相手に合わせるんじゃなくて、そのまま2つの平行線でいいじゃん!」という思いが込められています。これまでは、いずれ1つになることが良いことだという概念が一般的だったと思うんですよ。だから、本作の平熱な結婚観が新鮮でした。

臼田:たとえば、夜景の見える高級なレストランのプロポーズは、すごくキラキラしているけど、いつもの小さな安アパートでプロポーズされたということも、二人にとっては一生に一度の、ものすごくロマンチックなことだと思うし。どんな日常にもロマンチックさはあるんだよっていうことを描いている物語は、私としても好きなお話だし、ダサさや人間の滑稽さを愛おしく感じられて、素敵だなと思います。


岨手:「女の子ってこういうプロポーズが好きなんでしょ」っていうのじゃなくて、自分が付き合っている彼女が本当に喜ぶことを考えればいいんじゃない? って思うんですよね。今は情報がたくさんあるから、統計をとって傾向を分析しがちですけど、隣にいる人を自分の目でよく見ることで、解決することがたくさんある気がします。友達でも、恋人でも。その中に、本当にロマンチックな瞬間や、スペシャルな友情があるんじゃないのかな、って私は思いますね。

―たしかに、劇中の真生からのプロポーズシーンは、一般的にはロマンチックとは言いがたいものでしたよね(笑)。

岨手:そうですね(笑)。だけど、「結婚ってこうじゃなくちゃ!」という提案が世の中に溢れてて、ロマンチックに不感症になっているんじゃないかな、って思いがあったんです。だから、一見、ロマンチックの定番とはかけ離れていることでも、10年後にその二人が幸せでいたら「私たちって安アパートでプロポーズしたよね、ぷぷぷ」みたいな、すごくロマンチックな会話になると思うし、お金で買える体験にはない、二人が長年かけて価値を生み出していくことっていうのは、すごく現代っぽいんじゃないかなと思います。

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作品情報

『グッド・ストライプス』

2015年5月30日(土)から新宿武蔵野館ほか全国で公開
監督・脚本:岨手由貴子
主題歌:大橋トリオ“めくるめく僕らの出会い”
音楽:宮内優里
出演:
菊池亜希子
中島歩
臼田あさ美
井端珠里
相楽樹
山本裕子
中村優子
杏子
うじきつよし
配給:ファントム・フィルム

プロフィール

岨手由貴子(そで ゆきこ)

1983年長野県生まれ。大学在学中、篠原哲雄監督の指導の元で製作した短編『コスプレイヤー』が水戸短編映画祭、『ぴあフィルムフェスティバル』に入選。08年初の長編『マイムマイム』が同フィルムフェスティバルで準グランプリ、エンタテインメント賞を受賞。09年、自身初の35㎜フィルム作品『アンダーウェア・アフェア』を製作。その他、ドラマの脚本執筆やミュージックビデオの監督等、多岐にわたる活躍をしている。

菊池亜希子(きくち あきこ)

1982年岐阜県生まれ。独特の存在感で女優としても注目を集め、2010年映画『森崎書店の日々』(日向朝子監督)で初主演。その後『ファの豆腐』(11 / 久万真路監督)、『よだかのほし』(12 / 斉藤玲子監督)で主演を務めている。また、著書として『みちくさ』『菊池亜希子のおじゃまします 仕事場探訪20人』を刊行。12年から年2回で発売している書籍『菊池亜希子ムック マッシュ』では編集長を務め、累計33万部を超えるヒットシリーズとしてカルチャー好きの男女から強く支持されている。

臼田あさ美(うすだ あさみ)

1984年千葉県生まれ。10代の頃からモデルとして活躍後、ドラマ、映画、CMと幅広く活躍。ラブコメディ『ランブリングハート』(10 / 村松亮太郎監督)で映画初主演を果たし、ひとり二役を演じる。その他の映画出演作に『色即ぜねれいしょん』(09 / 田口トモロヲ監督)、『キツツキと雨』(12 / 沖田修一監督)、『映画 鈴木先生』(13 / 河合勇人監督)、『桜並木の満開の下に』(13 / 船橋惇監督)、『さいはてにて やさしい香りと待ちながら』(15 / 姜秀瓊監督)などがある。

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教室でも放課後でも負け続けたこと、弱さ故に大事な友達も傷つけてきたことーー振り返るほど情けなさでズタズタになってきた自分達の青春を全部吐き出しながら、だからこそ今まで裏切らず側にいてくれた人を離さず抱き締めて生きていきたいのだと表明する1stアルバムが『サンキュー・マイ・フレンド・アンド・マイ・ファミリー』だ。ブッチャーズ、eastern youth、NUMBER GIRLを抱き締めて離さない号泣ファズは変わらぬまま、アルバムタイトルの通り「誰に何を歌いたいのか」に重心を置いた結果としてバンドサウンドが撚られ、歌がグッと前に出た。汗と唾を撒き散らす激情の成分はやや減ったが、あなたと友達になりたい、友達との絆を目一杯歌いたい、だからまずは自分達が素っ裸になってあなたと向き合いたいという意志がスウィートなメロディに乗って突き抜けている。「たったそれだけ」をたったひとりに伝えるためにもんどり打つ、バンドの核心がそのまま映し出されたMV。端からライブの中核を担ってきた名曲がさらに躍動している。(矢島大地)

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