特集 PR

三宅洋平「選挙フェス」とは何だったのか? 密着した監督が語る

三宅洋平「選挙フェス」とは何だったのか? 密着した監督が語る

インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:永峰拓也

愚痴をこぼし、クタクタに疲れ切ったアーティストのありのままの姿

こうして17日間26か所に及ぶ三宅への密着がスタートした。「トイレ以外は全て撮らせてもらう」という意思のもと、映画にはTシャツ・短パン姿で全国を飛び回り、オーディエンスとコール&レスポンスを繰り広げる凛々しい姿から、愚痴をこぼし、クタクタに疲れ切ってベッドに倒れ込む姿までもが克明に記録されている。怒り、喜び、悲しみ……様々な感情の渦にもがきながら、選挙戦を戦い続ける三宅の姿がそこにはある。

『選挙フェス!』 ©2015 mirrorball works
©2015 mirrorball works

杉岡:彼は「自分のディレクションが効いていない肖像が世に出回るのはホントに怖い」ってブログに書いてましたね。確かに、アーティストにとって自分の見せ方って生命線なわけで、よく許容してくれてたなと思います。もちろん、映像のチェックはしてもらいましたけど、第一声で「この映画を見たら、誰も選挙に出なくなっちゃうじゃん」と言ってました。彼はいろんな人が選挙に出て、もっと政治に関わってほしいと思っているから、「これ、辛そうすぎるでしょ」って。でも、辛そうに見えたのは事実だし、そこで嘘をついてもしょうがないですからね。

杉岡は音楽家としての三宅のファンであることを公言しつつも、三宅の主義・主張を全肯定しているわけでは決してないし、被写体と撮影者としての関係性には一定の距離が保たれ、それがゆえにありのままの三宅の姿を捉えることができた。しかし、「重要なのはコミュニケーション能力の問題だ」という主張に関しては、三宅と考えが一致しているという。

杉岡:前までは、政治を語るときにはちょっとかしこまって、ちゃんと勉強してから議論しないといけないという先入観があったんですけど、そんなに難しく考えることはないなと思うようになりました。この映画のことを人に話すときも、最初は構えちゃって、「僕は政党のどこを推すとかは特にないんだけど……」って補足してて。でもその言いわけって全然いらないし、だんだんめんどくさくなってきたんですよね。それこそ昔住んでいたニューヨークみたいに、政治が日常の中で話題に挙がるハードルがもっと下がって、誰でも主体的に考えられればなって。

杉岡太樹

自分の言葉で伝えようとした、田我流の存在感

映画には三宅を支持するミュージシャンも数多く映し出されているが、中でも印象的なのが、選挙戦も後半を迎えて疲弊感も漂う中で登場する、田我流の登場シーンの存在感だ。彼は街頭演説で自らの言葉で意見を述べ、“ゆれる”を披露する。

杉岡:僕が「選挙フェス」を回る中で、一番かっこいいと思ったのが田我流だったんです。彼はそんなに政治の知識があるわけじゃないし、政治を語る言葉も拙いんですよ。それでも群衆の前に出てきて、自分の言葉で考えを伝えようとする姿は、自分と一番近い場所にいると思ったし、同世代のほとんどの人がきっとそうだと思います。それに、その田我流を自分の選挙戦の一部にしている三宅洋平のセンスもやっぱり「わかってるな」って思わされるところもあって。三宅洋平の中では「みんなが自分なりに考えてほしい」っていうのが理想なんですよね。だからいつも思うんですけど、彼を批判してる人って、彼を過大評価し過ぎなんじゃないかと思うんですよ。彼だって一人のあんちゃんなんですから(笑)。

―いろんな考えを持った人がいて、その中の一人にすぎないと。

杉岡:だから逆に言うと、「選挙フェス」を伝説として残したいと思っている人に対しても、違和感を覚えます。だって三宅洋平という一人の男が生身でぶつかっただけですから。「選挙フェス」は伝説なんかじゃなくて、自分と地続きのものとして見てほしい事象だったからこそ、こうやって作品として残したかったんですよね。

Page 2
前へ 次へ

作品情報

『選挙フェス!』
p>2015年7月4日(土)からユーロスペースほか全国順次公開
監督:杉岡太樹
出演:三宅洋平
配給:mirrorball works

プロフィール

杉岡太樹(すぎおか たいき)

1980年神奈川県生まれ。01年より渡米、School of Visual Arts(ニューヨーク)にて映画製作を学ぶ。第84回アカデミー賞ノミネート作品の『もしもぼくらが木を失ったら』や、日米で異例のヒットとなった『ハーブ&ドロシー』などの制作・配給に参加。2010年より拠点を東京に移し、”脱原発デモ”の萌芽を追ったドキュメンタリー『沈黙しない春』で2012年に長編映画デビュー。現在、ブラインドサッカー日本代表チームを追った次回作を制作中。

SPECIAL PR 特集

もっと見る

BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

もっと見る

PICKUP VIDEO 動画これだけは

Elephant Gym“Moonset- Live at Underwater World Tour In Japan”

一聴・一見すると繊細に織られたアンサンブルに柔和な印象を抱く。が、極太のベースがリズムとメロディの両方を引っ張っていく様は超アグレッシヴでもある。観客も含めて会場に漂う空気は一貫して緩やかなものでありながら、なによりも3音の鋭い合気道を存分に楽しめるライブ映像だ。ビルドアップした低音に歌心を置くスタイルはまさに今だし、音の余白も心地いい。ポップとエッジィの両極をあくまで愛嬌たっぷりに鳴らす台湾出身の3ピースバンド、その魅力を1カット1カットが十二分に伝えている。(矢島大地)

  1. BTSは愛と自信を原動力に前進する。新章『MAP OF THE SOUL: PERSONA』 1

    BTSは愛と自信を原動力に前進する。新章『MAP OF THE SOUL: PERSONA』

  2. 高畑充希×前田敦子×池松壮亮『Q10』組登場 『町田くんの世界』場面写真 2

    高畑充希×前田敦子×池松壮亮『Q10』組登場 『町田くんの世界』場面写真

  3. 長澤まさみ&夏帆がLOWRYS FARM夏ビジュアルに ディレクションは吉田ユニ 3

    長澤まさみ&夏帆がLOWRYS FARM夏ビジュアルに ディレクションは吉田ユニ

  4. 女子大生が「殺される誕生日」を無限ループ 『ハッピー・デス・デイ』予告 4

    女子大生が「殺される誕生日」を無限ループ 『ハッピー・デス・デイ』予告

  5. スガシカオが語る、アルバム名に込めた真意「幸福感は十人十色」 5

    スガシカオが語る、アルバム名に込めた真意「幸福感は十人十色」

  6. 舞台『オリエント急行殺人事件』日本初演 小西遼生、室龍太ら出演 6

    舞台『オリエント急行殺人事件』日本初演 小西遼生、室龍太ら出演

  7. トム・サックスが茶の湯の世界に目を向ける展覧会 庭や茶室、池などで構成 7

    トム・サックスが茶の湯の世界に目を向ける展覧会 庭や茶室、池などで構成

  8. ピクサーアニメの制作工程を体験&学習、『PIXARのひみつ展』六本木で開幕 8

    ピクサーアニメの制作工程を体験&学習、『PIXARのひみつ展』六本木で開幕

  9. 21世紀のプリンスを再評価。配信やセクシャリティーの先駆者 9

    21世紀のプリンスを再評価。配信やセクシャリティーの先駆者

  10. カネコアヤノのお守りみたいな歌 不安を大丈夫に変える詩の秘密 10

    カネコアヤノのお守りみたいな歌 不安を大丈夫に変える詩の秘密