特集 PR

美声を操る音楽家・butaji、家から抜け出しその歌を全ての街へ

美声を操る音楽家・butaji、家から抜け出しその歌を全ての街へ

インタビュー・テキスト
渡辺裕也
撮影:矢島由佳子
2015/08/28

「街と脳は似ている」という話をどこかで聞いたことがある。いや、ただしくは「人間は脳を外に出そうとするから街ができる」だったような気もするが、どちらにせよ、「人間の脳と街の構造はつながっている」という考え方が、この世の中には存在するようなのだ。1つの街から人が離れ、そこにまた別の誰かがやってくる。そして、そんな人々の往来が絶え間なく続いていく。なるほど、確かに我々が暮らす街の光景は、脳内を血液が循環していく様子に近いのかもしれない。そこで、ふと思うのだ。じゃあ、もしこの血流が止まったとしたら、その街は一体どうなるんだろう。

butajiの1stアルバム『アウトサイド』に収められているのは、そんな都会の街から離れていく人をめぐる、いくつかのストーリーだ。シンセサイザーの音色が奏でる都市の喧騒。アコースティックギターを爪弾きながら口ずさむ、過ぎ去った夜の回想。艶っぽい美声を震わせ、ときにそれをオートチューンで変調させながら、butajiは「アウトサイド」へと動き出した人に祝福の声を送る。アルバムの冒頭を飾る曲“ラブソング”で、彼はこうも歌っている。<大切な昨日を 戻らない全てを たった一つのアイデアで塗り替えたい>。もしかすると、『アウトサイド』は僕らが生きる街の血流を描いた作品なのかもしれない。そんな思いを密かに抱きながら、butajiこと藤原幹に話を訊いてきた。

僕が初めて自分で曲を作ったのは、幼稚園の頃なんですよ。「このお菓子が美味しい」みたいなことを歌った曲(笑)。

―butajiさんが最初に始めた楽器はバイオリンだったそうですね。

butaji:はい。幼稚園の年長くらいから習い始めて、中学生の頃にはやめたんですけどね。

―じゃあ、幼い頃に親しんでいたのは主にクラシック?

butaji:そうですね。バイオリンを習う上で聴いていたクラシックのオーソドックスなところは、自分の根っこにあると思います。僕が初めて自分で曲を作ったのも幼稚園の頃なんですよ。それはピアノで作ったんですけど。

butaji
butaji

―幼稚園の頃にですか! それってどういう曲だったか、今でも覚えてますか?

butaji:覚えてますよ。左手で1つのコードを弾きながら、同時に右手もずっと動いてて、「このお菓子が美味しい」みたいなことを歌った曲(笑)。僕はその当時から和音が大好きだったし、歌うことがとにかく楽しかったんですよね。深い意味も追い求めず、根源的な快楽に従うようにして、ずっと歌ってました。

―歌うことが好きなことに加えて、和音が好きとなると、おのずとバイオリンとは違う楽器に興味が向きそうですね。

butaji:そうなんです。それでバイオリンは中学生でやめて、アコギを手に取るようになって。曲自体はいつも頭のなかにあったので、今思えば手に取る楽器はピアノでもギターでもよかったのかもしれないけど、当時はとにかくギターばっかり弾いてました。

―自作曲を録音するようになったのは、いつ頃からですか?

butaji:宅録にハマったのは大学の頃にiBookを買ってからですね。それで在学中にアルバムを3枚ほど作って。1枚目は身内の友人にしか聴かせてないんですけど、2枚目に作ったものはSoundCloudにひっそり上がってますよ。3枚目は本当に自分しか聴いてないアルバムなんですけど。

―当時のbutajiさんは、積極的に自分の音楽を広めていこうとはあまり思っていなかったんですか?

butaji:そうだったのかも。ただ、Myspaceを通じて海外の人からメッセージをもらえたりしたのはすごく刺激的でした。でも、そこまで熱を入れて自分をガンガン広めていこうっていうモチベーションは、それほどなかったかもしれない。butajiという名義は、大学生の頃から使っていたんですけどね。

―学生の頃からこの名前で活動を続けているんですね。ちなみに「butaji」というアーティストネームは何に由来してるんですか?

butaji:これ、本当に意味ないんですよ(笑)。自分のあだ名を縮めたらこうなっただけ。あと、その頃の僕はアコースティックな音像に特化した曲を作っていたんですけど、そこでそういうシンガーソングライターっぽい名前にするのが嫌だったんですよね。むしろその音像と相反するようなネーミングの方が、今後の活動もやりやすくなるんじゃないかなって。自分の音楽を名前の印象だけで判断されたくないという気持ちも強かったから。

Page 1
次へ

リリース情報

butaji 『アウトサイド』(CD)
butaji
『アウトサイド』(CD)

2015年8月5日(水)発売
価格:2,484円(税込)
PCD-93935

1. ラブソング
2. ウィークエンド
3. Faded
4. サンデーモーニング
5. ターミナル
6. 銀河
7. すべての明かりが消えたあと
8. Outside
9. Light
10. ギター

プロフィール

butaji(ぶたじ)

都内で活動する藤原幹によるソロユニットがbutaji。BandcampでEP『­四季』や自主盤『シティーボーイ☆』を発表する他、SoundCloudに多数音源を発表するシンガーソングライター。コンセプトだてた楽曲制作が得意で、フォーキーなものから色鮮やかなシンセサウンドを取り入れたエレクトロなトラックまで幅広く、BECKや七尾旅人を影響に受けている。USインディなどにも通じる要素も抑えており、高い楽曲のクオリティーを誇る。何といっても、彼の魅力は独特の歌声。8月5日、初となる全国流通アルバム『アウトサイド』をリリース。

SPECIAL PR 特集

もっと見る

BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

もっと見る

PICKUP VIDEO 動画これだけは

Nulbarich“Sweet and Sour”

テレビ東京のドラマ『デザイナー 渋井直人の休日』のエンディングテーマ“Sweet and Sour”。2月6日リリース予定の3rdフルアルバム『Blank Envelope』のリード楽曲でもある今作は「偶然の景色」がテーマ。日常の中に偶然生まれたハッとする瞬間を鮮やかに切り取っている。グラフィカルな映像に垣間見える、あたたかな日常を楽しもう。(野々村)

  1. こんまりのNetflix番組がアメリカで話題。こんまりメソッド巡る議論も 1

    こんまりのNetflix番組がアメリカで話題。こんまりメソッド巡る議論も

  2. 野村周平&桜井日奈子がプールでずぶ濡れ 『僕の初恋をキミに捧ぐ』新写真 2

    野村周平&桜井日奈子がプールでずぶ濡れ 『僕の初恋をキミに捧ぐ』新写真

  3. 『サマソニ』ヘッドライナー3組目はThe Chainsmokers、料金は値下げ 3

    『サマソニ』ヘッドライナー3組目はThe Chainsmokers、料金は値下げ

  4. 高杉真宙×竹内愛紗 御曹司と女子高生のラブコメ漫画『高嶺と花』ドラマ化 4

    高杉真宙×竹内愛紗 御曹司と女子高生のラブコメ漫画『高嶺と花』ドラマ化

  5. 『カメラを止めるな!』が『金曜ロードSHOW!』でテレビ初放送 5

    『カメラを止めるな!』が『金曜ロードSHOW!』でテレビ初放送

  6. 宇多田ヒカルのシングル『Face My Fears』本日発売&『初恋』サブスク解禁 6

    宇多田ヒカルのシングル『Face My Fears』本日発売&『初恋』サブスク解禁

  7. King Gnuが泥臭さと共に語る、若者とロックバンドが作る「夢」 7

    King Gnuが泥臭さと共に語る、若者とロックバンドが作る「夢」

  8. ザギトワ&メドベージェワが魔法少女に、『マギレコ』新テレビCM 8

    ザギトワ&メドベージェワが魔法少女に、『マギレコ』新テレビCM

  9. 『ヒグチユウコ展 CIRCUS』 約20年の画業辿る500点超展示 9

    『ヒグチユウコ展 CIRCUS』 約20年の画業辿る500点超展示

  10. 中村佳穂という「歌」の探求者。魂の震えに従う音楽家の半生 10

    中村佳穂という「歌」の探求者。魂の震えに従う音楽家の半生