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J-POPを経験したエミ・マイヤーが「里帰り」を語る

J-POPを経験したエミ・マイヤーが「里帰り」を語る

インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:豊島望

ジャズとポップスの境界線がもっとグレイになったら面白いんじゃないかって考えています。

―エミさんは作品ごとに様々なミュージシャンとコラボレーションされていますが、今回はエリック・レニーニ(1970年ベルギー生まれのジャズピアニスト)を迎えて、パリで録音されたそうですね。

エミ:以前エリックさんのアルバムに参加したことがあるんですけど、彼のバンドがホントに素晴らしくて、いつか一緒にアルバムを録音したいと思っていました。彼はジャズミュージシャンなのに、私の日本語の曲をアレンジしてくれたこともあるし、どんな曲調でもできるんですよ。

―ジャズスタンダードのカバーなんだけど、あくまでも今の時代の音楽として仕上げたかった?

エミ:そうですね。ジャズだからって、お店のBGMっぽい感じにも、ジャズファンのためだけのジャズアルバムにもしたくなくて、そのためにはミュージシャンを選ぶことがすごく重要だと思いました。エリックさんはすごく独特なピアノの弾き方をする人だし、上から目線で「こうやって歌って」って言うこともない。そういう保守的じゃない人と一緒に作りたかったんですよね。

―ごく一般的に言えば、「ジャズのスタンダードを録音するならアメリカ」っていうのがパッと浮かびそうですけど、最初から頭にはなかったわけですね。

エミ:考えもしなかった(笑)。小さい頃にアメリカでよくジャズキャンプに行ってたから、周りには「ジャズが命」みたいな子もいっぱいいて、彼らが守りたい伝統もよくわかるんですけど、私はそれより今の時代のジャズに興味があるんです。当然ジャズには長い歴史があって、その音楽がどうやって生まれ、その人たちがどんな経験をしてきたのか、その歴史を尊重することは大事ですよね。ただ、例えば「日本の文化を知るために茶道を習う」とかって、それも大事だけど、茶道から「今の日本」を知るのは難しいじゃないですか。ジャズスタンダードをやるからといって、過去だけを見るのではなく、今のジャズがどうなっているのかを考えることもすごく大事だし、そうしないと、私と同世代の人には届かないと思いました。

エミ・マイヤー

―今の日本人がみんな着物を着てお茶をたててるわけではないですもんね。

エミ:そうそう。でも、私は過去にジャズの歴史を習った経験があるからそう思うのかもしれない。子どもの頃そういう環境にいなかったら、今それがコンプレックスになって、「勉強しなきゃ」って思ったかも。

―あらかじめ歴史を学んでいるからこそ、今にフォーカスできると。でもそういうスタンスこそが、音楽をアップデートしていくことに繋がるわけですもんね。

エミ:そうですよね。別に私はジャズのシーンに入りたいっていう気持ちもないし、むしろジャズとポップスの境界線がもっとグレーになったら面白いんじゃないかって考えています。アメリカにはジャズから派生した現在進行形の音楽がたくさんあるけど、日本はイージーリスニングとして扱われているものが多いから、もっとポップスと面白い化学反応が起きて、フレッシュなものができればいいなって思うんですよね。

スタンダードとして残ってる曲って、アダルトなテーマなんだけど、それを男女も世代も問わずに歌うことができるのが素敵。

―今ってトレンドのサイクルがすごく速くて、スタンダードが生まれにくい時代だと思うんですね。

エミ:わかる! サイクルホント速いですよね(笑)。

―たくさんのスタンダードをカバーしてみて、何かスタンダードの条件を発見したりしましたか?

エミ:やっぱり「歌詞」だと思います。内容は普遍的なんだけど、ちょっとした言葉遊びとかで、「これって何のことを歌ってるんだろう?」って考えさせる部分があるんですよね。それは“Moon River”も“マイ・ファニー・ヴァレンタイン”もそうだし、“Cheek To Cheek”もちょっと暗いユーモアが入ってたりする。きっとそういう歌詞は、どんな時代でも共感できるんですよね。

―解釈に幅があって、いろんな受け取り方ができるからこそ、時代に合わせて楽しめると。

エミ:あと面白いのが、私は他の人の歌詞を覚えるのがすごい苦手で、何度も何度もノートに書いて覚えたんですね。そのうち自分の曲の歌詞も忘れそうになっちゃって(笑)、自分の歌詞もノートに書いてたんですけど、ジャズスタンダードの歌詞ってホントに短いんです。私の歌詞とは大違い(笑)。普遍的なテーマを、どう少ない単語で、なおかつパンチが効いた形で表すかが大事なのかなって。

―日本のスタンダードとしてすぐに思い浮かぶのって“上を向いて歩こう”かなって思うんですけど、あれも歌詞短いですもんね。

エミ:若い子が若い世代に向けて作っている曲と比べると、スタンダードは大人の人がいろんな人生経験を重ねた上で作ってるから、matureな(円熟した)テーマが入ってる。アダルトなテーマなんだけど、それを男女も世代も問わずに歌うことができる。それって素敵だなって思いますね。

―“ムーン・リバー”についてエミさんが、「夢を追って都会に出てきた女の子の相反する気持ちを歌っていると感じた」とコメントされていたのも面白いなと思いました。

エミ:私はそう解釈したんですけど、例えばエリック・クラプトンのバージョンを聴くと、彼はまた違ったことを思いながら歌ってるんだろうなって感じるんです。でもそうやって、クラプトンも私も歌えて、でも違和感はない。そういうのがスタンダードだと思いますね。

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リリース情報

エミ・マイヤー 『モノクローム』(CD)
エミ・マイヤー
『モノクローム』(CD)

2015年9月2日(水)発売
価格:2,700円(税込)
VITO-125

1 .Fly Me To The Moon
2. Moon River
3. I'd Rather Go Blind
4. If I Think Of You
5. Cheek To Cheek
6. Smile
7. Moonlight Serenade
8. My Funny Valentine
9. Monochrome
10. Home
11. What A Wonderful World

イベント情報

『エミ・マイヤー「モノクローム」~ジャズ・スタンダードのひと時』

2015年12月15日(火)
会場:大阪府 梅田CLUB QUATTRO

2015年12月16日(水)
会場:愛知県 名古屋CLUB QUATTRO

2015年12月17日(木)
会場:東京都 渋谷CLUB QUATTRO

料金:各公演 前売4,500円 当日5,000円

プロフィール

エミ・マイヤー

日米を拠点に活動するシンガー・ソングライター。日本人の母親とアメリカ人の父親の間に京都で生まれ、1才になる前にアメリカのシアトルに移住。2009年にリリースされたデビューアルバム『キュリアス・クリーチャー』はiTunes Storeや多くのCDショップのJAZZ チャートで首位を獲得。2012年のミニアルバム『LOL』は収録曲“オン・ザ・ロード”がTOYOTAプリウスのCMでオンエアされ、スマッシュヒットとなった。またJazztronik、ケン・イシイ、大橋トリオ、Def Tech、さかいゆう、永井聖一らとの共作曲でも幅広い層に支持されている。2015年は冨田ラボ feat.Emi Meyer名義で坂本真綾20th記念トリビュートアルバム『REQUEST』に参加、映画『ビリギャル』でも劇中歌3曲を歌っている。

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