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「悲惨な演劇の状況をぶっ飛ばしたい」中屋敷法仁インタビュー

「悲惨な演劇の状況をぶっ飛ばしたい」中屋敷法仁インタビュー

インタビュー・テキスト
島貫泰介
撮影:高見知香

そもそもわれわれは、戦争に反対もすれば賛成もする可能性を等しく持った動物であるかもしれない。そのことは気をつけて作品を描かないといけないと思っています。

―中屋敷さんの信念は「決まりきったことをしない」ということでしょうか?

中屋敷:決めつけるのがイヤなんだと思います。学生時代も、授業中に堂々と寝たらどうなるんだろう? と思って、寝てみたり。普通に怒られましたけど(笑)。これは劇作家、演劇人、アーティスト全体に言えることなんですけど、世の中がこんなときに、例えば戦争には絶対反対しなきゃいけないっていう風潮もなんか苦手で。個人的には、戦争に対してであっても、人は賛成したり反対したりするものじゃないか? って思います。むしろ「日替わりで意見が変わってもいいんじゃないかな」って思うくらい。僕みたいな人間を「ふわふわしてしょうがない人だ」って言う人もいるかもしれないけど、世の中のことを敏感にとらえるためには、そのくらいの立ち位置にいなければいけないんじゃないかと思うわけです。よく「空気を読め」なんて言われますけど、僕らアーティストはむしろ「空気を司る」みたいなところにいないと、肝心の空気自体を何者かに持ってかれちゃうような気がします。

中屋敷法仁

―先ほど「戦争ごっこを扱う理由に、政治的意図はない」とおっしゃっていましたが、「戦争、是か否か?」という以前の部分に関心の軸があるということでしょうか?

中屋敷:褒められた話じゃないですが、小学校のときに「オウム事件」があって、友だちの間で爆発的にオウム真理教ごっこが流行ったんです。当然、先生たちは「被害者の気持ちを考えなさい!」と激怒したんですけど、当時の僕らは本当に何も考えてなかったんですよ。戦時中には、戦争ごっこをやっていた子どもがたくさんいたでしょうけど、その子たちに政治的意図があったとも思えないし、逆に純粋無垢ゆえの残酷さを発揮したわけでもない。単に目の前に「ごっこ遊び」の材料があっただけなんじゃないかと想像します。そもそもわれわれは、戦争に反対もすれば賛成もする可能性を等しく持った動物であるかもしれない。そのことは気をつけて作品を描かないといけないと思っています。

―それは、現在の世相を反映して作品を作っているということではないですか?

中屋敷:今って、自分のことを頭がいいと思っている人が多いような気がします。もしくは、自分のことをバカだと思われたくない人が多い。例えば安保法制の話にしても、自分の主張が100%正しいと思っている人がほとんどですよね。

―Twitterでは顕著に意見が分かれますね。

中屋敷:意見の異なる人同士が交わる場がないのは恐ろしいと思います。みんなが孤立しがちな社会なので、同じ意見が集まった場の空気の中で、自分の考えを曲げるのは怖いでしょうし、仕方のないことでもあるんですが。ただ芸術は、そこを飛び越えるもの、飛び越えてもいいんだよっていう姿勢を示さないといけない。

中屋敷法仁

―中屋敷さんはご自身の作品は政治的ではないとおっしゃるかもしれないですが、人間の中にある善悪や是非を判断するきわどいバランスを意識している点では、十分に政治的であるように思います。

中屋敷:右にも左にも偏らない状態、結論は決まってないけど、とりあえず行動を起こしてみたくなる、そんな可能性の懐を広げておくのはいいんじゃないでしょうか。実際、僕が演出するときも「とりあえずやってみて」が多い。舞台で流行のギャグとかやったりするんですよ。小島よしおの「そんなのカンケーねえ!」とか、びっくりするくらい滑る(笑)。それもけっこう意図的にやっているんです。意図せずに滑るときもありますけど。

―つらいですね(笑)。

中屋敷:お笑い芸人の方も同じことをやっていて、漫才で1個くらい滑る箇所を作っておかないと、お客さんがどこで笑っていいのかわからなくなるらしいです。感動巨編のドラマやドキュメンタリーとかでも泣けるシーンばかり続くと泣けなくなるので、ちょっと脱力できるシーンを挟むとか。僕は、できるだけ客席はカオスな状態であってほしい。もちろん泣けるシーンとか笑えるシーンが登場して、お客さんの気持ちもどこかに偏るけれど、ちょこちょこバランスを崩しながら終演を迎えて、カオスなままで外へ送り出したい。「柿喰う客」のアンケートを読むと、好きなポイントがけっこうバラバラで、それぞれの「好き」の表情がたくさんあるんですよ。笑えるから好き。かっこいいから好き。くだらないから好き。そういうカオスさが許されるような作品でありたいと思っています。

information

イベント情報

柿喰う客『天邪鬼』

作・演出:中屋敷法仁
出演:
七味まゆ味
玉置玲央
永島敬三
大村わたる
葉丸あすか
中屋敷法仁

東京公演

2015年9月16日(水)~9月23日(水・祝)全10公演
会場:東京都 下北沢 本多劇場
料金:極楽6,800円(特典付) 一般4,800円 学生2,800円 高校生以下1,800円

兵庫公演

2015年9月25日(金)~9月28日(月)全6公演
会場:兵庫県 伊丹 AI・HALL
料金:極楽6,800円(特典付) 一般4,300円 学生2,800円 高校生以下1,800円
※東京、兵庫公演の「極楽特典」は最前列保証、特製缶バッジ+Tシャツ(非売品)、劇団員の直筆メッセージ付きポストカード、めこちゃんショップバッグ

岐阜公演

2015年9月30日(水)、10月1日(木)全2公演
会場:岐阜県 大垣市スイトピアセンター 文化ホール
料金:極楽4,000円(特典付) 一般3,000円 U25チケット2,500円 高校生以下1,000円 065チケット1,500円 キャンパスシート1,000円
※キャンパスシートは当日空席がある場合のみ、要学生証
※065チケットは65歳以上が対象、10月1日の公演のみ販売、要証明証
※ 岐阜公演の「極楽特典」は最前列保証+特製缶バッジ

柿喰う客『天邪鬼』
柿喰う客

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