アナログフィッシュ下岡×Yogee New Waves角舘の濃密対談

アナログフィッシュがニューアルバム『Almost A Rainbow』を完成させた。前作『最近のぼくら』からわずか11か月で完成させた本作は、佐々木健太郎と下岡晃という二人のソングライターでありボーカリストがクリエイトする楽曲のコントラストが、これまで以上に濃厚なものになっている。光量の高いポップネスを表出させる佐々木の楽曲と、ストイックなリズムセクションを軸にグルーヴを構築する下岡の楽曲が有機的に連なり、リスナーの耳を最後まで弛緩させない。各曲に描かれた多面的な情景や心理描写から何を感じ取るかは、やはりリスナーの想像力に委ねられている。豊潤かつ刺激的なサウンドプロダクションと歌の奥行きーーアナログフィッシュが特別なバンドであり続ける核心を本作は映し出していると言っても過言ではない。

本作のリリースを記念して、下岡とYogee New Wavesのフロントマン、角舘健悟の対談が実現した。今や新鋭のバンドたちからリスペクトを集めるアナログフィッシュと現行のインディーシーンにおける旗手的な存在であるYogee New Waves。下岡と角舘の交わした対話は、曲作りの方法論や世代観、社会に対するスタンスなど、実に濃密で興味深いものになった。

僕は意思のある声が好きで。歌詞がどうこうじゃなくて、何かを言おうとしている人の声というのがあると思うんですよね。(下岡)

―下岡さんが最初にYogee New Wavesの楽曲を聴いたとき、どんなことを感じましたか?

下岡:初めて聴いたのは“CLIMAX NIGHT”だったんですけど、曲のムードと声がすごく良かったんですよね。僕は意思のある声が好きで。そういう意味でも角舘くんの声は僕の趣味にピッタリでした。

下岡晃
下岡晃

―下岡さんにとって「意思がある声」とは?

下岡:歌詞がどうこうじゃなくて、何かを言おうとしている人の声というのがあると思うんですよね。角舘くんの声はそれだなって。

―角舘くん、そう言われてどうですか?

角舘:嬉しいですね。僕も思いや哲学というか、何かを人に伝えなきゃという気持ちや目線を持っているミュージシャンが好きだから。それはアナログフィッシュにも感じているし。そういう部分でお互いが惹かれ合ったなら、良かったなって思います。

―角舘くんはリスナーとして、アナログフィッシュをどのように聴いてきたんですか?

角舘:僕はアナログフィッシュを通りそうで通ってこなかったんです。学生時代はメロコアやパンクに始まり、大学生になってからジャズやファンクに傾倒していって。去年の10月に『スペースシャワー列伝』のオファーをもらって、そこに共演者としてアナログフィッシュの名前があって、「あ、アナログフィッシュって知ってる」というくらいの感じだったんです。すみません(笑)。

下岡:いいよ(笑)。

角舘:でも、サポートでベースを弾いてくれているやつがアナログフィッシュのファンで。そいつに曲を聴かせてもらったら、めっちゃ良かったんですよね。実際にライブを観て、そのあと下岡さんと話してバンドの姿勢に共感もしたし。

角舘健悟
角舘健悟

下岡:ありがとう。

角舘:下岡さん、最近LINEくれますよね?

下岡:たまにね(笑)。近頃D.A.N.がすごく好きでよく聴いてるんですけど、CDを聴いてたらヨギーと同じレーベル(Roman Label)ということがわかって。never young beachもいるし、すごくいいレーベルだなと。それで角舘くんに「いいレーベルだね」ってLINEを送ったんだよね。

角舘:D.A.N.にも伝えておきましたよ。「下岡さんが最高だって言ってる」って。メンバーも「超嬉しい」って言ってました。僕も嬉しかった。

―下岡さんからD.A.N.の名前が出てきて思ったんですけど、アナログフィッシュの新作における下岡さんのストイックなリズムのアプローチと、D.A.N.の音楽性はたしかにリンクするところもありますね。

下岡:D.A.N.のドラムの音色は、まさに今の僕が聴きたかった音だったんですよね。また時代がいい感じに変わってきているなと。よくよく確認したらエンジニアが葛西(敏彦)くんだったから、なるほどとも思いました。アナログフィッシュの新作のサウンドに関しては、最近個人的に1990年代の音をよく聴いていて。それこそグランジみたいなアプローチをやりたいと思ってるんですよ。

―でも、今作にグランジ色はないですよね。

下岡:今作ではまだそこまで落とし込めていないんですけど、最近のToro Y Moiの曲を聴いたときに、90年代の音をチルウェイヴ以降の感覚で昇華しているなと思うものが何曲かあって。そういう感覚が念頭にあったんですよね。それで今後は爆音グランジみたいなアプローチで曲を作ってみたいなとちょっと思っているんですよ(笑)。

角舘:めっちゃいいじゃないですか!(笑) アナログフィッシュの新作を車の中で聴かせてもらったんですけど、下岡さんが作った“No Rain(No Rainbow)”という曲がすごく好きでした。やっぱり鋭い歌詞で心を刺してきますよね。

―しかもシンプルな筆致で。

角舘:そう、会話の中で出てくるような、すごくシンプルな言葉でしっかり刺してくるというか。「ああ、確かにそうだな」って思わせるんですよね。

今の時代は、何かを跳ね返す力にもなるような軽やかさが大事なんじゃないか?(下岡)

―今、角舘くんがあげた“No Rain(No Rainbow)”における「Rainbow」は、『Almost A Rainbow』というアルバムタイトルにも繋がってくるものですね。

下岡:前作まで先にテーマ性があって、それをもとに曲を作ることが多かったんです。なので今作はそういうテーマみたいなものは一旦置いておいて、自分が美しいなと思う景色を書いてみようと思いました。この曲もそういう感覚で書いた曲なんですよ。

―この曲では気高い女性像のようなものが描かれていますよね。

下岡:確かに(笑)。それがどういう意味を持っているのかは自分でも未だによくわかっていないんですけど、歌詞の最後のラインで出てきたフレーズが<君に何かしてあげたいっておもうよ>だったので、良かったなと思って(笑)。

―テーマに寄らないようにソングライティングしたのは、ある種の反動でもあるんですか?

下岡:ジャケットを作ってくれたデザイナーからのメールに書いてあったことなんですけど、「メッセージをバンドからリスナーにトップダウンで伝えるのは無理があると思う」と。「今の時代は何かを跳ね返す力にもなるような軽やかさが大事なんじゃないか?」と言っていて。僕はその感覚をうまく言語化できていなかったけど、その言葉を聞いたときに、曲を作りながら潜在的に感じていたことと合致するなと思いました。

アナログフィッシュ『Almost A Rainbow』ジャケット
アナログフィッシュ『Almost A Rainbow』ジャケット

―特に下岡さんの楽曲は、音も言葉もこれまでよりさらに引き算の手つきで紡がれていて、リスナーの想像力を喚起させる余白や行間、奥行きが広がっていると感じました。そこで思うのは、下岡さんの楽曲を社会的なメッセージが込められたものとして捉える人もいるだろうし、ささやかな私小説として捉える人もいると思うし、虚無感を覚える人もいれば、救いを見出だす人もいるということで。つまり、今そのリスナーが何を思考しているかを掬い上げるような筆致だと思うんですね。だからこそ、リスナー一人ひとりがリアルな歌として受け取ることができるんだと思うんですけど。

下岡:僕自身は、リスナーにとって何らかの呼び水になるような歌詞であれたらいいなと思っていて。でも、それはなかなか難しい。だからこそ、リスナーが自分の歌詞をそういうふうに機能させてくれたとしたら、それはすごく嬉しいんです。

テスト問題のように「このカギ括弧を埋めなさい」という空白があったほうが、リスナーが自由にその歌を聴けると思うんです。(角舘)

―ヨギーの歌詞も豊かな余白があると思うのですが、角舘くんはそのあたりはどうですか?

下岡:それ、聞きたい!

角舘:最近僕が意識しているのは、まさに引き算の部分で。テスト問題のように「このカギ括弧を埋めなさい」という空白があったほうが、リスナーが自由にその歌を聴けると思うんですよね。だから、うまくストーリーテリングしすぎないほうがリスナーとの関係性ものびのびしたものになる。今まで書いてきた曲は、そういう空白を無意識で作れていたと思います。でも、最近ちょっと具体的に書きすぎる癖がついてきているなと感じるところがあって。

―それは歌で言いたいこと、伝えたいことがあるから?

角舘:そうかもしれない。今書いてる新曲はちょっと隙がないというか。そこでもどかしさを感じているところがあるんですよ。

下岡:そのバランスって難しいよね。確かに『PARAISO』(2014年に発表されたYogee New Wavesの1stアルバム)はすごく素敵な余白がある。僕はここ何年かでやっと自分の歌詞の書き方が固まってきたなと思うんだけど、余白のある歌詞を書こうと意識し始めると逆に書けないことがあったんだよね。

角舘:うん。なんでうまく書けなくなるんですかね? 書き込み過ぎてしまうのも初期衝動の1つなのかなとも思うんですけど。下岡さんは歌詞を書きながら「こうじゃないなって」思うこともありますか?

下岡:あるある。だから最近は歌詞を書くのをやめたの。書いちゃうと紙でもパソコン上でも書いた文字に惑わされるから。それで、頭の中でなるべく最後のラインまで思い描くようにして、頭の中で完成したときに初めて書き起してみるのね。

角舘:ああ、なるほど。参考になりますね。

左から:下岡晃、角舘健悟

―“Walls”の歌詞に触れて、僕は村上春樹さんが『エルサレム賞』を受賞した際の「壁と卵」についてのスピーチを思い出したんです。それによると、作家は常に……。

下岡:ああ、「卵の側に立つべき」というスピーチでしたよね。

―そう。「壁」が社会のシステムで、市井の人々の魂が「卵」であり、壁にぶつかったときに潰される存在であるとするならば、作家は常に卵の側に立って物語を創造するべきだと。

角舘:それなら、僕は卵は壁に触れないのが一番だと思うな。

下岡:なるほどね。

―角舘くんらしいね。

下岡:角舘くんってよく読書するの?

角舘:僕は普段あまり本を読まないんですよ。でも、ミュージシャンの自伝が好きで、最近だとラッパーの漢さんの自伝『ヒップホップ・ドリーム』とか、フィッシュマンズの解説本を読んだりしていますね。音楽に限らず、僕は男の孤独を表している作品がすごく好きで。

下岡:「フィッシュマンズが男の孤独を歌っている」という言い方は初めて聞いたけど、いいね。確かにそう言われたらそんな気がする。

角舘:フィッシュマンズは佐藤伸治の孤独がすごく色濃く曲に出ていると思うんですよ。「君と僕は愛し合ってる」とどれだけ歌ったところで、滲み出てしまう寂しさみたいなものをすごく感じる。そこにすごく惹かれるんです。

下岡:僕も19歳のときにフィッシュマンズに出会ったけど、やっぱりあのバンドと出会っていなかったら、自分の音楽人生は変わっていたと思う。まあ、19歳の僕は背伸びして聴いていたんだけどね。

角舘:ああ、僕もそうだったかも。

かつて山下達郎や大貫妙子がリアルに感じていたであろう、都会のニヒリズムに近いものを僕は持ってると思う。(角舘)

―角舘くんは今まさに1990年代のカルチャーに興味を持っていると思うのですが、いかがでしょう?

角舘:最近になって、90年代のカルチャーがどういうものだったのか気になっていますね。以前は「そういうカルチャーがあったらしいね」くらいの感じで捉えていたんですけど、いろいろな大人から、今の僕らが築こうとしているカルチャーの空気は、当時の渋谷系と呼ばれていた人たちのコミュニティーに似てると言われるんですよ。それだったらもっと当時のことを知りたいなと思って、小沢健二やフリッパーズ・ギターを聴き始めて。

―「現代のシティポップ」という文脈があるとして、ヨギーはその旗手のように語られることが多いけど、それに対してはどう思ってますか?

角舘:今、シティポップと呼ばれているバンドって、若い世代で趣味のいい音楽をやっているやつらが一括りにされてるだけだと思っていて。ほかにもっといい呼び名はないのかな? って思うんですよね。「シティギャングス」とか(笑)。「シティドッグス」でもいいけど。

角舘健悟

―ヨギーの音楽が向かっているのは、むしろいかに都会のノイズを遠ざけて桃源郷のような情景をリスナーに想起させるかってことですよね。

角舘:うん。癒しみたいなね。ずっと都会にはない桃源郷を探してる。だって、僕はリアルに都会で育ってるんですよ。極端なことを言えば、生まれてからずっと東京で暮らしていて、くさい空気を吸って、くさい水も飲んでる。かつて山下達郎や大貫妙子がリアルに感じていたであろう都会に感じるニヒリズムに近いものを僕は持ってると思う。そういう意味でも、同性代のバンドの中で、シティポップと呼ばれてホントに頷けるのはたぶんヨギーくらいだと思うんですよ。

下岡:なるほど、面白いね。でも、いろんなバンドが勝手にシティポップと紐付けられるのって当事者に罪はないよね。

角舘:そうそう。

下岡:僕は今のインディーの若い子たちを見てると、みんな演奏がうまいし、カッコいいなってシンプルに思う。たとえば今の僕らが30代で得ている感覚を、今のインディーシーンにいる若い子たちはすでに持ってるのかな、とか。

角舘:僕たちの世代は、YouTubeがない時代が信じられないという感覚があたりまえのようにあって。

下岡:そうなんだろうね。僕からするとすごい世代だなと思うけど、それが普通の感覚なんだよね。

カルチャーって守らないと壊れちゃうから。だから、牽引役ではなくて、固める役割になれたらなとは思う。(角舘)

―下岡さんは若いバンドマンからリスペクトも集めている一方で、現行のインディーシーンを羨ましいと思うところもありますか?

下岡:すごくありますね。今、角舘くんの話を聞いていても羨ましいなと思う。

左から:下岡晃、角舘健悟

―語弊があるかもしれないけど、アナログフィッシュはずっと孤独なイメージがありますよね。

下岡:そう。僕たちはどこにも属する場所がなくて(笑)。ちょこちょこ音楽仲間はいたりするんだけど、同世代のバンドで全体的に盛り上がる経験はしてないから。

角舘:そうか。でも、僕たちもそんな仲がいいわけではないんですよ。僕の性格がちょっと明るくて、人当たりがいいから、みんな「おお、健悟!」って言ってくれてるだけで。たぶんバンド同士はお互いの悪口とかもめっちゃ言ってるし(苦笑)。

下岡:それも正常だと思うよ。でもさ、角舘くんはたとえば5人とか10人の友達で遊ぶとしたら、そこに絶対いてほしいような人なんだよね。

角舘:ホントですか?(笑)

―わかります。角舘くんは年齢差関係なくムードメイカーになれる人だと思う。

下岡:年下感があんまりないんですよね。一応、敬語で話してくれてるんだけど、敬語の感じがしないというか(笑)。

角舘:あははははは。そういうところはあるかもしれないですね。何から何まで「イエス」って言う後輩よりも、たまには「ノー」って言う後輩がいたほうが面白くないですか?

下岡:そうだね(笑)。

角舘:あとは、人に気を遣うことに慣れちゃったんですよね。それは兄貴がいて、自分が弟だからというのもあると思うんですけど。兄貴はヤンチャというか、ちょっと気難しい人で。僕が家族の中で潤滑油のような存在だったんです(笑)。それに僕は嫌いな音楽ジャンルがないんですよ。だから、同世代のバンドもカッコよければ好きになれる。そういう僕からすると、このバンドとこのバンドはジャンル的に相反するっていう理由だけでお互いがいがみ合ってることに気づくと、もったいないなと思っちゃう。

―前に角舘くんと話してるときに「自分は東京のインディーシーンにおける牽引役になりたい」と言っていたことがすごく印象的だったんです。

角舘:正直、リリースのタイミングで言ったら、僕らが『PARAISO』をリリースしたときに一気に今のインディーシーンが盛り上がったと思うんですよ。それを経てみんな制作してるから『PARAISO』よりいい作品が生まれるのはあたりまえで。僕自身も『PARAISO』より売れてもらわなきゃ困ると思っているんです。そこでやっと対等になれると思うから。never young beachもSuchmosもLUCKY TAPESにもそう思う。そのうえで僕がシーンの牽引役になろうと思っていたんですけど、最近は別に牽引する必要はないなと思うようになりました。でも、カルチャーとして、ムーブメントとして、1つの形をしっかり固める役割を担う人もいなきゃいけないと思うんですよね。カルチャーって守らないと壊れちゃうから。だから、牽引役ではなくて、固める役割になれたらなとは思う。僕は性格的に損得勘定で人と付き合わないからちょうどいい役割なのかなとも思うし(笑)。

この日本に住んでいていろんなことが大好きでもあるんだよ。だからこそ、ヤなことはヤだって言って、いいと思ったことをいいと表明するしかないと思う。(下岡)

―やっぱり角舘くんは新たなカルチャーを形成するという思いが人一倍強いですよね。

角舘:単純に同時代のカルチャーが生まれることに興味があるんですよね。たとえばSex Pistolsからパンクファッションが派生していったような。そこに人間のエネルギーを感じるし、そのエネルギーをすごく愛おしいと思うから。

下岡:うん、そういう動きがないとつまらないよね。

角舘:でも、僕はカルチャーの趣向が合わない人に「ノー」を突きつけるのはヤなんですよ。

―排他的にはなりたくない。

角舘:そう、誰も疎外はしたくない。それだと争いが起こるじゃないですか。だからトランスカルチャーでありたい。

―さっき壁と卵の話をしたときに、角舘くんは「卵は壁に触れないのがいいと思う」って言ったじゃないですか。それもすごく角舘くんらしいなと思いました。

角舘:最近、芸術とは何かってことをすごく考えるようになって。芸術はたぶん、人間のエネルギーそのものだって結論に至ったんですけど。さっきの話で言えば、卵が人間の魂で、それをアートの根源とするならば、壁にぶつかるべきでないと思ったんですよね。

―でも、卵として果敢に壁にぶつかっていくアーティストもいるし、そのアティチュードがパンクでありレベルミュージックの源泉になる面もありますよね。それに対してはどう思いますか?

角舘:う~ん……。僕は子どものころから私立の学校に通っていて、先生にも友達のお母さんにもおべっかを使わなきゃいけないみたいな環境で育ったんですよ(笑)。そうやって子どもの頃から背負わなくちゃいけない余計なものが多かったなと。だから、自分が生み出す音楽くらいは自由でありたいと思う。下岡さんはどうですか?

下岡:それは角舘くんの発想としてありだと思う。僕は、卵が壁にぶつかっていってもいいと思うんですよ。ただ、自分の一番やりたい表現で壁を越えていくことを試みたいと思う。自ら壁に向けてぶつかっていこうとはしていないけど、腹立たしいと思ってることは歌ってるという感覚もある。基本的にずっとイライラしてるし(笑)。角舘くんは今、何歳だっけ?

角舘:23歳です。

下岡:若者はいつの時代でも明るい未来を思い描くと思うんだけど、角舘くんや周りの同世代の人は今の世の中をどう見てるのかな?

角舘:周りの同世代のやつらが何を考えているのかは正直よくわからないし、みんな自分の仕事や生活で精一杯なんだろうなって。就職1年目の人も多かったりして、その環境の中で考え得る幸せに目がいく人のほうが多いと思う。僕たちは「さとり世代」とか言われるんですけど、自分の大切な人や友達といるときに「明日もし僕が戦争に行ったらどうする?」という話になることもあるんです。そこで僕自身や親しい人たちは、そういう状況になってしまったら悲しいし、その悲しさを受け入れることしかできないのかなと思ってるところは正直ありますね。

左から:下岡晃、角舘健悟

―悲しいという感情が前に出る。

角舘:うん。この前、SEALDsに所属してる子たちがライブに遊びに来てくれたことがあって。僕らの音楽やスタンスに共感する部分があったのか、「私たちの応援をしてほしいです」と言われたんですね。そこで僕が思ったのは、SEALDsの主張そのものに対して賛同するというよりも、若者が躍起になってるその姿が美しいということで。そのエネルギーが感動的だという思いで彼らのツイートをRTしたんですけど。

―社会的な主張よりも人間の熱量にこそ興味があるということ?

角舘:そう。僕はどうしてもそっちに興味を持つみたいです。

下岡:それはそれでスタンスとして明確だよね。ある意味では、非暴力というか、ガンジーみたいだなとも思うし。

角舘:下岡さんはどうですか?

下岡:僕は今の日本の現状は全部ヤだと思ってるよ(笑)。でも、この日本に住んでいていろんなことが大好きでもあるんだよ。

角舘:その感じはすごくわかります。

下岡:だからこそ、ヤなことはヤだって言って、いいと思ったことをいいと表明するしかないと思う。それはもはや政治云々は関係ないレベルでも。

角舘:うん。僕もSEALDsのそういうシンプルな意思に感動したんだと思うんですよね。だから、根本的には「今、生きてるよ!」ってことを表現したいし、生きているということそれ自体に正直にありたいと思う。

下岡:うん、まずはそこから始まるよね。

角舘:今の僕が思ってるのは、みんなで奥多摩に行って遊びたい(笑)。

下岡:うん、すごくいいと思う(笑)。

リリース情報
アナログフィッシュ
『Almost A Rainbow』(CD)

2015年9月16日(水)発売
価格:2,916円(税込)
felicity cap-235 / PECF-1125

1. Baby Soda Pop
2. F.I.T.
3. Will
4. No Rain(No Rainbow)
5. Tired
6. 今夜のヘッドライン
7. Walls
8. Hate You
9. 夢の中で
10. こうずはかわらない
11. 泥の舟

イベント情報
アナログフィッシュ
『Almost A Rainbow』

2015年11月7日(土)OPEN 18:00 / START 18:30
会場:宮城県 仙台 LIVE HOUSE PARK SQUARE

2015年11月14日(土)OPEN 17:30 / START 18:00
会場:愛知県 名古屋 CLUB UPSET

2015年11月15日(日)OPEN 17:15 / START 18:00
会場:大阪府 Music Club JANUS

2015年11月17日(火)OPEN 18:30 / START 19:00
会場:福岡県 the voodoo lounge

2015年11月21日(土)OPEN 17:15 / START 18:00
会場:東京都 渋谷CLUB QUATTRO

料金:各公演 前売3,500円 当日4,000円(共にドリンク別)

プロフィール
アナログフィッシュ

3ピースにして、2ボーカル+1コーラス。唯一無比のハーモニーを響かせる、希代のロックバンド。下岡晃(Vo,Gt)の世に問う社会的なリリックと、佐々木健太郎(Vo,Ba)の熱々な人間讃歌が、見事に交差する楽曲群と、斉藤州一郎(Dr.Cho)のしなやかかつファットなプレイに、やられっぱなしの諸氏多し。

Yogee New Waves(よぎー にゅー うぇーぶす)

都会におけるポップスの進化をテーマに、東京を中心に活動する音楽集団。2013 年6月、KakudateとInoueを中心に活動開始。楽曲制作に勤しむ。SUMMER SONICの『でれんのサマソニ2013』の最終選考に選出され、選考ライブがまさかのバンド初ライブとなる。9月にはTetsushi Kasuya(Dr)、Mitsuhiro Matsuda(Gt)が加入し、11月にE.P.『CLIMAX NIGHT』を自主制作。ライブ会場のみの販売で、初回生産分は即座に完売する。今年1月、全国の大学生音楽サークルが参加するコンテスト形式の音楽イベント『SOUND YOUTH』の最終選考10組に選出され、渋谷O-EASTでライブ。見事、会場の最多投票数を獲得し『Sound Better賞』を獲得。そして、2014年4月にデビューep『CLIMAX NIGHT e.p.』を全国流通でリリース。7月末の『FUJI ROCK FES'14』のRookie A Go Goに出演。その後、Booked!、セイハローフェスと野外フェスに出演。そして9月には1stアルバム『PARAISO』をリリース。



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