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近田春夫を本気にさせたTeddyLoid、ディープな音楽談義

近田春夫を本気にさせたTeddyLoid、ディープな音楽談義

TeddyLoid『SILENT PLANET』
インタビュー・テキスト
黒田隆憲
撮影:永峰拓也

彼のトラックを聴いていると、無意味な音が1つもないのね。なぜならキーボード奏者って、自分で説明できない音は入れられないから。(近田)

―すでにミュージシャンとしてのポジションを確立していた近田さんが、ラッパーになろうと思った理由は?

近田:普通のメロディーよりも自由度の高いラップに、アートフォームとしての新しさを感じたんだよね。だから、自分の中のB-BOY的気質とは別のところで惹かれた。つまりラップやってなくても、ずっと俺はB-BOYだったんだろうなと思う。もはや「ボーイ」じゃないけどさ(笑)。それからトラックメイキング。要は「どれだけいいループを作れるか?」ということを、ビブラストーンでは追求していた。とにかく音数をミニマムにして、それで飽きないループを作るのはどうしたらいいのか、1小節のフレーズを延々と繰り返しても飽きない構造って一体どんなのなのか。そこを理解するのには、5年くらいかかったかもね。

TeddyLoid:僕が作っているフレンチエレクトロも、もちろんループミュージックですから、1小節でどれだけ飽きさせないフレーズを作るかということは常に意識しています。ただ、僕の作る8小節と、近田さんが当時やっていた8小節では、重みが全く違いますね。なぜかというと、コンピューターだったら簡単にコピペができてしまうから。人力で飽きさせない8小節を作り込む凄さというのは、もう計り知れない。ビブラストーンが現役だった時代へ行って、近田さんの作業を横で見てみたいです。

左から:近田春夫、TeddyLoid

近田:作っては聴く、作っては聴くの繰り返し。それを演奏してみて飽きないかどうか確かめるってことを、延々とやってました(笑)。でもミュージシャンって、自分の作った曲に対して客観的なジャッジをするのはなかなか難しいんだよ。その点、DJは自分のトラックに対して客観的なジャッジを下せる。

TeddyLoid:ああ、確かにそうかも。

近田:だから俺、気づいたんだけど、DJとミュージシャンの違いって、ミュージシャンは「聴かせたい曲」を作り、DJは「聴きたい曲」を作るってことなんじゃないかと。音楽を使って何かを訴えたいのではなく、聴きたいものがないから自分で作るっていう。俺がそういう視点を持てるようになったのは、うんと若い頃に「箱バン」の体験があるからだと思う。バンド演奏で踊るディスコみたいなところで、当時のヒット曲を一晩中カバーしてたの。それはとても楽しかったんだけど、今考えるとやっていることはDJと一緒なんですよね。客に踊ってもらうためだけに演奏しているんだから。だって客は俺らに向かって、「あの曲『かけて』よ」って言うんだよ。ジュークボックスかよ! って(笑)。でも、そこで踊っている人へのサービス精神みたいなものが、クラブミュージックの原点のような気がする。別に俺のことなんて見てくれなくったっていいっていうさ。テディくんもそういう感覚あるんじゃない?

TeddyLoid:ありますね。あと、僕も近田さんと「ここが共通点だな」と思っていたことがあって。近田さんって、3歳の頃からピアノを習っていらっしゃいますよね? 僕は2歳からエレクトーンをやっているんです。鍵盤楽器に小さい頃から触れているというのは、自分にとって大きかったんですけど、近田さんはどうでしたか?

近田:それは確かに大きいかもしれないね。鍵盤が頭の中にある人とない人って、たぶん音楽を作る上での便利さが全然違うんじゃないかな。楽器がなくても頭の中で全部組み立てられるでしょ?

TeddyLoid:そうなんです! 僕、近田さんのラップを聴いていて「あ、これ全部頭の中で曲が流れてるんだな」って思ったんですよ。

近田:彼のトラックを聴いていると、無意味な音が1つもないのね。なぜならキーボード奏者って、自分で説明できない音は入れられない。感性だけでやっている人って、なんかワケわからない無意味なものが入っていて、それは聴けばわかるんだ。でも音楽って、感性だけじゃなくて数学的な部分も大きいから。たださ、そういうことをラッパーが言うのはカッコ悪いんじゃないかってずっと思ってた。だって、オーケストラのスコアが書けるなんて、あまりにもB-BOY的じゃないじゃん。

TeddyLoid:(笑)。僕はよく、「似ているアーティスト」として中田ヤスタカさんを挙げられることが多いんですけど、実は一番似ているのって近田春夫さんなんじゃないかって最近は思ってるんです。ロカビリーの話にしても、鍵盤の話にしても、俺のルーツは近田さんなんですよきっと。

近田:泣いちゃうよ、そんなこと言われたら(笑)。

近田春夫

海外のクリエイターが聴いたことのないような音を出していて、それをなんとか真似したい、自分でもオリジナルな音を出したいって思って作っているんです。(TeddyLoid)

―アカデミックな素養を持っていた近田さんが、ストリートミュージックに惹かれていったのはなぜだったんでしょうか?

近田:とにかく好奇心が人一倍あって、新しい音楽が出てくると、それがどんな仕組みになっているのかを知りたくて仕方なくなるんですよ。例えばクラシック音楽って、聴けばどの楽器がどんなフレーズを奏でているかわかるんですね。でも、いわゆるポップミュージックとかロックとか、電気を通している楽器は、「一体この音はどんな風に作っているんだ?」となるんです。要するに人工的な音に対する興味がメチャクチャあったんですよね。

―ナチュラルなギターの音なら聴けばわかるけど、ファズで歪ませた音は一体なんなのか、わからないみたいな。

近田:そう。The Rolling Stonesの“Satisfaction”も、イントロのファズギターを最初サックスだと思ってた(笑)。The Venturesの“10番街の殺人”も、間奏で謎の音がするんですよ。オルガンのようでもあるし、でも何でポルタメント(ある音から別の音に移る際に、徐々に音程を変えながらなめらかに繋ぐ演奏技法)しているんだろう? と思って。そのうち自分でもそういう音を出したくなって、色々な機材を実験しつつ使い倒していく過程で、手足のように使いこなせるようになっていった。トランステクノのキック音とか、どうやって作ってるのかメチャクチャ研究したよ。あれはさ、サイン波に音程のエンベロープ(時間とともにパラメーターを変化させること)をかけてるの。そうするとキックが高い音から「トゥーン」って下がっていく。それをグッと縮めると、「ドゥン、ドゥン」って音になるんです。そこに気づくのに3年かかったかな。

TeddyLoid:僕もヒップホップに出会ったときは、それまでクラシック音楽しか触れてこなかったからホント衝撃的でした。ヒューマンビートボックスやスクラッチを聴いて、これを真似したい、自分でもこの音を出したいって思いましたね。今やっていることもほとんどその延長で、海外のクリエイターが聴いたことのないような音を出していて、それをなんとか真似したい、自分でもオリジナルな音を出したいって思って作っているんです。

近田:そうだね。一生に一度で良いから、これまでになかった音楽が作れたらって思う。ほんと、些細なことでもいいんだけど、それをみんなが「真似したい」って思わなかったら、シーンは変わっていかないんだよね。俺が思うに、ダンスミュージックの世界では、今のところ「サイドチェインコンプ」が最後の発明じゃない?(笑)

TeddyLoid:あははは! いやー、すごい。ホントそうかもしれない。サイドチェインコンプっていうのは、フレンチエレクトロ系の楽曲では定番のワザなんですけど、キックの音をトリガーにしてコンプをかけるんですね。そうすると、キックが鳴った瞬間全体の音が下がるんです。フワッ、フワッて。

近田:逆回転みたいに聴こえるんだよね。そもそもサイドチェインコンプって、ラジオ放送局で使われていたんですよ。ナレーションが入ったときだけBGMの音量を絞りたいけど、いちいちミキサーで下げるのも面倒くさいというので開発されたものなんです。だから、サイドチェインコンプの原理そのものは、これまでもずっと使われてきたワケじゃない? それをキックに使ったとことが「発明」だったわけで、「発見」ではない。

TeddyLoid:そうですね。ほんと面白いなあ。

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リリース情報

TeddyLoid『SILENT PLANET』初回限定盤
TeddyLoid
『SILENT PLANET』初回限定盤(2CD)

2015年12月2日(水)発売
価格:3,564円(税込)
KICS-93324

[DISC1]
1. Game Changers with 中田ヤスタカ(CAPSULE)
2. Searching For You feat. 柴咲コウ
3. All You Ever Need feat. ☆Taku Takahashi(m-flo)
4. Secret feat. 池田智子 from Shiggy Jr.
5. Last Teddy Boy feat. HISASHI from GLAY
6. Break’em all feat. KOHH
7. We Are All Aliens with WRECKING CREW ORCHESTRA
8. Lion Rebels feat. JUN 4 SHOT from FIRE BALL & N∀OKI, NOBUYA & KAZUOMI from ROTTENGRAFFTY
9. VIBRASKOOL feat. 近田春夫(Professor Drugstore a.k.a. President BPM) & tofubeats
10. Above The Cloud with 小室哲哉
11. はじらい Like A Girl feat. 志磨遼平 from the dresscodes
12. Grenade feat. 佐々木彩夏 from ももいろクローバーZ
[DISC2]
1. Game Changers with 中田ヤスタカ(CAPSULE)(Extended Mix)
2. Above The Cloud with 小室哲哉(Extended Mix)
3. All You Ever Need feat. ☆Taku Takahashi(m-flo)(Extended Mix)
4. Secret feat. 池田智子 from Shiggy Jr.(Dub Mix)
5. Grenade feat. 佐々木彩夏 from ももいろクローバーZ(Ambient Mix)
6. Searching For You feat. 柴咲コウ(Ambient Mix)

TeddyLoid『SILENT PLANET』通常盤
TeddyLoid
『SILENT PLANET』通常盤(CD)

2015年12月2日(水)発売
価格:3,024円(税込)
KICS-3324

1. Game Changers with 中田ヤスタカ(CAPSULE)
2. Searching For You feat. 柴咲コウ
3. All You Ever Need feat. ☆Taku Takahashi (m-flo)
4. Secret feat. 池田智子 from Shiggy Jr.
5. Last Teddy Boy feat. HISASHI from GLAY
6. Break’em all feat. KOHH
7. We Are All Aliens with WRECKING CREW ORCHESTRA
8. Lion Rebels feat. JUN 4 SHOT from FIRE BALL & N∀OKI, NOBUYA & KAZUOMI from ROTTENGRAFFTY
9. VIBRASKOOL feat. 近田春夫 (Professor Drugstore a.k.a. President BPM) & tofubeats
10. Above The Cloud with 小室哲哉
11. はじらい Like A Girl feat. 志磨遼平 from the dresscodes
12. Grenade feat. 佐々木彩夏 from ももいろクローバーZ

プロフィール

近田春夫(ちかだ はるお)

1951年生まれ。大学在学中よりバンド活動を始める。ロックンロール、歌謡曲、CM音楽、ヒップホップ、サイトランスなどなど、そのつど好奇心のおもむくまま、作詞、作曲、編曲、ライブ活動を不定期に続け今日に至る。賞罰ナシ。著作に『気分は歌謡曲』『考えるヒット』『定本 気分は歌謡曲』『僕の読書感想文』ほか。

TeddyLoid(てでぃろいど)

弱冠18才にして、雅-MIYAVI-のDJ~サウンドプロデューサーとして13か国を巡るワールドツアーに同行後、☆Taku Takahashi(m-flo / block.fm)と共にガイナックスのアニメ作品『Panty & Stocking with Garterbelt』のOSTをプロデュース、柴咲コウ、DECO*27とスペシャルユニット、galaxias!の結成、『COUNTDOWN JAPAN 12/13』での限定コラボレーション、"初音ミク×TeddyLoid"、ももいろクローバーZの『Neo STARGATE』のサウンドプロデュース~2013年の西武ドーム大会へのゲスト出演を果たす等、クラブミュージックのみならず、J-POP~ロック、サブカルチャーのシーンを自在に行き来し、話題を提供。2015年9月にはももいろクローバーZ初の公式Remixアルバム『Re:MOMOIRO CLOVER Z』をリリースし、遂に12月、オリジナルアルバム『SILENT PLANET』をリリース。

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