
METAFIVEインタビュー 幸宏、小山田らの比類なき最高峰バンド
METAFIVE『META』- インタビュー・テキスト
- 金子厚武
- 撮影:森山将人
突然変異のようなことが起きるのが、バンドの醍醐味なんじゃないですかね。(高橋)
―そもそもは1980年代のYMOの曲を今に再現する『テクノリサイタル』からスタートしているわけですが、アルバムは完全にMETAFIVEとしてのオリジナルになっていますね。
高橋:スタート当初は、半分YMOのパロディーですからね。アルバムを作ろうとなった段階では、1人2曲ずつ作ろうって自ずと決まっていきました。僕はこれまでいろんなバンドを組んできましたけど、こんなに他のメンバーに任せっぱなしにしたのは初めてです。YMOのときだって、こんなに任せられなかった。若い頃は「こういう風にやりたいんだよ」というエゴがあったんですけど、今はそれが全然なくなって、これまでになかった経験ができました。それって、すごい楽なんですよね。
―つまりは、METAFIVEの中では幸宏さんも1/6だと。
高橋:完全にそうですね。
TEI:まあ、幸宏さんがいなかったらこのメンバーは集まってないですけどね。
高橋:でも、今は吸収合併されちゃいましたから(笑)。
―1人2曲ずつ作ったということですが、何か方向性の共有はあったのでしょうか?
高橋:それはなかったよね。
砂原:TEIさんは、12曲揃った段階で「これは濃いね」って言ってましたよね。
高橋:それ、小山田くんも言ってたよ(笑)。
小山田:1人2曲作ることになって、みんなわりと力入れて作ったから、結果濃いものになっちゃったんですよね(笑)。まりんはわりと全体を俯瞰で見て、足りない要素として最後の方に曲を出してくれたんですけど。
―個人的には、1980年代YMOのテクノ感と、それ以前、もしくは2010年代YMOの生演奏のファンク感が同居しつつ、そこにメンバーそれぞれが持っている記名性の強い音色やリズムなどが加わることで、まったく新しいMETAFIVEとしてのオリジナリティーが生まれているように感じました。
高橋:どうなのかな……細野(晴臣)さんに聴かせたときは、そういう感想はなかったですね。
TEI:なんておっしゃってました?
高橋:「かっこいい」とか、「いいなあ」って言ってた。自分ではやらないでしょうけど(笑)。
―アルバムとして明確な方向性はなかったとのことですが、メンバー個々でYMOとの距離感を意識するような部分はあったのでしょうか?
TEI:まあ、小山田くんもゴンちゃんも今のYMOのサポートメンバーだし、幸宏さんはYMOの1/3なわけで、そこは自然と関係してきますよね。ただ、まりんが「動きたくなる感じがいい」っていうのは言ってましたね。細野さんがYMOを始めたときに言ってた「下半身モヤモヤ、みぞおちワクワク、頭クラクラ」とはまた違う意味で、踊りたくなる感じって。
高橋:ああ、そういえば言ってたね。体が動くようなって。
砂原:そもそもライブをやることから始まったので、ライブで演奏したいっていうのがまずあったんですよね。あとはライブに出て行くと、YMOの代用品として考えられているんじゃないかというのはちょっと気にしていて、それはあんまり気持ちよくないなと思って。METAFIVEとしての名刺が欲しかったので、それらしいものができあがってよかったです。
高橋:じゃあ、いい意味でYMOは意識しなかったってことだね。
砂原:そうですね。もちろん歴史を否定しているわけではなくて、そこは自然でいいと思って。
―血肉になっているものは、自然と出ているでしょうしね。
砂原:僕は普通に作っても、かなりYMOの引用が入ってきちゃうので(笑)。
―砂原さんがメインで作曲された“Luv U Tokio”という曲もありますもんね。じゃあ、一応「体が動くような」というのが始まりとしてはあったものの、それが明確なコンセプトになっているわけではないと。
高橋:1曲目“Don't Move”で始まってますからね(笑)。
TEI:YMOはもっとアルバムごとにコンセプトがあったんじゃないですか?
高橋:あった。最初の頃は三人で話して、『BGM』(1981年発売、4thアルバム)とか『テクノデリック』(同年発売、5thアルバム)の頃は細野さんと僕が毎晩夜中まで話してた。
―幸宏さんはソロ作もコンセプトがはっきりした作品が多いように思いますし、やはり今回はあくまで1/6なんでしょうね。
高橋:そうですね。まあ、コンセプトって、後からこじつけでどうにでもなるものなんですよ。ソロは自分の思い通りにいったりいかなかったりするけど、バンドっていうのは、やってるうちに「そういうことだったのか」って気づくことが多いように思います。そういう突然変異のような、メタモルフォーゼ的なことが起きるのが、バンドの醍醐味なんじゃないですかね。
リリース情報

- METAFIVE
『META』(CD) -
2016年1月13日(水)発売
価格:3,024円(税込)
WPCL-122941. Don't Move
2. Luv U Tokio
3. Maisie's Avenue
4. Albore
5. Gravetrippin'
6. Anodyne
7. Disaster Baby
8. Radio(META Version)
9. W.G.S.F.
10. Split Spirit(META Version)
11. Whiteout
12. Threads
イベント情報
- 『METAFIVE “pre-METALIVE 2016 ~「META」RELEASE party”』
-
2016年1月14日(木)OPEN 19:00 / START 20:00
会場:東京都 恵比寿 LIQUIDROOM
料金:5,800円(ドリンク別) - 『METAFIVE “METALIVE 2016”』
-
2016年1月21日(木)OPEN 18:30 / START 19:30
会場:東京都 六本木 EX THEATER ROPPONGI
料金:7,800円(ドリンク別)
プロフィール

- METAFIVE(めたふぁいぶ)
-
高橋幸宏×小山田圭吾×砂原良徳×TOWA TEI×ゴンドウトモヒコ×LEO今井。それぞれが日本の音楽シーンに特別で、独特な存在を築いてきたレジェンドの集合体である、まさに夢のバンド。2014年1月に六本木EX THEATERのオープニング企画として行われた、「高橋幸宏&METAFIVE」としての一夜限りのスーパー企画として結成され、その後不定期に活動を続行。同年の『TAICOCLUB'14』『WORLD HAPPINESS 2014』『SPACE SHOWER TV 開局25周年×攻殻機動隊25周年×日本科学未来館』、2015年の『WORLD HAPPINESS 2015』『OTODAMA'15~音泉魂~』に出演。圧倒的な存在感を示し、大きな賞賛を得る。2016年1月13日、遂にオリジナルアルバム『META』をリリース。