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これぞ大人の遊び、ドラマ『植物男子ベランダー』の余裕を探る

これぞ大人の遊び、ドラマ『植物男子ベランダー』の余裕を探る

m.c;ShockBoots『Botanical』
インタビュー・テキスト
天野史彬
撮影:豊島望

「文化」とか「豊かさ」って、「効率化」と真逆のものだと思うんですよ。「どこまで効率化させないか」っていう作業が大事だと思う。(さいとう)

―でも、「同じ部分でクスクスできる」という皆さんの間にある「共犯者意識」って、視聴者とも少なからず共有しなければいけないものなのかな、とも思うんですよね。

さいとう:本当にそう思います。僕、普段はあまり自分の曲の反応は気にならないんですけど、「MC植物」に関しては視聴者の反応がすごく気になったんです。特に今回って、m.c;ShockBootsのコミカルさに合わせて、あえてチープに作ってあるんですよ。だから、指摘しようと思えばいくらでもできるくらい隙のある状態の作品を送り出している。それが視聴者にどう届いているのか気になって……正直、かなりエゴサーチしました(笑)。

奥野:わかります。僕も放送された日、気になって「2ちゃんねる」を見ましたもん。このコーナー、本当に脈絡なく始まるじゃないですか(笑)。だからドラマの流れに合っているものなのかどうか、すごい気になっちゃって……。そしたら実際、「ラップいらねえ」とか「あいつラッパーじゃないじゃん」とか書かれていたんです。でも、そうやって賛否両論起こる方がいいと思ったし、僕はそこも込みで面白いと思うんですよね。

望月:そうそう。だって、主演の田口トモロヲさんの行動も隙だらけだからね(笑)。ドラマ自体、ツッコまれること前提なんですよ。でも、そういう隙間にこそ、人間の可笑しみや悲しみがあるんだよね。ドラマをやっていると、「現実にはこんな奴いねえよ!」っていう苦情が来たりして「了見狭いなぁ」って思うんですけど(笑)、そんなの、こっちだってわかって作ってるんです。それを見るのが楽しいんですよ。

さいとう:見ることや聴くことに対してどれだけ余裕を持ってもらえるか、ですよね。人間って、何に対してもディスったり指摘をすることは簡単にできるんですよ。完璧なものなんて世の中にはないんだから。だからこそ、余裕をもって乗り込んでほしいし、僕らも「文句言わず、この世界観を味わってみよう」って思ってもらえるよう、たとえチープさを狙っていても、その中に強固な骨組を作らなければいけないんです。

―「余白」や「隙」を共有することって、文化的に豊かでなければできないことだと思うんですけど、『植物男子ベランダー』は、本当に文化的に豊かな作品ですよね。

さいとう:本当にそう思います。「文化」とか「豊かさ」って、「効率化」と真逆の場所にあるものだと思うんですよ。「どこまで効率化させないか」っていう作業が大事だと思う。

望月:今回のミュージックビデオにしたって、植物の画だけ映していれば効率的だし、楽なわけですよ。でもやっぱり、奥野に出てもらって、昭和記念公園で派手な格好をしてやること自体に可笑しさがある(笑)。そういう、くだらない面白さをどんどん削除してしまうと、本当につまらないものしか残らないから。そこには抵抗したいですよね。

左から:望月一扶、奥野瑛太、上鈴木伯周、さいとうりょうじ

ヒップホップも植木も役者もそうですけど、敷居が高いようにみえて、制約がある中でも実は自由なものが多分にあるものだと思うんです。(奥野)

―この文化的な豊かさって、ヒップホップがずっと持っていたものでもあると思うんです。最初にヒップホップを生んだ人たちって、社会的に置かれた状況としては厳しくて貧しかったかもしれないけれど、彼らにはたくさんのレコードコレクションや斬新なアイデアがあって、文化的にはすごく豊かだった。時代が貧しくなると、文化はそこに向き合うためにどれだけ豊かであれるのかが大事だと思うんですよね。

上鈴木:望月さんくらいの世代の映像作家って、一番早いヒップホップ世代なのかも。クエンティン・タランティーノとかもそうだけど、リズム感と発想が、知らず知らずのうちにヒップホップになっているんですよね。

望月:世代的には、原体験にThe BeatlesやQUEENがあるんだけど、途中からBeastie BoysやRUN DMCが出てきてカルチャーショックを受けているんだよね。まぁ、もともと音楽が好きでカセットテープで「マイベスト」を作っていたような人間だから(笑)、A面はロックから始めて、B面はソウルで……みたいなバイオリズムの中で番組を作るのが好きなんですよ。

さいとう:ヒップホップが出てきたことで、音楽はメロディーから解放されたんですよ。

望月:そうか。「悲しい場面は顔アップで泣く」とか、そういうテレビドラマの固定観念から解放するっていう自由度は、たしかにヒップホップ的かもしれないね。

奥野:今回初めてちゃんとラップしてみて感じたのは、ヒップホップも植木も役者もそうですけど、敷居が高いようにみえて、制約がある中でも実は自由なものが多分にあるものだと思うんです。『サイタマノラッパー』の頃からいろんなヒップホップの方々と交流して、ヒップホップって本当にウェルカムなジャンルであることを痛感させられてますし。だから役者がラッパーをやること自体、ヒップホップ的だと思うし、こういうこと、もっとやっていいんだなって思いました。

上鈴木:でもまさか、CDになるとはなぁ……。DVDもついていて、いとうせいこうさんもラップしているし、すごいゴールがあったもんだよね(笑)。

左から:奥野瑛太、上鈴木伯周

―今の時代、ここまでいろんな分野を巻き込んだメディアミックスは珍しいし、「楽しいことをやる」という1点に全力で向かって行くことで、どんどんと輪が広がっていくのは本当にドラマがありますよね。

望月:嬉しいことですよ、本当に。P.O.Pの1stアルバムのタイトルは『たのしいことばかりありますように』だし、そこもうまくはまったよね。

上鈴木:m.c;ShockBootsさんも、植物にたとえて上手いこと言ってくださいよ。

奥野:そうっスね。えっと、ヒップホップは植物に例えると「朝顔」っス。

一同:おおっ!

―その心は?

奥野:朝顔って、育ちすぎて隣の家まで行っちゃって迷惑がられるときもあるけど、そこで花を咲かせれば「あらキレイ」って言われる。だからヒップホップもm.c;ShockBootsもそうですけど、いろんなジャンルと結びついて、イメージで食わず嫌いをされることもあるかもしれないですけど、実際に聴けばかっこいい……ということです! これがm.c;ShockBootsのヒップホップっスよ!

奥野瑛太

一同:(ゆる~い拍手)

上鈴木:わかるようでわからなかったけど。

さいとう:用意すべきは衣装じゃなかったな(笑)。

奥野:はい……。

上鈴木伯周、奥野瑛太、望月一扶、さいとうりょうじ

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リリース情報

m.c;ShockBoots『Botanical』
m.c;ShockBoots
『Botanical』(CD+DVD)

2016年2月17日(水)発売
価格:2,700円(税込)
UVCA-3034

[CD]
1. BAOBAB UPSIDE-DOWN
2. SA・BO・TE・N
3. 柘榴 zakuro
4. take 竹
5. S.O.B.Aを打つよ feat. スベトラナK
6. enter the Kemushi feat. RUN K:mc
7. BAOBAB UPSIDE-DOWN(Without Vocal)
8. SA・BO・TE・N(Without Vocal)
9. 柘榴 zakuro(Without Vocal)
10. take 竹(Without Vocal)
11. S.O.B.Aを打つよ feat. スベトラナK(Without Vocal)
12. enter the Kemushi feat. RUN K:mc(Without Vocal)
[DVD]
1. BAOBAB UPSIDE-DOWN
2. SA・BO・TE・N
3. 柘榴 zakuro
4. take 竹
5. S.O.B.Aを打つよ feat. スベトラナK
6. enter the Kemushi feat. RUN K:mc
7. enter the Kemushi feat. RUN K:mc メイキング

イベント情報

『NHK BSプレミアム「植物男子ベランダー」presents「MC植物」m.c;ShockBoots「Botanical」発売記念スペシャルイベント』

2016年3月14日(月)START 19:00
会場:東京都 タワーレコード渋谷店 B1F CUTUP STUDIO
出演:
いとうせいこう
m.c;ShockBoots(奥野瑛太)
P.O.P
田口トモロヲ

『P.O.P ワンマンライブ ~360°Premium LIVE~ Once Again!!』

2016年3月25日(金)OPEN 19:00 / START 20:00
会場:東京都 代官山LOOP
出演:P.O.P
ゲスト:
椎名純平
m.c;ShockBoots(奥野瑛太)
料金:前売3,400円 当日3,900円(共にドリンク別)

番組情報

『植物男子ベランダー SEASON3』

2016年4月からNHK BSプレミアムにて、第1第2木曜日23:15から放送予定

プロフィール

奥野瑛太
奥野瑛太(おくの えいた)

1986年2月10日生まれ、北海道出身。主な出演作は、『SR サイタマノラッパー』『SR サイタマノラッパー~ロードサイドの逃亡者~』(入江悠監督)、『クローズEXPLODE』(豊田利晃監督)、『そこのみにて光輝く』(呉美保監督)、『TOKYO TRIBE』(園子温監督)、『ソレダケ/that`s it』(石井岳龍監督)、『ラブ&ピース』(園子温監督)、『セーラー服と機関銃~卒業~』(前田弘二監督)、『64-ロクヨン-』(瀬々敬久監督)。

望月一扶(もちづき かずほ)

テレコムスタッフ所属 ディレクター。『植物男子ベランダ―』構成、脚本、演出、選曲。『星新一ショートショート』で第37回国際エミー賞、コメディ部門グランプリ受賞。

P.O.P
P.O.P(ぴー おー ぴー)

双子MCの上鈴木兄弟とギタリストで作曲家の「スーパースター」さいとうりょうじを中心としたHIP HOPバンド。上鈴木兄弟は映画『SR サイタマノラッパー』シリーズ全編においてラップ監修・指導を担当。また、NHK Eテレ『ムジカ・ピッコリーノ』『シャキーン!!』や企業CMなど多数の楽曲制作・ラップ監修を務め、幅広い年代にラップを届けている。キーワードは「たのしいことばかりありますように」。ライブで観客にビールを配りまくるスタイルが話題。2015年12月2ndアルバム『おかあさんにきいてみないとわからない』発売。「双子 ビール」で検索してください。

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