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これぞ大人の遊び、ドラマ『植物男子ベランダー』の余裕を探る

これぞ大人の遊び、ドラマ『植物男子ベランダー』の余裕を探る

m.c;ShockBoots『Botanical』
インタビュー・テキスト
天野史彬
撮影:豊島望

奥野くんは昭和の義理人情で生きている男なので(笑)、いただいた話に対しての責任感が異常なんです。(さいとう)

―リリックの名義は基本的に「m.c;ShockBoots & 上鈴木伯周」となっていますね。奥野さんもリリック作りに参加されているんですか?

上鈴木:というか、ほとんど奥野ですよ。俺はどちらかといえば、ラップとしての体裁を整えただけですね。

―そうなんですか! どれもものすごくクオリティーが高いリリックですよね。植物の知識とメッセージ性のバランスが見事です。

上鈴木:最初に植物の名前をお題として投げられるんですけど、その植物について一番調べていたのは奥野でしたね。言葉数が多すぎると思って俺が削ろうとすると、「いや、この植物のテーマで、このラインを入れないのはマズイっすよ」みたいな(笑)。でもよく考えたら、奥野は普段から実際に植木を触っているんだよね。

奥野:そうなんですよ。植木屋の作業をしながらラップを考えていて。

上鈴木:ガチでm.c;ShockBootsじゃん(笑)。

左から:奥野瑛太、上鈴木伯周

奥野:そう、ガチなんですよ。剪定(木の枝を切る)する際は、木の全体のフォルムが柔らかい印象になるようにすごく気をつけますからね。だから今回も、“enter the Kemushi”でせいこうさんが「葉っぱと毛虫のバトルをラップしよう」と言ったときは本当嬉しくて。もう椿とか山茶花とかにチャドクガの幼虫がよくつくんですけど、そいつらは植木屋の天敵なんです。ヤッケ(フード付きの作業着)を着てても、作業している合間に痒くなってくるし、本当に大量にいるしで、「ああ、やっと、俺が普段思っているリアルな気持ちをラップできる!」と思って。チャドクガが、本当に嫌だったから。

mc;ShockBoots feat.RUN K:mc
mc;ShockBoots feat.RUN K:mc

―リアルですね(笑)。でも、ラップの話を受けた後に上鈴木さんに相談することもそうですけど、奥野さんのラップに対する思い入れは強いものがありますね。

さいとう:奥野くんは、とてつもない責任感の塊なんですよ。昭和の義理人情で生きている男なので(笑)、いただいた話に対しての責任感が異常なんです。

奥野:僕は、ラッパーとしてステージに立っているわけではないんですけど、ヒップホップの世界に友達も多いので、軽はずみに「サングラスかけていればラッパーです」みたいなことは言えないしやれない。なので、「ちゃんとやりたい」という気持ちは、m.c;ShockBootsに詰まっていると思います。とはいえ、ちゃんと自分でラップを作ったのは今回が初めてなんです。変な話、「脚本も書かせてくれるのか?」という感覚もありました。

奥野瑛太

望月:なるほど。俳優は使われてなんぼだし、脚本の中でその役を生きるわけだけど、今回の奥野瑛太は「植物」というお題はありつつも、自分をストレートに表現できたものなんだね。

上鈴木:これは奥野にしかできないし、それを見つけた望月さんもすごいですよ。

「好きにやってください。あとはこっちがまとめますから」というスタンスなんです。でも、そうやって作る方が「大人の遊び」としては楽しいと思う。(望月)

―奥野さんから見て、望月さんは他の演出家の方々と違いますか?

奥野:違いますね。それこそ役者の俺にラップを頼むのって、軽いことのように見えるけど、失敗する「怖さ」もあるじゃないですか。ドラマ本編の脚本を読んでも思うんですけど、余白がすごくあるんですよね。「この余白を成立させて面白くさせるのが役者の仕事だぞ」って、望月さんは笑いながら要求してくるんです。だから、みんな「どうやったら面白くなるんだろう?」って四苦八苦しながら作る。だけど、俺はそれが「演出」だと思うんですよ。

望月一扶

望月:「好きにやってください。あとはこっちがまとめますから」というスタンスなんです。でも、そうやって作る方が「大人の遊び」としては楽しいと思う。

奥野:「大人の遊び」の中に加えていただいたんだなっていう感覚はすごくありました。

―奥野さんがおっしゃった「余白」って、ものを作る上で重要なキーワードになると思うのですが、楽曲制作においても感じますか?

さいとう:感じますよ。今はパソコンを使えば一人で何でも作ることができる世の中だけど、人が一人で作ったものって、見る人や聴く人の想像の範疇を超えないんですよね。僕は一人で作ることも多いけど、だからこそ今回は、僕が作り込む前の段階で、音楽的な視点を入れずにみんなに揉んでもらいました。

望月:すごくわかる。前に、絵コンテを書いて撮ったことがあるんですよ。カットやアングル、カメラワークも全部自分で決め込んで撮ったんだけど、できあがったものが全然面白くないんだよ。何が面白くないかって、りょうじさんが言ったように、想像の範疇を超えていないんですよね。自分が最初にイメージしたものを撮っただけだから、つまらない。

上鈴木:1周目でいいものが作れることって、そんなにないですよね。反省も含めてそうなんですよ。時間をかけてこねて、それが結果的にゼロになったとしても、それはいいはずなんです。

―それぞれの専門分野に専念して、お互いの間に「余白」を産み出しながらひとつの作品を作る。この感覚って、ヒップホップクルーの感覚に近くないですか?

望月:テレビ界のN.W.A.(1986年に結成された伝説的ヒップホップグループ)だ(笑)。

さいとう:そんなにかっこいいものじゃないですよ(笑)。……でも、細かい部分での正解不正解ではなくて、何が僕らにとってのゴールなのか、全員の間に共通認識があったからこそ、このクルー感は生まれたのかもしれないです。題材の面白がり方とか、パクり具合とか、同じ部分でクスクスできる面子だった。それに、顔の見えない人たちと作っていなかったのも大きいですね。ちゃんと挨拶もできたし、スタッフの皆さんが僕らのライブを観に来てくれたりしたから、直接会っていなくても、みんなで作っている感じがありましたね。

さいとうりょうじ

上鈴木:でも、奥野が「そんなことできません」っていうタイプの役者だったら、この関係性は一気に崩壊するんだよね。望月さんが厳しすぎたら、それもまたダメだっただろうし。

望月:そこはプロフェッショナリズムだよね。りょうじさんの作曲能力、伯周さんのリリックのまとめ方、奥野の役者としてのパッション……そういうものをお互いが認め合って、プロフェッショナルとして作っていったところに、最後は、せいこうさんも加わってくれた。それはすごくいい流れでしたね。今の時代って、「一人勝ちできればいい」みたいな風潮があるじゃないですか。俺、それがすごく嫌だから。どうせだったら、みんなで寄り合って、力を借り合って楽しいことをしたほうが絶対に面白いよ。

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リリース情報

m.c;ShockBoots『Botanical』
m.c;ShockBoots
『Botanical』(CD+DVD)

2016年2月17日(水)発売
価格:2,700円(税込)
UVCA-3034

[CD]
1. BAOBAB UPSIDE-DOWN
2. SA・BO・TE・N
3. 柘榴 zakuro
4. take 竹
5. S.O.B.Aを打つよ feat. スベトラナK
6. enter the Kemushi feat. RUN K:mc
7. BAOBAB UPSIDE-DOWN(Without Vocal)
8. SA・BO・TE・N(Without Vocal)
9. 柘榴 zakuro(Without Vocal)
10. take 竹(Without Vocal)
11. S.O.B.Aを打つよ feat. スベトラナK(Without Vocal)
12. enter the Kemushi feat. RUN K:mc(Without Vocal)
[DVD]
1. BAOBAB UPSIDE-DOWN
2. SA・BO・TE・N
3. 柘榴 zakuro
4. take 竹
5. S.O.B.Aを打つよ feat. スベトラナK
6. enter the Kemushi feat. RUN K:mc
7. enter the Kemushi feat. RUN K:mc メイキング

イベント情報

『NHK BSプレミアム「植物男子ベランダー」presents「MC植物」m.c;ShockBoots「Botanical」発売記念スペシャルイベント』

2016年3月14日(月)START 19:00
会場:東京都 タワーレコード渋谷店 B1F CUTUP STUDIO
出演:
いとうせいこう
m.c;ShockBoots(奥野瑛太)
P.O.P
田口トモロヲ

『P.O.P ワンマンライブ ~360°Premium LIVE~ Once Again!!』

2016年3月25日(金)OPEN 19:00 / START 20:00
会場:東京都 代官山LOOP
出演:P.O.P
ゲスト:
椎名純平
m.c;ShockBoots(奥野瑛太)
料金:前売3,400円 当日3,900円(共にドリンク別)

番組情報

『植物男子ベランダー SEASON3』

2016年4月からNHK BSプレミアムにて、第1第2木曜日23:15から放送予定

プロフィール

奥野瑛太
奥野瑛太(おくの えいた)

1986年2月10日生まれ、北海道出身。主な出演作は、『SR サイタマノラッパー』『SR サイタマノラッパー~ロードサイドの逃亡者~』(入江悠監督)、『クローズEXPLODE』(豊田利晃監督)、『そこのみにて光輝く』(呉美保監督)、『TOKYO TRIBE』(園子温監督)、『ソレダケ/that`s it』(石井岳龍監督)、『ラブ&ピース』(園子温監督)、『セーラー服と機関銃~卒業~』(前田弘二監督)、『64-ロクヨン-』(瀬々敬久監督)。

望月一扶(もちづき かずほ)

テレコムスタッフ所属 ディレクター。『植物男子ベランダ―』構成、脚本、演出、選曲。『星新一ショートショート』で第37回国際エミー賞、コメディ部門グランプリ受賞。

P.O.P
P.O.P(ぴー おー ぴー)

双子MCの上鈴木兄弟とギタリストで作曲家の「スーパースター」さいとうりょうじを中心としたHIP HOPバンド。上鈴木兄弟は映画『SR サイタマノラッパー』シリーズ全編においてラップ監修・指導を担当。また、NHK Eテレ『ムジカ・ピッコリーノ』『シャキーン!!』や企業CMなど多数の楽曲制作・ラップ監修を務め、幅広い年代にラップを届けている。キーワードは「たのしいことばかりありますように」。ライブで観客にビールを配りまくるスタイルが話題。2015年12月2ndアルバム『おかあさんにきいてみないとわからない』発売。「双子 ビール」で検索してください。

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