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「もっと世に出るため」東京に賭けた岩崎愛と福田利之の上京物語

「もっと世に出るため」東京に賭けた岩崎愛と福田利之の上京物語

岩崎愛『It's Me』
インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:中村ナリコ

「自分探しの旅」と口に出してみると、なんだかとても青臭い言葉のように思えるのだが、とはいえ「自分探し」というのは、誰にとっても永遠のテーマだと言っていいだろう。しかし、おそらくは一生をかけてでも、「自分」を100%理解することはできない。だからこそ、人生は面白いのだ。

ASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正文が主宰する「only in dreams」から、初のフルアルバム『It's Me』を発表するシンガーソングライター・岩崎愛と、彼女の作品のジャケットを手掛けるイラストレーター・福田利之は、共に大阪から上京してきたという共通点を持つ。岩崎はマシータや日向秀和といったミュージシャンとの出会いが後藤のレーベルからのリリースへと繋がり、福田はムーンライダーズの仕事をきっかけにその後のスピッツのジャケットをはじめとした音楽関係の仕事へと繋がるなど、二人は上京によってキャリアを進めることに成功したわけだが、それは自意識との付き合い方の変化がもたらしたものでもあるようだ。かつて内省的な歌で自分を慰めていた岩崎は、今では新作のジャケットに描かれた猫のように真っ直ぐな眼差しで、こう僕らに語りかける。Hello It's Me.私はここにいる。

「ここおったらあかんくなる気がする」って、ただそれだけで上京してきたんです。(岩崎)

―福田さんが岩崎さんの作品のジャケットを手掛けられたのは『東京LIFE』(2012年)が最初だそうですが、岩崎さんはどのように福田さんのことをお知りになったのでしょうか?

岩崎:当時は全然ツテもなくて、ジャケットも誰に頼んだらいいかまったくわからなかった中で、社長に福田さんを紹介してもらって。まずパソコンで絵を見たときに、「かわいい! めっちゃいい!」って思いました。その後に展示会に行って、「この人にお願いしたい」って決めた感じです。『東京LIFE』のジャケットの原画は、もっと大きな絵なのかなと思っていたんですけど、すごくコンパクトなのに厚みがあって、びっくりしたんです。

岩崎愛『東京LIFE』ジャケット
岩崎愛『東京LIFE』ジャケット

―『東京LIFE』のジャケットを書いてもらうにあたって、何かリクエストはしたのでしょうか?

岩崎:「聴いてもらって、思った通りに描いてください」としか言ってなくて、それでこれを描いてくださったので、すごく感動しました。めっちゃ猫が好きなので、「イェーイ!」って(笑)。

福田:猫を飼ってるという情報は聞いてたので(笑)。岩崎さんは大阪出身で、僕も同じなんですよ。『東京LIFE』は大阪から東京に出てきて頑張ってる感じの曲が多くて、自分も同じ体験をしてきたから、曲がスッと入ってきた。その気持ちでそのまま描きましたね。僕は10年前くらいに東京に出てきたので、岩崎さんが大阪で活躍されてた時期を知らないんですけど、どんな気持ちでこっちに来られたんですか? 大阪は大阪で楽しいじゃないですか?

岩崎:東京に出てくるミュージシャンって、事務所が決まったり、メジャーデビューが決まったり、そういうタイミングの人が多いと思うんです。私は何も決まってないにもかかわらず、「ここおったらあかんくなる気がする」って、ただそれだけで。だから、最初は暮らすのに精いっぱいで、バイトばっかりで、「何しに来たんやろ……?」みたいな。『東京LIFE』に入ってるのはその頃作った曲ですね。

―「あかんくなる」っていうのは、居心地が良すぎたってことですか?

岩崎:そうです。18歳くらいからライブハウスに出てて、いろんな人にお世話になって、先輩からも可愛がられていたと思うんです。でも、ぬるま湯につかってるというか、ここにいれば安定してライブもできるし、困らへんって感じだったんですけど、だんだん新しいことがなくなってきたような気がして。ちょうど自分の周りの人がどんどん東京に行っていたから、興味があったし、東京の方がチャンスがいっぱい落ちてる気がして、賭けみたいな感じで来ました。

―その結果、マシータさん(元BEAT CRUSADERS)や日向秀和さん(ストレイテナー)、後藤正文さんたちと出会って、道が開けていったわけですね。

岩崎:そうですね。でもその頃はホントに必死で、今這いずり回ってるのが何らかの糧になるようにって祈るような気持ちでやっていて、そうじゃないとやってられへんって感じでした(笑)。

左から:岩崎愛、福田利之
左から:岩崎愛、福田利之

―では、福田さんが上京したのはなぜだったのでしょうか?

福田:僕も岩崎さんと似ているとことがあって。大阪でずっと仕事してて、それなりにやっていける感じだったんですけど、新しいチャレンジみたいな気持ちで東京に出てきて、最初の何年間はやっぱり苦労しました。なので、『東京LIFE』みたいな作品が出てくると、すごく敏感に反応してしまう自分がいたというか(笑)。岩崎さんは偶然僕のことを知ってくれたわけですけど、近い境遇の人が選んでくれたんだなって思ったし、そこはちょっと運命みたいなものを感じました。

―岩崎さんの音楽に対しては、どんな印象を持たれましたか?

福田:岩崎さんの曲を聴かせてもらって、ホンマに心がギュッと締め付けられるものがあったんです。もういいおっさんなんですけどね(笑)。で、「これは何やろな?」って思って、周りの友達にも聴かせたら、「この人は本物やから、いい仕事に当たったね」って言われて、こう言うと偉そうですけど、応援するつもりで絵を描かせてもらったんです。仕事って、自分の気持ちが乗ると、ちゃんと次にもつながるもので、今回もこういう形でお仕事させていただいて、改めて気持ちって大事やなって思いました。

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リリース情報

岩崎愛『It's Me』
岩崎愛
『It's Me』(CD)

2016年3月16日(水)発売
価格:2,400円(税込)
ODCP-012

1. knock knock
2. woman's Rib
3. 最大級のラブソング
4. 嘘
5. 涙のダンス
6. 26
7. darling darling
8. どっぴんしゃーらー
9. 汽笛を鳴らせ
10. 全然ロマンティックじゃない
11. サマーデイ
12. 哀しい予感

岩崎愛『すっぽんぽん』
岩崎愛
『すっぽんぽん』(アナログ7inch)

2016年4月16日(土)発売
価格:1,620円(税込)
ODEP-009

[SIDE-A]
1. すっぽんぽんぽん
[SIDE-B]
1. 最大級のラブソング(English Version)
※7inch EP(アナログシングル盤)+同内容を収録したバックアップCD付

プロフィール

岩崎愛
岩崎愛(いわさき あい)

大阪出身。ミュージシャンである兄の影響でアコースティックギターに出会い、高校在学時から音楽活動をスタート、圧倒的な歌唱力と存在感でシーンの話題を集める。2009年以降は活動拠点を東京に移し、2011年3月、ストレイテナーの日向秀和を中心としたミュージシャン有志によるプロジェクト・HINATABOCCOに参加。同年12月にはセルフプロデュースアルバム『いっせーのーで』を、2012年にはASIAN KUNG-FU GENERATIONの後藤正文のディレクションのもと『東京LIFE』をリリース。アコースティックを基調にしたサウンド、彼女の肉眼を通して描き出される歌詞、温かくも芯の強い歌声の三位一体が織りなす音楽性が高く評価される気鋭のシンガーソングライター。

福田利之
福田利之(ふくだ としゆき)

1967年大阪生まれ。1989年に大阪芸術大学グラフィックデザイン科卒業後、イラストレーターとして活動をはじめる。2005年に東京吉祥寺に事務所移転。エディトリアル、装丁、広告、CDジャケット、絵本、テキスタイルなどさまざまな活動をおこなっている。スピッツのシングル『魔法のコトバ』『ルキンフォー』『群青』アルバム『さざなみCD』のジャケットデザインのほか、主な著書に「福田利之作品集」(玄光社)、甲斐みのりとの共著「ふたり」(ミルブックス)など。

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