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佐々木敦が語るHEADZの20年と、変化してきたライブハウス文化

佐々木敦が語るHEADZの20年と、変化してきたライブハウス文化

『nest20周年記念公演』
インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:柏井万作

ライブハウスとクラブを混ぜる実験の場としても、ネストはすごくいい場所だったんです。

―その後の『エクス・ポナイト』にもつながる話だと思うんですけど、ネストはバーフロアがラウンジ的に機能していて、あの場所の存在はとても大きいですよね。

佐々木:大きいよね。ひとつの場所で、同時多発的にいろんなことができるのってすごく重要。僕は単にライブを見せるだけじゃなく、他のものとミックスしたいと考えていて、メインのライブを見てる人もいれば、外でDJ聴いてる人もいるみたいにしたかったの。そういう意味でも、ネストのような二層構造はすごくよくて、その規模に見合ったフェスみたいな感覚のものができるんだよね。

―そういう意味では、フェス文化の浸透ともリンクする部分があるかもしれないですね。ライブを見るだけじゃなくて、そこで交流も生まれたり。

佐々木:フェスの前に、1990年代にはクラブが登場したじゃないですか? 家じゃないところで音楽を聴く選択肢として、それまではライブハウスかディスコだったのが、ディスコの代わりにクラブが急激に広がって、「クラブVSライブハウス」って対立項が出てきた。で、僕はある種のロックもある種のクラブミュージックも好きだから、「何でここって変な壁があるのかな?」っていうのがずっとあって、それを混ぜるような実験の場としても、ネストはすごくいい場所だったんです。バーフロアでDJがやって、ライブフロアでバンドがライブするっていう分け方ができたから。

佐々木敦

―あの規模感で、ちゃんとフロアが分かれてる場所って他にはあんまりないですもんね。『エクス・ポナイト』に関しても、そういったイベントの延長線上にあったわけですか?

佐々木:僕はHEADZを作る前から『UNKNOWNMIX』っていうイベントをやっていて、それは音楽かけながらその解説をするっていう内容だったんです。だからライブとDJのミックスの次の可能性として、トークもあるんじゃないかなっていうのは考えていて、それが『エクス・ポナイト』につながっているんです。そもそも『エクス・ポ』は音楽専門誌ではなくて、音楽を一要素とするカルチャー誌というか、自分が面白いと思うものを全部入れた雑誌として2007年に作ったんだけど、そのイベント版を作ることは最初から考えてました。

―たしかに『エクス・ポナイト』は、舞台表現の人たちのライブもあれば、批評家、編集者、作家、学者などのトークもあったり、かなりクロスカルチャーなイベントでしたよね(過去に菊地成孔、宇川直宏、大友良英、ジム・オルーク、飴屋法水、岡田利規、本谷有希子、東浩紀、鈴木謙介、松江哲明、冨永昌敬などが出演)。実際にやってみての発見はありましたか?

佐々木:思ったよりも人が来たかな。正直そのころ僕がやってたイベントは「3勝5敗」くらいだったんだけど(笑)、『エクス・ポナイト』の2回目とか3回目はすごく人が入って、そこでまた意識が変わったかもしれない。「人の話を聞きたい人がいるんだ」っていうね。でも、『エクス・ポナイト』はいろいろ無理をしてたイベントで、1回目はありえない時間の押し方だったから、ホントにネストさんのホスピタリティー、寛容さに助けてもらいました。いろいろ迷惑をかけた(笑)。

―大変だったんですね(笑)。

佐々木:でも岸本くんって全然テンパった感じを出さないから、すごくありがたかったですね。ホントに岸本くんとネストっていう組み合わせがあったからこそ可能な、僕のわがままだったと思います(笑)。

「その場に居合わせる」っていうこと自体に価値があって、その感覚は00年代の終わりくらいに急激に生まれてきたと思う。

―00年代も後半になってブロードバンドが普及してくると、「現場の意義とは?」という議論も盛んに行われるようになりましたよね。

佐々木:インターネットは距離を無化するというかさ、そういうテクノロジーなわけだけど、それによって立ち上がってきたのは、むしろ「現場の意義」だった。トークとかもそうだけど、情報化されたら大して喜ばれないことでも、「その場に居合わせる」っていうこと自体に価値があって、その感覚は00年代の終わりくらいに急激に生まれてきたと思う。

―『エクス・ポナイト』も、その流れにハマっていたと言えそうですね。

佐々木:だから00年代終わりぐらいに、トークとかレクチャー的なものってすごく増えたんですよ。それで僕は渋谷の事務所の一室で「BRAINZ」っていう20人しか入れない授業をやってみたんだけど、要はそれも同じことで、そこに来る、しかも20人しか入れない、それを逆に売りにしたわけ。

―なるほど。「BRAINZ」もある意味特殊な体験の場でしたもんね。

佐々木:そういうことと、ライブハウスみたいな空間の意味合いの変化がパラレルに起きてて、それこそ今のネストの屋台骨を支えているであろうアイドルイベントも、一続きの考え方だよね。今のアイドルは映像とか音源だけじゃ成立しない、握手とかチェキとか、そのときその場での体験が重要で、やっぱりそれも「現場性」ってことだと思う。ネストは20年前はホントに普通のライブハウスだったわけじゃないですか? でも、だんだん単なるライブ以外もやるようになって、『エクス・ポナイト』みたいなのの入れ物にもなってくれて、今のアイドルのイベントは午前中でも人が来るわけだよね。

―すごい変化ですよね。

佐々木:ネストでイベントをやって成立するって、キャパ的に地下アイドルの最初のステップとして適してて、次の大きな箱への経由点になってる。それって実は、以前の普通のバンドがやってたことと同じだよね。そういう経由点になるようなキャパシティーの箱ってすごく重要で、でもそれが最近減ってきてるから、そういう意味でもやっぱりネストは貴重だと思いますね。

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書籍情報

『ゴダール原論: 映画・世界・ソニマージュ』
『ゴダール原論: 映画・世界・ソニマージュ』

2016年1月29日(金)発売
著者:佐々木敦
価格:2,700円(税込)
発行:新潮社

『例外小説論「事件」としての小説』
『例外小説論「事件」としての小説』

2016年2月10日(水)発売
著者:佐々木敦
価格:1,728円(税込)
発行:朝日新聞出版

『ニッポンの文学』
『ニッポンの文学』

2016年2月16日(火)発売
著者:佐々木敦
価格:929円(税込)
発行:講談社 現代新書

イベント情報

『nest20周年記念公演』ロゴ
『nest20周年記念公演』

2016年3月24日(木)
会場:東京都 渋谷 TSUTAYA O-nest
出演:
在日ファンク
思い出野郎Aチーム

2016年3月25日(金)
会場:東京都 渋谷 TSUTAYA O-nest
出演:あふりらんぽ
DJ:37A

2016年3月26日(土)
会場:東京都 渋谷 TSUTAYA O-nest
出演:
The Dylan Group
テニスコーツ

2016年3月29日(火)
会場:東京都 渋谷 TSUTAYA O-nest
出演:
DE DE MOUSE
アカシック
POP

2016年3月30日(水)
会場:東京都 渋谷 TSUTAYA O-nest
出演:
group_inou
People In The Box

プロフィール

佐々木敦(ささき あつし)

1964年生まれ。批評家。HEADZ主宰。雑誌『エクス・ポ』編集発行人。『批評時空間』『未知との遭遇』『即興の解体/懐胎』『「批評」とは何か?』『ニッポンの思想』『絶対安全文芸批評』『テクノイズ・マテリアリズム』など著書多数。新著『ゴダール原論―映画・世界・ソニマージュ―』が2016年1月に、『例外小説論』、『ニッポンの文学』が2016年2月に刊行。

HEADZ(へっず)

映画、音楽ライターとして活動していた佐々木敦とシティ・ロードの編集者であった原雅明の二人によって1995年5月にスタート。以来、カッティング・エッジな音楽雑誌『FADER』、ジャンルレスな濃縮雑誌『エクス・ポ』他の編集・発行、トータス、ジム・オルーク、オヴァル、カールステン・ニコライ他の海外ミュージシャンの招聘(来日公演の企画・主催)、UNKNOWNMIXやWEATHERといった音楽レーベル業務、飴屋法水の演劇公演の企画・制作等(ままごと『わが星』のDVD他、演劇やダンス・パフォーマンスの作品を発表するplayレーベルもスタート)、多岐な活動を続けている。音楽レーベルとしての最新作は昨年のO-nestでの20周年記念イベントでの共演がきっかけで、制作された4月6日発売のMoe and ghosts × 空間現代『RAP PHENOMENON』(UNKNOWNMIX 42 / HEADZ 212)。

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