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佐々木敦が語るHEADZの20年と、変化してきたライブハウス文化

佐々木敦が語るHEADZの20年と、変化してきたライブハウス文化

『nest20周年記念公演』
インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:柏井万作

今HEADZがアイドルやるってなったら、一瞬バズるんじゃないかな。たぶん、すぐ消えるけど(笑)。

―荻原さんはHEADZのレーベル業務やライブイベント制作に携わり続けてきたわけですが、最近のライブハウスを巡る動きについて、どんなことを感じられていますか?

荻原:さっきのアイドルの話にも通じますけど、まずネストでやって、次に(渋谷)WWW、クアトロ、リキッドみたいに、着実にステップを踏んでいく傾向はあるかなと思います。しかも、それをわりと短期間でやっていく。そうじゃないと目立ちにくいという状況があるんだと思うんですけど。

佐々木:サバイブするって意味で言うと、そういうグイグイ来てる感を出さないと、すぐ横並びの中の一個に沈められちゃうんで、実際のステップアップよりも、見た感じそう見えるようにするっていうのが結構あると思う。僕はそういう考えがほとんどない人で、「ずっと同じとこでいいんじゃない?」って思うから、下手に動いて失敗するよりは、ずっと同じところでやり続ける方がいいと思うんだけど、でもそれは実際よくないんだろうね。

―どこを目指しているかにもよると思いますが、難しいところですね。

佐々木:あと最近荻原さんと話すのが、今小中規模のイベントを成功させる要因は、出演者および主催者の交遊関係だけ。つまり、友達が多いやつは友達が来るから、それで成立しちゃう。その場に来る理由の第一義が音楽じゃない方が、むしろ集客って意味では磐石なんですよね。それに対する危機感は強い。「なんか違うんじゃない?」って思っちゃう。

荻原:今って友達の定義も難しいんですよ、SNSでつながったファン同士の友達っていうのもありますからね。豊田(道倫)くんがよく言うのは「自分のお客さんはみんなサッと帰る、自分もそうだった」ということで、昔はいいライブを見ても、それを友達と共有したり、ミュージシャンに「ファンなんです」って言わずに、内に秘めて帰ってた。でも今は「ファンなんです」って知らせたがるんですよね。

佐々木:そうだよね。何にでもあてはまることだと思うけど、今の集客とか動員の大きなポイントは、「コミュニケーション」と「コミットメント」だと思う。ある種の錯覚も含めて、そういう気持ちを与えられるかが圧倒的に大きくて、純粋に音楽として受容するっていうのは嫌みたい。自分に何か意味があると思いたいっていうのかな。今の時代それを抜きに物事は語れないと思うけど、でも僕はもともとそういう感覚がないから、「困ったな」って(笑)。

―コミュニケーションツールの変化が、ライブハウスという現場に変化をもたらしているわけですね。この10年は特に、ツールの変化が大きい時代でした。

荻原:何でも事前に確認できてしまうツールも増えましたよね。

佐々木:前回実績データが蓄積されちゃってるから、すごくでかい賭けじゃなければ容易に予想が出来てしまうよね。そういうわけで、小っちゃく勝ってくことはできると思うんだけど、コツコツ小っちゃく勝っていくことと、未来のビジョンがだんだん乖離していく現象が起こってて、そうなると、何のためにやってるのかわからなくなっちゃう。僕はホントは今も大きな賭けがしたいんだけど、歳も取ってきたから、「そんなことしてもしょうがない」って気持ちも出てきてて。まあ、『エクス・ポナイト』はもう1回ぐらいやりたいけどなあ。

荻原:今はネストもアイドルが昼間から使ってるので、『エクス・ポナイト』みたいに早い時間からやれる日程を押さえるのがなかなか難しいんですよね。

佐々木:ネストがすごく貴重な場所だと思ってる人は僕らだけじゃないから、みんな早めに日にちを押さえにきてるし、最近はそこにアイドルまで参入してきて……だからたぶん、うちが次にやれることはアイドルですね。俺はアイドルに全然興味がないから、今の状況を不可解に感じちゃうので、逆にやってみたい。今HEADZがアイドルやるってなったら、一瞬バズるんじゃないかな。たぶん、すぐ消えるけど(笑)。

―それこそかつて招聘を始めたときのように、また「やれるんじゃない?」ってなれば、気持ちに火が点くんじゃないでしょうか(笑)。

佐々木:蓮沼(執太)っちとかみんなにプロデュースしてもらうとして、あとは誰をアイドルにするかだなあ。「オーディションやろうか」とかって言うと、荻原さんたち「絶対嫌だ」って言うんですよ。アイドルやってみたいなあ。これぜひ書いといてください。この記事の反応見て、どうするか決めるんで(笑)。

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書籍情報

『ゴダール原論: 映画・世界・ソニマージュ』
『ゴダール原論: 映画・世界・ソニマージュ』

2016年1月29日(金)発売
著者:佐々木敦
価格:2,700円(税込)
発行:新潮社

『例外小説論「事件」としての小説』
『例外小説論「事件」としての小説』

2016年2月10日(水)発売
著者:佐々木敦
価格:1,728円(税込)
発行:朝日新聞出版

『ニッポンの文学』
『ニッポンの文学』

2016年2月16日(火)発売
著者:佐々木敦
価格:929円(税込)
発行:講談社 現代新書

イベント情報

『nest20周年記念公演』ロゴ
『nest20周年記念公演』

2016年3月24日(木)
会場:東京都 渋谷 TSUTAYA O-nest
出演:
在日ファンク
思い出野郎Aチーム

2016年3月25日(金)
会場:東京都 渋谷 TSUTAYA O-nest
出演:あふりらんぽ
DJ:37A

2016年3月26日(土)
会場:東京都 渋谷 TSUTAYA O-nest
出演:
The Dylan Group
テニスコーツ

2016年3月29日(火)
会場:東京都 渋谷 TSUTAYA O-nest
出演:
DE DE MOUSE
アカシック
POP

2016年3月30日(水)
会場:東京都 渋谷 TSUTAYA O-nest
出演:
group_inou
People In The Box

プロフィール

佐々木敦(ささき あつし)

1964年生まれ。批評家。HEADZ主宰。雑誌『エクス・ポ』編集発行人。『批評時空間』『未知との遭遇』『即興の解体/懐胎』『「批評」とは何か?』『ニッポンの思想』『絶対安全文芸批評』『テクノイズ・マテリアリズム』など著書多数。新著『ゴダール原論―映画・世界・ソニマージュ―』が2016年1月に、『例外小説論』、『ニッポンの文学』が2016年2月に刊行。

HEADZ(へっず)

映画、音楽ライターとして活動していた佐々木敦とシティ・ロードの編集者であった原雅明の二人によって1995年5月にスタート。以来、カッティング・エッジな音楽雑誌『FADER』、ジャンルレスな濃縮雑誌『エクス・ポ』他の編集・発行、トータス、ジム・オルーク、オヴァル、カールステン・ニコライ他の海外ミュージシャンの招聘(来日公演の企画・主催)、UNKNOWNMIXやWEATHERといった音楽レーベル業務、飴屋法水の演劇公演の企画・制作等(ままごと『わが星』のDVD他、演劇やダンス・パフォーマンスの作品を発表するplayレーベルもスタート)、多岐な活動を続けている。音楽レーベルとしての最新作は昨年のO-nestでの20周年記念イベントでの共演がきっかけで、制作された4月6日発売のMoe and ghosts × 空間現代『RAP PHENOMENON』(UNKNOWNMIX 42 / HEADZ 212)。

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