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劇伴はどうやって作られる? 『精霊の守り人』の佐藤直紀に学ぶ

劇伴はどうやって作られる? 『精霊の守り人』の佐藤直紀に学ぶ

『大河ファンタジー「精霊の守り人」オリジナル・サウンドトラック』
インタビュー・テキスト
麦倉正樹
撮影:田中一人

最終的には、体力勝負になります。いかに寝ないで曲を書き続けることができるか。1か月に30曲、40曲は当たり前ですね。

―非常に初歩的なところから教えていただきたいのですが、劇伴の仕事というのは、通常どんなところからスタートするのですか?

佐藤:映画とテレビでまったく変わってくるんですけれども、テレビに関しては、撮影とほぼ同時進行で音楽を作ることもあります。つまり、映像を見られないまま曲を書くんです。当然、台本も3、4話ぐらいまでしかできていない……結末を知らないときもありますから。テレビドラマの場合、そういうなかでサントラを書かなきゃいけない難しさがありますね。ただ、NHKさんの場合は、民放よりももっと時間的な余裕があって、撮った映像をどんどん送ってくれるので、『精霊の守り人』は映像をヒントにして音楽を作りました。

―映像もなく台本も途中までの場合、何をヒントに音楽を作っていくのですか?

佐藤:「こんな曲がほしい」という「メニューシート」と呼ばれるものは、事前にいただけるんです。映画の場合は、監督と僕が直接打ち合わせをして、「何分何秒の何フレーム目から音楽を入れて、何フレームで切る」みたいな細かいことを、映像を見ながら決めていくんですけど、テレビドラマの場合、監督と僕のあいだに「選曲屋さん」と呼んでいる方がいて、その方が僕の作った音楽を映像に当てていきます。たとえば僕が3分の曲を40曲書いたとしたら、その音楽を映像に合わせて編集して、どのシーンにどの音楽を当てるのかを考える。選曲屋さんが事前に監督と打ち合わせて、「こういう曲が何曲必要です」というメニューを作ってくれるんです。で、僕らはそれに沿って曲を書くというのが、一般的なドラマの曲の書き方ですね。

佐藤直紀

―その「メニューシート」には、どんなことが書いてあるのでしょう?

佐藤:基本的には、音楽用語じゃない言葉を使って、僕たちが曲を作れるよう、うまく導いてくれるような文章がついていて……今、ちょうど『精霊の守り人』のメニューがパソコンに入っているので、ちょっと見てみますか?

 

―はい、是非。

佐藤:こんな感じで……今回の『精霊の守り人』のメニューが普通と違っているのは、音楽を作り始める前に映像がある程度できているので、どのシーンにどの音楽を当てるのか、あらかじめその狙いを定めている。通常のテレビドラマの場合、どのシーンでどう使うのかまったくわからずに作るんですけど、今回はそこがちょっと違いますね。

―なるほど。

佐藤:だから、僕たちの仕事は、監督の言葉やメニューの文章をどうやってうまく音楽に変換していくのかが大事なんです。曲が書けるのは当たり前。その言葉や文字から監督の思いを汲み取って、「そうそう、こういう音楽がほしかった」と思ってもらえるようなものを作ることが第一なんです。もちろん、ときには意外性のある曲も書かなきゃいけないですけど、まずは「これだよ」と言ってもらえる曲を書いた上で、数曲、意外性のある遊びの曲とか、オーダーにない音楽を書く。そのバランスは、結構大事かもしれないですね。

佐藤直紀

―では、「理想的な劇伴」というのは……。

佐藤:やっぱり、作品に寄り添った曲を作るということだと思います。その作品の伝えたいことは何か、この作品はどういう作品であるかを理解して、一番はまる曲を書くこと。奇をてらった音楽とか実験的な音楽を作ることは、すごく簡単なんですよ。

―そのためには、音楽的な引き出しの多さも必要ですよね?

佐藤:劇伴作曲家と言われている人たちは、引き出しを持っていないと対応できないですね。アーティストだったら、「俺はロックしかできない」でいいのかもしれないけど、僕たちはロックも書けるけどクラシックも書けるような幅を持っていないといけない。特にCM音楽の場合はそうですよね。「ベートーベンの第九みたいな感じで」と言われて作ったのに、「やっぱりロックっぽい感じで」という話になって、次の日までにロックに書き直したり(笑)。そこで「できません」だと仕事にならないから、音楽的な引き出しを持っていることは最低条件だと思います。あとはやっぱり体力ですね。最終的には、体力勝負になりますから。いかに寝ないで曲を書き続けることができるかっていう(笑)。

―1か月に何曲くらい書かれていらっしゃるんですか?

佐藤:1か月に30曲、40曲は当たり前ですね。つまり、1日1曲じゃ間に合わないんですよ。『プリキュア』の映画をやったときは、3週間くらいで89曲書いたこともありました。

―ポップミュージシャンやバンドマンは、プリプロして、年に1回アルバムを出して、というペースですが……。

佐藤:それとはだいぶ違いますよね。だから常に締め切りとの戦いなんです。しかもこっちのペースで書けるのならいいですけど、監督とやりとりして書き直すことになると、予定が狂っちゃいますからね。

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リリース情報

『大河ファンタジー 精霊の守り人 オリジナルサウンドトラック』
『大河ファンタジー 精霊の守り人 オリジナルサウンドトラック』

2016年3月16日(水)発売
価格:3,240円(税込)
COCQ-85287

1. 精霊の守り人 メインテーマ
2. エクソダス
3. 新ヨゴ国 
4. 雪解け
5. 異界へのとばぐち
6. 誘惑
7. こころ
8. 原野を行く
9. 激突
10. 影に伏す真実
11. 因縁尽く
12. 暗闇と灯火
13. 鍛錬の日々
14. 木洩れ日
15. 陰謀
16. 血濡れた嘆き
17. さすらいの民
18. 精霊の卵
19. 戦いの終決
20. 幕切れ

番組情報

『NHK放送90年 大河ファンタジー「精霊の守り人」』

2016年3月19日(土)21:00から毎週土曜にNHK総合で放送
出演:
綾瀬はるか
小林颯
東出昌大
木村文乃
林遣都
吹越満
吉川晃司
高島礼子
平幹二朗
藤原竜也
ほか
音楽:佐藤直紀

プロフィール

佐藤直紀(さとう なおき)

1970年千葉県出身。1993年東京音楽大学作曲科を卒業後、映画、ドラマ、CM、イベント等、様々な音楽分野で幅広く活躍する。2006年『ALWAYS 三丁目の夕日』で日本アカデミー賞最優秀音楽賞を受賞。NHKでは、土曜ドラマ『ハゲタカ』、大河ドラマ『龍馬伝』、連続テレビ小説『カーネーション』などを担当している。

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