
ぼくりりを輩出したCONNECTONEが実践する新たなメジャー戦略
CONNECTONE- インタビュー・テキスト
- 金子厚武
- 撮影:豊島望 編集:矢島由佳子
海外のアーティストが来日したとき、彼らは日本のアーティストを見て苦笑してるわけです。明らかにバカにされている。
―高木さんは、20代から30代はEMIで洋楽を担当されていたそうですが、その頃の経験が今につながっている部分もありますか?
高木:洋楽を担当するということは、世界最高レベルのアーティストと関わるということなので、そのケタ外れの才能たちを伝えていく仕事はとても刺激的でした。ただ、海外のアーティストが来日して、たとえば日本の音楽番組に出るとき、彼らが日本のアーティストの映像を楽屋のモニターで見て苦笑してるのは悔しかった。明らかにバカにされている。そういう中で、日本の音楽シーンの底上げに役立ちたいとか、いつか日本のアーティストを世界でブレイクさせたいという想いが、フツフツと湧いてきたというのはありました。
―CONNECTONEとしても、海外のレーベルとの連携も視野に入れているそうですね。
高木:EMI時代にMIYAVIと契約して、二人で熱い想いを語り合ったことがあるんです。彼は「『グラミー賞』を獲りたい」って本気で言い続けていました。昔はそれが冗談のように聞こえたかもしれないけど、ここ何年かで、日本のアーティストがそういうことを普通に口にできるようになってきたと思うんです。まだ『グラミー賞』のメジャーな賞を獲った日本人はいないですけど、志の高いアーティストは増えていて、ゆっくりだけど確実に日本のアーティストのレベルも上がってると思う。だから、諦めたくないですね。
―やはり、海外への思いは強いと。
高木:僕は、ロンドンオリンピックの開会式にすごく感動したんです。「イギリスの最大の輸出産業は音楽だ」という打ち出しが世界中に発信されていて、音楽の仕事をしている人間にとって、ホントに憧れを感じるものだった。今、いろんな人が2020年の東京オリンピックはどうなるのかを懸念し始めてますけど、内側を向かないで、諦めずに東京から世界と戦っていくことが大事だと思うんです。
―2020年というひとつの目標ができたことを、プラスの材料として捉えたいですよね。
高木:そうですね。東京オリンピックというタイミングで、我々が胸を張れる本物の音楽を良い形で世界に伝えていきたいと思っている人は沢山いると思うんです。まだ束ねられてないけど、今点在している声が、もっと大きなうねりになってくるといいんだろうなって思います。
「音楽業界ってつらいよね」って話になりがちなんですけど、「ふざけんな」と思うんです。音楽の仕事は楽しいんですよ。
―日本の音楽文化全体を底上げする意味では、アーティストはもちろん、そこに関わるスタッフの育成も欠かせないように思います。
高木:大事だと思います。ちょうどこの間読んだ『WIRED』のジミー・アイオヴィン(Dr.Dreと共にBeatsの共同創業者であり、アップルの幹部でもある)の記事がすごく面白くて。彼はDr.Dreと組んで大金を手にしたわけじゃないですか? だけど彼はライフワークとして音楽学校を始めたんです(2013年、南カリフォルニア大学に、「音楽の未来を担うプロフェッショナル」を世に送り出すことを目的とした「イノヴェイションのためのアート、ビジネス、テクノロジー」を掲げるカリキュラムを開設)。「この10~20年で、音楽業界はITのテック野郎に乗っ取られて、未だに勝てていない。そして、ITの連中は音楽が好きだって言うけど、スティーヴ・ジョブズ以外は誰もわかってない」というようなことを話していて。なので、彼は音楽とテック、インフラも含めて、「ビジネスと音楽の両方をわかる人材をライフワークとして輩出していきたい」と言ってて、すごく感動したんです。
―とても重要なアイデアだと思います。
高木:レコード会社にいると、「音楽業界ってつらいよね」って話になりがちなんですけど、「ふざけんな」と思うんです。音楽の仕事は楽しいんですよ。もちろん、大変なこともありますけど、好きなことを好きなようにやれるとなれば、大概のつらさは克服できると思うんです。そうやってみんなが楽しんでるところに、強いアーティスト、次世代のスタッフ、ユーザーが集まってくる。CONNECTONEはそういう音楽の臭いが強くするスポットを作るイメージで運営していきたいです。
―それがまさに、CONNECTONEというレーベル名やロゴが表している「つなぐ」ということですね。
高木:レーベルを作るにあたって、一緒に働くスタッフを探す時には、平均点のやつはいらないと思って、「何かやらかすかもな」と思うやつに真っ先に声をかけたんです。多少リスキーではあるんですけど、面白いやつらが集まってないと、面白い輪にはならないですからね。仕事としてやらないといけないことは当たり前にやりながら、バカなことを考えられるやつが増えてほしいなと思いますね。
―ビジネスであることは前提として、いろんなことを試す遊びも必要というか。
高木:そうですね。そういう発想とか空気感がないと、この時代は勝ち残れないと思うんです。だって、遊びながら儲けられるって、そんな幸せなことないじゃないですか?(笑) そこは諦めちゃいけないと思いますし、もちろん、簡単なことではないですけど、その姿勢を貫いていければなと思っています。
イベント情報
- 『CONNECTONE NIGHT Vol.1』
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2016年5月6日(金)OPEN 17:00 / START 17:45
会場:東京都 渋谷CLUB QUATTRO
出演:
Awesome City Club
RHYMESTER
SANABAGUN.
ぼくのりりっくのぼうよみ
and more
料金:3,000円(ドリンク別)
プロフィール
- 高木亮(たかぎ りょう)
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早稲田大学商学部を卒業後、1985年に東芝イーエムアイ音楽出版株式会社に入社し、洋楽曲の獲得及びプロモーションに関わる。1993年、東芝イーエムアイ株式会社に入社、洋楽ディレクターとして、ローリング・ストーンズやスマッシング・パンプキンズなど、数多くの海外アーティストを手掛ける。2004年、同社の邦楽部門に異動。執行役員として、邦楽レーベル・ヘッド、社内アーティスト・マネージメント社長、新人開発部門等を兼務。2010年から、レコード会社としては初のロック・フェスとして話題を集めた「EMI ROCKS」を主宰、日本を代表するロック・レーベルとしてのブランドを確立。2014年、ビクターエンタテインメントに入社。現在に至る。