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川村元気が語るズバっと決めない優柔不断な仕事術

川村元気が語るズバっと決めない優柔不断な仕事術

川村元気『超企画会議』
インタビュー・テキスト
麦倉正樹
撮影:豊島望 編集:野村由芽
2016/04/21
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万が一、その名前を知らなくとも、彼が生み出した作品については、きっと1つや2つ見覚えがあるだろう。2005年、弱冠26歳のときに映画『電車男』を企画・プロデュースして以降、『告白』『悪人』『モテキ』『バクマン。』など、数々の映画を企画、そしてヒットさせてきた若手映画プロデューサー、川村元気。2012年には、小説『世界から猫が消えたなら』(2016年5月14日には映画版が公開)で小説家デビューも果たし、120万部を越えるベストセラーを記録するなど、まさしく「時代の寵児」あるいは「正真正銘のヒットメーカー」といった感のある彼が、このたび『超企画会議』という、一風変わった書物を上梓した。

スティーヴン・スピルバーグ、ウディ・アレン、クエンティン・タランティーノ、クリント・イーストウッド……ハリウッドの錚々たる巨匠たちと川村が、「空想企画会議」を繰り広げるという本書。単なる企画術の本ではなく、またいわゆる映画本でもないこの本は、果たして彼のどんな意図のもと、生まれた本なのだろうか? そして、本書から浮かび上がる、「川村元気の発想法」とは? 川村元気に訊いた。

僕に求められるのって、どうしても「企画」の話が多いんです。でも自分の考えを「こうだ!」って教科書のように書いても、きっと面白くないし、伝わらないと思ったんです。

―まず、この『超企画会議』という本を書こうと思った理由から教えていただけますか?

川村:実はこれ、僕にとって最初の書きもの仕事なんです。2011年の11月から『T.』という映画雑誌で連載を始めたんですけど、その年に、僕がプロデュースした映画『モテキ』が公開になって。今思うと、それまでに10本ちょっと映画を作ってきて、『告白』『悪人』『モテキ』あたりで若干燃え尽きていたところがありました。何か新しいことを始めてみたいなってときに、たまたまこの連載の話をいただいて。

―一つの転機になるのではと考えたわけですね。

川村:とはいえ、実はその時点でいくつかの出版社から「本を書きませんか?」と依頼をもらっていて。でも、全部お断りしていたんです。というのは、僕に求められるのって、どうしても企画術とかアイデアノートとか、そういう本の話ばっかりで。だけど、自分の考えを「こうだ!」っていう感じに直截的に本にすることに、すごく抵抗があったんですよ。

川村元気
川村元気

―というと?

川村:僕が映画人だからってことが関係していると思うんですけど、やっぱり「言いたいことは、ストーリーで語らなければいけない」と思っているんです。映画はいろんなストーリーを使って、さまざまな哲学や考え方を教えてくれる。それをまるで教科書のように書くことにちょっと抵抗がありました。「企画を立てるときは、こういうふうに考えて、こういうことをやったらいいですよ」みたいなものを書いても、面白くなる気がしなくて。

―なるほど。

川村:だったら、自分が普段どんな打ち合わせをしているのか、どんなトーンで人と接しているのかを、フィクションを使って書いたほうが、面白いんじゃないかな? と思ったんです。もし僕が、ウディ・アレンやスピルバーグ、タランティーノと打ち合わせをしたら、どうなるのか。それを書くことによって、「この人はこんなふうに企画を考えているんだな」ってことが読者に伝わったらいいなと。具体的な企画術を期待された方は、くだらない妄想ばかりでガッカリされる方もいるかもしれません(笑)。でも僕は、企画にとって大切なことは、まず最初にどれだけ大風呂敷を広げられるかだと思っているんです。そこで企画の振れ幅を作っているところがあります。

川村元気『超企画会議』表紙
川村元気『超企画会議』表紙

いつも主観と客観の2つを行き来しながら物事を考えるようにしているんです。

―物を書くこと自体は、以前から興味があったのですか?

川村:正直に言うと、積極的ではありませんでした。『超企画会議』と同時期に出る『理系に学ぶ。』という理系のトップランナーに理系の考え方を教わる本を出したのですが、そこでドワンゴの川上量生さんが「人間に主体性なんかない」とはっきり言っていて、その考え方にすごく納得したんです。

―どういうことでしょう?

川村:自分が主体となって物を作るという意味では、映画の仕事で満足しています。面白い原作があって、面白い映画監督がいて、面白い俳優がいて、彼らと映画を作るのはとても幸せです。一方で物を書く仕事は……『世界から猫が消えたなら』をはじめとして、毎回そうなのですが編集者に声を掛けてもらっていろいろ話しているうちに、気づいたら書くことになっているという、巻き込まれ事故というか、こっちに主体性が全然ない(笑)。

―普段は、映画プロデューサーとして、人を巻き込む仕事をしているのに(笑)。

川村:そうですね(笑)。ただ、本の場合は、編集者がプロデューサーなわけです。僕はいつも主体と客体をコロコロ入れ替えながら仕事をしていて、主観的なものを突っ込むこともあるし、客観的に考えることもあって、その2つを行き来しながら、物事を考えるんですよね。だから、編集者というプロデューサーのもとで自分が何をできるのか考えることは、自分が映画のプロデューサーをやるときに活きてくる。「人はこういう言い方をされると動きたくなるんだな」とか。そうやって主客を行ったり来たりする感じが、今のところ良い方向で回っているのかもしれないですね。

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書籍情報

『超企画会議』
『超企画会議』

2016年4月21日(木)発売
著者:川村元気
価格:1,404円(税込)
発行:エイガウォーカー
発売:KADOKAWA

プロフィール

川村元気(かわむら げんき)

1979年、横浜生まれ。上智大学文学部新聞学科卒業後、映画プロデューサーとして『電車男』『デトロイト・メタル・シティ』『告白』『悪人』『モテキ』『おおかみこどもの雨と雪』『寄生獣』『バケモノの子』『バクマン。』などの映画を製作。2010年、米The Hollywood Reporter誌の「Next Generation Asia」に選出され、翌2011年には優れた映画製作者に贈られる「藤本賞」を史上最年少で受賞。2012年には、初小説『世界から猫が消えたなら』を発表。同書は本屋大賞へのノミネートを受け、120万部突破の大ベストセラーとなり、佐藤健、宮崎あおい出演で映画化された。2014年、BRUTUS誌に連載された小説第2作『億男』を発表。養老孟司、若田光一、川上量生、佐藤雅彦、伊藤穣一ら理系人との対話集『理系に学ぶ。』が4月22日(金)より発売。

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