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「子供たちのシェルターになる音楽を」腹を括った木下理樹の覚悟

「子供たちのシェルターになる音楽を」腹を括った木下理樹の覚悟

ART-SCHOOL『Hello darkness, my dear friend』
インタビュー・テキスト
天野史彬
撮影:永峰拓也 編集:山元翔一

自分の私生活は犠牲にしています。でも覚悟がないと、ものなんて作れないじゃないですか。

―木下さんがそこまで「子供たちのための音楽」にこだわるようになったきっかけは、どこにあるんですか?

木下:いわゆる第一期(結成~2003年までのオリジナルメンバー期)が終わった瞬間に、「僕の青春はここで終わったんだな」って感じたんだけど、アーティストである以上、それでもやれることを模索するしかないんですよね。はっきり言えば、僕は飯を食うよりも音楽を聴いている方が幸せなんです。水や酸素と同じくらい、音楽がないと生きていけない人間だから。

―音楽を辞められない以上、やるべきことを模索するしかなかった。

木下:ただ、第一期のころから、根底で考えていることは同じだと思う。当時は自分にとってピュアでイノセントな時代だったのかもしれないけど、「クラスの片隅にいるような子たちが、ちょっとでも楽になってくれればいい」っていう気持ちは当時から変わらない。だから、結果的には自分から出てくるものはずっと変わっていないんだと思います。

―ART-SCHOOLの音楽に一貫してあり続ける「優しさ」の奥にあるのは、木下さんの奉仕の精神だと思うんですよ。常に誰かのためにあろうとする。ただ、他の誰かのためにものを作り続けるのって、自分を犠牲にしなければいけないときもあるじゃないですか。

木下:たしかに、僕がART-SCHOOLをやっていて思うのは、「僕が幸せになる瞬間って、たぶんART-SCHOOLを辞めたときなんだろうな」ということで。それぐらい、自分の私生活は犠牲にしています。でも覚悟がないと、ものなんて作れないじゃないですか。僕は勝手にそう思っていますね。……それに、僕は自分自身が常に悩んでもいるから、自分を慰めてくれるような音楽を作れば、それは絶対に子供たちにも響くはずだと思っているんです。

木下理樹

僕らは表現に嘘をついてこなかった。もちろん、これからもずっとそうあり続けると思います。

―ART-SCHOOL自体が、木下さんのパーソナルな要素を包み込むシェルターになっているということですよね。このアルバムの最後を飾るのは、ART-SCHOOL始動前のソロ時代に作られた“NORTH MARINE DRIVE”という17年前の曲ですが、この曲を現メンバーで録音したことも、いまを生きる子供たちと、木下さん自身に向けられていると言えそうですね。

木下:この曲を最後に入れることで、リスナーにも自分自身にも、「もう苦しまなくていいんだよ」って言ってあげたかったんです。「もう旅は終わったんだよ、苦しまなくていいんだよ」って。

―“NORTH MARINE DRIVE”では、<誰かに笑われたっていい>と歌うじゃないですか。でも、7曲目の“R.I.P”で、<笑われた分だけ きっと 強くなれるはずなんて そんな言葉 嘘でした>とも歌っていて。<笑われたっていい>という理想を歌いながら始まったけど、キャリアを経るなかで、笑われることで弱くなってしまった自分自身もいる。でも、もう一度<笑われたっていい>と、自分にも子供たちにも歌いたい……このアルバムは、そんな木下さんの傷跡と強さが曝け出されたドキュメントのようにも聴こえます。

木下:苦しみまくってきたバンドだからね(苦笑)。でも、「自分たちはこういうバンドなんだよ」って、もう一度言いたかったのかもしれない。……こんなに苦しんで、その傷を曝してきたバンド、あんまりいなかったよね。

木下理樹

―いないですよ。

木下:KING CRIMSONのロバート・フリップは、インタビューで「あなたのバンド人生は、一言で言うとどんなものでしたか?」って訊かれたとき、「本当に悲惨だった」って応えたんですよ。あれだけ世界的な成功を収めて、評価も高かったバンドのメンバーであるにもかかわらず。でも彼は、「それでも、やらざるを得ないんだ」って言っていて……それが僕にはしっくりきたんです。自分たちがやるべきことは、これしかないですから。もちろん、僕らのことを嫌ってきた人もたくさんいると思うんですよ。でも、僕らは表現に嘘をついてこなかった。もちろん、これからもずっとそうあり続けると思います。

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リリース情報

ART-SCHOOL『Hello darkness, my dear friend』
ART-SCHOOL
『Hello darkness, my dear friend』(CD)

2016年5月18日(水)発売
価格:2,592円(税込)
Warszawa-Label / UK.PROJECT inc., / WARS-0002

1. android and i
2. broken eyes
3. Ghost Town Music
4. Melt
5. Julien
6. Paint a Rainbow
7. R.I.P
8. TIMELESS TIME
9. Luka
10. Supernova
11. NORTH MARINE DRIVE

イベント情報

『ART-SCHOOL TOUR 2016/Hello darkness, my dear friend』

2016年6月11日(土)
会場:千葉県 LOOK

2016年6月14日(火)
会場:京都府 MOJO

2016年6月16日(木)
会場:岡山県 IMAGE

2016年6月17日(金)
会場:福岡県 The Voodoo Lounge

2016年6月21日(火)
会場:埼玉県 HEAVEN'S ROCKさいたま新都心

2016年6月23日(木)
会場:新潟県 CLUB RIVERST

2016年6月24日(金)
会場:宮城県 仙台 LIVE HOUSE enn 2nd

2016年6月26日(日)
会場:北海道 札幌 COLONY

2016年7月1日(金)
会場:大阪府 梅田 Shangri-La

2016年7月3日(日)
会場:愛知県 名古屋 ell.FITS ALL

2016年7月9日(土)
会場:東京都 恵比寿 LIQUIDROOM

料金:各公演 前売3,500円 当日4,000円(共にドリンク別)

プロフィール

ART-SCHOOL
ART-SCHOOL(あーとすくーる)

2000年に結成。木下理樹(Vo/Gt)のあどけなく危うげなボーカルで表現する独特の世界観が話題に。度重なるメンバー変遷を経て、2012年からは木下、戸高賢史(Gt)の2人に、元NUMBER GIRLの中尾憲太郎(Ba)、MO'SOME TONEBENDERの藤田勇夫(Dr)がサポートで加わる。2015年2月、新木場STUDIO COASTでのライブをもって活動休止。同年5月、木下理樹がクリエイティブチーム「Warszawa-Label」を設立。2016年2月に開催されたワンマン公演をもって本格的に活動を再開を果たす。2016年5月18日(水)に、8thフルアルバム『Hello darkness, my dear friend』をリリースする。

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