
規制に縛られずもっと自由に。バブルな社会派ベッド・インの表現
ベッド・イン『RICH』- インタビュー・テキスト
- 天野史彬
- 撮影:田中一人 編集:山元翔一
バブルの時代って、いい意味で「軽薄な明るさ」があった時代だと思うんです。「失敗しても大丈夫! 面白ければいいじゃないか!」っていう、今の時代にはない度量と熱量があった。(まい)
―お二人にとって「アイドル」とはどんな存在ですか?
まい:これはずっと一番大事MANにしていることなんですけど、私たちが目指しているのは、あくまで「セクシーアイドル」なんですよ。たとえばバブル時代の『ギルガメッシュないと』みたいな深夜番組で幅を利かせていた「エロイものこそ、エライ!」的なひな壇ギャルのお姉さんたちって、いわゆる「アイドル」ではなくて「セクシーアイドル」なんですよね。なので、石野真子ちゃんやキャンディーズ、(松田)聖子ちゃんのような存在とは、ちょっと違うとは思うんですけど……でも、共通する何かはあると思います。
かおり:例外もあると思いますが、おおむね共通する部分って、きっと「陽」であることなんじゃないかと思っていて。私は今でも「妖精達」という別のバンドの活動も続けているんですが、そのバンドとベッド・インで明らかに切り替えるのって、「陰」と「陽」なんです。
どちらも根底にある信念は変わらないんですけど、そのバンドでステージに立つとき、曲を作るときはどちらかと言うと自分の「陰」の部分を見せていることが多いんですよね。でも「なんてっ勃ってアイドル」としてのベッド・インでは、君は1000%……いえ、マン%で「陽」! 見ている人たちの気持ちをモッコシモコモコ、アゲることができる存在でいられたらいいなって思ってます。
―「見ている人たちの気持ちをアゲたい」「規制を打ち破りたい」という想いの根源にあるのが、お二人のなかのバブル時代の日本に対する愛着なわけですね。
まい:バブルの頃って、いい意味で「軽薄な明るさ」があった時代だと思うんです。「失敗しても大丈夫! 面白ければいいじゃないか!」っていう、今の時代にはない度量と熱量があったんじゃないかな。「お色気番組発のセクシーアイドル結成!」とか「AVギャルが急にロックバンドを組んだ!」とか、面白いことに対してすごく貪欲で自由だったと思うんです。
だからこそ、いろんな面白い文化が生まれて、いろんなジャンルの音楽が生まれたんだと思うんですけど、今は何かが一つ売れたら、「それっぽいもの」を量産しようとしますよね。四つ打ちのバンドが売れたら、他も全部四つ打ちになる、みたいな。世の中が失敗を許してくれないんです。経済的な要因もロンモチであるとは思うのですが……。
かおり:日本は一つのものが認められると、みんなそっちに向かってしまう風潮がありますよね。アメリカみたいにたくさんの人種や文化が共存しているわけではないからかもしれないですが……。バブル時代はセクシーなお姉さんがもてはやされていたのに、突然ロリロリ至上主義な時代になってしまったのもそうだし。
バブル時代に対して「ダサい」「負の時代」とかネガティブな印象を持つ声も多く聞くんですけど、フラットな視点で見てみるとモーレツな魅力がたくさんあるんだよ、って言いたいですね! たとえば当時の音楽って1曲1曲をちゃんと聴いてみると、実はすごくクオリティーが高かったり、凝った楽曲が多いんです。ちょうど、昭和歌謡と洋楽の中間地点にあって、サウンドは洋楽的なんだけどメロディーは歌謡らしく頭に残るものだったり、洋楽と歌謡が絶妙にマッチングされている部分もタマランチ会長な魅力だと思っています!
まい:さらにそこに、お笑いやプロレスのような、いろんなジャンルの文化が足されていますよね。変に凝り固まらずに、「面白いものは全部入れて混ぜちゃお!」って、すごくアクティブに文化が成熟していった時代でもあると思うんです。なのに、1980年代文化について語られることは多いけど、80年代後半から92年くらい、平成に一歩踏み入れる頃の文化についてはほとんど言及されていない。
音楽に関しても、トレンディドラマやコント番組やお色気番組も、みんな見て聴いて楽しんできたはずなのに……そんなの淋しい熱帯魚じゃないですか! DAISUKI!な文化だからこそ、私たちがちゃんと受け継ぎたいっていう気持ちもあるんです。
バブル時代と今の男女の在り方で何が変わったのかっていうと、男性が求める女性像だと思う。(まい)
―ただ、バブルは「弾けた」からこそバブルなわけで、バブル崩壊後の日本は、不景気で暗い事件が多かった時代でもありましたよね。だからこそ、バブル時代にネガティブなイメージを抱えている人も多いと思うんですけど、お二人がバブルをポジティブに受け入れることのできる要因はどこにあるんですか?
かおり:私の場合は、当時のタカビーでかっこいいお姉さんのイメージに憧れを抱いたり共感した部分が大きいですね。おチビちゃんの頃から周りに媚びたり、弱さを売るタイプの女の子にはなりたくないなと思っていて。「周りの目を気にせず、自分らしくありたい」「強いナオンになりたい」って思いながら生きてきた節があるので、バブル時代のお姉さまたちの生き方を知ったとき、「私が求めていたのはこの道かもしれない」とビビビっときちゃって。
―女性としての理想的な在り方を求めた先に、バブル時代を生きていた女性たちの姿があったんですね。
まい:そうですね。でも私は、バブル時代と今の男女の在り方で何が変わったのかっていうと、男性の方だと思うんですよ。男性が求める女性像が変わったんだと思うんです。女の人って、男の人が求める像に近づけてしまえる、いつの時代もしたたかで強い生き物だと思うんです。
でも、今の男性はバブル時代よりお金もないだろうし、サービス残業もしなきゃイケナイし、負の連鎖に心も体も疲れている。だから疲れを癒してくれる女性……つまり、自分には文句を言わない女性を求めるんじゃないかって。それで、自分色に染められそうな子、男性経験が少なそうな子が好かれる。その需要にこたえているのが、現代のアイドルという存在なんだと思うんです。
―最初にも少し話に出ましたけど、「処女性」ですよね。
まい:日本人男性は基本的にはロリコンですし、それを批判するつもりはなくて。ただ、バブル時代の男性は24時間戦える元気びんびん物語状態のタフマンだったんだろうなって。あの頃は女性の社会進出も進んだ時代ですし、そういう女性に対しても「一緒に登り詰めていこうぜ」って言えちゃう気概があったように思うんですよね。
でも、私たちが追い求めているのはフェミニズム的なものとは少し違って。女性として抑圧されてきた意識もないし、正直ちゃんとモテてきましたし(笑)、これからもチヤホヤされたいです♡ 私、男の人がDAISUKI!で、男の人がいなければ生きていけないからこそ、思うことはいろいろあるんですよね。
かおり:これは女の子にも男の子にも言えることですけど、恋愛に対して億劫になっているナウでヤングな子たちが多いってよく聞きますよね。バブルの頃の男性がかっこいいと思うのは、意中の女の子を落とすためには努力を惜しまなかったところで。それこそ『東京いい店やれる店』を読んで、お店を予約して、1日のデートコースをすごく丹念に考えて当日に臨んだり!
まい:そもそも、「意中の子を落とすためには童貞じゃ恥ずかしい」っていう意識が現代にはないんじゃない?
かおり:そうそう! 女性は女性で、それに対して美意識を高く持とうとしていて。そういうお互いの努力、恋愛に対する前のめりな部分は、当時をお手本にして学んでいきたいですよね。
恋愛って、自分にはない価値観を発見できるじゃないですか。相手の知見や視点を知ることで、自分のものの見え方が変わることがあるし、「こんな私、初めて……(照)」っていう自分でも気づかなかった新たな一面を発見できたり……それはロンモチ、ベッドの上でもだけど♡ こういう「発見」こそが悦びや刺激になったり感性が豊かになるので、恋愛は肉食にどんどんしていきたいですね。なので、不器用でもTOO SHY SHY BOYでもケーオツだから、性徒諸クンも男闘呼(おとこ)を磨いて、ウチらにぐいぐいモーションかけにきてチョンマゲ~♡
―(笑)。
リリース情報

- ベッド・イン
『RICH』(CD) -
2016年7月27日(水)発売
価格:3,240円(税込)
KICS-34041. GOLDの快感
2. ♂×♀×ポーカーゲーム
3. Summer Dream
4. GIVE ME! ~哀・してる~
5. 成りアガり VICTORY(ベッド・イン×サイプレス上野とロベルト吉野)
6. 太陽を信じて...
7. ROSA -魅惑のバリライト-
8. V.H.S.
9. SEXY HERO
10. C調び~なす!
11. 真夜中のディスタンス
12. 白黒つかない(feat.アンジャッシュ)
イベント情報
- 『祝!“RICH”発射記念ツアー ~そこのけ そこのけ バブルが通る~』
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2016年11月3日(木・祝)
会場:北海道 札幌COLONY2016年11月5日(土)
会場:新潟県 新潟GOLDEN PIGS BLACK STAGE2016年11月12日(土)
会場:広島県 広島BACK BEAT2016年11月13日(日)
会場:福岡県 福岡DRUM SON2016年11月19日(土)
会場:愛知県 名古屋RAD HALL2016年11月20日(日)
会場:大阪府 大阪FANJ TWICE2016年12月4日(日)
会場:宮城県 仙台HOOK2016年12月18日(日)
会場:東京都 赤坂BLITZ
プロフィール

- ベッド・イン
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益子寺かおり、中尊寺まいによる地下セクシーアイドルユニット。日本に再びバブルの嵐を起こすべく、80年代末~90年代初頭へのリスペクト精神により完全セルフプロデュースで活動中。2012年、お互い別のバンドで活動していた二人が、猫も杓子もロリロリ重視の現代のアイドルシーンに殴り込みにイクかと一念勃起。バンド歴の長い二人による、ロック姐ちゃんなライブパフォーマンスと『おやじギャル』的な発言やTwitterが話題となり、日本各地を毎度おさわがせします中! かおりの逞しいドヤ顔ヴォイスと、まいの下心をつん裂くギタープレイによる「ボディコンロック」に酔いしれろ!