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野田洋次郎が語る、RADWIMPSと両輪をなすillionの再始動

野田洋次郎が語る、RADWIMPSと両輪をなすillionの再始動

illion『Water lily』
インタビュー・テキスト
天野史彬
撮影:豊島望 編集:山元翔一

僕は感情のピークをずっと曲にしてきたけど、その感情と感情の間にも、小さな振動があるんですよね。今は、その振動の滲み方にすごく興味があるんです。

―では、illionが快楽的な表現に向っているのは、社会に鋭く突き刺していく表現者としての野田洋次郎とは、別の顔の野田洋次郎が出てきている、ということなんですね。たとえば“Water lily”で歌われる<「僕ら何処へでも行けると」調子のいいことでも言おう 君が笑ってくれたなら もうけもんだ>というラインなどは、すごく無垢な想いですよね。

illion『Water lily』ジャケット
illion『Water lily』ジャケット(iTunes Storeで見る

野田:これはきっと、自分が根っこで求めているものなんだと思うんです。illionの歌詞の書き方って、RADWIMPSとはまったく違うんですよ。なるべく考えないし、なるべく筆を止めない。だいたいスタジオに行ってからその場で書いているし、下手したら文字にも起こさないで、仮歌で出てきた言葉をそのまま採用したりするんです。

だからこそ、自分のなかの「潜在的な答え」が出てきているという実感があって。言葉が出てきた後に、「俺、こんなことを言いたかったのか……」って気づくんです。この“Water lily”の歌詞も、もしかしたら、ずっと歌いたかったけど、歌うべき場所がなかった言葉なのかもしれない。だからリード曲にしたっていう部分もあって。

―それはRADWIMPSでは歌えなかった言葉なんですね。

野田:RADWIMPSでは「歌う必要がないものだ」と思って、捨てていたものなのかもしれない。そのぐらい、思考と思考の狭間で垂れ流されて、消えていってしまうような言葉なんです。でも今は、それを捕まえたくなったのかもしれない。

illion

―野田さんの思考と思考の狭間にあった「潜在的な答え」が、決して怒りや悲しみに支配されたものではなく、無垢な理想と安堵感に満ちたものだった。この事実は、野田さんにとっては喜ぶべきことですか?

野田:……もう、今の自分そのままなんだろうなって思います。底抜けにハッピーなわけではないんだけど、ただ、すごく穏やかな流れのなかで今の自分を受け入れているし、喜びを見つけている。

RADWIMPSでの僕は、何かしらの感情のピークを歌にしてきたと思うんです。なぜなら、何も起きず、誰も泣かなくて笑わないような映画は存在しないから。音楽もそうだと思っていたんですよ。喜び、怒り、悲しみ、叫び出したくなるような幸せ……そういう感情のピークを、僕はずっと曲にしてきた。でも、その感情と感情の間にも、目を凝らしてみれば小さな振動があるんですよね。今は、その振動の滲み方にすごく興味があるんです。

確実に、悲しいくらいに、言葉は変化しまくっていますよね。インターネットは言葉をどんどん変えているし、隙間がどんどんなくなっている。

―たとえば“五月の蠅”と“ラストバージン”という、全く別ベクトルで極限の愛情を描いたラブソングを1枚のシングルとして提示するのがRADWIMPSなら、illionはその狭間を表現するものだ、ということですよね。

野田:そう。でも、世の中の流れとは逆行しているのかもしれないですけどね。今は、極端な表現がどんどん研ぎ澄まされている時代だから。物事の微妙な揺れを見ようと思ったら、その物事に近寄らないといけないんだけど、今はみんなが大きな揺れだけを見ようとして、その細部からどんどんと離れていっていると思うんですよ。

―なるほど。

野田:それに確実に、悲しいくらいに、言葉は変化しまくっていますよね。インターネットは言葉をどんどん変えているし、隙間がどんどんなくなっている。瞬発的な言葉ばかりが生き残っていくのだろうけど、じゃあ、その裏側にはどれだけの意味や深度が込められているのかというと、なかなか計り知れないし。何回か反芻して意味を閉じ込めたような言葉が、もしかしたら消えていってしまうかもしれない。人々のジャッジが、すごく刹那的になっていますよね。

―「正しい / 間違っている」「好き / 嫌い」……そういうものが、すごく極端なジャッジになっていますね。

野田:この間の参議院選挙もそうですけど、1つの思想が違うだけで、「君と僕は違いますね」って、相手をゼロにできてしまう……それは、あまりに幼稚なんじゃないかと思うんですよ。

僕はむしろ、相手と「ズレ」があるからこそ、自分が何かを表現する意味にもなると思っていて。世界とのズレ、他者とのズレ……それがあることで、相手が納得しようがしまいが、「自分には言うべきことがあるんだ」ってわかるから。僕もみんなも同じことを思っているのなら、歌う意味なんてないですよね。

illion

―illionはソロプロジェクトなので、野田さん個人と世界とのズレがわかりやすく立ち上がってくる気もするんですが、RADWIMPSの場合、メンバーという、わかり合える存在がいますよね。バンドという集合体になっても、世界とのズレは表現の理由になりますか?

野田:なりますね。バンドって、「歪さの形」だと思うんですよ。いかに自分たちが真っ当だと思って世の中に提示したものが、周りからは歪に見えるか……それがバンドとしての美しさだと思うんです。周りと同じものを見ているのに、違う形に見えている。

そういう意味では、RADWIMPSにも誇れる歪さがあるなって思います。世間は「黄色だ」というものを、うちら四人だけは「赤色だ」って自信を持ちながら提示してしまえるような結束がちゃんとあるんです。それはillionをやってみてなおさら思う。どれだけ僕一人で曲を作っても、決してRADWIMPSにはなりえないから。

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リリース情報

illion『Water lily』
illion
『Water lily』

2016年7月15日(水)から配信リリース

1. Water lily

illion
『タイトル未定』初回限定盤(CD+DVD)

2016年10月12日(水)発売
価格:3,780円(税込)
WPZL-31220/1

[CD]
・Water lily
ほか全10曲収録予定
[DVD]
Live at London, O2 Shepherd's Bush Empire 2013
・BEEHIVE
・LYNCH
・γ
・MAHOROBA
・BRAIN DRAIN
・GASSHOW
Music Clip
・BRAIN DRAIN(Performed in Abbey Road Studios)
・MAHOROBA
・BEEHIVE
・MAHOROBA(Music Clip Making)
ほか

illion
『タイトル未定』通常盤(CD)

2016年10月12日(水)発売
価格:2,700円(税込)
WPCL-12431

・Water lily
ほか全10曲収録予定

プロフィール

illion
illion(いりおん)

野田洋次郎(RADWIMPS)によるソロ・プロジェクト。2013年2月に1stアルバム『UBU』を発表。このアルバムはワーナーブラザーズレコードから発売され、UK、アイルランドを皮切りに、日本、フランス、ドイツ、オーストリア、スイス、ポーランド、台湾で順次発売された。持ち前のポピュラリティはそのままに、より前衛的でフロア向けの楽曲が並び、また海外での活動を視野に入れ多くの楽曲が英語詞で構成されており、海外のオーディエンスにも大きな支持を得ている。

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