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野田洋次郎が語る、RADWIMPSと両輪をなすillionの再始動

野田洋次郎が語る、RADWIMPSと両輪をなすillionの再始動

illion『Water lily』
インタビュー・テキスト
天野史彬
撮影:豊島望 編集:山元翔一

今は、世界がネットによって一つにつながっていくようで、逆に細分化されて小さな世界がどんどんと生まれているっていう現状もある。

―今回、“Water lily”と一緒に特設サイトもオープンしましたけど、これもすごく実験的で面白くて。“Water Lily”が「Vocal」「Code」「Rhythm」「Synth1」、「Synth2」という5つの音に分解されて、それぞれの音を同時アクセス中のユーザーが操ることでセッションができるんですよね。サンプリングやリミックスなどの手法を基盤にした、クラブミュージック的な発想の試みですね。

『Water lily』 特設サイトより">『Water lily』 特設サイトより
『Water lily』 特設サイトより

野田:これは、「dot by dot inc.」という会社の人たちを紹介してもらったのがきっかけなんです。相談していたなかで、このアイデアがダントツで面白かった。曲を解体することだから、最初はdot by dotの人たちも遠慮していたんですけど、僕自身はそこに対する抵抗は一切なくて。そもそも、“Water lily”自体がサンプリング的な発想から生まれているし、お客さんがリアルタイムで曲に手を加えられるというのは、音楽を作る喜びに似ているんだろうなと思って。

―今の時代の音楽は、もはや作品性からどんどんと溶け出している現状はあると思うんですね。たとえば、今年、カニエ・ウェストがリリースしたアルバムは、未完成のままデータベース上に存在して、どんどんとアップデートされていくという、「アルバム」という概念を完全に覆すもので。そういう動き自体は、野田さんは受け入れられますか?

野田:僕個人としては、そういう、どうしようもない時代の流れや空気には抗う理由はないと思っています。自分が生きている時代が提示してくれるものに対して、じゃあ自分は何ができるのかっていうことでしかないから。だから、今の時代も面白いと思うし、時代に対して常に自分の発想を研ぎ澄ませていたいですね。

……でも、面白いですよね。音楽は、もはや完成された一つの形ではなくなっているのかもしれない。それに今は、世界がネットによって一つにつながっていくようで、逆に細分化されて小さな世界がどんどんと生まれているっていう現状もある。

illion

―先ほどの「ズレ」の話にもつながると思うんですけど、野田さんには、そうした細分化されていく世界をつなぎたいという意識はありますか? 野田さんの表現者としての規模感は、それを可能にできる大きさがあると思うんですよね。

野田:意識しすぎると説教じみちゃうけど、あくまでも結果として、自分は細分化が進む現状に抵抗する立場でありたいとは思いますね。僕はいつだって「今、ここ」じゃないどこかに行くのが好きなんだって思うし、自分はずっと「どこにも所属していない」っていう意識が根本にあるんですよ。小学生の頃、アメリカにいたときもそうだったし、日本に帰ってきたときもそうだし、大学に行ってもそうだった(笑)。ずっと「自分はここじゃないんだ」って思いながら、居候させてもらっている感覚があって。

―なるほど、孤独にはなりませんか?

野田:もう慣れましたね。「誰かと何かを100%わかり合うのは無理だ」っていうことを、すごくドライに受け止めている部分もあるし。その事実を「残酷」と受け取るか「希望」と受け取るかは、その人の鏡になると思う。それに僕自身が、問いかける鏡でいたいですね。「どう思いますか?」って。

(RADWIMPSには)家族のような、恋人のような、親子のような、そのどれでもないような、強い「個」のつながりがある……その心強さがあるからこそ、illionも好きにできているのかなって思います。

―“Water lily”を聴いても、特設サイトの試みを見ても思ったんですけど、illionでの野田さんは、世界を信頼しきっているなと思うんです。

野田:なるほど……それは、アルバムをトータルで聴いたら、余計に感じてもらえることかもしれない。それに、役割を背負っているRADWIMPSとは違って、illionでは僕自身がすごく無責任かつ「わんぱく」でいられますからね。illionにある喜びは、「楽器で遊んでいたら、いつの間にか夜中になっていた」みたいなもので、自分にとってずっと変わらないものなんだと思う。10年前も15年前も、30歳を過ぎた今も、体力の問題を除いては(笑)、驚くほど変わらない。

―「変わらないもの」がillionなら、RADWIMPSはどうですか?

野田:変わっていますね。10年前と今とでは、RADWIMPSは驚くほど変わっている。昔は僕自身、「憧れる人に近づきたい」っていうある種の自己嫌悪を抱えながら歌を作っていたんです。でも今はもう、「自分もその人に近い場所にいれるようになったかな」とか「そもそも追いかけていた人なんていたのかな?」って思えるようになっている。

RADWIMPSのフロントマンとして、自分自身でいられている気はしますね。それに、今はバンド自体にも迷いがなくなっていて。それがすごく心地いいんです。今作っている曲も、意外なほどポジティブだし、開けた言葉が出てきていて。それが嬉しいんですよね。

illion

―なぜRADWIMPSは今、開けているんだと思いますか?

野田:強くなったんだと思います。去年、ドラマー(山口智史)が無期限の休養に入ってしまったことは未だかつてない事件でしたけど、智史が帰ってくる場所をちゃんと作っておきたいっていう気持ちがあるし。そういう状況のなかで、一つひとつ決断して、乗り越えて、諦めることは諦めて、だけど捨てないものは捨てないで、掴んで……そうやって、強くなったんだと思います。

今、僕は10年やってきたなかで一番RADWIMPSが好きだと思えているし、それはメンバー全員が強く思っていることだと思うんです。今はもう、「この四人で一緒にいる」ことがひとつの目的になっている。もちろん、音楽を作ることも目的だけど、それと同時に、ずっと、この四人で一緒にいたい。家族のような、恋人のような、親子のような、そのどれでもないような、強い「個」のつながりがある……その心強さがあるからこそ、こうやってillionも好きにできているのかなって思いますね。

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リリース情報

illion『Water lily』
illion
『Water lily』

2016年7月15日(水)から配信リリース

1. Water lily

illion
『タイトル未定』初回限定盤(CD+DVD)

2016年10月12日(水)発売
価格:3,780円(税込)
WPZL-31220/1

[CD]
・Water lily
ほか全10曲収録予定
[DVD]
Live at London, O2 Shepherd's Bush Empire 2013
・BEEHIVE
・LYNCH
・γ
・MAHOROBA
・BRAIN DRAIN
・GASSHOW
Music Clip
・BRAIN DRAIN(Performed in Abbey Road Studios)
・MAHOROBA
・BEEHIVE
・MAHOROBA(Music Clip Making)
ほか

illion
『タイトル未定』通常盤(CD)

2016年10月12日(水)発売
価格:2,700円(税込)
WPCL-12431

・Water lily
ほか全10曲収録予定

プロフィール

illion
illion(いりおん)

野田洋次郎(RADWIMPS)によるソロ・プロジェクト。2013年2月に1stアルバム『UBU』を発表。このアルバムはワーナーブラザーズレコードから発売され、UK、アイルランドを皮切りに、日本、フランス、ドイツ、オーストリア、スイス、ポーランド、台湾で順次発売された。持ち前のポピュラリティはそのままに、より前衛的でフロア向けの楽曲が並び、また海外での活動を視野に入れ多くの楽曲が英語詞で構成されており、海外のオーディエンスにも大きな支持を得ている。

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