インタビュー

島健が語る、桑田佳祐が歌謡曲を歌う意義「警鐘を鳴らす意味も」

島健が語る、桑田佳祐が歌謡曲を歌う意義「警鐘を鳴らす意味も」

インタビュー・テキスト
麦倉正樹
撮影:永峰拓也 編集:矢島由佳子

音楽がアコースティックなものではなく、打ち込みが中心になっている傾向がある中で、それに警鐘を鳴らす意味もあると思う。

―桑田さんは、ジャズもかなり聴いていらっしゃるようですが、島さんとの打ち合わせの中では「ジャズ」という言葉が頻繁に出てくるのですか?

:ジャズに関しては、あまり話したことはないですね。むしろ桑田さんは、ビッグバンドジャズの要素を持った歌謡曲に影響を受けてきているんじゃないですかね。もちろん、一番影響を受けているのは、THE BEATLESだと思いますけど。ただ、歌謡曲にも相当影響を受けたということはよく言っていますよね。で、それは僕もそうなんです。実は「J-POP」と呼ばれる以前の歌謡曲は、アメリカから入ってきたジャズの影響が相当強いんです。服部良一さん(昭和時代に活躍した、作曲 / 編曲家。代表曲に“東京ブギウギ”など)とかもそうですけど、アレンジもジャズっぽいし、ザ・ピーナッツとかも、後ろで演奏しているのがビッグバンドだったりするので、かなりジャズの要素がありましたよね。

島健

―昔の歌謡曲とジャズの繋がりというのは、思いのほか強いのですね。

:そうですね。昔はNHKの『紅白歌合戦』も、演奏はビッグバンドがやっていましたから。ある頃からそれが通常のバンドになって、やがてミュージシャンが自分のバンドを引き連れて登場するようになって……今やビッグバンドは、ほとんどなくなりましたよね。

―そうなってくると、ビッグバンドのアレンジができる人の数も減ってくるのでは?

:確かにそういう傾向はあるかもしれないですね。今はアレンジャーと言っても、コンピューターで全部作ってしまって、本人は楽器も弾けなければ譜面も書けないなんてこともありますから。そういう人は、ビッグバンドのアレンジは書けないでしょうね。

―先日放送されたWOWOWの特別番組『桑田佳祐「偉大なる歌謡曲に感謝~東京の唄~」』では、島さんが全20曲中18曲のアレンジを担当されていましたが、あれも相当な人数のバンドになっていましたよね?

:はい。ビッグバンドにストリングスを加えた編成なので、かなり多かったですよね。そう、その番組のお話をいただいたとき、桑田さんが、「これは島さんありきの企画だから」って言ってくださったんです。嬉しかったですね。まあ、その後の打ち合わせで、「全部で20曲になりました!」って聞いたときは、結構ビビりましたけど(笑)。

―(笑)。

:でも、あの番組の収録は、本当に楽しかったです。昭和の名曲というのは、やっぱりよくできているというか、とてもキャッチーで、「これは売れるよね」って、ミュージシャンのみなさんと言い合ってました。

―今の時代に聴くと、決して「懐メロ」という感じではなく、新鮮な感じがありました。

:そうですね。ミュージシャンの中には、オリジナルを知らない世代もいましたし、普段ジャズやロック、ポップス、洋楽などを演奏することが多いみなさんにとって新鮮な体験だったのではないでしょうか。でも歌謡曲や邦楽的なものまで、すぐに見事にはまって、とても楽しそうに演奏していることに、「あぁ、みんなやっぱり日本人なんだよねぇ」と感動しました。

―楽曲をアレンジする上で、どんなことを意識しましたか?

:桑田さんと打ち合わせした時点で、基本的にオリジナルの感じは壊さず、有名なイントロや間奏は変えないでほしいという話だったので、それを意識してアレンジしました。ただ、オリジナルの編成は、今回ほど大きなものではないので、それをビッグバンドとストリングスという編成でやることに、ちょっと苦労しましたね。あとはやっぱり、聴いて古いと感じるものにはしたくないとは思っていました。

―桑田さんが、昔の歌謡曲を今の時代に歌うことの意義については、どのように捉えていますか?

:音楽がアコースティックなものではなく、打ち込みが中心になっている傾向がある中で、それに警鐘を鳴らす意味もあると思うし……最近の楽曲って、綺麗なメロディーよりも、ビートとかのほうに重きを置いていたりするじゃないですか。そうではなく、曲というのは、やっぱりいいメロディーがあってこそだということを、昭和の歌謡曲を通して桑田さんは伝えたいんじゃないでしょうか。それを実際にやってくれたことは、本当に素晴らしいことだと思います。僕も一緒にやることができて、とても幸せでした。

島健

デビュー以来38年間、ずっと一線でやり続けているのは、本当にすごいと思います。

―そんな桑田さんと島さんは、もはや20年の付き合いとなるわけですが、お互い変わりましたか?

:どうかな……気がついたらお互い60代になっていたという(笑)。桑田さんがどう考えていらっしゃるかはわからないですけれど、僕自身は変わってないつもりです(笑)。

―では最後に、今年還暦を迎えられた桑田さんに、一足先に還暦を迎えた島さんから、何かメッセージをひとつ。

:還暦を迎えて、こんなに活躍されている方って、なかなかいらっしゃらないですよね。そういう意味でも、本当に特別な存在だと思います。デビュー以来38年間、ずっと一線でやり続けているのは、本当にすごいと思いますし、これからいろいろな最高齢記録を作っていってほしいですよね。僕も一緒に頑張らせていただけたらなって思っています。

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プロフィール

島健(しま けん)

ピアニスト、作・編曲家、プロデューサー。1978年に渡米。L.A.にてアレンジを学びながらジャズシーンで活躍。86年に帰国後は、スタジオプレイヤーとして数千曲に及ぶレコーディングに参加する一方、サザンオールスターズ、浜崎あゆみ、中島美嘉、ゴスペラーズ、GLAY、平原綾香、JUJU、森山良子、加藤登紀子など幅広いジャンルのアーティストのアレンジやプロデュースを手掛け、サザンオールスターズ“TSUNAMI”(弦編曲)、浜崎あゆみ“Voyage”(編曲)はレコード大賞を受賞。また、テレビドラマやミュージカル、芝居の作曲、音楽監督など、その活動の範囲は多岐にわたり、ミュージカル『PURE LOVE』の作曲では読売演劇大賞・優秀スタッフ賞を受賞している。最近ではJUJUのジャズアルバム『DELICIOUS』『DELICIOUS 2nd Dish』のサウンドプロデュース、サザンオールスターズ『葡萄』弦・管編曲、ピアノ等を担当。自身のアルバムには『BLUE IN GREEN』『Shimaken Super Sessions』、夫人の島田歌穂とのデュオアルバム『いつか聴いた歌』などがある。

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