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京都から考える伝統の継承、そして破壊  首藤康之×細尾真孝対談

京都から考える伝統の継承、そして破壊 首藤康之×細尾真孝対談

『京都岡崎音楽祭 OKAZAKI LOOPS』
インタビュー・テキスト
野路千晶
撮影:岡村大輔 編集:佐々木鋼平、野村由芽

ダーウィンの進化論のように、伝統は状況に応じて変わり続けることができるから生き残ると言える。(細尾)

―さきほど「伝統を壊す」というお話がありましたが、逆にお二人は「伝統を受け継ぐ」ことについて、どのようにとらえていらっしゃいますか?

細尾:伝統の強みって、壊すつもりでいっても壊れない強さというか、妙な引力があるんですよね。ビルの10階から飛び降りてもバンジージャンプで引き戻されるような。だとしたら伝統を壊すようなつもりで挑んだほうがいい。そこで初めておもしろいコントラストや次のステージが現れるような気がします。

首藤:その話で思い出したことがあります。あるバレリーナが、伝統あるバレエ団の有名な教師に習っていて、教師が「このポーズは伝統あるものだからこの通りにやってください」と伝えたところ、そのバレリーナは「意味や美しさではなく、『伝統があるからやる』というのはすごくナンセンスなことだ!」と怒ってしまい、言い合いになったという話はクラシックバレエ界では有名なエピソードです。

―「伝統だから」というのが気に障ったと。結末はどうなったんですか?

首藤:結局、そのバレリーナは伝統の形を踊ったんです。つまり、伝統は崩そうと思っても太刀打ちできないくらいの強さがある。だからこそ美しいということを示す逸話だと思います。

―クラシックバレエにおけるその「伝統」は、コンテンポラリーダンス、演劇などといった、首藤さんの幅広い活動にもつながっているのでしょうか?

首藤:僕はクラシックバレエを基本に活動していますが、すべての根幹にあるものは「なにかを表現したい」ということ。その手段がちょっとずつ違っているだけですね。その中でも自分が一貫して興味があるのは、舞踊の伝統とそのテクニックを使っての表現の追求ですね。

―テクニックとは?

首藤:バレエには基本的なポーズやポジションの形があって、その連続が表現になっています。伝統の形からひじを少し変形させるとコンテンポラリーダンスになり、また戻すと伝統になる。そうした組み合わせによる表現は、伝統と現代の間を旅するようなものでもあると思います。

細尾:伝統と現代の往復は、すごく重要ですよね。ダーウィンの進化論のように、伝統は状況に応じて変わり続けることができるから生き残ると言える。同じことをしていても伝統は守れないんですよね。そういう意味で僕も無茶なことをやりたいです。

左から:首藤康之、細尾真孝

―細尾さんが今、西陣織を用いて作りたいものはありますか?

細尾:今考えているのは、織物の家ですね。中東の家やモンゴルのゲル(パオ)とかでも、テキスタイルが家になるじゃないですか。今はテクノロジーが進んでいて、組み立て式でモバイル可能で雨もしのげて温度調整もできる。そうすると「家はコンクリートで作らないとだめ」という概念も変わってくるはずなんです。そういう妄想は常にしていますね。来週、ボストンのマサチューセッツ工科大学(MIT)に行って、妄想をかなえてくれる研究者を探しに行くんです。

首藤:それはぜひ、実現してほしいですね!

細尾:僕のこうした活動の根底には、新しいことを展開していくことによって、京都から世界に向けて新しい価値観を発信できるような世界都市になってほしいという思いがあります。

首藤:そうですよね。細尾さんの世代になったからこそ、西洋を含む様々な文化が京都に入りやすくなり、伝統を守りながら革新を起こすためのリンクが可能になった。京都は、パリやロンドンと同じ、もしくはそれ以上の伝統を備えている街だと思います。 僕はバレエというひとつの「西洋文化」とともに今回『KYOTO OKAZAKI LOOPS』のみなさんとご一緒させていただくことで、京都の新しい動きのリンクを少し広げていきたい。それができたら、とても素敵なことだと思いますね。

細尾:京都の中だけで固まっていても、本当の意味で広がっていかないと思うんです。クリエイティブの純度を上げていこうと思ったら、『ドラゴンボール』の天下一武道会みたいに、京都以外からも一流の才能が一堂に集まることが必要不可欠。今回の『KYOTO OKAZAKI LOOPS』では、そういった未来像の一端を体感することができるのではないかと思います。

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イベント情報

LOOPS オープニングセレモニー+特別プログラム

LOOPSオープニング
2016年9月3日(土)
会場:京都府 ロームシアター京都 メインホール
料金:
一般3,000円(全席指定)
当日3,500円
学生券2,000円(当日座席指定 当日要学生証)
※セット券対象公演

『BROCARE』
振付:中村恩恵
出演:首藤康之
舞台美術・音楽・映像:細尾真孝
衣裳デザイン:山田いずみ

『Prelude for Didi & Gogo』
振付:中村恩恵
出演:
首藤康之
中村恩恵
ピアノ:福間洸太朗
舞台美術:細尾真孝
衣裳デザイン:山田いずみ

『Scriabin's Etude』
振付:中村恩恵
出演:
宝満直也(新国立劇場バレエ団)
五月女遥(新国立劇場バレエ団)
ピアノ:福間洸太朗
舞台美術:細尾真孝
衣裳デザイン:山田いずみ

『GLASS』
振付:中村恩恵
出演:
首藤康之
中村恩恵
ピアノ:福間洸太朗
舞台美術:細尾真孝
衣裳デザイン:山田いずみ

『京都岡崎音楽祭 OKAZAKI LOOPS』

2016年9月2日(金)、9月3日(土)、9月4日(日)
会場:ロームシアター京都、平安神宮、みやこめっせ、京都国立近代美術館、京都市美術館
※9月2日は前夜祭

プロフィール

首藤康之(しゅとう やすゆき)

15歳で東京バレエ団に入団し、19歳で「眠れる森の美女」王子役で主役デビュー。古典作品をはじめ、モーリス・ベジャール「M」「ボレロ」ほか、イリ・キリアン、ジョン・ノイマイヤー、マシュー・ボーンら世界的現代振付家の作品に数多く主演。2004年同バレエ団を退団後も、ウィル・タケット演出・振付「鶴」、中村恩恵振付「Shakespeare THE SONNETS」などのダンス作品の他、映画、ストレートプレイ、小野寺修二演出「空白に落ちた男」、長塚圭史演出「音のいない世界で」、串田和美演出「兵士の物語」、白井晃演出「出口なし」など多彩な作品に出演。また、KAAT神奈川芸術劇場では「DEDICATED」シリーズをプロデュース等。第62回芸術選奨文部科学大臣賞ほか、受賞多数。

細尾真孝(ほそお まさたか)

1978年、西陣織老舗 細尾家に生まれる。細尾家は元禄年間に織物業を創業。人間国宝作家作品や伝統的な技を駆使した和装品に取り組む。大学卒業後、音楽活動を経て、大手ジュエリーメーカーに入社。退社後フィレンツェに留学し、2008年に細尾に入社。2009年より新規事業を担当。帯の技術、素材をベースにしたファブリックを海外に向けて展開し、建築家、ピーター・マリノ氏のディオール、シャネルの店舗に使用される。最近では「伝統工芸」を担う同世代の若手後継者によるプロジェクト「GO ON」のメンバーとして国内外で幅広く活動中。日経ビジネス誌2014年「日本の主役100人」に選出される。2016年、MITディレクターズフェローに就任。

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