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世界も時代も関係ない。半径10mの幸福を優先するGEZANの在り方

世界も時代も関係ない。半径10mの幸福を優先するGEZANの在り方

GEZAN『NEVER END ROLL』
インタビュー・テキスト
天野史彬
撮影:田中一人 編集:山元翔一
2016/09/28
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まるで手を触れることができない「何か」に手を伸ばすようにして鳴らされる、光のような音塊。疾走するドラミングは光の向こう側を目指してスピードを増し、メロディーもノイズも咆哮も、全ては光のなかに包まれていく。音楽やバンドという得体の知れない何かに魅了され、踏み潰され、そして生かされた四人の男のドキュメント。現在活動休止中のGEZANの、約3年ぶりとなる3rdアルバム『NEVER END ROLL』――バンドにとって本作は、8月いっぱいで脱退したドラマー、シャーク安江が在籍した状態での最後のアルバムとなる。

このアルバムでGEZANは、ジャックス、村八分、RCサクセション、THE BLUE HEARTS、そして銀杏BOYZの系譜を継ぐ存在として、何よりも美しく、何よりも無力なロックを鳴らしている。サウンドは過去最高に開かれているが、バンドは音楽に敗北している。だからこそ、このアルバムは素晴らしい。何故、GEZANは四人で最後に1枚のアルバムを作ろうとしたのか? そして何故、バンドは活動休止中にもかかわらず作品は世に放たれるのか? そうした問いに対して、残された三人のメンバーに答えてもらった。

アルバムの制作期間は短かったけど、巻き込まれて、ぼーっとしながら、「音とか音楽って、どこから来るんやろうな?」って考えていた。(マヒト)

―8月31日のライブをもってドラマーのシャークさんが脱退して、現在、GEZANとしては活動休止中となりますが、そんななか3rdアルバム『NEVER END ROLL』がリリースされました。本作の制作とシャークさんの脱退は、タイミングとしてはどんな前後関係があったんですか?

マヒト(Vo,Gt):5月にシャークが抜けることが決まって、そこから「録ろう」っていう話をしました。曲も、それより前にあったものだけで作ろうって。このメンバーでしか録れないだろうと思っていたし、自分の意志は別にしても、音楽として、ちゃんと形として残しておくべきだなと思ったんです。

左から:マヒトゥ・ザ・ピーポー、イーグル・タカ、カルロス・尾崎・サンタナ
左から:マヒトゥ・ザ・ピーポー、イーグル・タカ、カルロス・尾崎・サンタナ

―「自分の意志は別」ということは、マヒトさんのなかには少なからず反発もあったんですか?

マヒト:自分の意志で言えば、シャークの脱退だって望んでいたわけではないから。それでもアルバムを作ったのは、自分たちの意志とは関係ないものに飲み込まれて、そこに全てを委ねていく感覚だったんですよね。音楽のいいところって、音を出しているときには、自分の欲とか、業とか、「こうしたい」っていう意志と切り離されるところなんだって、今回すごく実感しました。

もう辞めるとわかっているメンバーとスタジオに入るのって、どんな空気感になるか想像もつかなかったけど、いざやってみたら、普段と何も変わらなかったし、「終わり」の感覚すらなかった。自分たちの何かが終わることを予見しているリリックも結構あったけど……でも、それと相反して、音楽は前に行こうとしている。その部分がすごく不思議なんですよね。

イーグル(Gt):そうやね。このアルバムは、なんだか自分のものじゃない感覚で聴くことが多いんですよね。

マヒト:うん、聴いても感傷的な気分にはならないしね。それはやっぱり、音が前に向かっているからだと思う。今までのアルバムのなかで一番、透明感があるかもしれないです。「自分のもの」というより、「自分よりひとつ先にあるもの」っていう感覚があるから。

―シャークさんの脱退が決まる以前から「終わり」を予見するリリックが生まれていたのは、どうしてだったんですか?

マヒトゥ・ザ・ピーポー

マヒト:う~ん……具体的に何かがあったからっていうわけではないんですけど、1~2年前から、自分にはコントロールできない部分で、自然と音楽にそういうものが入ってきていたんですよね。本当に無意識的だし、大げさに言えば、自分で集めてきたリリックに教えられたり導かれたりする意識があって。このアルバムを作っている期間は短かったけど、巻き込まれて、ぼーっとしながら、「音とか音楽って、どこから来るんやろうな?」って考えていました。

―「音楽はどこから来るのか?」という問いに対して、マヒトさんのなかで答えは出ましたか?

マヒト:まだわからないですね。でも、「これからどうするの?」って訊かれたり考えたりもするけど、自分で決められることって意外と少ないのかなって最近は思っていて。言い方を変えると「諦め」みたいなものなのかもしれないけど、どうせコントロールできないのなら、ひたすら流れに任せてみようっていう気持ちはありますね。ただ、そのなかで拾えるものをちゃんと拾うイメージだけは持って、アンテナは折らずにいようって。

マヒト:このアルバムが、8月31日以降、自分たちがライブもできない状況で唯一、「GEZAN」という看板を背負って旅に出てくれるんですよ。なので、「行ってこい」っていう感じです。水っぽいイメージというよりは、何かの映画で見た、缶に手紙を入れて流すようなイメージですね。

―音楽やバンドって、それを作る人たちですら制御しきれないものなんだなって、このアルバムを聴くと感じます。「ロックバンドってなんなんだろう?」とも思うし。

マヒト:シャークが抜けたことで、バランスが崩れて三人で喧嘩もしたけど、でも俺は「この四人でGEZANなんだ」みたいな、それまでの気持ちから少し離れたんですよね。それは別に「一人になりたい」っていうことではなくて。前に、CINRAで安孫子(真哉)さんと一緒に話をしましたけど(元銀杏・安孫子とGEZANマヒトが考える、新しいレーベルのあり方)、今、峯田(和伸)さんが一人でも「銀杏BOYZ」っていう名前でやっている気持ちがちょっとわかったんです。

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リリース情報

GEZAN『NEVER END ROLL』
GEZAN
『NEVER END ROLL』(CD)

2016年9月22日(木・祝)発売
価格:2,160円(税込)
JSGM-018

1. ~after the end of the world~
2. blue hour
3. SPOON
4. 言いたいだけのVOID
5. wasted youth
6. Light cruzing
7. MU-MIN
8. FEEL
9. OOO
10. ghost ship in a scilence(Do you hear that?)
11. GOLDEN TIME IS YOURS
12. 待夢
13. END ROLL

プロフィール

GEZAN
GEZAN(げざん)

2009年大阪にて結成の日本語ロックバンド。2012年拠点を東京に移すとその音楽性も肉体感を変えぬまま大きく進化し続け、よりポップでキャッチー&メロディックな音にシンプルかつ意味深い日本語詞が乗る独自のスタイルを極め続けている。日本の音楽の歴史を継承するオーセンティックさと、新たな時代を切り裂くニュースクール感を合わせ持つ現在のシーンでは唯一無二の存在として今後の活動が期待されている。現在までにフルアルバム3枚、ミニアルバムとライブアルバムが各1枚、DVDやヴィニール7inchなどもリリースしている。またマヒトゥ・ザ・ピーポーソロとしてアルバム2枚をリリースもしている。

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