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世界も時代も関係ない。半径10mの幸福を優先するGEZANの在り方

世界も時代も関係ない。半径10mの幸福を優先するGEZANの在り方

GEZAN『NEVER END ROLL』
インタビュー・テキスト
天野史彬
撮影:田中一人 編集:山元翔一
2016/09/28

俺は、卒業式やお葬式にも出たことがないんですけど、それは、何も終わらせたくないし、何も認めたくないからなんです。(マヒト)

―どういうことでしょう?

マヒト:バンドって、ギターとベースとドラムがいるからバンドなんじゃないんですよ。人数が一人でも、自分「たち」は自分「たち」なんです。「何かが起きてほしい」とか「続けたい」とか、そういうものを信じるマインドが「バンド」なんだって、今回のことで初めて気づかされたんです。なので、解散なんてする気持ちには一度もなれなかった。

―GEZANであれ銀杏BOYZであれ、メンバーが欠けたあともバンドは残っていく。抜けていった人たちの意志や存在って、この先の音にも刻まれていくものなんですかね?

マヒト:友川カズキさん(1970年代から活躍するフォークシンガー)の言葉で、「人と人とは別れられないんだよ。出会うだけなんだ」っていう言葉があるんですけど、俺はそれがすごく好きで、いつも頭のどこかにあるテーマみたいなものなんです。本当にそうだなって思う。

一度好きになった人って、そう簡単には離れられないし、ちょっとやそっとじゃ縁は切れない。だから、出会うことはあっても、別れなんてないんじゃないかと思うんです。俺は8月31日のライブの後もシャークに「お疲れ様」の一言も言っていなくて。もちろん、バンドとしては離れた実感はあるけど、着地できない感覚があるというか。

カルロス・尾崎・サンタナ

カルロス(Ba):着地できない感覚は俺のなかにもあって。あの日のライブの帰り、車のなかでイーグルが運転していて俺が助手席だったんだけど、「今、どんな気分?」「モヤモヤしとるなぁ」みたいな話をしながら帰ったんです。「最高やったな!」とはならなかったんですよね。

イーグル:「やり切った!」っていう感じではなかったよな。むしろ「行かな!」っていう感じだった。

イーグル・タカ

マヒト:でも、そんな着地できなかった人たちのために「これから」はあるから。「これから」って希望ですよね。そこには「余白」があって、「信じたい嘘」があって……それがある限り、「続ける」ことはやめられないんだと思う。これはバンドだけの話ではなくてね。みんな「終わり」っていう言葉を使うことで納得したがるけど、でも、本当にそんなことできるはずはないんですよね。

―今おっしゃったような「終わり」というものに対する考えは、マヒトさんという人間の根底にあるものですよね。

マヒト:俺は、卒業式やお葬式にも出たことがないんですけど、それは、何も終わらせたくないし、何も認めたくないからなんです。もちろん、変わっていく人も、会えなくなる人もいるけど、でも俺は何もこぼしたくないし、こぼせないと思っているんですよね。この先、俺もバンドも、消えることもできないんですよ。一度存在してしまったことを形にして、消えることのない証明を残していくことが、俺たちがやっていることだから。

俺がやっていることは、もっと小さなコミュニティーの話。「時代をひっくり返したい」とか一言で言えるほど、時代って簡単じゃないですよ。(マヒト)

―“blue hour”の歌詞に<きょうも4人でここにたってる 押し花がもう一度 花になるイメージ>という歌詞がありますが、この感覚は、マヒトさんのなかにずっとあるものですか?

マヒト:これはもう、最初からそうですね。俺はいつも、歌うことで実感しないと、手放してしまいそうな感覚を歌っている感じがしていて。全部、「怯え」とか、何かが消えていくことの「恐れ」から歌っているんですよね。さっき、「みんな終わらせることで納得したがっている」って言ったけど、本当は誰よりも自分が「終わり」に取り憑かれているんだとも思うし。

―誰よりも「終わり」を恐れている、と。

マヒト:でも、そんな自分がバンドをやれるんだって思えたときの気持ちって、いまだに覚えているんですよ。スタジオに入って音を出して、難波ベアーズ(大阪にあるライブハウス)でライブして、「曲作って、ライブできるんだ!」みたいな……あの気持ちがいまだにあって(笑)。あの瞬間に俺は既に最高にハッピーだったから、今はその感覚を、もう一度、心の真ん中に返したい気持ちがすごくあるんだと思いますね。

―そこにあるのは、きっとロックバンドの原初的な喜びですよね。ただ、ライター的な意見を言わせてもらうと、今の時代、ロックバンドの存在はとても弱いとも思うんです。何故なら、今、世界の中心にあるのは、アフロアメリカンや性的マイノリティーの人たちのように、理不尽な差別や暴力を受けてきた人たちが、その現実に対して怒りや祈りを鳴らす音楽だから。それだけ、今は世の中が混乱していると思うんですよね。

マヒト:たしかに時代感って、メディアの人は敏感になるだろうし、外からどう書いてもらってもいいんですけど、俺は、もっと視野の狭い感覚ですね。俺がやっていることは、時代がどうこうではなくて、もっと小さなコミュニティーの話だと思う。今、この空間がいい気持ちになることと、時代は多分、なんの関係もないと思うから。それに、「時代をひっくり返したい」とか……その一言で言えるほど、「時代」って簡単じゃないですよ。

マヒトゥ・ザ・ピーポー

―確かにそうかもしれない。

マヒト:だから俺はもう、「いち抜けた」っていう感じかな。「勝手にやってくれよ、俺らは誰よりも楽しむぞ」っていう。俺は学校に通っていたころからハブられてたから、コムアイ(水曜日のカンパネラ)みたいにみんなの中心に立って周囲を巻き込んでいくような存在になるのは無理なんですよ(笑)。それよりもGEZANは、全校朝会をしているときに保健室で休んでいる3~4人の音楽っていう感じがする。

―うん、その保健室にいる人たちが作る音楽で、僕が今一番強いと思えるのが、このアルバムなんです。世の中で起こっている出来事から目を背けることは簡単にはできないし、知っておかなければいけないこともたくさんある。でも、世の中の物差しで測れば小さなことでも、なかったことにはできない個人の喜びや痛みだってある。それを表現するものとしてのロックの強さを、このアルバムからはすごく感じるんです。

GEZAN『NEVER END ROLL』ジャケット
GEZAN『NEVER END ROLL』ジャケット(Amazonで見る

マヒト:俺は、今、世界で何が起きているのかなんて、マジで一切知る必要はないと思っていて。たとえば戦争が起きて、街中に毒ガスがまき散らされていても、俺にそのニュースは伝えないでほしい。いつもみたいにビール飲んだりバンドやったりスケボーしたりして、死ぬときは一発でやってくれって思う。

政治の話も、いろんな正義といろんな悪があって、どれも正しいし、どれも間違っているんですよ。それなのに白と黒をつけて、「自分は正しい」と思い込んで、違う立場の人を攻撃するのって……俺はしたくないな。何かに対するライオットとか、今はそれがパンクだとは思わない。

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リリース情報

GEZAN『NEVER END ROLL』
GEZAN
『NEVER END ROLL』(CD)

2016年9月22日(木・祝)発売
価格:2,160円(税込)
JSGM-018

1. ~after the end of the world~
2. blue hour
3. SPOON
4. 言いたいだけのVOID
5. wasted youth
6. Light cruzing
7. MU-MIN
8. FEEL
9. OOO
10. ghost ship in a scilence(Do you hear that?)
11. GOLDEN TIME IS YOURS
12. 待夢
13. END ROLL

プロフィール

GEZAN
GEZAN(げざん)

2009年大阪にて結成の日本語ロックバンド。2012年拠点を東京に移すとその音楽性も肉体感を変えぬまま大きく進化し続け、よりポップでキャッチー&メロディックな音にシンプルかつ意味深い日本語詞が乗る独自のスタイルを極め続けている。日本の音楽の歴史を継承するオーセンティックさと、新たな時代を切り裂くニュースクール感を合わせ持つ現在のシーンでは唯一無二の存在として今後の活動が期待されている。現在までにフルアルバム3枚、ミニアルバムとライブアルバムが各1枚、DVDやヴィニール7inchなどもリリースしている。またマヒトゥ・ザ・ピーポーソロとしてアルバム2枚をリリースもしている。

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