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世界も時代も関係ない。半径10mの幸福を優先するGEZANの在り方

世界も時代も関係ない。半径10mの幸福を優先するGEZANの在り方

GEZAN『NEVER END ROLL』
インタビュー・テキスト
天野史彬
撮影:田中一人 編集:山元翔一
2016/09/28

自分たちだけが上手くいくだけでは、俺はいい気持ちになれない。「どこに行きたいか」だけじゃなくて、「誰と行きたいか」も、大事なものとして自分のなかにあるんです。(マヒト)

―今、反抗はパンクではない。

マヒト:ダサいですよ、あれは。それよりも俺たちは、半径10mのものを面白がるための役割を果たせたらいいなと思いますけどね。アルバムに“wasted youth”っていう曲があるけど、俺の言う「youth」って、無知であることを許容することなんです。その代わり、時代がどうであれ、自分らが楽しめる空間だけは誰にも譲らない。それが、俺たちが今をサバイブしていくやり方なんだと思う。カスの生き方もあるっていうか……bloodthirsty butchersが歌う、<悪い大人の手本でいたいんだ>っていうことだと思う。

―“JACK NICOLSON”(2004年発表の『birdy』収録)の歌詞ですね。

マヒト:そう。何かに反抗することではなく、自分勝手であることの在り方は提示したいですね。今後、友達のグラフティやっている奴とかスケーターの奴とかと一緒に、「PYOUTH」っていうウェブマガジンを始めようと思っているんです。CINRAで言うのもなんだけど、それはライターの人が言う「時代感」とかも大して気にせず、単純に自分たちの周りで楽しいと思えるものを形にしていく遊び場にしようと思っていて。自分たちの周りにはまだ、言葉になっていない面白いものがいっぱいあるはずだから。

―半径10mの仲間たちを大事にしようとするスタンスって、以前のマヒトさんにはあったものだと思いますか?

マヒト:いや、昔はもっと高圧的でしたね。「他人」っていう存在が、前よりもっと大切になったんだと思います。元々は、内輪のノリで傷の舐め合いみたいなことをしているのがカッコいいとは思えなかったし、唯我独尊でありたいというか、何にもひれ伏さない水銀みたいな存在がカッコいいと思っていて。

左から:カルロス・尾崎・サンタナ、マヒトゥ・ザ・ピーポー、イーグル・タカ

マヒト:でも、自分の周りにいる鬼才や天才と呼ばれるミュージシャンたちを見ていると、才能はその人のことを何も救ってあげられないんだなって思うんですよね。「なんでこんなにすごい才能を持っている人が、こんなに辛そうな顔をしているんだろう?」って思うことがあるんです。

―才能は、遠くにいる誰かを幸せにしても、身近な人たちや本人を傷つけてしまうことは、多々あるかもしれないですよね。

マヒト:その人が満たされた顔をしていないのに、本当の意味で人は集まるのかな? って思うことがある。もちろん、人気のある / ないで言えば、たくさんの人が集まることもあるんだろうけど、俺は「マヒトは丸くなった」と言われても、自分のいる場所がいい空間である方が、今はリアリティーがあるんです。ストイックさや濃度が高い才能に、魅力をあまり感じないんですよね。

―今のマヒトさんにとっては「場」のほうが大切だと。

マヒト:『全感覚祭』みたいな自分たちが主催のイベントで演奏していて、客席に友達を見つけると、「こいつら、5年後10年後にはここにはいないかもしれないな」って思ったりして……そう考えると、自分たちだけが上手くいくだけでは、俺はいい気持ちになれない。それは俺がいい奴だからではなくて、単純に寂しがり屋だからだと思うんですけど。「どこに行きたいか」だけじゃなくて、「誰と行きたいか」も、大事なものとして自分のなかにあるんですよね。

俺たちも最初からGEZANだったわけじゃないし、7年やってきたけど、また7年かけて新しい形になればいいと思っている。

―なるほど。だとしたら、このタイミングでドラマー募集がかけられるのも、とても今のGEZANらしいアクションなのかもしれないですね。

マヒト:そうそう。高校生の頃、俺はバンドがやりたかったんだけど周りに全然人がいなくてヤキモキしていて。カッターナイフをポケットに入れて学校をウロウロしているような奴だったんだけど(笑)、そこで初めて会ったのがイーグルで、バンドの話で盛り上がったんです。自分にとってはその出会いがデカかったし、そういう高校のときの自分みたいな奴に出会えたらいいなと思って。

……ほんと、高校生の頃の俺みたいな奴がいてほしいよなぁ。メンバー募集なんて、こんなことがないとやれないし、もう一生やりたくない(笑)。学校も仕事も辞めて次の日から来いよって感じ(笑)。家がないなら、俺んちに住めばいいしさ。

マヒトの電話番号が記載されたドラマー募集のフライヤービジュアル
マヒトの電話番号が記載されたドラマー募集のフライヤービジュアル

―GEZANに志願してくる高校生とか、すごそうですけどね(笑)。

マヒト:別に高校生じゃなくてもいいんだけどね(笑)。でも、俺たちも最初からGEZANだったわけじゃないし、7年やってきたけど、また7年かけて新しい形になればいいと思っていて。俺たちは会社員じゃないから、すぐに結果を出せればいいわけではないし、その過程も全部含めて、自分たちがいい顔をすることが一番大事だから。

―最後に、このアルバムは前述した<きょうも4人でここにたってる>と歌う“blue hour”で始まり、最後、<この四人で最後に鳴らす音 そのコードをぼくはきっと間違えるだろう>と歌う“END ROLL”で幕を閉じます。四人でいるところから始まって、四人で鳴らす最後の曲へと行きつく――この構成は意図されたものだと思うんですけど、どんな想いがあったんですか。

マヒト:最後の“END ROLL”も、シャークが抜ける前に作った曲なんですよ。最初に言ったように、自分は「終わり」みたいなものをすでに言葉にしていて。でも、その“END ROLL”で終わるアルバムを、『NEVER END ROLL』っていうタイトルで全否定することで、次の始まりにしたかったんですよね。そうやって続けていきたいと思ったんです。

左から:イーグル・タカ、マヒトゥ・ザ・ピーポー、カルロス・尾崎・サンタナ

―みなさんは今、“END ROLL”で歌ったことを塗り替えようとしているんですね。

マヒト:あの曲は終わりの曲だけど、それがまた始まりになっているっていう曖昧さが、このアルバムなんだと思う。次に何かが始まったときが、やっとひとつの着地点だと思っているから。そのぐらい、また「ここから始めよう」っていう気分だし、そこで変わるものも変わらないものも、その全てを楽しみたいなって思うんです。だから、このアルバムで、今のGEZANを残せたのはよかったなって、本当に思いますね。

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リリース情報

GEZAN『NEVER END ROLL』
GEZAN
『NEVER END ROLL』(CD)

2016年9月22日(木・祝)発売
価格:2,160円(税込)
JSGM-018

1. ~after the end of the world~
2. blue hour
3. SPOON
4. 言いたいだけのVOID
5. wasted youth
6. Light cruzing
7. MU-MIN
8. FEEL
9. OOO
10. ghost ship in a scilence(Do you hear that?)
11. GOLDEN TIME IS YOURS
12. 待夢
13. END ROLL

プロフィール

GEZAN
GEZAN(げざん)

2009年大阪にて結成の日本語ロックバンド。2012年拠点を東京に移すとその音楽性も肉体感を変えぬまま大きく進化し続け、よりポップでキャッチー&メロディックな音にシンプルかつ意味深い日本語詞が乗る独自のスタイルを極め続けている。日本の音楽の歴史を継承するオーセンティックさと、新たな時代を切り裂くニュースクール感を合わせ持つ現在のシーンでは唯一無二の存在として今後の活動が期待されている。現在までにフルアルバム3枚、ミニアルバムとライブアルバムが各1枚、DVDやヴィニール7inchなどもリリースしている。またマヒトゥ・ザ・ピーポーソロとしてアルバム2枚をリリースもしている。

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