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常識を破壊したヒット作の裏側とは? 異端派CMプランナーに訊く

常識を破壊したヒット作の裏側とは? 異端派CMプランナーに訊く

Brian the Sun『Maybe』
インタビュー・テキスト
タナカヒロシ
撮影:豊島望 編集:矢島由佳子、山元翔一

みんなで合議制で作っていくと、フラットになっていくじゃないですか。それよりは個人がボコッと出たほうがいいなと思っていて。(松村)

―クライアントの要望に応えるために、真面目に考えた結果、ハードコアな内容に?

松村:そうですね。いくつか手法は自分のなかにあって。たとえば「もしその商品がなかったら、こんな面白いことが起こる」、もしくは、「この商品がこれだけすごいから、こんな面白いことが起こる」という起点で考える手法とか。他にも自分なりの作り方をいくつか持ってて、それを組み合わせてクラインアントのオーダーにベストな答えを考える感じです。

―松村さんなりのロジックがあるわけですね。

松村:よく同業者にも「松村くん、自由にやってるね」とか失礼なこと言われるんですけど(笑)、極めてロジカルに考えているつもりなんですよ。ただアウトプットに関しては、遠慮なく、全力で飛ばそうとしているだけで。

松村祐治

―松村さんがCM作りにおいて、大切にしていることはなんですか?

松村:さっき言ったことと矛盾しちゃうんですけど、やっぱり自分がそのアイデアをすごく好きじゃないとやる意味がないというか……ん、ちょっと調子に乗った発言だな(笑)。でも、若い頃は客観的なものさしで測っていたんですけど、あんまりうまくいかなかったんですよ。あと、チームでやってもうまくいかなくて。それで「NOVAうさぎ」のあたりから、自分ひとりでやるようにしたんです。

―ひとりでやるというのは?

松村:みんなで打ち合わせを重ねて作るよりは、自分が面白いと思うものをひとりで作ったほうが、僕の場合は世の中に広がる普遍的なものができたんですよね。みんなで合議制で作っていくと、フラットになっていくじゃないですか。それよりは個人がボコッと出たほうがいいなと思っていて。

「NOVAうさぎ」のデザインも、素人が作ったものですけど、悪いところも含めて独特だったんだと思うんです。音楽も単純な曲でしたけど、そのまま出したらダメなところも含めてエッジが立ったというか。世の中の広告は「みんな、これ好きだよね」っていうチェックをクリアしたものが多いから、それをすっ飛ばして「ごめん、これが好き」っていうもののほうが強い気はするんですよね。特に若いうちは。あ、でも今はもう大人なんで、チーム作業も全然いっぱいやってますよ。言っとかないと、仕事しにくい人だと思われたら困るんで(笑)。

松村祐治

PVでは、ひたすら面白いギャグを重ねてパツッと終わるよりは、最後になんらかの感情を持って帰ってもらいたい。(松村)

―PVを作り始めたのは、いつ頃からなんですか?

松村:最初はアジカン(ASIAN KUNG-FU GENERATION)の“君の街まで”(2004年)という曲で、巨大なザリガニがプールから現われるビデオでした。昔からソニーミュージックと広告クリエイターには交流があって、スーパーカーのPVをTUGBOATの多田琢さんが作ったり。それで、僕の作品集を見たアジカンのメンバーからオファーがありました。ロックっぽくないものにしたいというオーダーでした。

―それまでCMをやっていた松村さんが PVをやることになって、違いは感じました?

松村:そのへんの時期から、広告以外のコンテンツも作り始めてはいたんですけど、基本的に課題解決型のプランナーなので、明解な宿題がないという意味では困りましたね。ただ、やっぱり15秒のCMが本領なので、ひとつの大きなストーリーのなかでCMのように15秒のアイデアを重ねていくことが多いです。

チャットモンチーの“バースデーケーキの上を歩いて帰った”をやったときは、双子の胎児の話で。母親が胎教としてクラシックを聴かせるけど、胎児はハードコアな音楽が好きだったり、母親は栄養を摂るためににんじんを食べるけど、子供はにんじんが嫌だったり、一つひとつのエピソードはきわめて15秒CM的なんですよ。ただCMと違うのは、最後に何かプレゼントしたほうがいいと思っていて。

―プレゼントですか?

松村:PVの最後では難産を乗り越えて双子が産まれるんですけど、そこで「やっぱりお母さんっていいな」とか「親子のへその緒以上のきずな」とか、見てくれた人が最後に持って帰れる感情を用意するというか。CMとはそこが決定的に違うんですよね。ひたすら面白いギャグを重ねてパツッと終わるよりは、最後になんらかの感情を持って帰ってもらいたくて……あ、また語ってますね(笑)。

―めっちゃいい話をしてますよ!

松村:PVに関しては、そういうやり方が多いですね。PUFFYの“アジアの純真”の15周年バージョンを作らせてもらったときも、実はPUFFYは3人組だったというウソの話から始まって、過去のPVに無理矢理3人目を合成していったんですけど、最後に実は3人目のメンバーとは、応援し続けてくれたファンのみんなのことでしたっていうプレゼントをあげるというか。そういう構造で作ることが多いですね。

(PV作りに)明快な答えはないですけど、アーティストやその楽曲の良さを引き出して、それを映像の力で倍増させるものが正解だと思います。(安藤)

―PVの最新作としては、AIと人間のストーリーが描かれたBrian the Sunの“Maybe”が公開されてますよね。ここで安藤さんにご登場いただきたいんですけど、松村さんにお願いした経緯っていうのは?

安藤:もともと共通の友人がいたんですけど、「銀のさら」のCMが好きで、面白い人だなと思っていたんですよ。それもただ面白いだけじゃなくて、ロマンティストだと思ったんですよね。 PVも手がけていたことは知らなかったんですけど、この人ならBrian the Sunの世界を広げてくれるんじゃないかと思って、その友人に紹介してもらったんです。

最初はAIの話とは別に2案あったんですよ。でも、もともと“Maybe”は『甘々と稲妻』というほのぼのとした家族の関係と甘酸っぱいストーリーを描いたアニメのタイアップで。それを考えたらAIと人間の切ないストーリーがベストなんじゃないかと思って、一発でAIにしましょうって話をしたんです。

松村:そのストーリーも、いまはAIと博士の恋愛に似た関係を描いたものになっているんです。でも最初に出したアイデアでは、AIが人間に絶望して、人間にはこの先を任せられないから、自分でプログラミングして自分の子供を作るという話で。だけど安藤さんと話をして、今回の曲ではただ悲しい話より切なくて、ロマンティックな話を届けたいということだったので、果たせなかった恋の切なさみたいなものが最後に残るストーリーにしたんです。

安藤:今回は前編後編に分けてYouTubeで公開していて、これは映画のようなストーリーだったので、あえて前編をハッピー編、後編をロマンティック編としました。前編を見た人は「可愛らしいな、この恋はどうなっていくんだろう?」と思い、そして後編を見たら、「えっ!? こんな切ない終わり方なの!?」と感じてくれているようです。

安藤日出孝
安藤日出孝

―安藤さんはたくさんのアーティストを手がけられてきましたけど、どんな PVが正解だと考えられているんですか?

安藤:明快なものはないですけど、アーティストやその楽曲の良さを引き出して、それを映像の力で倍増させるものが正解だと思います。。僕が深く関わったRIP SLYMEで言えば、辻川幸一郎さんとか、CAVIARの中村剛さんや児玉裕一さんとか、ああいう方々がすごいものを作ってくれたからこそ、いまのRIP SLYMEがあると思うんです。インパクトがあって、それが世の中に届いて、数字に跳ね返ってっていうのが成功の証ですよね。

2005年度のSPACE SHOWER MUSIC AWARDS「BEST VIDEO OF THE YEAR」に選出。監督は辻川幸一郎

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リリース情報

Brian the Sun『Maybe』初回生産限定盤
Brian the Sun
『Maybe』初回生産限定盤(CD+DVD)

2016年9月7日(水)発売
価格:1,800円(税込)
ESCL-4681/2

[CD]
1. Maybe
2. しゅがーでいず
3. Maybe(Instrumental)
[DVD]
1. 「HEROES」Music Video
2. 「Maybe」Music Video
3. 「Maybe」Music Video -Director's Cut Version-
4. 「HEROES」Music Video メイキング映像
5. 「Maybe」Music Video メイキング映像

Brian the Sun
『Maybe』通常盤(CD)

2016年9月7日(水)発売
価格:1,080円(税込)
ESCL-4683

1. Maybe
2. しゅがーでいず
3. Maybe(Instrumental)

Brian the Sun『Maybe』期間生産限定盤
Brian the Sun
『Maybe』期間生産限定盤(CD)

2016年9月7日(水)発売
価格:1,300円(税込)
ESCL-4684

1. Maybe
2. しゅがーでいず
3. Maybe(アニメVer.)
3. Maybe(Instrumental)

プロフィール

松村祐治(まつむら ゆうじ)

クリエイティブディレクター/CMプランナー。主な仕事に、サントリー、ヘーベルハウス、FRISK、銀のさら、SONY、西武鉄道、アイデム、NOVAうさぎ、テレビ番組「喝老人」「ど人生」、PUFFY、Brian the Sun、ASIAN KUNG-FU GENERATION、チャットモンチーなどのPV。TCC、ACC、ギャラクシー、NYフェスティバル、アドフェスト、SPIKES、CRESTA、LIA、Music Video Awardなど受賞。作曲/DJ Our Hour、東京ブルースブレイカーズ。

安藤日出孝(あんどう ひでたか)

音楽プロデューサー。株式会社ポイントブランク(pointblanc Inc.)代表取締役社長。1999年、ワーナーミュージックのディレクター時代にRIP SLYMEのデビューを手掛け、2013年まで音楽制作、アートワーク、PV制作を含んだトータルプロデュースに携わる。現在はBrian the SunやKOSEN(Colorful Mannings)のプロデューサー。アニメやドラマ、映画の音楽プロデューサーでもある。

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