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チームラボ猪子が解説、長年の研究でわかった江戸琳派の大発明

チームラボ猪子が解説、長年の研究でわかった江戸琳派の大発明

サントリー美術館『鈴木其一 江戸琳派の旗手』
インタビュー・テキスト
島貫泰介
撮影:豊島望 編集:飯嶋藍子

意識してかわからないけれど、其一は大きな発明をしていると思うんですよ。

―猪子さんが言う、琳派の面白さというのはどういったものですか?

猪子:かなり特殊な見方を僕はしていると思うのですが、琳派っていうのはフレームの概念を持たずに成り立つ絵画表現を発明した集団なんですよ。

―フレームというのは、例えば額縁とかキャンバスのことでしょうか?

猪子:他にも写真とか映画のスクリーンとか。絵画を含めた平面表現の多くは、まず決められた形とサイズのフレームがあって、そこから絵の構図が見えてきますよね。けれども琳派は、そのセオリーを前提とせずに作品を作っていると思うんです。

例えば其一の『朝顔図屏風』や、彼が参考にしたであろう尾形光琳の『燕子花図屏風』は、どちらも六曲一双(六枚に折り畳める屏風を左右1セットにした形式)ですね。もちろん計12枚のタテ構図で完成されたものではあるのだけれど、僕からすると、これらは無限に左右につなげていけるように見えるんです。

『朝顔図屏風』鈴木其一筆 六曲一双のうち右隻 / 江戸時代 19世紀 アメリカ・メトロポリタン美術館 ©The Metropolitan Museum of Art. Image source: Art Resource, NY(東京会場のみ出品 全期間展示)
『朝顔図屏風』鈴木其一筆 六曲一双のうち右隻 / 江戸時代 19世紀 アメリカ・メトロポリタン美術館 ©The Metropolitan Museum of Art. Image source: Art Resource, NY(東京会場のみ出品 全期間展示)

―仮に百曲一双という形式であっても成立するかもしれない。

猪子:そのとおりです。描かれる内容が決定されればフレームは無限に拡張できる。それこそコピー&ペーストするように。狩野派と比較して、琳派は扇でも重箱でも受注されればどんなものにも描いていますけど、それもフレームから解放された視点を持っていたからかもしれない。

石田:とても刺激的な見方だと思います。工芸分野での研究では、19世紀末にヨーロッパで流行したアールヌーヴォーは、江戸琳派の影響を受けているという指摘もあるんですよ。純粋絵画の仕事を超えて、立体的な装飾で器などを覆い尽くすような傾向には、其一の仕事がひとつのきっかけになっている可能性はあります。

猪子:『朝顔図屏風』を改めて見てみると、尾形光琳は間違いなく意識しているけれど、フレームからの自由さはやや失われている気もする。加えて、若冲とか円山応挙とか、別の流派のエッセンスを取り入れている気がしてきますね。

『水辺家鴨図屏風』鈴木其一筆 六曲一隻 / 江戸時代 19世紀 細見美術館(展示期間:9月10日~10月3日)
『水辺家鴨図屏風』鈴木其一筆 六曲一隻 / 江戸時代 19世紀 細見美術館(展示期間:9月10日~10月3日)

石田:師匠の酒井抱一が若冲から部分的に影響を受けているのは間違いないので、其一にもおそらく何らかの影響があったと思います。それと其一の活躍した幕末期は情報が伝わるネットワークも密になっていたらから、他作品からのインプットは絶対にあったし、それを踏まえてアウトプットしている印象は強いです。

猪子:そういう意味では、ちょっとあざとい(笑)。あるいは「他の誰よりも俺は上手く描ける!」というプライドと自意識が出ている気がします(笑)。だから『朝顔図屏風』も光琳超えを本人的には目指したんでしょうけど、やっぱりフレームが見えるんですよね。

でも、意識していたかはわからないけれど、其一は大きな発明をしていると思うんですよ。それはタテ方向にフレームの概念をなくしたこと。光琳の『燕子花図屏風』は、左右には無限に続くけれど天地の関係ははっきりしているでしょう。でも其一は、朝顔がまるで無重力空間に浮かんでいるように描くことで、縦方向への自由さを得たんじゃないでしょうか。

『風神雷神図襖』鈴木其一筆 八面 / 江戸時代 19世紀 東京富士美術館 ©東京富士美術館イメージアーカイブ/DNPartcom(展示期間:10月5日~10月30日)
『風神雷神図襖』鈴木其一筆 八面 / 江戸時代 19世紀 東京富士美術館 ©東京富士美術館イメージアーカイブ/DNPartcom(展示期間:10月5日~10月30日)

―たしかに『朝顔図屏風』では、地面から伸びる茎はまったく描かれてないですね。

猪子:チームラボの『花と人』や『Floating Flower Garden』というインスタレーション作品で、鏡を使って床に投影された花の映像を無限にリフレクションしたり、実際の花を上下に動かして空間の移り変わりを表現したのですが、今思えばこれは其一の影響を受けたかもしれない。制作当時は意識していなかったけれど、僕は『朝顔図屏風』を間違いなく目にしていたわけですから。

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イベント情報

『鈴木其一 江戸琳派の旗手』

2016年9月10日(土)~10月30日(日)
※会期中展示替えあり
会場:東京都 サントリー美術館
時間:10:00~18:00(金・土は10:00~20:00)
※10月9日(日)は20時まで、10月22日(土)は『六本木アートナイト』のため22:00まで開館
※いずれも入館は閉館の30分前まで
※shop×cafeは会期中無休
休館日:火曜
料金:一般1,300円、大学・高校生1,000円
※中学生以下無料
※障害者手帳をお持ちの方は、ご本人と介護の方1名様のみ無料
※10月22日(土)は「六本木アートナイト割引」のため一般、大学・高校生は一律500円
※本展覧会は姫路市立美術館(2016年11月12日~12月25日)、細見美術館(2017年1月3日~2月19日)に巡回

プロフィール

猪子寿之(いのこ としゆき)

1977年、徳島市出身。2001年東京大学工学部計数工学科卒業と同時にチームラボ創業。チームラボは、プログラマ、エンジニア、CGアニメーター、絵師、数学者、建築家、ウェブデザイナー、グラフィックデザイナー、編集者など、デジタル社会の様々な分野のスペシャリストから構成されているウルトラテクノロジスト集団。アート・サイエンス・テクノロジー・クリエイティビティの境界を曖昧にしながら活動している。

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