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シュリスペイロフ×漫画家・真造圭伍 「ひらめき」と出会える術

シュリスペイロフ×漫画家・真造圭伍 「ひらめき」と出会える術

シュリスペイロフ『あまりかぜ』
インタビュー・テキスト
黒田隆憲
撮影:相良博昭 編集:矢島由佳子

移りゆく心、不意に湧き上がる悲しみ、埋めようのない喪失感。北海道出身のオルタナロックバンド・シュリスペイロフの楽曲を聴いていると、整理のつかぬまま胸の奥にしまい込んでおいた、そんな感情をそっとかき回されたような、なんともむず痒い気持ちにさせられる。ふとした日常を文学的な視点で切り取り、1990年代オルタナティブロック直系のギターサウンドに乗せた彼らの歌は、どうすることもできない人生への「絶望」や「虚無感」を、「心地よい諦念」へと導く優しさやユーモアに溢れているのだ。

そんなシュリスペイロフのフロントマンであり、すべての楽曲を手がける宮本英一が、「今もっとも会って話してみたい人」として挙げたのは、真造圭伍。『森山中教習所』や『トーキョーエイリアンブラザーズ』などの作品で注目を集めている、気鋭の漫画家である。実はこの日が初対面だったという二人。神楽坂にある書店「かもめブックス」にて行った二人の公開対談は、好きな映画やテレビ番組などの「共通点探し」から始まり、徐々にディープな話題へと進んでいった。

ヤクザの事務所にブルドーザーで突っ込むシーンは、実際に起きた事件を基にしているんですよ。(真造)

―宮本さんが、真造さんの作品を好きになったきっかけは?

宮本:『森山中教習所』ですね。単行本の表紙が好みの絵だったので手に取りました。『バタアシ金魚』とか、その続編『お茶の間』とか、望月峯太郎先生(1964年生まれの漫画家)の作品が僕は好きなんですけど、『森山中教習所』の表紙に描かれた主人公をぱっと見たときに、なんとなく通じるものがあって。主人公が飄々とした表情でアイスを食べているのがいいなと。

『森山中教習所』表紙
『森山中教習所』表紙

映画化された『森山中教習所』の予告編

真造:嬉しいですね。この表紙はすごく苦労したんです。何回も描き直して。ただ、『バタアシ金魚』は読んだことないんですよ。よく「似ている」って言われるんだけど、自分ではわからない。

宮本:確かに、実際に読んでみたら峯太郎先生の影響は感じなかったですね。

左から:宮本英一、真造圭伍
左から:宮本英一、真造圭伍

―内容はどうでした?

宮本:終わり方が好きですね。最近の漫画の傾向って、読後に「はあ、胸が痛い……」みたいなものが多い気がするんですけど、『森山中教習所』は、最後にスカッとする感じがあって。それがすごくよかったです。

―「スカッとする感じ」とは?

宮本:話が終わったあとは、もう不幸なことが起こらなさそう。僕が歌詞を書くときも、最後にはちゃんと「光」みたいなものが見えるようにしたいと思っていて。「胸が痛くなる結末」とかにはあまりしたくないんですよね。

もちろん、「もうやめてほしい」って思うくらい胸が痛くなる歌詞でも、かっこいい音楽はあるし、それに憧れたりもするんですけど。ベタな「希望」や「光」はリアルじゃないから嫌ですが、ちゃんと今を踏まえつつ未来も見据える、ということを上手く落とし込んだ歌詞を書きたいんですよね。

―『森山中教習所』は、北野武の映画作品を彷彿させるところがありますよね。主人公の二人の関係性は、『キッズ・リターン』(1996年、北野武監督作)の要素があるなと。話に出てくるヤクザの親分は、『その男、凶暴につき』(1989年、北野武の初監督作品)の黒幕を演じる岸部一徳っぽい(笑)。

真造:岸部一徳でいうと、映画『鮫肌男と桃尻女』(1999年、石井克人監督作。原作は、望月峯太郎の漫画)の岸部一徳には影響を受けました。雰囲気とか。

―『鮫肌男と桃尻女』は、「北野組」の寺島進や津田寛治らが出演していますし、武オマージュが入っていますよね(笑)。

真造:ああ、なるほど!

真造圭伍

宮本:『森山中教習所』は、主人公・清高くんの家庭環境がわりと深刻な感じなのに、それとは関係なく日常が過ぎていくのが、なんか逆にリアルだなと思いました。最後は、それが解決したような雰囲気を、なんとなく描かれているのが面白かったですね。

―説明すると、清高くんのお父さんがリストラされて仕事が見つからず、お母さんに暴力を振るうようになって。でも、物語の最後の方でなんとか仕事も見つかり、夫婦関係も少しずつ修復に向かっていく。それが物語の本筋とは関係ないところで、サイドストーリーとして進んでいるんですよね。しかもはっきりと描かれているのではなく、コマの隅の方で見え隠れしている。それが、作品に奥行きを与えています。

真造:あれは、実際に起きたらしい事件を基にしているです。人から聞いて「これは面白そう」と思ったものは、物語のなかにどんどん盛り込んでいきます。ヤクザのエピソードもそうですね。最後、もう一人の主人公・轟木くんがヤクザの事務所にブルドーザーで突っ込むシーンがあるんですけど、あれはうちのお婆ちゃん家の近所で、実際に起きた事件を基にしているんですよ。あのシーンを描きたくて『森山中教習所』を描いたようなものなんですよね(笑)。

宮本:ええ、そうなんですか!(笑)

真造:「ヤクザの子分が、ブルドーザーで事務所に突っ込むシーンを描くためには、どんな話の流れにしたらいいだろう」っていうふうに、まずは結末を決めて、そこに向けて物語を作っていきました。『ぼくらのフンカ祭』という漫画では、大きな看板に絵を描くシーンがあるんですけど、あれもまず、そのシーンを描くための展開を考えるところから始まっています。

―ということは、オチがないままなんとなく書きだすことはない?

真造:そうですね……あ、でも今連載している『トーキョーエイリアンブラザーズ』は、描いてる途中で初めてオチが変わりました。最初に考えていたオチだと、自分の画力じゃ描ききれないなと思って(笑)。最終的な落とし所は変わっていないんですけど、そこに至る展開部分は変えています。

―『トーキョーエイリアンブラザーズ』は、映画『インターステラー』(2014年、クリストファー・ノーラン監督作)からインスパイアされたそうですね。

真造:そうです。『インターステラー』は、地球に住めなくなった人類が移住先を求めて他の星へ行くストーリーなんですけど、それを逆の設定にしたのが『トーキョーエイリアンブラザーズ』。エイリアンの兄弟が、移住先を求めて地球にやってくる話ですね。

真造圭伍『トーキョーエイリアンブラザーズ』2巻表紙
真造圭伍『トーキョーエイリアンブラザーズ』2巻表紙

―クリストファー・ノーラン監督は、どういうところが好きですか?

真造:今って、CGを使えばどんなシーンでも作れるじゃないですか。そこを、「なるべくアナログで撮ろう」とこだわっているのが『インターステラー』で。その気迫に感動しました。『ダークナイト』(2008年、クリストファー・ノーラン監督作)では、病院を一棟まるまる爆破していましたよね。

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リリース情報

シュリスペイロフ『あまりかぜ』
シュリスペイロフ
『あまりかぜ』(CD)

2016年8月10日(水)発売
価格:2,500円(税込)
QECD-10002 / BUMP-057

1. アパートメントの宇宙
2. かじられている
3. あまりかぜ
4. まともになれない
5. ダンスホールへ
6. ディファ
7. 穴
8. ゆうぐれ
9. カノン
10. やすもの

イベント情報

『極楽のあまりかぜツアー』

2016年9月30日(金)
会場:愛知県 名古屋 CLUB UPSET
ゲスト:成山剛(sleepy.ab)
料金:2,700円(ドリンク別)

2016年10月1日(土)
会場:大阪府 扇町 para-dice
料金:2,500円(ドリンク別)
※ワンマンライブ

2016年10月16日(日)
会場:宮城県 仙台 LIVE HOUSE enn 3rd
料金:2,500円(ドリンク別)
ゲスト:
BUGY CRAXONE
Rooster Call
and more

2016年10月23日(日)
会場:東京都 新宿 red cloth
料金:2,800円(ドリンク別)
※ワンマンライブ

2016年12月3日(土)
会場:北海道 札幌 COLONY
料金:2,500円(ドリンク別)
※ワンマンライブ

書籍情報

『休日ジャンクション:真造圭伍短編集』
『休日ジャンクション:真造圭伍短編集』

2016年7月7日(木)発売
著者:真造圭伍
価格:596円(税込)
発行:小学館

『トーキョーエイリアンブラザーズ』2巻
『トーキョーエイリアンブラザーズ』2巻

2016年7月7日(木)発売
著者:真造圭伍
価格:596円(税込)
発行:小学館

店舗情報

かもめブックス
住所:東京都新宿区矢来町123 第一矢来ビル1階
営業時間:
月曜日~土曜日10:00~22:00
日曜日・祝日11:00~20:00

プロフィール

シュリスペイロフ
シュリスペイロフ(しゅりすぺいろふ)

1999年札幌にて結成。以降5年間「ライブハウスが怖い」という理由でスタジオでの曲作りのみの活動を続ける。2004年に勇気を出しての初ライブ。2005年10月タワーレコード札幌ピヴォ店限定で3曲入りEP『ダイバー』発売。その後、札幌を中心としながら東名阪などへも積極的にイベント参加。2008年3月に1stアルバム『シュリスペイロフ』をリリース。2013年より山中さわお(the pillows)が主宰する「DELICIOUS LABEL」へ移籍。東京に拠点を移し活動を始める。2016年8月10日にアルバム『あまりかぜ』をリリースし、リリースツアー『極楽のあまりかぜツアー』を開催。

真造圭伍(しんぞう けいご)

1987年1月23日、石川県生まれ。『週刊ビッグコミックスピリッツ』(小学館)の「スピリッツ賞」に投稿ののち、大学3年時に「なんきん」でデビュー。その後『月刊!スピリッツ』(小学館)に『森山中教習所』を、『週刊ビッグコミックスピリッツ』に『僕らのフンカ祭』を連載。現在、『月刊!スピリッツ』に『トーキョーエイリアンブラザーズ』を連載中。2016年7月7日に、短編集『休日ジャンクション』(小学館)を発売。

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