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「ヒップホップと日本民謡は近しい文化」馬喰町バンド×稲葉まり

「ヒップホップと日本民謡は近しい文化」馬喰町バンド×稲葉まり

馬喰町バンド『あみこねあほい』
インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:moco.(kilioffice) 編集:矢島由佳子

まったくラップっぽくない映像にした方が、馬喰町バンドならではの感じになるんじゃないかって。(稲葉)

―では、“ホメオパシー”のミュージックビデオについて聞かせてください。稲葉さんはこの曲を聴いてなにを感じて、どのようにイメージを広げていったのでしょうか?

稲葉:ラップだし、メロディーも繰り返しだから、正直「難しい!」と思いました。ただ、武さんは音楽だけではなく絵も描く人なので、曲の世界観とシンクロしている絵を素材として使おうと。でも、これまで描きためた絵だけだと取ってつけた感じになっちゃうから、私が描いた絵も加えて、それをコマ撮りしている部分と、デジタルで動かしている部分が合わさった形になっています。

ミュージックビデオの最初のシーンで使われている絵。武によるもの
ミュージックビデオの最初のシーンで使われている絵。武によるもの

:切り絵はユーリ・ノルシュテイン(1941年生まれ、切り絵を用いるアニメーション映画などで知られる映像作家)からの影響?

稲葉:ユーリ・ノルシュテインのアニメーションは学生のときから好きで、一回ワークショップに参加したこともあるんですけど、ユーリさんはセルのシートに絵の具で描いたものを使っていて、私それを紙だと勘違いして、それが今の自分のやり方になっているんです。

―武さんからなにかリクエストはあったんですか?

:まりちゃんが「生意気」時代にアニメを担当したYUKIのミュージックビデオ(“66db”)で、実写に手書きで描いた線画が星みたいに降り積もるのを見ていたから、ああいうのもいいね、というのは言いました。5分くらいの曲を全部アニメーションでやるのは大変だから、アニメと実写を組み合わせてやろうってなったんじゃなかったっけ?

ミュージックビデオの絵コンテの一部
ミュージックビデオの絵コンテの一部

稲葉:実写を撮るシチュエーションとして、たとえばビルの屋上とか、日本家屋とか、いくつか候補が挙がったんですけど、「なんかありがちだね」って話をしたよね。まったくラップっぽくない映像にした方が、馬喰町バンドならではの感じになるんじゃないかって。

:ヒップホップって、グラフィティーやダンスも含んでいて、総合芸術の側面を持っていますよね。その意味でも民俗音楽に近いとも言えるけど、とはいえヒップホップに寄せたミュージックビデオにするよりも、アニメーションの方がいいねって話はしたかな。でもさ、象、亀、虎、鯉とか、出てくるのは花鳥風月的というか、アジアな感じだけど、描写とか色使いは美大で培った西洋の技術を使ってるよね?

稲葉:ああ、そうかもしれない。

ミュージックビデオで使用した切り絵

ミュージックビデオで使用した切り絵
ミュージックビデオで使用した切り絵

:無意識に一番気持ちいいやり方を選んだときに、やっぱり西洋的なものも出てくるんだなっていうのは僕もすごく感じていて。まりちゃんが一時期西洋美術一辺倒に疑問を唱えていたみたいに(笑)、俺も「西洋なんかダメで、アジアがいい」と思った時期があるの。なにかに感化されると、一回極端に振り切れることってあるじゃない? でも、やっぱり西洋文化にも影響を受けているわけで、それって自然と出てくるんだよね。

稲葉:作家でもミュージシャンでも、その差を意識しないというスタンスの人もいる気がする。「あくまで自分自身がフィルター」みたいな。

:あ、今の俺はそういう感じ。

稲葉:私は最初まったく無意識だったのが、途中から意識するようになって、でも別に以前までのものを完全否定するのも違うし、これからどう混ざって自分の作風が変化するのだろうと思ったりもする。

―このミュージックビデオがモチーフは東洋で色使いが西洋であるということが、武さんにもすごくしっくり来たということですね。

:そう、やっぱり自分が培ってきたものをそのまま出してるのがいいと思う。

稲葉が、西洋文化に目を向けていた頃に描いた切り絵
稲葉が、西洋文化に目を向けていた頃に描いた切り絵

ギターでなんでもできると思っていたから、ギターが民俗音楽と合わなかったことが、結構ショックだったんですよね。(武)

―武さんはギターと三味線を融合させたオリジナルの楽器「六線」を使っていて、今回はそのエレキバージョンの「エレキ六線」を使っているそうですが、これもまさに西洋と東洋の融合ですよね。「六線」はもともとどうやって作られたのですか?

武自作の楽器「エレキ六線」

武自作の楽器「エレキ六線」
武自作の楽器「エレキ六線」

:ギターで民俗音楽をやろうと模索していたときに、沖縄民謡の歌手の方とご一緒したら、全然音が合わなかったんです。当時まだ20歳で、ギターでなんでもできると思っていたし、沖縄民謡はポップスの中にもたくさん入っている音楽だから、それが結構ショックだったんですよね。

で、僕のおばあちゃんが長唄をやっていて、家に三味線があったから、それを使ってみるとちゃんと微分音とかも追えたんです。ただ、三味線を自分の楽器にするというイメージが湧かないから、ずっと悶々としていて。そんなときに、とある楽器の成り立ちの本を読んだんですよ。

左から:六線、鉢っちゃん
左から:六線、鉢っちゃん

―なにが書いてあったのでしょう?

:三味線って、もともと中国から三弦という楽器が琉球に渡ってきて、それがたまたま江戸に伝わって三味線になって、浄瑠璃とか民謡に使われるようになったんです。もしそれが三弦じゃなくて、バイオリンやリュートだったとしても、江戸時代の人はクリエイティブだから、そこから自分たちの楽器を作ったはずなんですよ。

つまり、「日本の音楽は三味線じゃないといけない」ということではなく、たまたま三弦が日本に入ってきて、そこから自分たちの音を出そうと工夫して生み出したのが、美しい三味線だったというだけ。なので、僕は三弦じゃなくリュートが入ってきていたら、きっとこんな楽器を作ったんじゃないかと思って、この六線を作ったんです。

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リリース情報

馬喰町バンド『あみこねあほい』
馬喰町バンド
『あみこねあほい』(CD)

2016年11月9日(水)発売
価格:2,484円(税込)
HOWANIMALMOVE / DDCZ-2131

1. ホメオパシー
2. 在処
3. 色の話
4. ネタにはしない
5. ここまでおいで
6. 未来
7. 愛なのかいな
8. あの日の君は

イベント情報

『「あみこねあほい」リリース記念ライブ』

2016年11月27日(日)
会場:東京都 馬喰町 アートイート
ゲスト:三井闌山(尺八奏者)

プロフィール

馬喰町バンド
馬喰町バンド(ばくろちょうばんど)

「ゼロから始める民俗音楽」をコンセプトに結成された三人組。メンバーは、武徹太郎(六線・ギター・唄)、織田洋介(ベース・唄)、ハブヒロシ(遊鼓・唄)。懐かしいようでいて何処にも無かった音楽を、バンド形式で唄って演奏する。日本各地の古い唄のフィールドワークや独自の「うたあそび」を元に奇跡的なバランス感覚で生みだされる彼らの音楽は、わらべうた・民謡・踊り念仏・アフロビート・世界各地のフォークロアが、まるで大昔からそうであったかのように自然に共存する。

稲葉まり(いなば まり)

2002年多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業。クリエイティブユニット生意気に勤務し、印刷物(CDジャケット、ポスター、装丁など)、ミュージックビデオ、ライブ映像制作、企画展に関わる。2006年より独立。切り絵を用いたイラストレーション、グラフィックデザイン、コマ撮りアニメーション制作、ディレクションを行っている。2010年新作アニメーション作品を含むDVDシリーズ『VISIONARY』発売。

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