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「ヒップホップと日本民謡は近しい文化」馬喰町バンド×稲葉まり

「ヒップホップと日本民謡は近しい文化」馬喰町バンド×稲葉まり

馬喰町バンド『あみこねあほい』
インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:moco.(kilioffice) 編集:矢島由佳子

絵は世界を理解するツールだという考え方が、自分の中では一番しっくりくるんです。(武)

―武さんは一時期木工の仕事をやられていて、そのときに培った技術がオリジナルの楽器作りにも生きているそうですね。

:大学を卒業して、絵を描いたりデザインをしたりしながら音楽をやっていたんですけど、本には「民俗音楽は生活の中から生まれる」って書いてあって、僕もそう思ってたのに、自分が民俗音楽とつながってる感じが全然しなかった時期があったんです。

それと同じように、絵はもの作りの原点であるはずなのに、仕事で絵やデザインをやっていても、「作ってる」という感じがしなかった。そんなときに木工の作家さんに声をかけていただいて、「これをやったらなにかわかるんじゃないか?」って、結構すがるような思いで始めたんです。

―それが今は楽器作りにつながって、つまりはちゃんと民俗音楽にも接続できたと。

:自分が欲しい音はどんな立体物で出るのかというのを、手を動かして描くことでイメージできるようになっていったんです。バリとかに行くと、子どもが小刀一本で器用にオモチャを作っていて、飛行機に迫るくらいの高さまで上がる凧とかを作ってるんですよ。それって「手を動かす」ということが、ちゃんと生活の一部になってるからできると思うんです。

武のスケッチブックの一部

武のスケッチブックの一部
武のスケッチブックの一部

―「手を動かすことの重要性」というのは、もの作りの根本に迫る話だと思います。

稲葉:「線を引くことで音がイメージできる」って、すごく面白いですよね。

:前に共感覚を持っている少年と会ったことがあって、彼は音が色で見えたり、数字も色分けされて見えたり、あと丸と四角があって、どっちの外周が長いかを計らなくても頭の中で直線にして比べられるって言ってたんだけど、それは俺もやってるなと思って。

やっぱり、絵は世界を理解するツールだという考え方が、自分の中では一番しっくりくるんです。音を理解するのも、数式とか言葉より、色とか面とか線で理解する方がしっくりくる。そういうことを、その子と話しながら思いました。

左から:武徹太郎、稲葉まり

―稲葉さんは手を動かすことでなにか別のことを理解するような感覚ってありますか?

稲葉:そうですね……作業してるときは瞑想みたいな感覚というか、集中して没頭していくことで、満たされる気持ちになることはありますね。他にはない充実感を感じられるというか。

:まりちゃんにとっても、きっと手を動かすことは重要だよね。だって、わざわざ手書きじゃなくても、一つひとつの絵を作ろうと思えばパソコンとかで作れるわけじゃん?

俺は音楽にしても半分は耳と体で聴いてるけど、半分は手で聴いてるみたいなところがあるし、なにかを考えてるときも、半分は脳と言葉で考えるけど、半分は手で考えてると思う。その割合が、脳と手が5:5だったのが、0:10になったときは、なんの不安も恐れもなくなってるときなんだよね。

稲葉:確かに、そうかも。あと私がなんで切り絵にこだわるのかというのは、普通の絵は形を決めて完成だけど、切り絵だと置き方のバランスによって偶然できる形があって、私にはそれが面白い。自分で描いてるんだけど、切って組み合わせることで、偶然生まれた形で驚きたいのかもしれない。

左から:武徹太郎、稲葉まり

「こうしなきゃいけない」という方ではなく、あくまで自分が惹かれる方向に進むのがいいと思います。(稲葉)

:まりちゃんってホント珍しいタイプで、学生のときからやりたいと言っていたことを、今もやり続けてるって、すごいことだよね。別に、途中でやりたいことが変わるのも悪いことではないけど、同じことをやり続けるのは珍しいと思う。

―このインタビューは「自分ももの作りに関わりたい」と思う人が多く読んでくれるのではないかと思います。最後に、そんな人たちへのアドバイスをいただけますか?

稲葉:やっぱり、自分の欲してるものを聞く耳が大事だと思います。いろんな人に相談することもアリだけど、きっと答えは自分の中にしかないから。「こうしなきゃいけない」という方に進んでも、絶対行き詰る気がするので、アンテナは張りつつも、あくまで自分が惹かれる方向に進むのがいいと思う。

さっきの武さんの話にしても、木工の話をもらって、それに惹かれたからこそ、その後の楽器作りにつながったわけじゃないですか? 今って杓子定規に「正解はこれ」って計れちゃう時代だと思うけど、そういうのに惑わされないことが大事だと思います。

―武さんはいかがですか?

:さっき「途中でやりたいことが変わるのも悪いことではない」って言いましたけど、それがなにであれ、作り続けることだけが大事だと思います。僕は今人生の半分くらいを生きたとして、残りの半分でどれだけ作れるかを逆算して生きていて、とにかく死ぬまで作りたいと思っているんです。先のことを不安に思う必要はないから、とにかく作りまくって欲しい。作ることは絶対にやめない方がいいと思います。

左から:武徹太郎、稲葉まり

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リリース情報

馬喰町バンド『あみこねあほい』
馬喰町バンド
『あみこねあほい』(CD)

2016年11月9日(水)発売
価格:2,484円(税込)
HOWANIMALMOVE / DDCZ-2131

1. ホメオパシー
2. 在処
3. 色の話
4. ネタにはしない
5. ここまでおいで
6. 未来
7. 愛なのかいな
8. あの日の君は

イベント情報

『「あみこねあほい」リリース記念ライブ』

2016年11月27日(日)
会場:東京都 馬喰町 アートイート
ゲスト:三井闌山(尺八奏者)

プロフィール

馬喰町バンド
馬喰町バンド(ばくろちょうばんど)

「ゼロから始める民俗音楽」をコンセプトに結成された三人組。メンバーは、武徹太郎(六線・ギター・唄)、織田洋介(ベース・唄)、ハブヒロシ(遊鼓・唄)。懐かしいようでいて何処にも無かった音楽を、バンド形式で唄って演奏する。日本各地の古い唄のフィールドワークや独自の「うたあそび」を元に奇跡的なバランス感覚で生みだされる彼らの音楽は、わらべうた・民謡・踊り念仏・アフロビート・世界各地のフォークロアが、まるで大昔からそうであったかのように自然に共存する。

稲葉まり(いなば まり)

2002年多摩美術大学グラフィックデザイン学科卒業。クリエイティブユニット生意気に勤務し、印刷物(CDジャケット、ポスター、装丁など)、ミュージックビデオ、ライブ映像制作、企画展に関わる。2006年より独立。切り絵を用いたイラストレーション、グラフィックデザイン、コマ撮りアニメーション制作、ディレクションを行っている。2010年新作アニメーション作品を含むDVDシリーズ『VISIONARY』発売。

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