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「音楽は言語のようになる」ジェフ・ミルズが音楽の進化を語る

「音楽は言語のようになる」ジェフ・ミルズが音楽の進化を語る

ジェフ・ミルズ&ポルト・カサダムジカ交響楽団『Planets』
インタビュー
湯山玲子
テキスト:重信綾 撮影:豊島望 編集:山元翔一

音楽が進化する瞬間に、我々は立ち会っているのかもしれない。(ジェフ)

湯山:五嶋さんはジェフさんの新作『Planets』も聴かれたそうですが、いかがでしたか? 今作は、惑星に関する科学的なデータや事実を基に生み出された作品とのことですが。

五嶋:“The Bells”と“Amazon”を事前に聴いていたことによって、『Planets』を初めて聴いたとき、「このようにジェフさんは音楽を追究していったのだ」という彼の変遷、つまり進化の流れについて理解することができました。『Planets』には、空間、時間、距離のようなものが存在しているんですよね。

ジェフ・ミルズ&ポルト・カサダムジカ交響楽団『Planets』初回生産限定盤ジャケット
ジェフ・ミルズ&ポルト・カサダムジカ交響楽団『Planets』初回生産限定盤ジャケット(Amazonで見る

ジェフ:『Planets』は、水星から冥王星までの惑星についての音楽によるチュートリアルでもあるんです。なので惑星の楽曲を作るだけでなく、リスナーに待つような時間を作ることで惑星間の距離を表現したり、宇宙の闇のなかにいるような感覚を感じられるようにしたかったんです。

五嶋:始まりから終わりまで聴くと、温度のようなものが感じられたり、冥王星の彼方にいくとカタストロフィックな瞬間があったり、電子音やオーケストラの音が太陽風や放射線や粒子のように感じられたりしました。

あと、ジェフさんの音楽は、オーケストラとエレクトロニックの違いを際立たせる部分があると同時に、シームレスな部分もありますよね。『Planets』は双方のサウンドが見事に溶け合っていて、どれがジェフさんの奏でている音なのか、オーケストラが奏でている音なのかが、わからなくなるほどでした。そのような、ジェフさんとオーケストラの「対話」をこの作品では感じることができましたし、生み出される対話の印象も惑星ごとに違いました。

五嶋龍

ジェフ:まさにそれが『Planets』の基本となるデザイン(設計)のアイデアでした。初めてオーケストラと一緒に演奏したとき、どうやればエレクトロニックとクラシック音楽をうまく融合することができるのか、音楽に「説得力」を生み出せるのかということを多くの人に訊ねられたんです。オーケストラをマシンのように、マシンをオーケストラやミュージシャンのように演奏させ、2つのジャンルの境界がわからなくなるように融合させることを徹底して追求しました。

湯山:そういった音楽の「説得力」を手に入れるためには、オーケストラとマシンをまさに対話させるように演奏することが不可欠だった。

ジェフ:そうです。それこそが、いま起きている「音楽の進化」であり、いま形作られている新しいジャンルなのだと思います。20年、30年先、願わくばもっと早く、誰かがこの手法に名前をつけたり、パラメーターを作ってくれるかもしれません。

クラシック音楽から生まれた、まったく新しいジャンルになるかもしれないし、エレクトロニックミュージックを聴いて育ってきた世代の新しい音楽になるかもしれない。映画や広告など、一般的に使われるような音楽になる可能性もあります。そういった、進化の瞬間に、我々は立ち会っているのかもしれないですね。

ジェフ・ミルズ

地球のサウンドスケープ自体が、ホルストの時代とはまったく違う。(五嶋)

湯山:宇宙をテーマにした著名な作品に、グスターヴ・ホルスト(1890年代から1930年代に活躍したイギリスの作曲家)が作曲をした組曲『惑星』(1914年から1916年に作曲された)がありますよね。なかでも、火星のパートは、まさしく闘争的な、私たちがSFや物語として知っている火星のイメージ。それに対してジェフさんが表現した「火星」は、そのステレオタイプな火星のイメージとはかなり違っていたのが印象的でした。

五嶋:ホルストが火星を音楽で表現した時代よりも、私たちはもっと火星について多くの情報を知っていますよね。ホルストの作品は、惑星を神々になぞらえるという神話的な考え方に強く影響を受けていましたが、いまの我々は火星や水星がどんな姿をしているかということを、少なくとも表面的には知っています。ギリシア神話のなかでフレンドリーな神として描かれている水星も、実際はとても熱くて毒ガスが充満し、言わば暴力的な雰囲気のある場所だということが科学的にわかっているわけですし(笑)。

それにより、ホルストとは違った惑星の見方ができますよね。先ほどジェフさんが『Planets』を「惑星についてのチュートリアル」だとおっしゃったように、ジェフさんの解釈による惑星に関する情報やフィーリングを、この音楽で伝えようとしているのを感じました。

五嶋龍

ジェフ:ホルストの時代からは1世紀以上経っていて、現代の人々は、その当時は存在しなかった音を知っているわけですよね。たとえば、カメラの音や、携帯電話の電子音だったりは、慣れ親しんでいて、もはや意識もしていなかったりします。

そういった何気ないブリープ音のような日常の音でも、リズムを割り当ててオーケストラとともに鳴らすことで、新しい表現を生み出すことができると思うんです。そういったアプローチにこそ、エレクトロニックミュージックの意味を私は感じます。ホルストの作品のメロディーを『Planets』に使うというようなアプローチをすることは、ミステイクになってしまっていたでしょうね。

五嶋:地球のサウンドスケープ自体が、ホルストの時代とはまったく違うわけですからね。私たちの音の感じ方も、もちろん当時と変わらない部分もあるのかもしれませんが、違う部分もあると思います。

湯山:私は、今回の作品では、4つ打ち的なビート感やテンポをあえて使ってみるのではないかな、と想像していたのですが、そうではありませんでした。

湯山玲子

ジェフ:現実的には(4つ打ちのような)完璧なものは自然界に存在しない。この世の自然界はマシンを持ってはいませんからね。我々が知る限りは。

五嶋:(笑)。

ジェフ:宇宙には空虚な砂漠のような世界や、ガスが充満したボウルのようなものが広がっているとされているわけですから。4つ打ちで表現するような均質なものは存在しないのです。

五嶋:ガス系の惑星では、ものすごく激しい気流が渦巻いているというようなことはわかっていますからね。そこで鳴っているノイズも4分のビートのようなものではないでしょうし(笑)。

ジェフ:そうです。5年続く雷雨みたいな現象も確認されているくらいですからね。各惑星ではとてもランダムな世界が繰り広げられていると思うのです。でももし、地球以外の惑星に知的生命体がいるとしたら……その生命体が私たちの脳のようなものを持ち、我々と同様に朝8時に起きて、というような生活を送っていたら、生活のリズムを感じる概念のようなものが存在するかもしれませんよね。

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イベント情報

爆クラ!presents
『ジェフ・ミルズ×東京フィルハーモ二ー交響楽団×バッティストーニ クラシック体感系II -宇宙と時間編-』

2017年2月22日(水)
会場:大阪府 フェスティバルホール
DJ:ジェフ・ミルズ
指揮:アンドレア・バッティストーニ
オーケストラ:東京フィルハーモニー交響楽団
ナビゲーター:湯山玲子

2017年2月25日(土)
会場:東京都 渋谷 Bunkamura オーチャードホール
DJ:ジェフ・ミルズ
指揮:アンドレア・バッティストーニ
オーケストラ:東京フィルハーモニー交響楽団
ナビゲーター:湯山玲子

リリース情報

ジェフ・ミルズ&ポルト・カサダムジカ交響楽団『Planets』初回生産限定盤
ジェフ・ミルズ&ポルト・カサダムジカ交響楽団
『Planets』初回生産限定盤(Blu-ray+CD)

2017年2月22日(水)発売
価格:4,104円(税込)
UMA-9090/9091

[Blu-ray]
1. Introduction
2. Mercury
3. Loop Transit 1
4. Venus
5. Loop Transit 2
6. Earth
7. Loop Transit 3
8. Mars
9. Loop Transit 4
10. Jupiter
11. Loop Transit 5
12. Saturn
13. Loop Transit 6
14. Uranus
15. Loop Transit 7
16. Neptune
17. Loop Transit 8
18. Pluto
※ファイナルオーケストラバージョン(5.1ch / ステレオ)
※ジェフ・ミルズほかによるインタビュー映像を収録
[CD](オリジナルエレクトロニックバーション)
1. Mercury
2. Venus
3. Earth
4. Mars
5. Jupiter
6. Saturn
7. Uranus
8. Neptune
9. Pluto

ジェフ・ミルズ&ポルト・カサダムジカ交響楽団『Planets』通常盤
ジェフ・ミルズ&ポルト・カサダムジカ交響楽団
『Planets』通常盤(2CD)

2017年2月22日(水)発売
価格:3,024円(税込)
UMA-1090/1091

[CD1](ファイナルオーケストラバージョン)
1. Introduction
2. Mercury
3. Loop Transit 1
4. Venus
5. Loop Transit 2
6. Earth
7. Loop Transit 3
8. Mars
9. Loop Transit 4
10. Jupiter
11. Loop Transit 5
12. Saturn
13. Loop Transit 6
14. Uranus
15. Loop Transit 7
16. Neptune
17. Loop Transit 8
18. Pluto
[CD2](オリジナルエレクトロニックバーション)
1. Mercury
2. Venus
3. Earth
4. Mars
5. Jupiter
6. Saturn
7. Uranus
8. Neptune
9. Pluto

プロフィール

ジェフ・ミルズ

1963年デトロイト市生まれ。エレクトロニック・ミュージック、テクノ・シーンのパイオニアとして知られるDJ/プロデューサー。Axis Records主宰。2007年、フランス政府より日本の文化勲章にあたるChevalier des Arts et des Lettresを授与される。近年では各国オーケストラと共演、日本科学未来館館長/宇宙飛行士 毛利衛氏とコラボレイトした音楽作品『Where Light Ends』を発表、また日本科学未来館の館内音楽も手がける。ジャクリーヌ・コー監督、ジェフ・ミルズ主演のアート・ドキュメンタリー・フィルム『MAN FROM TOMORROW』は、パリ、ルーブル美術館でのプレミアを皮切りにニューヨーク、ロンドンの美術館などで上映される。2015年、東京にてアート作品展示会『WEAPONS』を開催するなど、その活動は音楽だけにとどまらない。2017年2月22日には『PLANETS』をリリース。

五嶋龍(ごとう りゅう)

ニューヨーク生まれ。7歳でパシフィック・ミュージック・フェスティバルにおいて、パガニーニのヴァイオリン協奏曲第1番を演奏しデビューを飾った。その後、ソリストとして日本国内のオーケストラはもとより、ワシントン・ナショナル交響楽団、ロンドン・フィルハーモニー管弦楽団など世界各地のオーケストラと共演。演奏活動のみならず、ニューヨークでは同市教育委員会の協力のもと『五嶋龍 “Excellence In Music”(音楽優秀賞)』を通じて公立高校生に奨学金を授与する活動に加え、中南米・アフリカ・アジアでの教育活動・国際文化交流・社会貢献にも積極的に取り組む。10年間にわたりフジテレビのドキュメント番組「五嶋龍オデッセイ」で成長過程が紹介された他、数々のメディアで特集が組まれるなど注目を集める。2015年10月より「題名のない音楽会」(テレビ朝日系列)の司会を務める。ハーバード大学(物理学専攻)を卒業。公益社団法人日本空手協会 参段。ニューヨーク在住。3月にベルリン・コンツェルトハウス管弦楽団(指揮:エリアフ・インバル)と共演するコンサートを、東京・横浜・大阪・群馬で開催する。

湯山玲子(ゆやま れいこ)

著述家。文化全般を独特の筆致で横断するテキストにファンが多い。20代のアネキャンから、ギンザ、50代のハーズまで、全世代の女性誌にコラムを連載、寄稿している。著作に『女ひとり寿司』(幻冬舎文庫)、『クラブカルチャー!』(毎日新聞出版局)、『女装する女』(新潮新書)、『四十路越え!』(ワニブックス)、『ビッチの触り方』(ワニブックス)、上野千鶴子との対談『快楽上等! 3.11以降を生きる』(幻冬舎)、『ベルばら手帖』(マガジンハウス)等。月1回のペースで、爆音でクラシックを聴く、『爆クラ』イベントを開催中。(有)ホウ71取締役。日本大学藝術学部文藝学科非常勤講師。

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