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舞台芸術の制作は調整のプロ。案件成功に導くキーマンの発想とは

舞台芸術の制作は調整のプロ。案件成功に導くキーマンの発想とは

『TPAM - 国際舞台芸術ミーティング in 横浜 2017』
インタビュー・テキスト
島貫泰介
撮影:永峰拓也 編集:宮原朋之

アート、演劇、音楽、そのいずれにせよ、表舞台に登場するのはアーティスト本人や、その作品の根幹に関わるディレクターである場合がほとんどだ。だが、クリエーションの現場で働くのは決して彼らだけではない。特に舞台芸術の現場では、技術スタッフ、広報担当などじつに多くのプロフェッショナルがそれぞれの技と想いを結集することで作品が生まれる。そのなかでもとりわけ外からは見えない、しかし決して欠かすことのできないポジションが「制作」である。アーティストの片腕・相棒となり、ときには厳しく叱咤する敵役ともなる制作者たちは、優れた芸術を生み出す、縁の下の力持ちだ。

2月11日から横浜で開催される『TPAM』(国際舞台芸術ミーティング in 横浜)も、日本を含むアジアから集まった舞台芸術の公演プログラムを多数の制作者が支えている。『TPAM』は、アジアで最も影響力のある舞台芸術プラットフォームの一つとして国際的に認知されている、舞台制作者も集うプロフェッショナルの交流の場だ。

その『TPAM』にスタッフとして関わる傍ら、「悪魔のしるし」をはじめとしたアーティストたちの制作をこなす岡村滝尾。演劇以外の領域でも注目を集め続ける「マームとジプシー」で制作に携わる林香菜。台湾を拠点とする制作者として『TPAM』に参加経験を持ち、同国での日本作品の紹介と受け入れをしている新田幸生。

舞台芸術の制作を生業とし、国際的なシーンでも活躍する彼らに制作の本音で語ってもらった。普段は知ることのできない、舞台芸術の世界にようこそ!

「制作」の仕事の範囲が広すぎて、いまだにうまく説明できた気がしません(苦笑)。(岡村)

―大勢のプロフェッショナルが関わる舞台芸術のなかで、「制作」とはどんな仕事なのでしょうか?

:舞台芸術は作家や俳優、劇場サイドやテクニカルスタッフなど、関わる人全てが1つの作品のために集まって作られるものですよね。その集団作業のなかでは、当然楽しいこともツラいこともありますから、気持ちの面でも製作面でも、それぞれがきちんと作品に向き合える環境を作るために、制作はなんでもやらなきゃいけないと思っています。

岡村:私の場合は、仕事の内容や求められる役割は、上演環境の違いや作家の個性によって毎回変化しますね。周囲の人からは、「猛獣使いみたいだ」と言われることもあります。たしかに劇場以外の場所で展開するプロジェクトや、異ジャンルのアーティストとのコラボレーションに関わる機会も多いので、予想もしないアクシデントに対応するのは慣れているかもしれない(笑)。

新田:僕にとって制作者は、未来を予想する仕事です。例えば、これからの文化政策はどう変化するのか? このアーティストは将来どういう作品を作るか? を想像して次の企画を提案する。

左から:岡村滝尾、林香菜、新田幸生
左から:岡村滝尾、林香菜、新田幸生

―そのスタンスはプロデューサーにも近いですね。

:日本だと「制作」ってことでひと括りにされちゃっているけど、プロデューサー、マネージャー、ディレクターって求められる資質が違いますよね。プロデューサーは新しい機会や価値観を提案して、作家を新しい場所にナビゲーションできるように、場や機会を先回りして提供する役割だと思う。予算を集めてくることも含めて。

マネージャーっていうのは、作家がやりたいことを具体的にしていく人ですね。ディレクターもまた違うと思うんですけど、日本の制作者はそれを一挙にやらなきゃいけない。イメージとして細分化されてないんじゃないかな。どちらの役割もある程度必要だと思うけど、それぞれの資質は大きく違うと思う。

岡村:例えば「制作」は、広報の仕事もしますよね。年に2回、大学で、制作について話す授業に呼んでいただいているのですが、仕事の範囲が広すぎて、いまだにうまく説明できた気がしません(苦笑)。作家と共に作ること、社会に向けて広げること、作品の根幹を守ること、そして公演を成功させて次につなげることも制作の仕事……。これは、私が「そういう制作者でありたいな」と思っていることでもありますね。

『TPAM』スタッフや「悪魔のしるし」の制作など、多岐に活動する岡村滝尾
『TPAM』スタッフや「悪魔のしるし」の制作など、多岐に活動する岡村滝尾

日本で仕事をしていると、制作の役割の範囲の広さに驚きます。「え! これも制作の仕事ですか?」って。(新田)

:制作に必要とされる仕事の全部が自分に向いているわけでもないですよね。例えば、気が利いて、誰に対してもとにかく優しかったり、集団の中でのそれぞれとの関係性の取り方が上手だったり、その子がいるだけで現場が明るくなるようなタイプは、現場のマネージャーとして稀有な才能だけれど、必ずしもプロデューサー的な仕事をしたいわけじゃなかったりする。

逆にプロデューサーとしては優秀で新しい場所をどんどん考える事ができるけど、スケジュール調整がヘタだったり、人の細かい機微を察するのが苦手な人もいますよね。どちらが上とか下とかではなく、両者が確実に必要だと思います。日本の現状は、その全部に優れていないといけない雰囲気があるから、どれかひとつが欠けているから制作者に向いてないって、どんどん制作の仕事に疲れてしまう人はたくさんいる。それはもったいないことだと思うんです。だから、私より若い制作者には自分の特性や興味をきちんと見極めて欲しいと思います。

新田:たしかに日本で仕事をしていると、制作の役割の範囲の広さに驚きます。はじめて現場に関わったときは当日の受付や、チケット管理、広報、プロデュース業など「え! これも制作の仕事ですか?」って。でも僕は、アーティストの仲間でありたいという想いが強いので、決してイヤな訳ではないです。

3年前より『TPAM』に参加し、台北の演劇祭に日本の作品を紹介している新田幸生
3年前より『TPAM』に参加し、台北の演劇祭に日本の作品を紹介している新田幸生

岡村:「制作=つなげる仕事」というイメージが私にはありますね。作家が外に伝えられない気持ちや言葉を翻訳して、補足して、スタッフや関係者につなげていく。そういう点では、やっぱり作家と観客がいないと成り立たない仕事ですね。

―作家はすごく複雑な思考のプロセスを辿りながら作品を作っています。それを他人が理解するには時間がかかると思うのですが、それを現場で言葉にするのは大変ですよね。

:私の場合はもう10年くらい藤田貴大(マームとジプシー主宰)と一緒にやっているので、藤田が話していたことを作品の中で実感したり、自分が普段思っていることが作品とつながる瞬間が、どんな作品でも必ずあります。制作として関わる上で、自分が作品を観てどう思うかってことが大事だと思うんです。例えば、批評家やジャーナリストが「これってどういう意味?」と制作的な説明を求めてきたときに、自分が実感したことを言葉で説明できるようにしています。あとはあらゆる藤田の活動で、この作品が藤田やマームにとってどのような位置づけの作品なのかを、批評家の方だけではなく、作品に関わるメンバーにも説明できることも大事だと思います。

藤田貴大が主宰する「マームとジプシー」制作、林香菜
藤田貴大が主宰する「マームとジプシー」制作、林香菜

新田:僕は、制作の仕事のなかでチラシのデザインや配布数がいちばん大事だと思っています。チラシって実際に作品を見にくる人数の10倍以上が目にするから、チラシ自体が作品や作家のことを充分に語っている必要があるんです。それって岡村さんの言う「作家の気持ちや言葉の翻訳」と同じなのかなと思います。

『TPAM - 国際舞台芸術ミーティング in 横浜 2017』チラシ メインビジュアルはエコ・スプリヤント『BALABALA』より
『TPAM - 国際舞台芸術ミーティング in 横浜 2017』チラシ メインビジュアルはエコ・スプリヤント『BALABALA』より

今回の『TPAM』で公演される『台北ノート』のチラシ
今回の『TPAM』で公演される『台北ノート』のチラシ

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イベント情報

『TPAM - 国際舞台芸術ミーティング in 横浜 2017』

2017年2月11日(土・祝)~2月19日(日)
会場:神奈川県 横浜 KAAT神奈川芸術劇場、横浜美術館、横浜赤レンガ倉庫1号館、BankART Studio NYK、YCCヨコハマ創造都市センター、象の鼻テラス、Amazon Clubほか横浜・東京の複数会場

プロフィール

岡村滝尾(おかむら たきお)

早稲田大学卒業後、舞台監督助手、衣装助手を経て、2002年に入社したセンターラインアソシエイツにて、舞台に関するさまざまなことを学ぶ。08年KAAT神奈川芸術劇場開設準備室勤務。09年文化庁新進芸術家海外研修制度で英国バーミンガムレパートリーシアターに派遣。帰国後、舞台作品、パフォーマンス、『TPAM』(ショーイングプログラム)などの運営、制作などを請け負う。悪魔のしるし、サンガツ、core of bells、捩子ぴじん、などの公演の制作を担当。

林香菜(はやし かな)

桜美林大学総合文化学群卒業。07年マームとジプシー旗揚げに参加。以降ほぼ全てのマームとジプシーの作品や、藤田の外部演出の作品で制作を担当。14年マームとジプシーを法人化し、代表に就任。

新田幸生(にった ゆきお)

日本生まれ台湾育ちのプロデューサー。国立台北芸術大学大学院アートマネジメント修士課程卒業。フリーの舞台制作者として、演劇とダンスの舞台制作やフェスティバルの制作に関わり、台北を中心に日本やアジアとの国際交流を深めるプロジェクトを数多く手がける。現在は台湾のShakespeare's Wild Sisters Group、Huang Yi Studio +などのプロデューサー、台北芸術祭、台北フリンジ、台北子供芸術祭の広報担当を務めている。

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