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日本のアート産業の市場規模はどのくらい?初調査から見えた実態

日本のアート産業の市場規模はどのくらい?初調査から見えた実態

『アートフェア東京2017』
インタビュー・テキスト
島貫泰介
撮影・編集:宮原朋之

3月16日から4日間にわたって開催される『アートフェア東京2017』。今年で12回目を迎える日本最大級のアートフェアには、現代美術だけでなく、工芸、日本画、古美術など、多彩な作品と、それらを取り扱う画廊・ギャラリーが多数参加する。

そんな同フェアを主催する一般社団法人 アート東京が、先日あるレポートを公開した。「日本のアート産業に関する市場調査2016」は、その名が示すように、ギャラリー、百貨店、オークション会社、美術館などのいわゆるアート産業で、1年間にどれだけの経済活動が行われているのかを購買者側からリサーチしたレポートである。これまで全容の曖昧だった日本のアートマーケットの実態に迫った同レポートをつぶさに見ていくと、日本独自のアートの潮流、そしてコレクターやアートファンの動向が浮かび上がってくる。

今回、同レポート制作の指揮を主導した、アートフェア東京のマーケティング&コミュニケーションディレクターの墨屋宏明にインタビューする機会を得た。いったいどんな理由からこのレポートを作り上げたのだろうか?

これまでの公表されていた日本のアート市場規模は欧米のリサーチ結果を受けて発表されたものが大半だったんです。

―先日、アート東京から「日本のアート産業に関する市場調査2016」が発表されました。墨屋さんはその制作を主導されたそうですが、なぜ今回のリサーチを実施することにしたのでしょうか?

墨屋:これまでの日本のアート市場規模は、TEFAF(国際的なアートの市場調査も行うヨーロッパを拠点とするアートフェア)や欧米のリサーチ結果を受けて引用されたものが大半だったんですね。2011年12月に月刊誌『美術手帖』が「総力特集 世界のアートマーケット」で本格的に国際的なアートの経済動向を取り上げ、日本のアートの市場規模を1000億~2000億円と紹介していますが、これも海外からのデータをもとにしたものでした。

墨屋宏明
墨屋宏明

―日本独自の調査というのは、いままで無かったんですね。

墨屋:そうなんです。そこで、アートフェア東京というマーケットのプラットフォームを通じて、ギャラリー、百貨店、美術館とも連携を取ることのできる立ち位置で、美術品市場だけでなく美術関連品市場や美術館、国際展等の市場規模とあわせて「アート産業」として捉え、情報発信していくのは意味のあることではないか、と考えたんです。

幸い、私自身もかつてシンクタンクの広報で各産業の専門家たちと産業市場レポートなどの情報発信をしていた経験やネットワークがあるので、今回は「芸術と創造」(文化芸術・産業政策のコンサルティングを行う一般社団法人)と協力して実施しました。そのリサーチの結果として、3341億円というアート産業の全体的な市場規模が推計されました。

―これまで各種機関が引用していた市場規模と比べると、異なるように見える数字です。もちろん集計年の違いはあると思いますが、なぜでしょうか。

墨屋:数値というのは一人歩きするので、各調査機関がどういう基準で調査し推計しているのか、どういう目的で引用しているのか、は注意深く見る必要があります。今回は、調査方法に特徴があります。調査項目を設定して2万人以上を対象に、主にインターネットを使って市場調査を行いました。これはコアなアートファンだけではなく、一般の人々を対象にしたものです。2万人のなかにはアートに関心のない人、まして美術作品を買ったことのない人も多数含まれています。

墨屋宏明

―つまり、2万人を日本人全体の縮図として捉え、データを算出したんですね。

墨屋:そうですね。性別、年代、所得、職務状況などは日本の実際の分布に従って回収しました。これらを含む様々な属性によって購買した美術品のジャンルや購買チャネルによって細かく分析できます。分解してみていくと各種機関の発表と比べても妥当性のある数値になっていることが分かります。

日本の歴史や風土に紐づいて多種・多様なジャンルに支えられている。これは世界的に見ても独自の傾向でしょう。

―市場規模の内訳はどうなっているのでしょうか?

墨屋:3341億円の内訳は、①美術品市場が2431億円、②美術関連品市場が403億円、③美術関連サービス市場が507億円です。美術品市場は2431億円は実際に美術品を購入した額を示していますが、その内訳を見るといろいろなことがわかってきます。例えば、もっとも購入されているのは洋画(452億円)。それに次いで現代美術の平面作品(415億円)。

アートフェア東京2017カタログ内のビジュアルな調査結果
アートフェア東京2017カタログ内のビジュアルな調査結果

ジャンル別の美術品・美術関連品市場規模 出所:「日本のアート産業に関する市場調査2016」(一社)アート東京・(一社)芸術と創造
ジャンル別の美術品・美術関連品市場規模 出所:「日本のアート産業に関する市場調査2016」(一社)アート東京・(一社)芸術と創造

―平面作品というのはペインティングやドローイングですね。

墨屋:そうですね、そして3番手に来るのが陶芸(405億円)、そして日本画(384億円)。続いて、版画、工芸、掛軸・屏風、書など。つまり、これら数値の多くを占めているのが、同時代的なアート作品だけでなく、工芸品や日本美術や古美術などのものなんです。

欧米や中国で急激に成長した現代美術中心のマーケットと比べると、その枠内に入ってこないものも日本人はアートと感じて購入しているんです。日本の歴史や風土に紐づいた多種・多様なジャンルに支えられている。これは世界的に見ても独自の傾向でしょう。

―これまで『アートフェア東京』では、現代美術、工芸、古美術などを広く扱ってきましたから、やはり現実の市場動向ともマッチしていたわけですね。

墨屋:昨年の、『村上隆のスーパーフラット・コレクション ―蕭白、魯山人からキーファーまで―』展や『杉本博司 ロスト・ヒューマン』展は、どちらも現代美術と古美術が混在していましたよね。ある意味で、全部混ざっているのが日本のこれからのコレクションの面白さとも言えると思います。

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イベント情報

『アートフェア東京2017』

2017年3月17日(金)13:00~20:00
2017年3月18日(土)11:00~20:00
2017年3月19日(日)10:30~17:00
会場:東京都 有楽町 東京国際フォーラム ホールE・ロビーギャラリー
料金:前売2,500円 当日2,800円
※小学生以下無料(要大人同伴)

プロフィール

墨屋宏明(すみや ひろあき)

アートフェア東京 マーケティング&コミュニケーション ディレクター。フェアの企画・制作をはじめ、「日本のアート産業に関する市場調査」、アートと街・地域など繋ぐ様々な活動を展開。前職の野村総合研究所では、経済学者、科学者、社会学者、アーティストら多様な先駆者が登壇する「未来創発フォーラム」を企画。同社シニアコンサルタントを経て、アートと社会とを繋げる活動を、ビジネスの現場からアートの現場に軸足を変えて実践しようと、2016年6月より現職。鎌倉在住、鎌倉から新しい「文化的交流の場」をつくることを目指して2006年に立ち上げたNPOルートカルチャー理事。

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