特集 PR

KIGI渡邉良重インタビュー 絵とデザインの感覚とその源流を語る

KIGI渡邉良重インタビュー 絵とデザインの感覚とその源流を語る

渡邉良重展『絵をつくること』
インタビュー・テキスト
杉原環樹
撮影:鈴木渉 編集:飯嶋藍子

デザインは個人のものというより、みんなで育てるものだと思う。

―「今ならもっとスッキリさせるのに」と感じるというのは、過剰すぎたということですか?

渡邉:うん、ちょっと過剰(笑)。昔はなにが余分か、過剰かということに気づけていなかったのだと思いますが、活動を続けるなかで少しずつ見えてきました。

―CACUMAを始めたのも、渡邉さんの考える、過剰ではない「普通の服」がほしかったから?

渡邉:もちろん、今でもいろんなブランドの服も買うし、好きなブランドもあるのですが、私にとっての着やすいちょうどいい服は、あまり見つけられなくて。たとえば、夏に半袖ではなく、五分とか七分のものが着たいのにないとか、シャツの襟の開き方も、詰まっているものが多かったり。

あと、おしゃれ着には普通に洗濯できないものも多いですが、特に夏は毎日さっと手洗いしたい。そんな自分にとってのちょうどいい服を作りたいと思いました。

CACUMAの洋服
CACUMAの洋服

―CACUMAのほかに、活動の転換点となった作品はありますか?

渡邉:絵本作りは大きかったですね。もとから絵本には興味があったのですが、物語を考える力が本当になく(笑)、「絵本を作るぞ」と思うと肩に力が入り、日々の忙しさもあってずっとできなかった。だけど『BROOCH』という絵本は、D-BROS(株式会社ドラフトの代表・宮田識によって設立された自社ブランド)で作ったカレンダーの絵に、内田也哉子さんが物語をつけてくれたもので、こういう作り方もあるのだなと。お話を作るという方法ではないやり方でも、絵本を作っていけると思えた仕事でした。

渡邉が手掛けた絵本『BROOCH』
渡邉が手掛けた絵本『BROOCH』

―絵本の絵は、どういうところから発想されていくんですか?

渡邉:いろいろですが、たとえば『BROOCH』は仕組みから考えました。透ける紙を使っているので、次のページの絵が見えている。そういう仕組みの中で、どんなものを描いたら面白いかを考えていきます。『アンドゥ』という絵本は、左右両開きという枠組みを最初に考えて、左右でつながっていくと面白い絵を考えました。仕組みがあると作っていきやすい。

―さきほど、チョコのスライド式の箱を使って工作をしていたというお話がありましたけど、ものの仕組みを前にすると、アイデアが出てくるタイプなのですね。

渡邉:そうかもしれない。イラストレーター的というより、デザイナー的なんですね。

―お話を聞いていて、渡邉さんのニュートラルさが面白いなと。絵を描く人にインタビューをすると、すごく感情的に描くと言う人も多いですが、仕組みから考えてすぐ描けてしまうあたりが、とても変わっていますよね。たとえば、クライアントから「こんなものはダメ。絶対にこういう風に描け」と言われて腹が立ったりとか、仕事をしていて熱くなることはないですか?

渡邉:そんなに強いだめ出しはないです。「AUDREY」も直しはよくありますが、お金もリスクを負う、決定権のある社長さんの意見ですから。それに、売ることの勘をお持ちなので、単純に参考になる。だから、「また言われちゃった」とは思うけど気持ちを切り替えます。

ドラフトの社長である宮田識さんとはよく喧嘩しましたけど(笑)、「やり直しはより良くなるチャンスだ」といつも言っていました。それは本当だと思う。こうしたデザインは個人のものというより、みんなで育てるものだと思います。

私にとって絵を描くこととデザインすることはグラデーションで続いている。

―4月からクリエイションギャラリーG8で開催される個展『絵をつくること』はどんな内容になりますか?

渡邉:ひとつの部屋は「AUDREY」にまつわるもののパッケージを、もうひと部屋はイラストを中心とした仕事にしぼって展示する予定です。あと、私の絵をある方が刺繍してくれた大きな布が2枚あり、それと以前作ったリバティの布、映像などを展示する部屋もあります。

―その刺繍は、個人的なプレゼントなんですか?

渡邉:もともと編集者だったのですが、刺繍をやりたくて会社を辞めたという方がいて(笑)。その方に頼んで、『ジャーニー』という絵本の絵を大きな布に刺繍してもらいました。30日間で毎日10時間、かかったそうです。それがとても良くて、新たに花の刺繍も頼みました。

渡邉が手掛けた絵本『ジャーニー』
渡邉が手掛けた絵本『ジャーニー』

―見応えがありそうですね。「以前は過剰な部分もあった」ともおっしゃっていましたが、『絵をつくること』というタイトルからは初心に戻るような印象も受けます。

渡邉:私にとって絵を描くこととデザインすることはグラデーションで続いているので、『絵を描くこと』にするのは違うのかなと思って、『絵をつくること』というタイトルにしました。ぜひ、多くの人に展示を見ていただけたら嬉しいですね。

Page 3
前へ

イベント情報

渡邉良重展
『絵をつくること』

2017年4月4日(火)~5月20日(土)
会場:東京都 クリエイションギャラリーG8
時間:11:00~19:00
休館日:日曜、祝日、4月29日~5月7日
料金:無料

『渡邉良重 原画展』

2017年4月12日(水)~5月14日(日)
会場:東京都 白金高輪 OFS gallery(OUR FAVOURITE SHOP内)
休館日:月、火曜(祝日を除く)
料金:無料

プロフィール

渡邉良重(わたなべ よしえ)

1961年山口県生まれ。山口大学卒業。1986年宮田識デザイン事務所(現・ドラフト)入社。植原亮輔と共に2012年にKIGIを設立。グラフィックデザインの他、現在もドラフトのプロダクトブランド「D-BROS」のディレクターを務めながらも、糸井重里氏が主宰する「ほぼ日」と洋服のブランドCACUMA(2013年~)を、さらに滋賀県の伝統工芸の職人たちと、陶器・家具・布製品などのブランドKIKOF(2014年~)を立ち上げ。また、デザインワークの流れの中で作品制作をし、展覧会を行っている。2015年に東京・白金にKIGIの生み出すデザイン製品等を販売するショップ&ギャラリー「OUR FAVOURITE SHOP」をオープン。絵本『BROOCH』(文・内田也哉子)、『ジャーニー』(詩・長田弘、ジュエリー・薗部悦子)、『UN DEUX』(文・高山なおみ)、『ぬりえの赤ずきん、くるみ割り人形、不思議の国のアリス』(文・安藤隆)、および作品集『キギ/KIGI』『KIGI_M』をリトルモアより刊行。東京ADCグランプリ、D&AD金賞、One Show Design金賞、NY ADC金賞などを受賞。

SPECIAL PR 特集

もっと見る

BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

もっと見る

PICKUP VIDEO 動画これだけは

岩井勇気(ハライチ)『ひねくれとか言われても俺はただ自分が進みたい道を選んでるだけ』

ドリームマッチでの『醤油の魔人 塩の魔人』、ラジオで突如披露した推しキャラケロッピをテーマにしたEDM調楽曲『ダメダメケロッピ』など、音楽的な才能に注目が集まる岩井勇気。今回はミツカン「こなべっち」とタッグを組み、自らがマイクを取ってラップに挑戦。しかもこの動画、岩井がこれまでラジオや書籍の中で言及してきた、珪藻土のバスマットや、海苔、メゾネットタイプの部屋、クラウス・ノミなどのネタが詰まっていて、まさか岩井さんの自宅なのでは……? と隅々まで見てしまう。つぎはぜひ、自作のトラックとリリックによる曲が披露されることを待っています。(川浦)

  1. 秋山黄色×佐藤寛太対談 互いに認め合う「異常さ」、交わる遊び心 1

    秋山黄色×佐藤寛太対談 互いに認め合う「異常さ」、交わる遊び心

  2. 古田新太が振返る劇団☆新感線40年 演劇界に吹かせたエンタメの風 2

    古田新太が振返る劇団☆新感線40年 演劇界に吹かせたエンタメの風

  3. 青葉市子の新AL『アダンの風』詳細発表&原美術館でのライブ配信も 3

    青葉市子の新AL『アダンの風』詳細発表&原美術館でのライブ配信も

  4. 米津玄師と是枝裕和監督が初タッグ“カナリヤ”PV公開 蒔田彩珠らが出演 4

    米津玄師と是枝裕和監督が初タッグ“カナリヤ”PV公開 蒔田彩珠らが出演

  5. 角舘健悟の『未知との遭遇』たなかみさき編(後編) 5

    角舘健悟の『未知との遭遇』たなかみさき編(後編)

  6. 坂本龍一の過去ライブ映像が本日から3週にわたってYouTubeでプレミア公開 6

    坂本龍一の過去ライブ映像が本日から3週にわたってYouTubeでプレミア公開

  7. 三浦春馬主演、映画『天外者』五代友厚の「志」と「天外者」な部分を紹介 7

    三浦春馬主演、映画『天外者』五代友厚の「志」と「天外者」な部分を紹介

  8. 小沢健二が「手紙」を読み上げる生配信番組『キツネを追ってゆくんだよ』 8

    小沢健二が「手紙」を読み上げる生配信番組『キツネを追ってゆくんだよ』

  9. 『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒』論評 自立と解放への戦い描く 9

    『ハーレイ・クインの華麗なる覚醒』論評 自立と解放への戦い描く

  10. 『あつ森』とジェラート ピケのコラボブック刊行 表紙は松岡茉優 10

    『あつ森』とジェラート ピケのコラボブック刊行 表紙は松岡茉優