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KIGI渡邉良重インタビュー 絵とデザインの感覚とその源流を語る

KIGI渡邉良重インタビュー 絵とデザインの感覚とその源流を語る

渡邉良重展『絵をつくること』
インタビュー・テキスト
杉原環樹
撮影:鈴木渉 編集:飯嶋藍子

家族にまつわるものには特別な思いがありますし、優しい思いが伝わってきます。

―渡邉さんのデザインや美意識の源泉はどこにあるのか? それを垣間見られたらと思い、今日はお気に入りの品を持ってきていただきました。雛人形の写真がありますね。

渡邉:はい。KIGIとして「OUR FAVOURITE SHOP」というお店をやっているのですが、開店した当初から春になったら必ずこれを飾っています。雛人形は持ってこられませんでしたが、羽子板や着物の帯、小物を持ってきました。

渡邉とお姉さんが祖父母に買ってもらったという雛人形
渡邉とお姉さんが祖父母に買ってもらったという雛人形

羽子板と着物の小物。金糸の刺繍が精巧で美しい
羽子板と着物の小物。金糸の刺繍が精巧で美しい

―どんな思い入れがあるものなのでしょうか?

渡邉:すべて、祖父母が買ってくれたものです。

―ご自身の服のブランド名「CACUMA」にもされた、覚馬おじいちゃんですね。

渡邉:そうです。これは姉と私が子どもの頃の着物を合わせて、大きな着物にしたときの端切れです。ぜんぜんお金持ちじゃなかったですが、よくこんなものを買ってくれたなと。

子ども用の着物のはぎれ。大ぶりの花柄が鮮やか
子ども用の着物のはぎれ。大ぶりの花柄が鮮やか

―すごくいいものに見えますね。

渡邉:そうですよね。子どもの頃は、とくに「デザインがいい」なんて思って見ていたわけではないのですが、あらためて見るとすごくいいものが多いなと思って。子どもの頃に何となく「いいな」と思った感覚と、今の感覚があまり変わっていない気がします。お雛様で言うと、色んな種類のお雛様を気にしてよく見ているのですが、中でもこれは、サイズ感や人形の顔がすごくいいです。

―立派だけど、派手すぎないというか。

渡邉:そうです。特別に意識はしていないけど、こういうものも自分に影響したのかなと思います。手紙もよくくれるおじいちゃんで、それらも大事に取っています。

私は、3歳まで母方の祖父母に育ててもらいました。実家が相当な田舎で、母が体を壊したこともあって、姉と年子の私を一緒に育てるのが大変だったので預けられて。おじいちゃんたちはずっと育てたかったと思います。

おじいさんからの年賀状。「はやくきなさい」などとメッセージが添えられていた
おじいさんからの年賀状。「はやくきなさい」などとメッセージが添えられていた

―芸術についての趣味や関心があった方なのですか?

渡邉:私が知っているのは普通のおじいちゃんですけど、若い頃の写真を見るとすごくカッコいい。台湾からの引揚者で、日本に帰ってきてからは苦労したと思いますが「いいもの」を知っていたのだなと思います。絵もうまくて、筆で描いた自画像を飾っていました。

―飾り物や絵で、生活を彩るという意識のあった方だったのですね。小さい頃にもらったものをいまでも大事にされていて、ものと個人の関係の面白さを感じますが、渡邉さんもデザインするときに、そういった物語を生み出したいと思うものですか?

渡邉:物語まではいかないけど、これを持っていて嬉しいとか、買って嬉しいとか、そういうものを作れたらいいなと思います。あまりゴミになるものは作りたくないです。たとえばポストを覗くと、チラシがたくさん入っていて、印刷物ってすごく作られているのだなと思いますよね。

―ああいったものも、何かしらのデザインはされているわけですもんね。

渡邉:そうですね。でも、ほとんど見られもしないで、どんどん捨てられて、どれだけ無駄になっているのだろうと思います。逆に、どうしても取っておきたいものや、取っておいて良かったなと思うものもある。自分の作品も、そういうもののひとつになったらいいなと思います。

今日持ってきたようなものを見ると、祖父母はどれだけ自分のことをかわいがっていたのだろうと、いつも思い出す。名前を服のブランド名にしたのも、それで祖父や母親が喜んでくれるだろうと思ったから。やっぱり家族にまつわるものには特別な思いがありますし、優しい思いが伝わってきます。

―CACUMAの服を着る人たちとっては、その渡邉さんの個人的な家族への思いも含め、魅力になっているんじゃないかと。おじいさまに絵を見てもらうこともあったのですか?

渡邉:小さい頃は、祖父が裏面の白い広告を集めてくれて、それをもらって絵を描いていました。横顔のお姫様とか描いていて、今とあまり変わらないかも?(笑) そうやって家族に見守られながら描いていたときの楽しさが、今もずっと続いている感じですね。

―渡邉さんの好きなものの一貫性が、少し見えた気がします。

渡邉:でも前に作ったものを見てみると、「どうしてこういうふうに作ったのかな、今ならもっとスッキリさせるのに」と思うことはよくあります。

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イベント情報

渡邉良重展
『絵をつくること』

2017年4月4日(火)~5月20日(土)
会場:東京都 クリエイションギャラリーG8
時間:11:00~19:00
休館日:日曜、祝日、4月29日~5月7日
料金:無料

『渡邉良重 原画展』

2017年4月12日(水)~5月14日(日)
会場:東京都 白金高輪 OFS gallery(OUR FAVOURITE SHOP内)
休館日:月、火曜(祝日を除く)
料金:無料

プロフィール

渡邉良重(わたなべ よしえ)

1961年山口県生まれ。山口大学卒業。1986年宮田識デザイン事務所(現・ドラフト)入社。植原亮輔と共に2012年にKIGIを設立。グラフィックデザインの他、現在もドラフトのプロダクトブランド「D-BROS」のディレクターを務めながらも、糸井重里氏が主宰する「ほぼ日」と洋服のブランドCACUMA(2013年~)を、さらに滋賀県の伝統工芸の職人たちと、陶器・家具・布製品などのブランドKIKOF(2014年~)を立ち上げ。また、デザインワークの流れの中で作品制作をし、展覧会を行っている。2015年に東京・白金にKIGIの生み出すデザイン製品等を販売するショップ&ギャラリー「OUR FAVOURITE SHOP」をオープン。絵本『BROOCH』(文・内田也哉子)、『ジャーニー』(詩・長田弘、ジュエリー・薗部悦子)、『UN DEUX』(文・高山なおみ)、『ぬりえの赤ずきん、くるみ割り人形、不思議の国のアリス』(文・安藤隆)、および作品集『キギ/KIGI』『KIGI_M』をリトルモアより刊行。東京ADCグランプリ、D&AD金賞、One Show Design金賞、NY ADC金賞などを受賞。

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