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池永正二×熊切和嘉対談 あら恋20周年と『武曲 MUKOKU』を語る

池永正二×熊切和嘉対談 あら恋20周年と『武曲 MUKOKU』を語る

あらかじめ決められた恋人たちへ『あらかじめ決められた恋人たちへ - 20th BEST -』
インタビュー・テキスト
兵庫慎司
撮影:タイコウクニヨシ 編集:山元翔一

ノブ(山下敦弘)とも、「40歳やし、変わらなあかんよなあ」とか話すんですけど……「俺たちも更新しなあかん」と熊さんに思わされましたね。(池永)

―『武曲 MUKOKU』は、綾野剛さんと村上虹郎さん役者としての存在感がとても印象的な作品ですよね。

『武曲 MUKOKU』ポスタービジュアル ©2017「武曲 MUKOKU」製作委員会
『武曲 MUKOKU』ポスタービジュアル ©2017「武曲 MUKOKU」製作委員会

熊切:綾野くんに関しては、役づくりとはいえ、あそこまでやる人はまずいないし、ちょっと狂気じみているところがあって。彼は自分で「アスリートタイプ」って言っていましたけど、自分の限界値を計っているというか……それは身体だけのことじゃなくて、自分の肉体をコントロールして芝居するっていうことにおいて、「限界はどこにあるんだろう?」っていうのを常に探っているような感じがして面白いんですよね。演じているのは自分なんだけど、「綾野剛の肉体を使って何をしよう?」っていうのを綾野くん自身がコントロールしてるというか。

池永:でもほんま、綾野さん、すごい顔してはりますよね。戦い終わったあとの顔が、ものすごいんですよ。もう「ああ~っ」っていう……言葉にできないものが表れた顔してるんですよ。それが泣けるんです。

熊切:綾野剛に見えないよね。

池永:見えない。「あああ~っ」「あああ……」って。もう、いろんな情念が混ざってなんとも言えない表情がすごいんですよ。ほんともう「うああははあ~~っ」って。

熊切:この正二くんの言い方、どう活字になるのか(笑)。

左から:熊切和嘉、池永正二

―(笑)

熊切:虹郎くんの場合は、もっと本能的というか。無意識的なものなんでしょうけど、すごく生命力を感じるんですよ。それがあの役(羽田融)には合っていたんじゃないかと思いますね。

重い過去があってああいうふうに生きている、っていう研吾(綾野演じる主人公)の人物像はつかみやすいんですけど、融はそういうことをある種乗り越える、あっけらかんとした強さがあるんじゃないかな。それは僕にはないものなので、新しい世代なのかなと感じますね。原作とか脚本上で字面ではわかるけど具体的にはわかんないとき、虹郎くんの姿から「ああ、こういうことなんだ」っていうことが見えた感じがして。

池永:熊さんも言ったとおり、暗いカットでも生命力にあふれているんですよ。「あっけらかんとしてる」っていう言葉が、ほんとに合ってると思う。やれと言われてもできひんようなものがあるというか……。

村上虹郎 / 『武曲 MUKOKU』 ©2017「武曲 MUKOKU」製作委員会
村上虹郎 / 『武曲 MUKOKU』 ©2017「武曲 MUKOKU」製作委員会

池永:ライブがまさにそうですけど、ステージに立っているだけで出てくるかっこよさってあると思う。その感じが虹郎さんにはありますよね。僕にはないっす(笑)。

この映画、今までの熊さんの映画とやっぱりちょっと違うと思うんですよ。「ああ、また更新しはったなあ」と思いました。ノブ(山下敦弘)とも、「40歳やし、変わらなあかんよなあ」とか話すんですけど……「俺も更新しなあかん」「次のことしなあかん」と思わされましたね。

音楽を聴くっていうよりも、映像に音がこびりついている感じがするところがいいんですよね。(熊切)

―この映画の研吾も、『私の男』(2014年)の浅野忠信さんが演じた淳悟も、精神のギリギリの淵に追いつめられていくじゃないですか。人間のそういう部分をリアルな画で描き出すというのは、熊切監督のテーマのひとつなんでしょうか。

熊切:そうですね……要は、キレイごとだけで映画を作りたくないというのが、昔からあるんです。映画を見るときの個人的な好みもあるかもしれないですけど、人のみっともないところや見たくないところもえぐりたいと思うから……お客さんを選ぶというか(笑)。

僕の映画はダメな人は全然受け付けないと思うんですけど、僕としては、そういうのもひっくるめてエンターテイメントにしたいんです。これは人から言われたんですけど、「神経逆撫でされるところも楽しむ映画」というか。

たとえばホラー映画の恐怖の表現って、昔は暗闇で血が垂れただけで恐怖を演出するようなものだったのが、観客にも耐性ができて、良くも悪くも表現方法がエスカレートしていったじゃないですか。同じように、人間のえぐみに関してもそういう表現の進化ってあると思うんです。そこに挑戦したいなっていう気持ちはありますね。

熊切和嘉

―今作でいうと、綾野剛さんは人間のそういう面を表現する役者としてすぐれているところがあったんじゃないかと。

熊切:ああ。綾野くんと話していて、なんとなく作りたいものの好みは似てるなという気はしますね。

―池永さんはいかがですか。人間の奥底に……というか、ご自分の奥底にあるものを音楽で描いてきた方だと、作品と向き合うと感じるんですけども。

池永:僕、打ち込みで曲を作るんですけど、時間をかけてPCをカタカタカタカタやってると奥底にあるものが出てくるんですよ。「この音をここに入れる」「ベースはこう」とか「ミックスはこう」って細かいところまで詰める作業のなかで、心の奥深くにあるものが煮詰められて浮かび出てくるというか。

特に打ち込みで制作をやっていると、年中24時間って感じなんですよ。だから、たとえ寝てても「あ、これや!」って思いつくと、バッと起きてカタカタカタカタってやる。でも、次の日起きて聴いたら「あ、全然あかんやん」って思うこともあって。それのくり返しなんですよね。時間をかけたからって、自分の奥底にあるものを出すことができるってことでもないんですけど、そういうふうにやってるうちに「あ、これや」ってなる瞬間があるんですよね。

左から:熊切和嘉、池永正二

―同じ表現者として、熊切さんは池永さんの音楽をどう捉えておられます?

熊切:この映画の音楽でいうと、なんていうかなあ……妙なこびりつき方をするんですよ。フレーズ自体はすごくシンプルなんですけど。特に映画の前半の音楽って、「♪ホワーン」みたいな単純なフレーズなんだけど、それが劇伴として完成されると、すごく変なこびりつき方をする。そういうところが好きですね。

悪夢、でもないんですけど……それこそ、さっき正二くんが言ってた「映像に溶け込む音」。音楽を聴くっていうよりも、映像に音がこびりついている感じがするところがいいんですよね。だから、チャンスがあったらまた一緒にやってみたいなあと思いますね。

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リリース情報

あらかじめ決められた恋人たちへ『あらかじめ決められた恋人たちへ - 20th BEST -』
あらかじめ決められた恋人たちへ
『あらかじめ決められた恋人たちへ - 20th BEST -』(CD)

2017年4月5日(水)発売
価格:2,600円(税込)
DDCZ-2146

1. ヤナガ
2. Back
3. 前日
4. Fly feat.吉野寿
5. 迷いの灯
6. ラセン
7. 翌々日
8. ハウル風
9. トカレフ
10. gone feat.曽我部恵一
11. res
12. CALLING

イベント情報

2017年7月1日(土)
会場:東京都 新代田 FEVER
出演 :
あらかじめ決められた恋人たちへ
MOROHA

2017年7月11日(火)
会場:大阪府 心斎橋 CLAPPER
出演 :
あらかじめ決められた恋人たちへ
MOROHA

2017年9月6日(水)
会場:東京都 渋谷 WWW

作品情報

『武曲 MUKOKU』

2017年6月3日(土)から全国公開
監督:熊切和嘉
脚本:高田亮
原作:藤沢周『武曲』(文春文庫刊)
主題歌:あらかじめ決められた恋人たちへ“Fly feat. 吉野寿”
音楽:池永正二
出演:
綾野剛
村上虹郎
前田敦子
風吹ジュン
小林薫
柄本明
ほか
配給:キノフィルムズ

プロフィール

池永正二(いけなが しょうじ)

1976年生まれ、大阪府出身。1997年より叙情派シネマティック・ダブ・バンド「あらかじめ決められた恋人たちへ」として活動開始する。『FUJI ROCK FESTIVAL』等、幾多の大型フェスに出演。2017年結成20周年を迎え、4月5日にベスト・アルバムをリリース。記念ライブイベントも開催予定。『もらとりあむタマ子』(2013年)、『味園ユニバース』(2015年)、『モヒカン故郷に帰る』(2016年)、『太陽を掴め』(2016年)など、映画の劇伴も手がける。

熊切和嘉(くまきり かずよし)

1974年生まれ、北海道出身。大阪芸術大学の卒業制作作品『鬼畜大宴会』(1998年)が「ぴあフィルムフェスティバル」で準グランプリを受賞。同作はベルリン国際映画祭パノラマ部門他、10か国以上の国際映画祭に招待され、一躍注目を浴びる。2010年、『海炭市叙景』がシネマニラ国際映画祭グランプリ及び最優秀俳優賞をはじめ、ドーヴィルアジア映画祭審査員賞などを受賞。その後も『私の男』(2014年)でモスクワ国際映画祭最優秀作品賞と最優秀男優賞の二冠を達成し、毎日映画コンクール日本映画大賞も獲得した。

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