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池永正二×熊切和嘉対談 あら恋20周年と『武曲 MUKOKU』を語る

池永正二×熊切和嘉対談 あら恋20周年と『武曲 MUKOKU』を語る

あらかじめ決められた恋人たちへ『あらかじめ決められた恋人たちへ - 20th BEST -』
インタビュー・テキスト
兵庫慎司
撮影:タイコウクニヨシ 編集:山元翔一

僕、映画に音楽が溶け込んでいる感じが好きなんですよ。(池永)

―とはいえ、“Fly”がこの映画のエンディングであることには全く違和感を感じないんですよね。

熊切:この曲が流れるエンディングに向かって作っていけば、「この映画、一本筋が通るんじゃないか」って気がしたんです。

池永:“Fly”の歌詞に「解き放つ」っていう言葉が出てくるんですけど、ラップのキーワードを熊さんからいただいたときに、「解き放つ」って言葉が入ってて「うわ、リンクしてる」と思って。

左から:熊切和嘉、池永正二

熊切:そうやって頭のシーンとエンディングがつながったのも、正二くんに音楽を全部やってもらいたいと思った理由のひとつですね。

―映画を拝見すると、音楽が貼ってあるところって最小限ですよね。

熊切:そうですね。どこのシーンに音楽がほしいというのは話していたんですけど。

池永:でも減りましたよね(笑)。ただ、音楽が前に出すぎるのも……偉そうなことを言いますけど、僕、映画に音楽が溶け込んでいる感じが好きなんですよ。

―あら恋の作品と映画の劇伴って、ご自分のなかでは違うものですか?

池永:いや、僕は同じです。主旋律が映像になるだけで。バンドだったらボーカルの歌に演奏をつけるじゃないですか? それが映画だと、映像がボーカルの代わりになるというか。劇伴は、物語や心情に沿ってどの距離感で伴奏をつけるか、っていうことなので。あら恋でも感情や物語との距離の取り方はよく考えるので、だから普段の制作とあんまり変わんないんです。

―熊切監督は、ジム・オルークをはじめ、これまでいろんな音楽家に劇伴を依頼してきたわけですけれども、今回池永さんとやってみていかがでしたか?

熊切:もちろん、人によって作り方は全然違うんですけど……ある程度できたところで、最終的なミックスの前に一度、正二くんの家に行って一緒にすごく細かいことをネチネチやったんです。ああいうのは初めての経験でした。本ミックスの前のテストっていう感じだったんですけど、あれは面白かったですね。

熊切和嘉

池永:細かい出し戻しをメールでやってると時間がかかるんですよ。それやったら一緒にやった方が早いし、納得もできるから来ていただいて。でもほんま劇伴って、音をつけるタイミングで意味が変わるんですよ。刀を持つ手前でつけるのと、持ち終わってからつけるのと、持つ瞬間につけるのでは全然意味が変わってくる。そういうすごく細かいところを、「ここすか?」「ここすか?」って音を貼っていって、「ここや!」っていうところを見つける作業をしました。あれは僕も楽しかったです。

熊切:でも自主映画ってそうやって作るので、それを久しぶりにやった感じです。

僕、あら恋の最初のアルバムに推薦コメント出してるんですよ。そのときにも「映画っぽい」って書いた気がする。(熊切)

―熊切監督の劇伴の人選を見ていると、普段から音楽が好きでいろいろ聴いている方なんだろうな、と思うんですけれども。人選の基準などはあるんですか?

熊切:音楽は聴きますね。劇伴を誰に頼むかも、キャスティングと同じ感覚で、どうなるのかがわかんないところが面白かったりして。そういう異化効果も狙ったりもしますけど、今回正二くんに頼んだことでそれがすごくあった気がする。

―池永さんは、新しい経験はありました?

池永:映画の仕事でここまでノイズを鳴らせることってなかったんですよ。ここまであら恋の轟音の部分を出せた映画は初めてで、それは今までと違いましたね。

熊さんの映画は暴力的なシーンでも、ちょっとメランコリックな、憂いのある感じなんですよ。『莫逆家族 バクギャクファミーリア』(2012年)を観て……あの作品も暴力的なシーンがありますけど、いちばん印象に残っているのって桜なんですよね。あの物悲しい感じの……うちの曲も、過激なノイズの裏にうっすらぼんやり物悲しいフレーズとか入ってきたりするので、そういうところが好きなんですよ。

池永正二

―4月に、あら恋の20周年ベストアルバム(『あらかじめ決められた恋人たちへ - 20th BEST -』)が出ましたが。

池永:はい。歳とりました(笑)。

『あらかじめ決められた恋人たちへ - 20th BEST -』ジャケット
『あらかじめ決められた恋人たちへ - 20th BEST -』ジャケット(Amazonで見る

―熊切監督は聴いてどう思われました?

熊切:僕はあら恋のことをそんなに知らなかったんだな、と思いました。「こんなにいろんな表情があるんだ?」っていう感じがしたというか。

池永:15年前、背中に風船つけてライブやってたのがね。

熊切:そう(笑)。そこからの過程をすべて追っていたわけではないのでなおさらですね。

熊切和嘉

―いろんな表情がありますが、あら恋には「叙情派シネマティック・ダブ・バンド」ってコピーが付いてるじゃないですか。

池永:それは僕らが考えたものではないんですけど、何個かコピーを書いていただいたなかで、「あ、そんな音楽やりたい」と思ってこれを選んだんです。あら恋を表してる言葉やなあと思う。

―「シネマティック」は大事?

池永:そうですね。映画は好きですし、映画みたいな時間軸のある音楽がしたかったので。いろんな伏線が物語になって、あるきっかけでそれがドカーンと叙情的に爆発して盛り上がって踊りにつながればええなあ、という欲張りな感じですけど。どれかひとつ選んだほうが伝わりやすいとは思うけど、実際にライブ観てもらったら納得いくと思います。選ばないと売り出しづらい、どれか選ばんとダメというのもわかるんですけど、でもその中間色のほうが絶対面白いと思うんです。だからそういう言葉になりました。

熊切:……あ、そういえば僕、あら恋の最初のアルバムに推薦コメント出してるんですよ。そのときにも「映画っぽい」って書いた気がする。

池永:とても嬉しかったです。

熊切:だから最初からそう思ってたんですね。

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リリース情報

あらかじめ決められた恋人たちへ『あらかじめ決められた恋人たちへ - 20th BEST -』
あらかじめ決められた恋人たちへ
『あらかじめ決められた恋人たちへ - 20th BEST -』(CD)

2017年4月5日(水)発売
価格:2,600円(税込)
DDCZ-2146

1. ヤナガ
2. Back
3. 前日
4. Fly feat.吉野寿
5. 迷いの灯
6. ラセン
7. 翌々日
8. ハウル風
9. トカレフ
10. gone feat.曽我部恵一
11. res
12. CALLING

イベント情報

2017年7月1日(土)
会場:東京都 新代田 FEVER
出演 :
あらかじめ決められた恋人たちへ
MOROHA

2017年7月11日(火)
会場:大阪府 心斎橋 CLAPPER
出演 :
あらかじめ決められた恋人たちへ
MOROHA

2017年9月6日(水)
会場:東京都 渋谷 WWW

作品情報

『武曲 MUKOKU』

2017年6月3日(土)から全国公開
監督:熊切和嘉
脚本:高田亮
原作:藤沢周『武曲』(文春文庫刊)
主題歌:あらかじめ決められた恋人たちへ“Fly feat. 吉野寿”
音楽:池永正二
出演:
綾野剛
村上虹郎
前田敦子
風吹ジュン
小林薫
柄本明
ほか
配給:キノフィルムズ

プロフィール

池永正二(いけなが しょうじ)

1976年生まれ、大阪府出身。1997年より叙情派シネマティック・ダブ・バンド「あらかじめ決められた恋人たちへ」として活動開始する。『FUJI ROCK FESTIVAL』等、幾多の大型フェスに出演。2017年結成20周年を迎え、4月5日にベスト・アルバムをリリース。記念ライブイベントも開催予定。『もらとりあむタマ子』(2013年)、『味園ユニバース』(2015年)、『モヒカン故郷に帰る』(2016年)、『太陽を掴め』(2016年)など、映画の劇伴も手がける。

熊切和嘉(くまきり かずよし)

1974年生まれ、北海道出身。大阪芸術大学の卒業制作作品『鬼畜大宴会』(1998年)が「ぴあフィルムフェスティバル」で準グランプリを受賞。同作はベルリン国際映画祭パノラマ部門他、10か国以上の国際映画祭に招待され、一躍注目を浴びる。2010年、『海炭市叙景』がシネマニラ国際映画祭グランプリ及び最優秀俳優賞をはじめ、ドーヴィルアジア映画祭審査員賞などを受賞。その後も『私の男』(2014年)でモスクワ国際映画祭最優秀作品賞と最優秀男優賞の二冠を達成し、毎日映画コンクール日本映画大賞も獲得した。

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