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空気公団って何者?SCLL藤枝が語る2010年代を先取りした音楽集団

空気公団って何者?SCLL藤枝が語る2010年代を先取りした音楽集団

空気公団 『Anthology vol.0』
インタビュー・テキスト
金子厚武
撮影:永峰拓也 編集:山元翔一

空気公団はレーベルの一番の稼ぎ頭だったし、一番人気があったんですけど、一番説明しづらかった。(藤枝)

―匿名性を徹底しすぎて、本当にその場にいたのかと疑われるのは面白いですね。

山崎:1日3回公演だったんですけど、3回目のときに、「幕の後ろにメンバーはいないんじゃないか?」と思って帰る人がいるって話になりました。なので、3回目だけちょっとだけ幕の前に出た記憶があります。しかも、持ち時間1時間半のなかで、ライブをしたのは20分だけだったんです。それ以外の時間は、飾った写真を見てもらったり、お茶を出したり、クイズを解いてもらったりして……。

山崎ゆかり

藤枝:「自分の時間を過ごしてください」ってね。とにかく、当時はあらゆることにおいて、いまの何倍も尖ってたんですよ(笑)。メジャーに行って、僕は一旦制作からは外れたんですけど、その後もアートワークで関わらせてもらうなかで、「え?」って思うことが何度もあって。メジャーデビュー作が『融』(2001年)っていうのも、「漢字一文字?」って。

山崎:レーベルの方からも「サブタイトルがないと意味がわからなくないですか?」って言われて、「融~◯◯」みたいなのを提案されたんですけど、「そんなのできるか!」って思いました。

藤枝:ほんとに尖ってたよね(笑)。だから、バンドというよりも、グループというか、プロジェクトというか、世界観を提示するための組織というか……結局僕は第一期の空気公団は最後までつかみきれなかったんですよ。レーベルの一番の稼ぎ頭だったし、一番人気があったんですけど、一番説明しづらかった。

山崎さんは自分の言いたいことを説明するためにすごく言葉を選ぶから、沈黙が長くて……それもやっぱり怖かった(笑)。でも、やりたい放題だったよね。CDの仕様も毎回見たことないようなものだったし。

山崎:林静一さんにイラストをお願いした『わかるかい?』(2001年)っていうシングルのジャケットは、下半分だけなんです。

空気公団『わかるかい?』ジャケット
空気公団『わかるかい?』ジャケット

藤枝:「本の帯みたいにしたい」って言われて、すごく大変だったけど、面白かった。荒井良二さんとコラボしたカセットとフィギュアのセット(2001年リリースの『ポロンちゃん』)も、いま思うとすごく贅沢だし、貴重な経験をさせてもらいました。

山崎さんのそういうところって、ある種のパンク精神というか。「ほんとにそうであることが必要なのか?」っていう、業界の慣例とか、すべてに対して一度懐疑的に考えるっていうことの表れだったような気がする。

藤枝憲

山崎:でも、メジャーデビューするにあたって、メンバーとは「別の空気公団になっちゃうかもしれないけど、そこは我慢しよう」って、結束を固めたんですよ。

藤枝:山崎さんの考えはバンド内では共有されていたのかもしれないけど、それが当然のように外でも振舞ってたからね。「グリーンピースくん」ってキャラクターがいたんですけど、それも、さも当然のように「グリーンピースくんが~」って話すから、初めて聞いた人は「え、何それ?」っていう(笑)。

グリーンピースくん
グリーンピースくん

山崎:バンドにキャラクターがいるってこと自体、当時は珍しかったんですよね。私たちは極力顔を出したくなかったので、「グリーンピースくんをアー写にしてください」って言ったこともあるんですけど、「それは無理」って言われました。

空気公団にとって初めてのレコ評に、「70年代を思い出させる」って書いてあって、私は「え?」って思ったんです。(山崎)

―メジャーから数枚出したのち、再び「Coa Records」に戻って『こども』(2003年)をリリースしていますね。

山崎:メジャーに行って、「空気公団の隣に空気公団を作りたい」って言われたんです。「いまあっちに光が当たってるぞ」となったら、私たちの気持ちは変わらずここにあるけど、空気公団という砂山だけ光の当たっているところに移動させようって。

でも、それってつまりは売れてるものに合わせるやり方で、それによって空気公団の形が変形していくのはすごく嫌だった。だから、「これなら自分たちでやったほうがいいや」って思って、その後にまた「Coa Records」にお世話になって。2004年に第一期が終了しました。

―初期からのメンバーが脱退されて、一度山崎さんと戸川由幸さん(Ba,Gt)だけになると。その後すぐに第二期が始まって、2006年に窪田渡さんがキーボードで加入します。

山崎:今度は光が当たっているところに砂山を移動させるんじゃなくて、砂山に人を集める作戦にしようと思ったんです。2008年に『空装』っていうイベントをやったんですけど、そのときは紗幕を使って、演奏しているメンバーの姿がうっすら見える前で「珍しいキノコ舞踊団」に踊ってもらって、その奥では荒井良二さんが絵を描くっていう形。「音楽の見せ方とか聴かせ方は、もっといろいろあっていい」という考えで、イベントをやったんです。

山崎ゆかり

藤枝:山崎さんの身構えてる感じが、だんだん外に向かって、いまはすごく自然体になってる気がする。ここに至るまでは紆余曲折があったんだけど、周りも空気公団が何者なのかがわかってきて、いまはすごくタフっていうか、揺るがない感じがあって。この感じならあと10年は余裕でやっていけそうだなって思いますね。

―言ってみればですけど、当時からすごくいまっぽい考え方でしたよね。レコード会社の体力がなくなってきて、そこに依存するのではなく、「自分たちだけでもやれることがある」という認識を、いまの若いバンドたちはすでに持っていると思うんです。

藤枝:ほんとにそう思いますね。当時は理解するのがだいぶ大変でしたけど(笑)。

―途中の匿名性の話にしても、いまはそれを活かして自由な表現をするアーティストもたくさんいますし。

藤枝:いわゆるニューミュージック、シティポップス的な歌もので、ちゃんと音楽を聴いてもらうためのやり方として、匿名っていうのはすごく理にかなった手法だと思います。曲を聴いていいなって思って、ホームページを見て、ギターを持ったアー写が前面に出ていることで、ニュートラルに音楽が聴けなくなることが僕はよくあるんで(笑)。

―それこそ、ここ数年は若い人の間でも「シティポップ」という言葉が流行して、そのなかで空気公団が再評価されている部分もあるかと思うのですが、ご本人たちはそこに対してどの程度意識的なのでしょうか?

藤枝憲

藤枝:当時よく引き合いに出されたのは、シュガー・ベイブだったんですよね。まあ、シュガー・ベイブよりはもっと素朴なんだけど、持っている「街感」が近いっていうのかな。Perfumeとかが表現している「シティ」とはもちろん違うし、かといって、1970年代的かっていうとそれも違うんだけど……普遍性みたいな部分は近いのかなって思いますね。

山崎:空気公団にとって初めてのレコ評が『MARQUEE』に載ったとき、その記事を見たら「70年代を思い出させる」って書いてあって、私は「え?」って思ったんです。

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リリース情報

空気公団 『Anthology vol.0』
空気公団
『Anthology vol.0』(3CD)

2017年4月26日(水)発売
価格:4,320円(税込)
COAR-0056~8

[DISC1]
1. 田中さん、愛善通りを行く
2. 退屈
3. ここだよ
4. かくれてばっかり
5. 気持ち
6. 優しさ
7. 紛れて誰を言え
8. あおきいろあか
9. だぁれも
10. 呼び声
[DISC2]
1. 白のフワフワ
2. 音階小夜曲
3. 季節の風達
4. あかり
5. 電信
6. 今日のままでいることなんて
7. 壁に映った昨日
8. 例え
9. 旅をしませんか
10. こども
11. おかえりただいま
[DISC3]
1. ねむり
2. とおりは夜だらけ
3. 日々
4. 歩く
5. どこにもないよ
6. 窓越しに見えるは
7. ふたり
8. 見えなくてもわかること
9. 知ってるよ
10. 小さい本

イベント情報

『空気公団 Anthology Live vol.1【1997~2004】with曽我部恵一』

2017年6月2日(金)全2公演
会場:東京都 六本木 Billboard Live Tokyo
料金:サービスエリア6,500円 カジュアルエリア5,000円

2017年6月10日(土)全2公演
会場:大阪府 Billboard Live Osaka
料金:サービスエリア6,500円 カジュアルエリア5,000円

プロフィール

空気公団(くうきこうだん)

1997年結成。現在は山崎、戸川、窪田の3人で活動中。ささやかな日常語、アレンジを細やかにおりこんだ演奏、それらを重ねあわせた音源製作を中心に据えながらも、映像を大胆に取り入れたライヴや、様々な芸術家とのコラボレーションを軸にした展覧会等、枠にとらわれない活動を独自の方法論で続けている。

藤枝憲(ふじえだ けん)

1998年、大坪加奈、笹原清明とともにSpangle call Lilli lineを結成。今までに10枚のオリジナルアルバムなど数々の作品を発表し、2015年11月には5年半ぶりとなるフルアルバム『ghost is dead』をリリースした。CDジャケット、本の装丁、舞台の宣伝美術など様々な分野でのデザイン、アートディレクションを手掛けるデザイン事務所「Coa Graphics」の代表も務める。

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