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バンド・Ryu Matsuyamaに取材。そのルーツにある「痛み」の正体

バンド・Ryu Matsuyamaに取材。そのルーツにある「痛み」の正体

Ryu Matsuyama『Leave, slowly』
インタビュー・テキスト
三宅正一
撮影:永峰拓也 編集:山元翔一、飯嶋藍子
2017/05/19

僕はいろんな意見や考え方の「あいだ」にあるものが答えだと思ってる。(Ryu)

―試行錯誤の結果、独創的なサウンドを生み出せるようになったと。

Ryu:独創的なものになりましたね。僕はトム・ヨーク(RADIOHEAD)に憧れて曲を書こうとしていたんですけど、どうしても日本っぽいカノンコードばかり弾いてしまうことに後々気づいて。そういう僕の手癖をこの二人が崩してくれるのがすごく刺激的だし、面白いんですよね。今でこそいろんなコード感を出せるようになってきました。

Ryu
Ryu

―サウンドプロダクションとしては、インディーR&Bと呼ばれるものから、ポストクラシカル、ポストロック、最近だとデジタルクワイアと呼ばれるジャンルにも通じる要素があるんだけど、結果的にそのどれでもないみたいな。

Jackson:うん、特定のジャンルでは当てはまるものはないですよね。

―そのうえで独立したポップスと言うべき音楽なのかなと。歌のポピュラリティーも高いし。

Ryu:僕もポップスをやってると思っています。

Tsuru:最高です! ポップスです!(笑)

Jackson:でも、PVにしてもそんなに歌詞の内容がわかりやすく伝わるような意味付けをしてないよね。

Ryu:そうだね。全編英詞でも歌詞カードを読んだら何を歌っているか伝わるとは思うんですけど、曲を聴いている段階ではリスナーが歌詞の意味に引っ張られないようにしたくて。

―英語の理解力は人それぞれだけど、曲を一聴しただけでメッセージ性の大きさは伝わってくると思うんですね。サウンドスケープもクワイア的なスケールの大きさがあるし。

Ryu:そうですね。曲のタイトルだけでもどういうことを歌っているのかは伝わる気がしていて。さっきのレイシズムの話にも繋がってきますけど、イタリアで育ちながら多かれ少なかれ人種差別を受けてきた反面教師もあって、僕は絶対に相手を見下すことはしない。逆にちょっと自分が下に出ることが多くて、どこかで「弱い自分」という美学を持ってしまっている気がします。

僕が幼少期から抱えているものって痛みなんです。それを無理に克服しようとしているわけではなくて、痛みの理由を探りながら、「弱い自分でいいじゃないか」という答えを歌詞で書いている気がします。

左から:Jackson、Ryu、Tsuru

―レイシズムを浴びた経験を経て、そこでRyuくんの音楽表現がレベルミュージックではなくヒューマニズムに富んだ内容に帰結しているのが興味深いなと思って。このさまざまな要素を折衷した音楽性も違いを受け入れるという感覚が根本的にあると思うんですよね。

Ryu:ああ、僕の音楽表現がレベルミュージックにならなかったのは、根本的に自問自答が好きだし、自分が出した答えが絶対的ではないと思ってるからですね。このバンドで言うなら、僕の意見とJacksonの意見とTsuruちゃんの意見がぶつかり合って出たものが答えだと思ってるので。

―それも折衷ですよね。

Ryu:僕はいろんな意見や考え方の「あいだ」にあるものが答えだと思ってる。それが歌詞にも出ているんでしょうね。

僕はどうしても前作『Grow from the ground』を完全に終わらせたかった。(Ryu)

―さっき聖書という言葉が出ましたけど、Ryuくんはクリスチャンではないんですか?

Ryu:クリスチャンではないです。ただ、最近よく聴いている音楽は、どこか神に近づいているような歌詞が多くて。特にBon Iverの『22, A Million』は神を崇めているとしか思えないキーワードがいっぱいある。

僕自身は特定の宗教を信仰しているわけではないんですけど、大きな力を信じる精神性は大好きです。そういう気持ちもあって、“In the beginning”の歌詞を書いたところがあります。

Ryu Matsuyama『Leave, slowly』
Ryu Matsuyama『Leave, slowly』(Amazonで見る

―個人的には今後、歌詞にエロティシズムやユーモアが織り込まれればサウンドとの共鳴により奥行きが生まれるのかなと思っていて。

Ryu:ああ、それは今作に入らなかっただけかもしれないですね。

Jackson:テーマとして漏れたやつでもあるよね。

Ryu:そう、漏れたテーマがいっぱいあって。今回、まず30~40曲くらい作って、そこから20曲、さらに8曲まで絞ったんですよ。

―そこまで絞ったんだ。

Ryu:曲と同時にテーマも「旅」に絞ったんです。僕はどうしても前作『Grow from the ground』を完全に終わらせたかった。実は今作のタイトルは『Return to Dust』(=塵に還る)という案もあったんです。僕自身でもある主人公を塵に還してもいいんじゃないかと思って。要はお清めですよね。

―自分に対するレクイエムのような。

Ryu:そう、レクイエムだったんです。結果的に『Return to Dust』はネガティブな要素が強いかなと思ってやめました。あと、実はまだ隠してる部分ではあるんですけど、僕はラブソングもけっこう書いてるんですよ。

Tsuru:隠すなよ!(笑)

Ryu:(笑)。今後は音楽で愛を語りたいなと思っていて。ここまで僕の人生観やアイデンティティーを語ってきたので。その核となるテーマは不変でありつつ、次はそれこそエロティシズムやセックス、愛について語ってみたいです。

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リリース情報

Ryu Matsuyama『Leave, slowly』
Ryu Matsuyama
『Leave, slowly』(CD)

2017年5月17日(水)発売
価格:2,300円(税込)
PCCI-00001

1. And seek for water
2. To a Sunny Place
3. Do it Again
4. The Way to Home
5. In this Woods
6. Domus
7. Crazy
8. In the beginning

イベント情報

Ryu Matsuyama Oneman Live
『Landscapes』

2017年5月27日(土)
会場:東京都 渋谷 WWW
料金:前売3,000円 当日3,500円(共にドリンク別)

プロフィール

Ryu Matsuyama
Ryu Matsuyama(りゅう まつやま)

ピアノスリーピースバンド。イタリア生まれイタリア育ちの Ryu(Pf,Vo)が2012年に「Ryu Matsuyama」としてバンド活動をスタート。2014年、結成当初からのメンバーであるTsuru(Ba)にJackson(Dr)を加え現メンバーとなる。2014年に1stミニアルバム『Thinking Better』を自主制作し、ライブ会場、iTunesで販売。2015年にはタワーレコードレーベルより2ndミニアルバム『Grow from the ground』をリリース。2016年2月六本木Super Deluxeにてワンマンライブを行う。2017年5月17日、ミニアルバム『Leave, slowly』をリリース、5月27日にはWWWでワンマンライブを開催する。

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