
Alfred Beach Sandal + STUTS、なぜ二人はタッグを組んだのか?
Alfred Beach Sandal + STUTS『ABS+STUTS』- インタビュー・テキスト
- 三宅正一
- 撮影:永峰拓也 編集:矢島由佳子
すでに耳にしたリスナーも多いと思う。Alfred Beach Sandal + STUTSによるコラボレーション作品『ABS+STUTS』が、2017年に鳴るポップスとして非常に味わい深い内容になっている。
コスモポリタンな創造性に裏打ちされたサウンドプロダクションとソングライティングによって、東京のインディーシーンで高い支持を得ている北里彰久のソロプロジェクト、Alfred Beach Sandal。一方のトラックメイカー / MPCプレイヤーであるSTUTSは、昨年リリースした1stアルバム『PUSHIN'』がヒップホップシーンを飛び越えて大きな話題を呼び、同作から7inchカットされた“夜を使いはたして feat. PUNPEE”は、2016年を代表するフロアアンセムにもなった。
『ABS+STUTS』では、STUTSの絶妙な緩急をつけながら躍動するビートセンスであり極上のメロウネスを湛えたトラックと、「ここではないどこか」を彷徨するAlfred Beach Sandalのトリップ感に富んでいながらも生々しい肉体性を伴った歌が、ナチュラルに溶け合っている。最高に充実したアルバムを完成させた二人の音楽的な真髄に迫った。
ひとつのシーンだけにとどまっていると、どうしても閉じがちになってしまうと思うんですよ。(STUTS)
―最高のコラボレーション作品だと思います。二人の手応えは?
STUTS:僕としては、全曲に歌が乗る作品を作ったのが初めての経験なので、達成感というか、フレッシュな気分ですね。
―Alfred Beach Sandal(以下、ABS)はどうですか?
ABS:確かに俺も「最高」というよりは、「フレッシュ」という言葉のほうがしっくりくるかも。トラックから曲を作っていくと、作曲と録音が同時に進んでいく感じなんですよ。そのやり方はこれまで自分がやってきた制作とは異なるので、そういう意味でもフレッシュな気持ちが強いですね。
―基本的にSTUTSがビートを作って、そこから広げるという制作行程だったんですか?
STUTS:最初の3曲(“The Chase”“Horizon”“Daylight Avenue”)がそうですね。後半の3曲(“Siesta”“Quiet Blue”“A Song of Last Things”)はビーサンさんが弾いたギターをサンプリングしてからビートを作ったりして。
ABS:後半の3曲はセッションっぽい感じだよね。曲を作ってる時系列はバラバラなんですけど、曲順はたまたま前半と後半で制作方法が異なる流れになってます。
―二人は過去に何度かコラボレーションしていて、音楽的にも相思相愛の関係にあると思うんですけど。互いの音楽性やアーティスト性においてどんなところに惹かれてますか?
STUTS:惹かれてるというか、共通する部分が大きいと思います。かっこいいって思うグルーヴ感が共通しているのかなって。
ABS:俺もそれが一番大きいと思う。お互いの音楽性について話すことはほとんどないので。それよりは、音そのもののことというか。グルーヴの感覚が近いからやりやすいというのが一番ですね。
―二人に共通する「かっこいいグルーヴ感」を言語化できますか?
ABS:今までの取材も全部「グルーヴ」で押し通してた(笑)。
STUTS:でも、具体的なことを言うと、スネアの位置を0.0何秒ずらしたりするポイントとか。
ABS:それくらい細かいことなんですよね。
―グルーヴの感覚において、ビートが及ぼす影響がかなり大きいと思うんですけど、そもそもヒップホップの好きなニュアンスが近いというのもあるんですか?
ABS:被ってるところは近いよね?
STUTS:そうですね。ビーサンさんと被ってるヒップホップが、僕のルーツにあるようなものだったりするので。A Tribe Called Questとか。最初にセッションしたときから「やりやすいね」という感覚がありました。
ABS:そもそもセッション始まりみたいな出会いだったので。
―最初にセッションしたのは何年前ですか?
STUTS:3年前とか? 僕の家で最初にセッションしました。
ABS:その前にイベントで一緒になって、連絡先を交換して。でも、遊ぶってなったらセッションくらいしかやることがなかったんですよね(笑)。
―有り体な表現になりますけど、最初から音楽で会話したという。あと、二人の音楽性で一致しているのは無国籍でありエトランゼ的なところだと思うんですよね。
ABS:そうかもしれない。
STUTS:ビーサンさんは特にそういう感じがあると思います。
―STUTSもヒップホップ由来のグルーヴ感がベースにありつつ、コード感や上モノの旋律はジャンルの記号性に縛られないものがあるなと。だから幅広いフィールドのアーティストと交われると思うんです。
STUTS:そうだったら嬉しいですね。
最近では、クリープハイプとコラボしている。クリープハイプ×STUTS『NO SWALLOWS, NO LIFE.』(TOWER RECORDS ONLINEで見る)
ABS:そうだと思うよ。根幹はヒップホップだけど、幅広いセンスを持ってるから。
STUTS:僕は、ひとつのシーンに所属したくないという思いがあって。どこにでも行ける存在でありたいとずっと思ってるんです。
―それは、MPCを叩き始めてから思っていることですか?
STUTS:そうかもしれないですね。いろんな人とセッションするようになって、もっといろんな世界を見てみたいなって、より強く思うようになりました。
ひとつのシーンだけにとどまっていると、どうしても閉じがちになってしまうところがあると思うんですよ。それと、ヒップホップを作る上での構成の組み方と、歌モノを作る上での構成の組み方は結構違うので、そういう意味でも、展開を作ったりするうえで学べることが多いんですよね。
リリース情報

- Alfred Beach Sandal + STUTS
『ABS+STUTS』(CD) -
2017年6月21日(水)発売
価格:1,728円(税込)
PECF-50021. The Chase
2. Horizon
3. Daylight Avenue
4. Siesta
5. Quiet Blue
6. A Song of Last Things
イベント情報
- 『“ABS+STUTS” Release One Man Show』
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2017年7月16日(日)
会場:東京都 表参道 WALL & WALL
出演:Alfred Beach Sandal + STUTS
料金:前売3,000円 当日4,000円(共にドリンク別)
- 『“ABS+STUTS” Release Tour』
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2017年8月5日(土)
会場:愛知県 新栄 Live & Lounge Vio
出演:
Alfred Beach Sandal + STUTS
Ramza
6EYES2017年8月6日(日)
会場:大阪府 CIRCUS
出演:
Alfred Beach Sandal + STUTS
and more2017年9月1日(金)
会場:福岡県 KIETH FLACK
出演:
Alfred Beach Sandal + STUTS
DJ:
SHOTA-LOW
and more2017年9月3日(日)
会場:熊本県 NAVARO
出演
Alfred Beach Sandal + STUTS
DJ:
Kappy
Go Honda
Takesue
and more
プロフィール

- Alfred Beach Sandal(あるふれっど びーち さんだる)
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2009年に北里彰久(Vo,Gt)のフリーフォームなソロユニットとして活動開始。ロックやラテン、ブラックミュージックなど、雑多なジャンルをデタラメにコラージュした上に、無理矢理ABS印のシールを貼りつけたような唯一無二の音楽性で、真面目に暮らしている。
- STUTS(すたっつ)
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1989年生まれのトラックメーカー / MPC Player。2013年2月、ニューヨーク・ハーレム地区の路上でMPCライブを敢行。オーディエンスが踊り出す動画をYouTubeで公開して話題になる。MPC Playerとして都内を中心にライブ活動を行う傍ら、ジャンルを問わず様々なアーティストよりトラック制作、リミックスの依頼を受けるようになる。2016年4月、縁のあるアーティストをゲストに迎えて制作した1stアルバム『Pushin'』を発表し、大きな反響を呼んだ。現在、国内外でのライブ活動を中心に、楽曲プロデュース、CM音楽制作を行いながら、新しい作品制作に没頭している。