特集 PR

アートが健常者と障害者の垣根を越えるには?現在の課題を語る

アートが健常者と障害者の垣根を越えるには?現在の課題を語る

『障害者芸術支援フォーラム ~アートの多様性について考える~』
インタビュー・テキスト
徳永京子
撮影:豊島望 編集:宮原朋之、久野剛士

街中でなかなか足をとめない日本人が、地下鉄の通路に張り出された障害者アートの前で足をとめていました。(竹村)

:そういう私たちが「決して少数ではないんだな」と改めて感じたのは、今年の3月、コレド室町とOOTEMORIを結ぶ地下鉄の通路で『日本財団DIVERSITY IN THE ARTS』という展示をしたときですね。日本財団さん主催で、3日間だけ。事前の宣伝もない、フライヤーがあるわけでもないし、呼び込みもしない。かなりチャレンジングなイベントでした。

全国各地の施設にいる方や、自宅で創作している方の中から60数点を中津川さんと選んで展示しました。そして、ただ作品を飾るだけでなく、一人ひとりの作家さんにどういう特性があり、普段はどんな活動をしているかというキャプションもできるだけ丁寧に書いて。でも、おそらくほぼ素通りされると思っていたんですね。ただでさえ日本人は、街中で何かやっていてもなかなか足を止めませんよね。「急いでいます」「忙しいです」と。

竹村:それが、ものすごい数の方が立ち止まって、じっくり作品を見て、キャプションも読んでくれましたね。質問もたくさんいただいて驚きました。あのときは私も改めて、「アートの力」を感じました。

竹村利道

:すごい反響でしたよね。

中津川:街を歩く人を止めるというのは、作品に相当の力がないと不可能ですからね。

:また後日、わざわざ見に来てくれたり、お友達に「絶対に見に行ったほうがいい」と推薦してくれた方もいました。

『日本財団DIVERSITY IN THE ARTS』の様子/toboji(一般社団法人Get in touch)
『日本財団DIVERSITY IN THE ARTS』の様子/toboji(一般社団法人Get in touch)

障害者が何かすると、「障害を乗り越えてがんばっている」と安易に考える人がまだまだ多い。(竹村)

竹村:みんながみんなイレギュラーだと困りますけど(笑)、文化ってイレギュラーなことや、むしろ多くの人が「あり得ない」と思う発想から生まれることが少なくないですよね。それがなかったら、今、誰もiPhoneを持っていないじゃないですか。世の中を動かす文化、カルチャーを作っている人は、ルールからちょっと外れたところにいて、彼らが自由にやっていることが「クリエイティブ」と呼ばれるんだろうと思いますね。

:先ほどお話しした『日本財団DIVERSITY IN THE ARTS』では、作品を制作する作家さんたちの様子も映像で紹介しました。ご覧頂いたみなさんは、きっと障害のある作家さんたちはもっと真面目に……。

中津川:ピシッとストイックにやっているイメージですよね。

:そう、聖人君子みたいなイメージを持っていたのかも。ところが、途中で寝てしまったり、歩き回ったり、銘々が好き勝手に描いている。よく言われるのが「障害者の人はピュアだからこういう絵が描けるんですよね」という言葉。でも、全然そうじゃないんですよ。私たちと同じようにわがままだったりするし、気難しいところもあるし、ちょっと意地悪だったりとか。

中津川:嫉妬心もあるしね。本当に僕らと変わらない。

中津川浩章

竹村:障害者が何かをするとき、「障害を乗り越えてがんばっている」というイメージを前提にしている方がまだまだ多いんですよね。たとえば「飲み屋で働いている」と聞くと、「障害者は飲み屋をやったらいけないんじゃないか」とか、「障害者が夜働いてもいいのか」とか、勝手に約束事を作ってしまっている。そういうものに縛られないところでちょっとだけ考えてみたら、「お互いにおもしろいことがクリエイトできるのに」と思うんですが。

中津川:佐々木華枝さんという作家さんがいて、紙の真ん中に小さく乗り物を描くんですよ。で、まわりは全部余白です。元気いっぱいとは程遠い。でもそれを見ていると引き込まれるんです。

:その余白は彼女にとって何なのか、孤独なのか、それともまた別のものか、考えたくなる。それも「アートの力」ですよね。

—確かに障害者のアート作品には、明るさや無邪気さとは逆のものも少なくありません。あまりの緻密さに怖くなる作品や、理解することを拒否されているように感じる作品もあります。

:アート作品から受ける「怖い」という感覚、ものすごく大切なんです。「怖いからこそ良い」「わからなくて良い」ということをおもしろがれるのがアートなのに、障害者アートだと、「正悪」や「明暗」という単純な評価に分けられがちで。痛みが感じられるとか、死が匂い立つ作品こそ忘れられない。そういうものがベースにある作品こそ、ときめいたり、ゾワゾワしておもしろい。

東ちづる

中津川:自由に出かけたり話したりできない人が、唯一できるのが描いたり作ったりすること、あるいは壊すことで、1つの作品に抱え込んだものを注ぎ込むわけですから、当然いろんなものが入っているはずなんですよね。それを僕らが勝手に「アート」として受け取っているところもあるんですけれども。

竹村:いや、それこそがアートでしょう。障害者であっても健常者であっても。

Page 2
前へ 次へ

イベント情報

『障害者芸術支援フォーラム ~アートの多様性について考える~』

2017年9月9日(土)
会場:東京都 六本木ヒルズ ハリウッドプラザ ハリウッドホール
登壇者:
村木厚子(ビデオメッセージ)
服部正
山下完和
今中博之
中津川浩章
東ちづる
エドワード・M・ゴメズ
櫛野展正
齋藤誠一
杉本志乃
田口ランディ
鈴木京子
竹村利道
料金:無料
※当日の会場の様子はFacebookライブで生配信

プロフィール

東ちづる(あずま ちづる)

女優。一般社団法人Get in touch 理事長。広島県出身。会社員生活を経て芸能界へ。ドラマから、司会、講演、出版など幅広く活躍。プライベートでは骨髄バンクやドイツ平和村等のボランティアを25年以上続けている。2012年10月、アートと音楽等を通じて、誰も排除しない、誰もが自分らしく生きられる“まぜこぜの社会”を目指す、一般社団法人「Get in touch」を設立し、代表として活動中。著書に、母娘で受けたカウンセリングの実録と共に綴った『〈私〉はなぜカウンセリングを受けたのか~「いい人、やめた!」母と娘の挑戦』や、いのち・人生・生活・世間を考えるメッセージ満載の書き下ろしエッセイ「らいふ」など多数。

竹村利道(たけむら としみち)

日本財団公益事業部国内事業開発チーム チームリーダー。1964年、高知県生まれ。1988年よりソーシャルワーカーとして地域の障がい者支援を行う。2003年に「特定非営利活動法人 ワークスみらい高知」を立ち上げ、自ら事業者として、弁当やケーキなどの製造・販売を通して、障がい者の就労機会、自立支援を行う。グループ全体の年商や約4億円超。藁工ミュージアムの立ち上げにも参加した。障害者就労支援プロジェクト「はたらくNIPPON!計画」および「日本財団DIVERSITY IN THE ARTS」のリーダーとして活動中。

中津川浩章(なかつがわ ひろあき)

1958年静岡県生まれ。美術家として国内外で、個展やグループ展多数。ブルーバイオレットの線描を主体とした大画面のドローイング・ペインティングと呼ばれるアクリル画を制作発表。代表作「クラトファニー(力の顕現)」「新世紀」「考古学」など。静岡県立美術館、筑波大学、川崎養護学校などで、現代アートやアウトサイダーアートについてのレクチャー、ワークショップ。震災後の神戸での展覧会がライブペインティングを始める契機となり、震災後のトルコでライブペインティングやワークショップを実施。エイブルアートスタジオにて主に精神障害を持つ人達の制作サポート。福祉とアート、教育とアート、障害とアートなど、具体的な社会とアートの関係性を問い直すことに興味を持っている。

SPECIAL PR 特集

もっと見る

BACKNUMBER PR 注目のバックナンバー

もっと見る

PICKUP VIDEO 動画これだけは

岩井勇気(ハライチ)『ひねくれとか言われても俺はただ自分が進みたい道を選んでるだけ』

ドリームマッチでの『醤油の魔人 塩の魔人』、ラジオで突如披露した推しキャラケロッピをテーマにしたEDM調楽曲『ダメダメケロッピ』など、音楽的な才能に注目が集まる岩井勇気。今回はミツカン「こなべっち」とタッグを組み、自らがマイクを取ってラップに挑戦。しかもこの動画、岩井がこれまでラジオや書籍の中で言及してきた、珪藻土のバスマットや、海苔、メゾネットタイプの部屋、クラウス・ノミなどのネタが詰まっていて、まさか岩井さんの自宅なのでは……? と隅々まで見てしまう。つぎはぜひ、自作のトラックとリリックによる曲が披露されることを待っています。(川浦)

  1. 映画『82年生まれ、キム・ジヨン』が突きつける、社会に深く根づく性差別 1

    映画『82年生まれ、キム・ジヨン』が突きつける、社会に深く根づく性差別

  2. 横浜流星が「つらいかぜ」を打ち砕く プレコールの新CM「闘い続ける」篇 2

    横浜流星が「つらいかぜ」を打ち砕く プレコールの新CM「闘い続ける」篇

  3. ジョン・レノンが時代に残す闘いの爪痕、ヨーコがもたらしたもの 3

    ジョン・レノンが時代に残す闘いの爪痕、ヨーコがもたらしたもの

  4. 木村拓哉を操上和美が撮影『SWITCH』原宿特集に小泉今日子、池田エライザら 4

    木村拓哉を操上和美が撮影『SWITCH』原宿特集に小泉今日子、池田エライザら

  5. King Gnu井口理が獣医師役 野村不動産「プラウド」ブランドムービーが公開 5

    King Gnu井口理が獣医師役 野村不動産「プラウド」ブランドムービーが公開

  6. 高橋一生主演×荒木飛呂彦原作ドラマ『岸辺露伴は動かない』12月NHKで放送 6

    高橋一生主演×荒木飛呂彦原作ドラマ『岸辺露伴は動かない』12月NHKで放送

  7. カルティエの新作キャンペーンに常田大希、池田エライザ、野田洋次郎ら起用 7

    カルティエの新作キャンペーンに常田大希、池田エライザ、野田洋次郎ら起用

  8. 大滝詠一『A LONG VACATION』40周年記念盤が全音楽記録媒体でリリース 8

    大滝詠一『A LONG VACATION』40周年記念盤が全音楽記録媒体でリリース

  9. YOASOBIがGoogle PixelのCMソングを担当 新曲“アンコール”を起用 9

    YOASOBIがGoogle PixelのCMソングを担当 新曲“アンコール”を起用

  10. スピッツ、全着席のコンサートを11月に東京ガーデンシアターで開催 10

    スピッツ、全着席のコンサートを11月に東京ガーデンシアターで開催